ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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 やっと書けた~。


第34話~アウトローと不審者・後編~

「いやぁ~、落ち着くなぁ……」

 

 場所は変わり、此処は音ノ木坂学院の駐車場。その一角に置かれた車の中では、座席を限界まで後ろに倒して寛ぐ紅夜の姿があった。

 彼が何をしているのかというと、車のルーフやフロントガラスを叩く雨の音を聞いているのだ。

 

「(音楽室や図書室に行く気分でもなかったから聞いてみたが………案外良いモンだな、こうして雨音を聞くってのは。ベンチュラに帰ったら、レナ達誘って雨音鑑賞会でもやってみるかな)」

 

 余談ではあるが、彼の住んでいるベンチュラ・ベイでは雨の日が非常に多く、今日のような雨音はほぼ毎日聞き放題と言っても過言ではない。

 更にこの都市には、使われていない排水路や北部にあるクレセント山脈頂上の広場等、大勢で集まれる場所がかなりある。

 レースの無い日にでも、何処かに集まって雨音を聞きながらゆったり過ごすというのも悪くないだろう。

 

「まあ、彼奴等が興味を持てばの話だがな」

 

 そう考えながらのんびり過ごしていた紅夜だったが、それはドアポケットに入れていたスマホがメッセージの着信を知らせてきた事で妨害される。

 

「誰だよ、人がリラックスしてる時に……って、綾か」

 

 画面には、綾から送られてきたメッセージが表示されている。内容は、2人で外食しようというお誘いだった。既に豪希や深雪にも話は通しているらしい。

 

「外食か……そういや、学校帰りに外食ってした事無かったな」

 

 日本に居た頃もそうだが、アメリカに移ってからも学校が終われば一目散に帰宅して家の仕事を手伝い、車を手に入れてからはひたすら走り回ったりレースに興じていた彼にとって、学校帰りの外食というのは何気に初めての経験だった。

 

「親父達に話付けてるってんなら、良いか」

 

 紅夜が返事を送ると、相手も待っていたのか直ぐにメッセージが返される。

 

「『学校まで拾いに来て』ってか、了解っと……あっ、そうだ。おっちゃんにも連絡しとかなきゃな」

 

 そうして返事と連絡を終えた紅夜は、座席を起こして車のエンジンを始動させ、駐車場を後にする。そして玄関前を通り過ぎようとしたところで、見慣れた集団が目に留まった。穂乃果達μ'sだ。

 何時もよりも早い帰りだが、紅夜にはその理由が分かっていた。

 

「(まぁ、校内での練習場所が屋上、つまりは外だからな。この天気じゃ練習なんて出来る訳ねぇか)」

 

 すると、相手も気づいたようで此方に近づいてくる。

 

「よう、お前等も今帰りか」

「ええ。こんな天気では練習のしようがありませんからね……」

 

 そう苦笑混じりに答える海未の傍らでは、穂乃果や凛が紅夜の乗る車をまじまじと見ていた。

 ことりや花陽も違和感を覚えているようで、首を傾げている。

 すると、そんな彼女等の疑問を代弁するかのように真姫が口を開いた。

 

「先輩、この前花陽と乗ってきてた青いスポーツカーはどうしたの?」

「ん?Rの事か?彼奴なら今入院中でな、コレは知人に貸してもらってるんだ」

 

 紅夜はそう答えた。

 

 そう。今回彼は、R34には乗っていない。今の彼が乗っているのは、それより遥かに大きな、素人が見れば小型のバスと見間違えるような車だった。

 Chevrolet Express。エメラリアのCamaroと同じChevrolet社で開発されたフルサイズバンで、日本で使われる商用バンのようなものだ。

 とは言え、この車はアメリカの車というのもあってか、日本の商用バンより一回り大きいのだが。

 

「入院中って……まさか紅夜君の車、壊れちゃったの?」

 

 心配そうに訊ねることりだが、紅夜は手をヒラヒラと振った。

 

「いや、入院中とは言ったがただの整備だ。別に故障した訳じゃないよ」

 

 その言葉に2年生組は安堵の溜め息をつく。

 

「それにしても、まさか整備に出しているとは気づきませんでしたよ」

「そりゃそうだろ。ここ最近、お前等と学校の外で会う事は無かったし、帰りも会わなかったからな」

 

 海未にそう答えた紅夜は、空を見上げて苦笑を浮かべた。

 

「(まぁ、本来は昨日には終わってる筈だったんだがな……)」

 

 実は、以前龍一のショップを訪れた後、『そろそろRの整備をしたらどうか』と彼から連絡が入り、紅夜もそれを承諾。1週間前に預けており、予定では昨日取りに行く事になっていたのだが、預けている間に予想外の来客があったらしく、彼のR34の整備が遅れてしまったのだ。

 とは言え、彼も商売をやっているために文句を言うつもりは無い。寧ろ、遅れをたった1日に抑えてくれただけでも御の字というものだ。

 

「という事は、直ぐ戻ってくるんだよね?紅夜君の車!」

「ああ、用事が終わったら取りに行く予定だ」

「用事?何かあるの?」

 

 すると、ことりが首を傾げる。

 

「実は、さっき妹から連絡が来て、そのまま外食する事になってな。これから拾いに行くところなんだ」

「妹さんって……もしかして、この前のライブに来てくれた?」

「ああ、その中に黄緑色の髪の女が居たろ?彼奴がそうだ」

 

 そう答えると、紅夜はExpressのギアを入れる。

 

「んじゃ、あまり待たせる訳にもいかないし、そろそろ行くよ。雨降ってるから、帰り気を付けろよ」

 

 そうして車を動かそうとした時、穂乃果が待ったを掛ける。

 

「ねぇ紅夜君。因みになんだけど、その外食って何処に行くとか決めてるの?」

「……?いや、特には決めてないな。ただ外食しようって言われただけだが……」

 

 そこまで言ったところで、穂乃果が何かを期待するような眼差しを向けている事に気づく紅夜。

 何と無く嫌な予感がしながらも、その質問の意図を訊ねた。

 

「……何故、そんな事を聞くんだ?」

「い、いやぁ~………別に、変な意味は無いんだよ?ただ、特に決まってないなら、私達とも一緒にどうかな~って……ほ、ホラ!私達もこれからご飯食べに行くところだったからさ!」

 

 両手の人差し指をツンツンと合わせ、目線を泳がせながら答える穂乃果。

 何かを隠しているような言い方をする彼女に、紅夜は本音を問い質す。

 

「……んで、本音は?」

「車も大きいしちょうど良いから、ついでに私達も乗せてってくれないかな~って……あ!」

「結局それか……」

 

 紅夜はそう言って、盛大に溜め息をつく。

 

「本当に、うちの穂乃果がすみません……」

 

 そんな彼に深々と頭を下げる海未。その姿は、さながら穂乃果の第2の母親だ。

 

「で、でもでも!一緒に食べに行きたいなってのは本当だよ!?ホラ、私達って放課後とか休日に一緒に遊んだり、ご飯食べに行ったりした事って全く無いでしょ?」

「確かに、ことり達が学校以外で一緒に居たのって、ライブの練習くらいだったよね」

「……ああ、確かにそうだな」

 

 取って付けたような理由だが、意外にも紅夜は納得したように頷いた。

 と言うのも、穂乃果の言う通り、新歓ライブが終わってマネージャーの任を外れてからというもの、紅夜と穂乃果達が放課後や休日につるむ事は1度も無かった。 

 一応、これまで何度か誘われる事はあったものの、全て理由をつけて断っていたのだ。

 

「でしょ?せっかくの機会だし、皆でご飯食べて親睦深めようよぉ~」

 

 そう言いながら、まるで玩具をねだる子供のように纏わり付いてくる穂乃果。

 海未はそんな彼女を宥めようとしているが、心の何処かでは紅夜が受けてくれる事を望んでいるのか、時折チラリと視線を向けてくる。

 

「ねぇ、長門先輩。凛達と行こうよ~」

 

 すると、中々反応しない紅夜に業を煮やしたのか凛まで参戦してきた。

 花陽も口にこそしないが、此方をじっと見つめている事から心情は穂乃果や凛と同じであると見てほぼ間違いない。

 

「…………」

 

 真姫は興味無さそうに背を向けているものの、視線だけは此方を向いている。

 元々プライドが高く意地っ張りなのもあり、『来てほしい』とは言いにくいのだろう。

 

「(どうしたモンかなぁ……綾も待ってるだろうし、さっさと行きたいんだが)」

 

 紅夜としてはさっさと断って綾の元に向かいたいところだが、今回は相手の数が多過ぎる。

 おまけに、以前までは穂乃果が纏わりついても引き剥がしてくれた海未も、今回はいまいち弱く、穂乃果を止められていない。

 

「ねぇ、紅夜君」

 

 どう断ったものかと考えていると、ことりが声を掛けてくる。そちらへ視線を向けると、不安そうに眉を下げた彼女と目が合う。

 

「駄目、かな……?ことりも、もっと紅夜君と仲良くなりたいなって……」

「…………」

 

 流石にこう言われると、断るに断れなかった。

 明らかに無料のタクシー扱いしようとしてくるのなら、断って追い払ったところで何の罪悪感も無いが、あくまでも善意から誘いを掛けてきているとあれば、そうはいかない。

 

「はぁ~……」

 

 紅夜は溜息をつき、スマホを操作して綾に電話を掛ける。すると、呼出し音が鳴り始めた瞬間、彼女の声が聞こえてきた。

 

『もしもし、どうしたの兄様?』

「(いや出るの早っ!?前々から思ってたけど俺が電話した時の反応早すぎだろ!)」

 

 あまりの反応の速さに驚きながら、紅夜は用件を伝える。

 

「あ、ああ。いきなりで悪いんだけどさ……外食のメンバー増えても良いかな?」

『何よ、そんな事?別に良いわよ。どうせ瑠璃とか達哉達辺りでも来るんでしょ?』

 

 どうやら追加メンバーが幼馴染み達だと思ってるのか、拍子抜けしたように答える綾。

 だが、紅夜は首を横に振る。

 

「いや、今回はそっちじゃなくてな……μ'sの連中なんだ」

『え?μ'sって……あの時ライブやってた?』

「ああ、ソイツ等だよ。学校出ようとしたら偶然会ってな、お前と飯食う事話したら自分達も一緒にって」

『……成る程ね』

 

 綾はそう言うと、暫くの沈黙の後に答えを出した。

 

『まぁ、私は構わないわ……ホントは2人きりが良かったけど、兄様にだって付き合いもあるし』

「はは……じゃあ、今度は2人で食べに行こう」

『ええ、約束よ』

 

 その約束に機嫌を良くしたのか、最後は嬉しそうに答える。

 その後、行き先を決めた紅夜は通話を切り、成り行きを見守っていたμ'sの面々へ向き直った。

 

「行き先は近くのマ○クだ。それで文句無いなら乗れ」

「……!うんっ!」

「やったぁ!」

 

 すると、メンバーの表情がパッと明るくなる。

 その後、6人が乗り込んだのを確認した紅夜は車を発進させ、綾の元へと向かう。

 

 それから走らせること数分、彼等は綾と合流した。

 

「よう、待たせて悪いな」

「別に良いわよ。友達と話してたから大して待った気もしてないし」

 

 助手席に乗り込んだ綾はそう答え、後ろに座る飛び入り参加のゲスト達に振り向いた。

 

「初めまして、長門綾です。よろしく」

 

 人当たりの良さそうな笑みと共に名乗る綾に、他の面々も挨拶と自己紹介を返す。

 

 その後、ガールズトークに時折交ざりながらも更に車を走らせ、一行は遂に目的地へ到着した。

 

 店内に入ると各々注文を済ませて席につき、食べ始める。

 

「それにしても、この季節ってホント鬱陶しいわよね。空気はジメジメして過ごしにくいし、雨も増えるから外出たら靴に染み込んで靴下グショグショになるから足元が気持ち悪くなるし」

「そうだな……まぁ、俺は大して気にしないが」

「兄様は車があるから平気でいられるのよ。学生時代も登下校は車使ってたんでしょ?」

「まぁな」

 

 長門兄妹がそんな話を交わす中、穂乃果は顰めっ面でポテトを貪り食っていた。

 

「……ん?どうした高坂、随分機嫌が悪いみたいだな」

 

 すると、それに気づいた紅夜が声を掛ける。

 

「すみません、紅夜さん。今日も雨で練習出来なかったもので……穂乃果、気持ちは分かりますがストレスを食欲にぶつけるのは体に悪いですよ」

 

 その様子を見かねた海未が宥めるものの、穂乃果の機嫌は直りそうにない。

 

「雨、なんで止まないの!このままじゃ何時まで経っても練習出来ないじゃん!」

「わ、私にそんな事言われても……」

「全くもう、天気の神様も少しは空気読んでほしいよ。散々お祈りしてるのに全然晴れにしてくれないしさぁ」

 

 そう愚痴を溢しながらポテトへ手を伸ばす穂乃果。だが、入れ物には1本も入っていなかった。

 

「無くなってる……海未ちゃん、私のポテト食べたでしょ!」

「自分で食べた分も忘れたのですか!?」

 

 そう返した海未は、呆れながら自らのポテトへ手を伸ばす。

 だが……

 

「あれ?無い……」

 

 彼女のポテトも空になっていた。

 

「穂乃果こそ、私のポテト勝手に食べてるじゃないですか!」

「私じゃないよ!」

「止めんか、公共の場でみっともない」

 

 喧嘩を始める2人に呆れた紅夜は、立ち上がってカウンターへと歩いていく。そして5分もしない内に戻ってくると、各々のトレイにポテトを置いた。 

 

「ホラ。同じサイズの買ってきてやったから、これで手打ちにしろ」

 

 流石にそこまでされて喧嘩を続ける訳にもいかず、2人は礼を言ってポテトを摘まむ。

 

「に、兄様。そんな事して良いの?日本(こっち)来てから収入とか全然無いのに」

「なぁに、高々ポテト2個買ったくらいで破綻する程貧乏じゃないさ。それに、いざとなったらおっちゃんの所で小遣い稼ぎすりゃ済むから、その辺は心配無いよ」

 

 そう言って綾の頭を優しく撫でてやる紅夜。すると、綾も気持ちよさそうに目を細め、体を擦り付けて甘え始めた。

 

「何か先輩、凛達と話してる時と比べたら全然態度が違うね」

「ま、まぁ2人は家族で兄妹なんだし、接し方に差が出るのは仕方無いんじゃないかな……?」

 

 不満げに言う凛を宥める花陽ではあるが、チラリと兄妹に向けられる視線は、何処と無く羨ましそうだった。

 

「それはそれとして、これからどうするの?この雨暫く続きそうだし……このままじゃ、梅雨の間は殆んど練習出来なくなっちゃうわよ」

 

 真姫が改めて問題を投げ掛ける。

 

「そうですね……やはり、どうにかして練習場所を確保しないと何も出来ませんし……」

「せめて、部室があれば良いんだけどね……」

 

 どうしたものかと頭を悩ませる海未とことり。そんな彼女等に紅夜が口を開いた。

 

「お前等、部活申請はしないのか?」

「4月頃に1回申請しに行ったんだけど、その時は人数が足りないからダメって断られちゃって……」

「じゃあ今はどうなの?そっちの学校じゃ何人必要なのかは知らないけど、6人も居るなら流石に申請出来るんじゃないの?別に野球やサッカーやる訳じゃないんだし」

 

 すると、2年生が『あっ』と声を漏らす。

 

「そう言えば、設立に必要な部員数って……」

「確か、6人だったような……?」

 

 そうして徐々に、穂乃果の元に視線が集まる。

 

「……おい高坂、まさかとは思うが……」

 

 すると暫くの沈黙の後、穂乃果が声を上げた。

 

「そっか、もう申請出来るんだ!」

「「「今まで気づかなかったのかよ!?」」」

 

 堪らずツッコミを入れる紅夜と綾。だが、何故か彼等が座っている席の反対側からもツッコミが入り、不思議そうにそちらを向くも、ツッコミを入れたと思しき人物は見つけられず、やたら目立つピンクのソフトクリームを模した帽子が見えるだけだった。

 

 そうこうしている内に食べ終わり、帰る前に化粧室へ向かった紅夜と綾だか、先に出てきた紅夜がふと穂乃果達の席へと視線を向けると、そこでは奇妙な光景が広がっていた。

 先程のソフトクリームを模した帽子にサングラスという派手な格好をした少女が、穂乃果に腕を掴まれていたのだ。

 何事かと聞き耳を立てると、どうやらこの少女が先程から穂乃果や海未のポテトを盗んでいた犯人らしく、弁償しろと捲し立てる穂乃果を挑発していた。

 

「良い!?アンタ達のやってる事はアイドルに対する冒涜、恥よ!さっさと辞める事ね!」

 

 そして最後にはそう吐き捨てると、逃げるように店を飛び出していった。

 

「…………」

 

 それを呆然と見ていた紅夜だったが、ある事に気づいた。

 

「(あれ?よく見たら彼奴、今朝絡んできたガキじゃねぇか。態々こんな所にまで追ってきて人のポテト盗って嫌がらせするとは……ご苦労なこった)」

 

 そう内心呟きながら、紅夜は穂乃果達のポテトを買い直した際に受け取ったレシートを取り出す。

 

「(……まっ、学校同じって言ってたし、今度奴に会ったらコイツの代金請求してやるか。大した額じゃないし被害者は俺じゃないとは言え、泥棒は泥棒だ。彼奴等みてぇに血の海に沈められるよかマシだろ)」

「兄様、どうしたの?」

 

 不意に掛けられた声に振り向くと、そこには遅れて出てきた綾が立っていた。

 

「いや、何でもないよ」

 

 そう言って席に戻った紅夜は、未だご立腹の穂乃果を宥めながら店を後にする。

 そして、彼女等と別れて世田谷へ戻ると、龍一のショップで愛車のR34を迎え、自宅へと戻るのだった。




 昔サンシャインの映画公開記念みたいに、YouTubeでアニメの再放送とかやってくれないかな……?
 今やってる無印のはアーカイブ残らないし……
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