ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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漸くアニメ1話目が終了します。


第11話~アウトローの居ない所で~

 穂乃果達がスクールアイドル部設立を決めた頃、コッソリと校舎裏を後にした紅夜は、愛車を止めてある駐車場に来ていた。

 

「ようR、お待たせ」

 

 そう言って、ドアのロックを解除して乗り込む紅夜。

 ポケットから取り出した鍵を差し込み、いざエンジンを掛けようとしたところで、再びスマホが鳴る。

 これと同じ流れがつい先日にもあったなと思いつつ、紅夜はスマホを取り出して通話のアイコンをタップする。

 

「もしもし」

『ヤッホー、紅夜!アタシよ!』

 

 電話に出るや否や、ハイテンションな女性の声が彼の耳に飛び込んでくる。

 紅夜のステイ先の娘にして、相棒である女性ドライバー、アレクサンドラ・デッカードだ。

 アメリカでは未だ深夜だというのに、相変わらずのテンションの高さである。

 

『ねぇねぇ、あの動画見てくれた?どうよ、良い出来だったでしょう?』

 

 動画を見たか否かの返答も聞かず、先程のダンス動画の感想を求めるアレクサンドラ。

 彼女としても、あのダンスは会心の出来だったらしく、その声からは、称賛の言葉を期待しているのがありありと伝わってきていた。

 

 勿論、紅夜もあのダンス動画は良く出来ていると思っていたため、素直に称賛の言葉を送った。

 

「ああ、カッコよかったよ。動きも曲のテンポや雰囲気に合ってて、バッチリだった」

『当然でしょ?全部アンタが考えた振り付けだし、何よりアタシ等が踊るんだから、カッコ悪くなる筈が無いわ!』

 

 自信満々な様子で答える彼女だが、やはり称賛されたのは嬉しかったらしく、声のトーンがやや高くなっていた。

 紅夜も、自分で考えた振り付けを褒められて気分を良くしたのか、微笑を浮かべた。

 

「そう言えば、サビの部分のエメルの動きも良くなってたな。彼奴、練習してる時は凄く動きにくそうだったから心配してたんだが、上手く出来たようで安心したよ」

『あ~、そういやそんな事もあったわね……あの乳牛女め、アタシよりおっぱいデカいからってこれ見よがしに揺らしやがって……』

 

 そう返すアレクサンドラの声が、途中からドスの利いた声へと変わっていた。

 

 彼女がこうなったのは、先程話題に上がったエメルという人物にある。

 

 エメルことエメラリア・アークライトは、紅夜率いるMAD RUNのメンバーで、2014年式の黒いChevrolet Camaro Z28を駈る女性ドライバーだ。

 ロングストレートの金髪に碧眼、そして抜群のプロポーションという、正に世の男性が思い描くアメリカ人女性を体現したような美女なのだが、スレンダー体型を気にしているアレクサンドラからすれば、グラマラスな体を持つエメラリアは妬みの対象なのだ。

 勿論、アレクサンドラの体が貧相という訳ではない。だがエメラリアと比べれば、どうしても豊満さで負けてしまう。

 しかもエメラリアは、紅夜を一目見て気に入ったらしく、事あるごとに彼にアプローチを掛けているためにアレクサンドラをヤキモキさせているのだ。

 

『しかもフォーチュンバレーにはイレーネも居るし、今紅夜は日本で女子校に通ってる。しかもそっちには幼馴染みの瑠璃も居る訳で…………ああ、もう。油断も隙もあったモンじゃないわね。やっぱり送り出さない方が良かったかしら』

「……お~いレナ、帰ってこ~い」

 

 1人でぶつぶつ呟き始めたアレクサンドラに、紅夜はそう呼び掛けた。

 これで本人が目の前に居れば、軽く手を振るなり揺さぶるなり出来たのだが、残念ながら相手は電話の向こう、更に言えば海の向こうに居るため、ただこうして呼び掛ける事しか出来なかった。

 

 そんなこんなで何とかアレクサンドラを現実に引き戻した紅夜は、先程のダンス動画の良かった部分や改善点などを掘り下げて説明した。

 

『成る程ね………ありがと、今後の参考にさせてもらうわ』

 

 彼のコメントを受け取ったアレクサンドラは、そう言い終えると小さく溜め息をついた。

 

『今回踊って思ったけど、やっぱり踊るならメンバー全員で踊りたかったわね。紅夜が居ないとつまらないわ』

「それに関しては、そっちに帰るまで待ってくれとしか言えねぇな。一応夏休みと冬休みには行けると思うが………」

『フフッ、これじゃ普段と真逆ね』

 

 そう言うアレクサンドラに、紅夜も『全くだ』と返して笑う。

 普段はアメリカで過ごし、夏休みと冬休みに日本へ里帰りをするという生活をしているのだが、1年間だけとは言え日本で暮らしている今では、彼女の言う通り真逆だ。

 

『夏が楽しみだわ…………じゃあね、また連絡する。アンタも、たまには他の連中にも連絡してあげなさいよ?自分達で送り出したとは言え、皆アンタが居なくて寂しがってるんだから』

あいよ(Righto)

 

 そう言って通話を終えると、紅夜はスマホをしまう。そして今度こそR34のエンジンに火を入れ、我が家へ向けて走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、校舎内には穂乃果、海未、ことりの3人の姿があった。

 スクールアイドル部の設立を申請するため、生徒会室へ向かっているのだ。

 

「成る程。長門さんのお友達が、ダンスの動画を………」

「うん、すっごく上手だったの!何て言うか、動きが、こう………プロみたいにカッコよくて、皆楽しそうだったの!ダンスも曲の雰囲気に合ってたし!」

「へぇ~。その動画、ことりも見てみたかったなぁ~」

 

 生徒会室への道中、彼女等は穂乃果が見た紅夜の友人によるダンス動画の話をしていた。

 

 踊っていた3人が何者なのかは不明だが、穂乃果がプロ並みに上手いと騒いでいるのもあり、海未やことりも、それに興味を持っていた。

 

「そう言えば長門君、その動画見ながら気になる事を言ってたんだ。何か、『遂に完成させたんだな』とか、『動きも良く出来てる』とか」

 

 今思い出したようにそう言うと、穂乃果はスマホを取り出して紅夜が呟いていた曲のタイトルらしき単語を打ち込み、検索結果に出てきた曲を再生した。

 それはとある外国人バンドによる曲で、驚くべき事に、その曲を使ったダンス動画は何1つとして見つからず、『ダンス』と付け加えて検索しても結果は同じだった。

 つまり、あの3人が踊っていた際の振り付けは完全にオリジナルのものだったという事になる。そして、動画を見ながら紅夜が呟いていた言葉を照らし合わせた結果、彼女等は1つの結論に辿り着いた。

 

 

──あのダンス動画の製作には、紅夜も関わっていたのではないか………具体的には、彼が振り付けを考えたのではないか、と。

 

 

「もし長門君が振り付けを考えたとしたら、それって凄い事じゃない!?あんなカッコいい振り付けを、1から全部考えられるなんて!」

 

 興奮した様子で、穂乃果はそう言った。

 

 勿論、当時その場に居なかった海未やことりには、その振り付けがどのようなものだったのか分かる訳が無い。

 だが、彼女がこれ程までに興奮して言うのだから、余程凄いものだったのだろうと感じていた。

 

「部として成立したら、長門君を勧誘してみようかな?やっぱりダンスもするんだから、振り付けを考えたり、練習を見てくれる人も必要だし」

「……つまり、長門さんにマネージャーになってもらう、と?」

「そうそう!あんな凄いダンスを考えられるなら、やっぱり居てくれたら心強いじゃん!」

 

 元気に頷く穂乃果に内心では同意する海未とことりだったが、その表情は不安そうだった。

 

 確かに、スクールアイドルとして活動するにあたり、ダンスの振り付けを考えたりする人材は必要だ。それに、もし振り付けを考えたのが紅夜だとしたら、加わってくれれば心強い存在になるのは間違いない。

 しかし、現時点で彼女が言っていたダンス動画の振り付けを考えたのが紅夜だという証拠は何処にも無い。

 ただ、踊っていた3人の女性が彼の友人である事と、紅夜が彼女等のダンスにそれらしいコメントをつけていたという事しか分かっていないのだ。

 

「穂乃果の意見はもっともですが、未だ振り付けを考えたのが長門さんだと決まった訳ではありません。それに、振り付けを考えたのが長門さんだとしても、彼が引き受けてくれるかは分かりませんよ?」

「えぇっ、でもあんなコメント付けるのは、振り付けを考えるのに関わってないと出来ないよ?しかもあんな楽しそうに見てたんだから、引き受けてくれると思うんだけどなぁ~」

 

 そんなやり取りを交わしながら歩いていると、一行は生徒会室へ着く。

 

「まあ、長門君の事は取り敢えず置いといて、先ずは申請しないとね!」

 

 穂乃果がノックすると、中から返事が返される。

 

「失礼します!」

 

 威勢良くそう言ってドアを開け、生徒会室へと足を踏み入れる穂乃果。それに続き、海未とことりも入った。

 

「貴女達は……」

 

 彼女等が来るとは思わなかったのか、椅子に座って書類の確認作業をしていた絵里は目を丸くしていた。

 

「おや君達、生徒会室に何か用かな?」

 

 そんな彼女に代わって、希が声を掛ける。

 

「はい!アイドル部を設立したいので、申請書を持ってきました!」

 

 穂乃果が1枚のプリントを差し出す。それは新規部活動設立の申請書で、彼女等3人の名前が記入されていた。

 

 それを受け取った希は、絵里に申請書を渡す。

 一通り目を通すと、絵里は穂乃果達に目を向けて問い掛けた。

 

「何故、この時期に………それも2年生の貴女達がそんな事を?」

「それは、やってみたいと思ったからです。それに、私達がスクールアイドルとして人気になれば、生徒も集まると思って!」

 

 その言葉に、海未とことりも相槌を打つ。

 

「………そう、貴女達の言い分は分かったわ」

「……!じゃあ、認めてもらえますか!?」

 

 目を輝かせる穂乃果だが、絵里は首を横に振った。

 

「残念だけど、部活の設立には最低でも6人居なければならないの。コレでは先ず認められないわ」

 

 そう言って、申請書を突き返す絵里。

 

 意気揚々とやって来た矢先にぶち当たった部員数という名の壁にショックを受けながら、穂乃果は申請書を受け取った。

 

「ですが、6人未満の部活が幾つかある筈です」

「確かにそうだけど、設立時にはちゃんと6人以上居た筈よ。それにこの学校って、1度部活として成立したら後は何人になっても良いって決まりになってるから」

 

 海未が反論するものの、あっさりと返される。

 流石に学校の決まりだと言われてしまえば、何も言い返せなかった。

 だが、それだけでは終わらない。絵里は追い討ちとばかりに、こんな事を言い出したのだ。

 

「それに、たとえ6人集めたとしても、アイドル部の設立は認めないわ」

「えっ……?」

 

 そう言われた穂乃果は一瞬言葉を失うが、直ぐ様彼女に詰め寄った。

 

「どうして駄目なんですか!?しかも、部員が6人集まっても駄目だなんて!」

 

 穂乃果の疑問はもっともだった。

 何せ絵里は、『認める事が出来ない』と言ったのではなく、『認めない』と言ったのだ。

 それに、あろうことか部員を6人集めるというノルマを達成しても部活としての成立は認めないと言われたのだから、穂乃果が納得出来ないのは当然の事だった。

 

「そうです!部員を6人集めても認めてもらえないなんて、そんなの納得出来ません!」

 

 これには海未も声を上げた。

 ことりも2人と同じように、絵里を険しい表情で見ている。

 

「………スクールアイドルで廃校を阻止しようなんて、そんなの認められる訳が無いでしょう?」

 

 だが、そんな彼女等も、絵里に睨まれて怯む。

 3人が再び口を開く前に、絵里は言葉を続けた。

 

「部活動というのはね、生徒を集めるためだけにやるものではないの。そんな思い付きで始めたところで、上手くいくとは思えないわ」

「………ッ、そんなの──」

「それに廃校を阻止するという事は、この学校の、音ノ木坂学院という看板を背負う事と同じなのよ?スクールアイドルなんてお遊びに、そんな重大なものを任せる訳にはいかないの」

 

 自分達の考えを真っ向から否定する言葉に反論しようとする穂乃果だが、続けざまにそう言われた事で言い返せなくなる。

 

 そして絵里は、とどめの一言を放った。

 

「そんな無駄な事を考えてる暇があるなら、この残された時間を如何に有意義に過ごすかを考えなさい。それが、貴女達のやるべき事よ」

 

 そう言うと、絵里は話は終わりだとばかりに自分の仕事を再開する。

 穂乃果達は、そんな彼女が纏う雰囲気に追いやられるかのように生徒会室を後にすると、各々の鞄を回収して校舎を出た。

 

「そんなガッカリしないで。別に穂乃果ちゃんが悪い訳じゃないんだから」

 

 あれだけ言われたために落ち込んでいると思ったのか、ことりが慰めの言葉を掛ける。

 だが、その慰めの言葉も、何処と無く弱々しい。

 

「先程はあのように言っていましたが………生徒会長も、気持ちは分かってくれていると思います」

 

 海未はそう言うが、このまま部活として認められなければ、部室は貰えない。そして部室が貰えなければ、ダンスの練習は勿論、歌の練習をする事も出来ないのだ。

 

「ああ。これから一体、どうすれば……?」

 

 深刻な表情を浮かべ、今後どうすれば良いのかと悩むことり。

 その雰囲気に当てられて、海未も顔を俯ける。

 この3人でスクールアイドルを始めると決めたものの、出だしから盛大に躓いてしまっていた。

 

「……………」

 

 そんな中、穂乃果だけは違った。

 暫く桜を眺めていた彼女の青い瞳は、輝きを失ってはいなかったのだ。

 

「……やろうよ、スクールアイドル」

「「えっ……?」」

 

 彼女が放ったその言葉に、2人が思わず聞き返す。

 

「さっきはあんな事言われたけど………私、やっぱりスクールアイドルやりたいの!」

 

 海未達に向き直って、穂乃果は言う。

 どんなに否定されようと、無茶な事であろうと、やると決めたらやる。それが高坂穂乃果という人間なのだ。

 

「私はやる。やるったらやる!」

「「…………」」

 

 そう言われ、暫く呆気に取られていた海未とことりだったが、やがてフッと笑みを浮かべた。

 

「フフッ……穂乃果らしいですね」

「そうだよね………何時までもウジウジしてるだけじゃ、何も始まらないもんね!」

 

 元気を取り戻した2人は、穂乃果の手を握った。

 

「よーし、絶対にスクールアイドルやるぞー!」

「「おー!」」

 

 こうして、改めて決意を固める3人。そんな彼女等を、立ち並ぶ桜の木々だけが見守っていた。

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