ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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 皆さん、お久し振りです。


第35話~アウトローの生徒会体験~

「それじゃあ、今日はここまで!皆気を付けて帰れよ~」

 

 翌日。龍治のそんな一言と共に帰りのHRが終わると、生徒達は各々の席を立ち、帰宅する者や部活へ向かう者、教室に残って友人とお喋りを始める者に分かれる。

 

「ん~、終わった終わった……さて、今日は何をしようかな~っと」

 

 紅夜も席を立ち、今日の暇潰しプランを考えながら教室を後にする。

 

「(校内探検はそろそろ飽きてきたし、音楽室か図書館にでも行こうかな……でも、アルパカ達(彼奴等)に会うのも捨てがたいし……迷うなぁ~)」

「長門く~ん!」

 

 すると、後ろから声を掛けられる。声の主の方へと視線を向けると、絵里が手を振りながら此方へ駆けてくるのが見えた。

 

「良かった……未だ、帰ってなかったのね」

 

 駆け寄ってくると、絵里は若干息を切らせながら言う。

 

「ああ、今行くと目立つからな」

 

 そんな彼の返答に『何を今更?』と首を傾げる絵里だったが、彼が車のキーを見せると納得したように頷いた。

 

 紅夜の愛車であるR34はスポーツカー、それも外装や中身にもかなりの手を加えた、所謂チューンドカーだ。

 駐車場に停めた時も一際異彩を放っているような車が下校中の生徒の集団の中に現れたらどうなるかなど、火を見るより明らかだ。

 

「それより、俺に何の用だ?態々2年のフロアまで来たって事は、何かあるんだろ?」

 

 余談だが、この学校では学年を追うごとにフロアが1つずつ下がるようになっている。1年生は4階、2年生になると3階、そして3年生で2階になるという形だ。

 

「ええ、貴方に話があってね……今、時間あるかしら?」

「……?ああ、ちょうど何して時間を潰すか考えてたところだからな。別に構わん」

「それは良かった。じゃあ、ついてきて」

 

 そうして歩き出した絵里に続く紅夜。彼が連れてこられたのは、生徒会室だった。

 

「あっ、えりちお帰り~。長門君連れてこれたんやね」

 

 2人が部屋に入ると、書類整理をしていた希が出迎える。絵里に声を掛けた彼女は次に紅夜へと視線を向け、軽く手を降った。

 

「ええ、ただいま希」

 

 そう返した絵里は空いた席を紅夜に勧め、自分も座る。

 

「それで話なのだけど……長門君、生徒会の仕事を体験してみる気は無い?」

「……体験?お前等の仕事をか?」

「ええ。貴方って、一応は試験生として音ノ木坂(此所)に居る訳でしょう?なら、この学校の生徒会の活動についても知ってもらおうと思ってね」

「ふむ……」

 

 すると、希も口を開いた。

 

「別に悪い話やないと思うで?長門君としてはレポートに書くネタが出来るし、ウチ等としては、第三者から見た今の生徒会について知れるから、ウチ等じゃ気づかないような課題を見つけて今後に活かせるかもしれん。お互いWin-Winやろ?」

「……確かに、そうだな」

 

 これがただの勧誘なら断るところだが、『試験生』という単語を出されてしまうと断る訳にはいかない。

 紅夜はその申し出を受ける事に決めた。

 

「それじゃ決まりやな!じゃあ何時からにしようか?長門君にも色々予定あるやろうから、明日からでも──」

「別に今からでも構わんよ、ちょうど放課後の暇潰しが決まらなくて困ってたところだからな……それで、先ずは何をすれば良い?」

 

 希の言葉を遮るようにして、早速仕事を求める紅夜。

 絵里と希は顔を見合わせると微笑を浮かべ、仕事を割り振った。

 

 

 

 

 

「……っと、そろそろ休憩にしましょうか」

 

 あれから1時間半程経った頃、絵里の一言で一行は作業を中断する。

 

「ん~!今日は長門君のお陰で、かなり作業進んだなぁ。えりち、中々ええ掘り出し物見つけてきたんとちゃう?」

 

 ペンを置いた希が、大きく体を伸ばしながらそう言った。

 

「ええ、こんなの入ったばかり頃の私に見せたら腰を抜かすでしょうね。悔しいけど、当時の私でもここまでは出来なかっただろうし」

 

 その意見に異論は無いのか、絵里もあっさり頷く。

 

 そんな彼女等の会話から分かるように、紅夜は2人の想像を遥かに上回る働きを見せていた。

 始めたばかりの頃は質問も多かったが、飲み込みが早いのか教えた事は瞬時に吸収し、30分もしない内に黙々と書類整理やデータの打ち込みを片付けていくようになっていた。その姿は、まるで最初から生徒会に所属していたのではないかと錯覚してしまう程のものだった。

 

「それか、自信失くして活動初日で辞めちゃうとか?」

「流石にそこまではしないわよ……」

 

 悪戯っぽく笑いながら言う希にそう返した絵里は、紅夜に話を振った。

 

「それにしても長門君、本当に覚えるの早かったわね。こういう事務系の仕事って、よくやってたりするの?それとも、学生時代に生徒会やってたとか?」

「……いや、こういうのは1度も無い。向こう(アメリカ)で働いてる時も専ら肉体労働だからな」

 

 そんな彼の返答に意外だとばかりに目を丸くする絵里。

 

「それじゃ本当にまっさらな初心者なの?どんな仕事してたのかは知らないけど、事務作業の1つや2つくらいはあったんじゃ?」

 

 そうして質問を重ねる絵里だが、紅夜は首を横に振った。

 基本的に、紅夜やアレクサンドラは車の修理やチューニングに徹しており、書類整理についてはブライアンが行っていたのだ。

 とは言え全くやらないという訳ではなく、あまりにも書類が多い場合は彼等も手伝ってはいたものの、誰でもできるような簡単な作業である上に回数も片手で数える程度であるため、実質未経験と変わりなかったのだ。

 

「ところで、長門君ってどんなお仕事してたん?あんなスポーツカー乗り回してるんやから、やっぱり車関係?」

 

 そこへ、希も話に加わってきた。

 

「ああ、修理工場兼チューニングショップだ。ベンチュラの連中は改造ジャンキーが多いからな。かくいう俺もその1人だし、他の町にもそういうのはわんさか居るぞ」

 

 更に言えば、毎晩爆音や煙を上げながら町中を200㎞を優に超える速度で走り回り、そこで警察との鬼ごっこに興じているストリートレーサーなのだが、その部分については伏せておいた。

 

「か、改造ジャンキーって……」

 

 流石に大袈裟なのではないかと内心呟く絵里だが、紅夜は言葉を続ける。

 

「言っておくが嘘じゃないし、話を盛ってる訳でもないぞ?向こうじゃスポーツカーでもノーマルだったらレースゲームに出てくる一般車(アザーカー)と変わらないからな。皆何かしらの改造を施してるよ」

「「………………」」

 

 自分達の中でのスポーツカーへのイメージが音を立てて崩壊し、思わず言葉を失う絵里と希。

 

「ち、因みに聞くけど……長門君が乗ってる車は何れくらい改造してるの?取り敢えず見た目もそれなりにやってそうだけど、中身は……?」

「ん?俺のRか?確かノーマルで280馬力だったのを1026馬力まで上げて、最高速度も370㎞辺りまで出せるようになってた筈だ」

「…………」

「改造ジャンキー、ここに極まれりやな」

 

 またもや言葉を失う絵里の隣で、苦笑混じりに希が言う。

 

 しかし当の紅夜からすれば、馬力だけなら自分のマシンでもまだまだと言ったところだった。何故なら、『上には上がある』という言葉があるように、それを上回るハイパワーマシンを幾つも見てきているからだ。

 

 ノーマルの時点で自分のR34を超える馬力や速度を出せる瑠璃のAgeraや英雄のCentodieciもそうだが、アレクサンドラの愛車の1台である65年式のFord MustangやエメラリアのCamaroは、元々それなりに馬力があったところを更なる改造を施された事により、1200馬力オーバー、つまり彼のR34より200馬力も上回るモンスターマシンへと変貌を遂げているのだ。

 当然、他のベンチュラ・ベイやフォーチュンバレーの走り屋達もそれなりの改造をしており、今の彼等としては、1000馬力だの時速300㎞だの、そんなものは出せて当たり前という認識だった。

 

「……取り敢えず、うちの学校にはとんでもない車が出入りしていたって事ね」

「ついでにその持ち主も相当イカれてる、と」

「いや、俺からすればこれくらい当たり前だと思うんだが……」

「「んな訳あるか!!」」

 

 そうボソボソと呟いた紅夜に、2人からの盛大なツッコミが炸裂した。

 

 

 

 

 その後、再び作業を開始しようとする3人だったが、それは突然聞こえてきたノックの音に遮られる。

 

「やれやれ、せっかく再開しようとしてたところなのに……」

「まぁまぁ、コレもよくある事よ……どうぞ」

 

 出鼻を挫かれた紅夜を宥めた絵里が、ドアの向こうに居る人物に入室を促す。

 

「何だ、お前等だったのか」

「こ、紅夜君!?」

 

 部屋に入ってきたのは、穂乃果、海未、ことりの3人だった。

 紅夜が居るとは思っていなかったようで、彼女等は紅夜の姿を視界に捉えると、驚愕に目を見開いていた。

 

「ど、どうして紅夜さんが此所に……!?」

「まさか、生徒会に入ったの?」

 

 恐る恐る訊ねてくる2人に答えようとする紅夜だが、それを遮るように希が答えた。

 

「いやいや、長門君には体験で来てもらってるだけやで」

「体験、ですか……?」

「そう。ホラ、長門君って一応試験生として此所に居る訳やろ?せやから、試験生の仕事の一環として、この学校の生徒会の活動についても知ってもらおうって話になったんよ」

 

 その返答を受けた穂乃果達は、安堵の溜め息をつく。

 

「随分気に入られているみたいね、長門君?」

「からかうなよ、絢瀬」

 

 そう言い返した紅夜は小さく溜め息をつき、穂乃果達に此所へ来た理由を訊ねる。

 と言っても、昨日の一件もあるためにある程度の想像はついているのだが。

 

「そんな事より、お前等は何しに来たんだ?」

「あ、そうだった!」

 

 穂乃果は鞄から1枚の書類を取り出すと、絵里に差し出した。

 

「コレは……部活動設立の申請書ね」

「はい!」

「以前仰っていたように、部員を6人確保出来ましたので、改めて申請をさせていただきたいのです」

「…………」

 

 暫く書類を見ていた絵里は、何時の間にか近くに移動して書類を覗き見ていた紅夜に視線を向ける。

 口にこそしないが、この申請書に書かれているのが事実かどうか確認したがっているのだろう。

 

「ああ、そこに書いてあるのは全部事実だ。一応俺も関わってるから、内容については保証する」

「そう……」

 

 そう言って、再び書類へ視線を戻す絵里。

 

「じゃあ、認めてもらえますよね!?」

 

 紅夜からの証言を得られた事もあり、穂乃果は声高に言う。

 ことりや海未も、期待の眼差しを向けていた。

 

「(まぁ、見たところ書類に不備は無かったし、幾ら絢瀬がスクールアイドルを良く思っていなくても、正規の手順踏んで申請に来てるんだから、断るような真似はしないだろ)」

 

 そうして席に戻り、再び書類の整理を始める紅夜。

 

「…………」

 

 暫く申請書を読んでいた絵里だったが、やがてそれを机に置き、口を開く。そして彼女が発した言葉は……

 

 

 

「残念だけど、認められないわ」

「「「ええっ!?」」」

「……何?」

 

 希以外の面々の予想を、大きく裏切るものであった。




 今回は今までより少し短くなりました。
 1話に纏めるのも良かったんですがね……
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