ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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第42話~女神達のリーダー決定戦~

 紅夜達がダンスゲームで越えられない壁を作っていた頃、μ's一行は秋葉原のとあるカラオケに来ていた。

 

「あの、にこ先輩?どうして私達はカラオケに来ているのでしょうか……?」

「そんなの決まってるでしょ?歌とダンスで決着をつけるためよ!」

 

 戸惑った様子で疑問を投げ掛ける海未に、にこが答える。

 

「皆で得点を競うって事かにゃ?」

「そういう事!一番歌とダンスが上手い者がセンターになる……どう?これなら文句無いでしょ?」

 

 何とも分かりやすい決着のつけ方である。

 

「ですが、私カラオケは……」

「私も、あまり歌う気はしないわね」

 

 経験があまり無いのか気乗りしない様子の海未の隣では、真姫がどうでも良さそうにしていた。

 

「あら、そう?じゃあ歌わなくて結構。リーダーの権利が消失するだけだから」

 

 そう言うと、にこは隅に座ってポケットからメモ帳を取り出した。

 

「(こんな事もあろうかと、高得点を取りやすい曲は既にピックアップ済み。これなら勝負の結果なんて火を見るより明らかね……)」

 

 そして、いざ始めようと振り向いた時には、既にテーブルにポテトやドリンクが並べられており、穂乃果達は和気藹々とお喋りに興じていた。

 

「アンタ等緊張感無さすぎ!てか何時の間に注文してたのよそれ!?」

 

 その後、何だかんだで全員が1曲ずつ歌い、その得点をことりがメモしていた。

 

 結果は以下の通りだ。

 

 

穂乃果 93点

ことり 92点

海未 94点

花陽 96点

凛 90点

真姫 97点

にこ 93点

 

 

 にこもそうだが、穂乃果達は日頃の練習の成果もあってか全員が90点以上を叩き出していた。僅かに差はあるものの、ほぼ誤差の範囲である。

 

「こ、コイツ等、化け物か……?」

 

 予想外の結果に、にこはドン引きした様子で呟いた。

 

 

 次に一行がやって来たのは、ゲームセンター。

 

「さあ、次は何れだけダンスが上手いかを競うわよ!今回使うのはこのゲームの最高難易度、『Apocalypse Mode Extra』!さっきのカラオケみたいに簡単に出来るとは思わないことね!」

 

 筐体の隣に立って宣言するにこだが、少し離れた場所では穂乃果やことり、そして凛がクレーンゲームに興じていた。

 

「だからちょっとは緊張感持てっつってんでしょうが!しかも然り気無く景品獲ってるし!」

「え~?でも凛、運動は得意だけどこういうダンスゲームはやった事無いにゃ~」

「ええい、言い訳無用!ホラ、ウダウダ言ってないでさっさとやる!」

 

 3人を筐体の方へ引き摺りながら、にこはまたしても暗い笑みを浮かべていた。

 

「(フフン、今までダンスの練習を重ねてきたとしても、ド素人が簡単にクリアなんて出来る訳無いわ。何せ、この『Apocalypse Mode Extra』は他のどんなダンスゲームよりも難しくて、今までSに辿り着けた者は殆んど居ないなんて言われてるんだから)」

 

 だが、そんな彼女の企みはあえなく崩れ去る事になった。何故なら、自信無さげだった凛がAAを叩き出したからだ。

 

「何か出来ちゃった!」

「……マジか」

 

 その後は穂乃果達も順番にプレイしていき、最終的には次のような結果となった。

 

 

穂乃果 A

ことり B

海未 A

花陽 C

真姫 B

凛 AA

にこ A

 

 

 今回の難易度から考えれば、十分な高ランクである。

 

「あ~あ、それでも凛はランク外か……何か悔しいにゃ」

 

 その後、ゲーム画面に表示される店内ランキングを見た凛は、自分がランキングに載っていない事を残念がっていた。

 

「仕方無いよ。こういうゲームじゃよくある事だし」

「確かにそうだよね。ホラ、あれ見てよ」

 

 そう言って穂乃果が指差したのは、有名な太鼓ゲーム。

 そこでは2人の若い男性がプレイしているのだが、そのバチの動きから明らかに難易度の高い曲を選んだ事が分かる。

 しかも、見る限りノーミスだった。

 

「あのゲームは大抵のゲームセンターに置いてありますからね。きっと、ゲームセンターに行った際には何度もやっていたのでしょう」

 

 海未がそう言った。

 一方で、ことりは画面に映るランキングをじっと見ていた。

 

「それにしても、この人達凄いね。全員がランクS以上だよ」

「しかもトップはSSS……相当やり込んだか、元からダンスが得意な人がやったのね」

 

 すると、他の面々も改めてゲーム画面を見つめる。

 

「確かに、凄いね」

「実はプロのダンサーとかがやってたりして!」

 

 穂乃果や凛がそう言う中、花陽は画面を見つめながら口をあんぐりと開けていた。

 

「こ、こここ……コレは……!」

「花陽、アンタも気づいたようね」

「え?どうしたの2人共?」

 

 2人の尋常ではない様子に首を傾げる穂乃果。そんな彼女に、にこは答えた。

 

「この人達の名前、よく見てみなさい」

「名前って言ったって……コレ、名前って言えるのかな?」

「車のナンバーのようですが……」

「それです!」

 

 そこで、花陽が声を上げた。

 

「このナンバーを見て確信しました………間違いなく、BLITZ BULLETの人達です!」

「……?それって、前に言ってた人達だよね?音楽系のWeTuberグループで、しかも紅夜君の幼馴染みだったって……」

「そうです、そうです!まさか、あの人達もやってたなんて……」

「しかもこの日付、今日よ」

 

 真姫が各欄の右端に表示されている日付を指差して言った。

 

「あぁ、何て事でしょう……もう少し来るのが早ければ、BLITZ BULLETの人達に会えたかもしれないのに!」

「……あんな話し合いなんてせず、もっと早くに此所来ておけば良かったわ」

 

 そう言って、花陽とにこは暫く項垂れていた。

 

 

 

 それから数分後、漸く2人も落ち着きを取り戻したが、未だに決着はつかないままだ。

 そこでにこが次に提案したのが……

 

「……オーラ、ですか?」

「そう!アイドルとして、最も重要なものと言っても過言じゃないわ!」

 

 そう、オーラだった。

 

「歌は下手くそ、ダンスも大して上手い訳じゃない。なのに何故か人が集まってくる……それはすなわちオーラ!人を惹き付ける魅力があるって事よ!」

「そ、それ凄く分かります!何故か放っておけなくなっちゃうんですよね!」

 

 同じアイドル好きの花陽が食いついた。

 

「でも、そんなものどうやって競うのですか?先程のカラオケやダンスゲームみたいに、数値やランクに出るものでもありませんし、競いようが無いのでは……?」

「それなら問題無いわ、ちゃんと準備も済ませてるから」

 

 そう言ってにこが取り出したのは、μ'sの宣伝チラシだった。

 彼女は各々に同じ枚数ずつ配って言った。

 

「オーラがあれば、黙ってても勝手に人が寄ってくるもの。今から1時間、その間に最も多く配った人が、オーラがあるって事よ!」

 

 少々強引な理由ではあるものの、他に手段がある訳でもない。

 それに勝負とは言え、チラシ配りならμ'sの宣伝にもなるために断る理由も無く、メンバーは道行く人々にチラシを配り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、紅夜は瑠璃達幼馴染み5人と共に秋葉原を歩き回っているところだった。

 

「いやぁ~。やっぱ観光と言ったらアキバに限るぜ!」

 

 オタクでもある大河は、体を伸ばしながら嬉しそうに言った。

 以前は紅夜や瑠璃といったように個人と歩き回っていたが、こうして幼馴染みグループ全員と歩けるのが嬉しかったのだ。

 

「♪~」

「綾ちゃんは相変わらず、紅夜君にベッタリだね」

 

 上機嫌で紅夜の腕に抱きついている綾を微笑ましそうに見ながら雅がそう言うと、蓮華は瑠璃に声を掛ける。

 

「ホラ、瑠璃。紅夜君の左腕空いてるわよ?」

「い、言われなくても分かってるわよッ」

 

 そう言って、負けじと紅夜の左腕に抱きつく瑠璃。

 急に抱きつかれた紅夜からは『歩きにくい』と苦情が入るが、瑠璃はお構いなしだ。

 

「……負けないわよ」

 

 そして、綾も抱きつく力を強める。

 

「おーおー、お熱いねぇ」

「おいおい達哉、まさかこれだけで終わりだと思っちゃあいねぇよな?」

 

 前に回り込んで冷やかす達哉に、大河が言う。

 

 そう、紅夜に好意を寄せているのは、この2人だけではない。今はアメリカであちこち走り回っているであろうアレクサンドラやエメラリア。そしてイレーネが控えているのだ。

 更に言えば、今の紅夜は音ノ木坂学院という女子校に通い、そこで誕生したスクールアイドルと関わりを持っている。

 

「まるでハーレムアニメの主人公だな」

「違いない」

 

 そんな彼等を見ながら、他の4人は楽しそうに笑った。

 

 そうしている内に、彼等はとある通りに差し掛かった。偶然にも、μ'sの面々がチラシ配りをしている通りである。

 

「ああ、そうそう!此所にオススメのショップがあるんだよ。ホラ、此方だ!」

 

 そう言って駆け出す大河。その姿は、さながらおもちゃ売り場ではしゃぐ子供だ。

 

 そして角を曲がり、目当てのショップに近づいた時だった。

 

「にっこにっこにー!コレ、お願いするにこ!」

 

 謎の掛け声と共に、制服姿の小柄なツインテールの少女、にこが躍り出てチラシを差し出してきたのだ。

 

「…………」

 

 オタクであるため、コスプレやキャラへのなりきり等にそれなりの耐性がある大河でも、許容範囲を超えていたのか思わず固まってしまう。

 

「……あ~、すんません。俺ちょっと急いでるんで」

 

 一先ず刺激しないように言葉を選びつつチラシを断り、隣をスッと通り抜けようとする。

 

「ッ!」

「ぬおっ!?」

 

 だが、にこは逃がすものかと彼の腕を掴み、必死の形相で引き留めていた。

 実は、他の6人がそれなりの数を配っているのに対して彼女の成果は芳しくなく、自らがリーダーになろうと思っていた事もあって焦りが出ていたのだ。

 

「ちょぉぉおおい!?何か腕掴んできたんですけどこの人!?てか顔怖ぇ!?」

 

 だが、そんなにこの事情など知る由もない大河は、まるで痴漢を疑われたサラリーマンのようにパニックになるばかり。

 すると、にこの肩が軽くつつかれる。

 

「ちょっとそこの貴女、私の幼馴染みに何かご用かしら?」

 

 そして口調こそ優しいものの、威圧感を感じさせる女の声が後ろから掛けられる。

 

「え?」

 

 にこが振り向くと、そこには口元だけが笑っている蓮華の姿があった。

 

「私の幼馴染みに、何かご用かしら?」

 

 そう言いながらにこを見つめる蓮華。その目は全く笑っておらず、『返答次第では殺す』と語っていた。

 

「ひぃっ!?」 

 

 そのあまりの気迫に、思わず大河の手を離して後退るにこ。

 その内瑠璃や達哉達も合流し、自分より遥かに体格の勝る男女に囲まれ、にこはすっかり萎縮する。

 

「ん?にこ先輩どうしたんだろ?」

 

 そんな時、穂乃果が異常に気づく。他の面々もにこが複数の男女に囲まれているのに気づき、何事かと寄ってきた。

 

「あの、何かありましたか?」

「う、海未ぃ……」

 

 救世主が現れた安心感から、涙目で海未の名を呼ぶにこ。

 

「ん?……あら、貴女はμ'sの……」

「え?……あぁ!」

「前のライブに来てくれた人達!」

「という事は……」

 

 ことりが身を乗り出すと、『自分は関係ありません』と言わんばかりに背を向けている紅夜の姿を捉えた。

 

「紅夜君!」

「……ああ」

 

 流石に名前を呼ばれては無関係を装いきれないと判断した紅夜は、振り向いて答えるのだった。

 

 

 

 

  

 

 

 それから一行は近くの喫茶店へと場所を移し、にこと大河から事情聴取を行っていた。

 

「成る程、そんな事があったのか……まぁ矢澤の性格的にやりそうとは思ったが、まさか本当にやるとはな……」

 

 一通り話を聞き終えると、紅夜は呆れたようにそう言った。

 

「全く、何をやってるんですかにこ先輩……」

「だ、だって仕方ないじゃない!チラシ貰ってくれなかったんだもの!」

「だからって無理矢理引き留めて受け取らせる理由にはならないでしょう!」

「大河も大河だ、お前こういうチラシは大抵受け取ってたのに何スルーしてんだよ?」

「いや、その……いきなりあんなテンションで来られたから、思わず思考停止しちまったっつーかさ……」

 

 通行人を無理矢理引き留めて受け取らせるという暴挙に出たにこが海未から咎められている一方で、大河も達哉からの小言を貰っていた。

 

「あの、辻堂さん?あまり篝火さんを責めないでください。悪いのは此方ですので……」

「おぉ、園田ちゃんの優しさが五臓六腑に染み渡るぜ……」

 

 フォローを入れる海未に感動する大河。その傍らでは、花陽が歓喜に震えていた。

 

「ま、まさかあのBLITZ BULLETとご一緒出来る日が来るなんて……!」

 

 未だ日が浅いとは言え、彼女もBLITZ BULLETのファン。それが今、こうして一緒のテーブルを囲んでいるのだから、彼女からしてみれば非常に貴重な体験だった。

 

「へぇ、アンタ瑠璃達のファンだったの」

 

 その様子を見た綾が言う。

 

「はいっ!未だファンになったばかりですけど、動画は一通り見せてもらいました!」

「あら、それは光栄ね」

 

 紅夜達を真似て、あくまでも趣味の一環として始めただけに過ぎないものの、やはりこうして面と向かって言ってくれるのは嬉しいのか、瑠璃の表情は柔らかい。

 蓮華や雅達も、そんな花陽を微笑ましそうに見ている。

 

「そ、それでですね。実は此方のにこ先輩も皆さんのファンなんです。サインも持ってて……」

「サイン?」

「達哉君忘れたの?登録者10万人記念におふざけでやったでしょ?」

 

 何の事かと首を傾げる達哉だが、雅に指摘された事で漸く思い出す。

 

「……ああ、あのサインか!お前さんあれ当てたのか!」

「まさか当選者さんだったとはな……」

「それにしても、あれを当てたなんて凄いわね」

「い、いやぁ~……」

 

 にこは照れ笑いを浮かべていた。

 

 実は、瑠璃達BLITZ BULLETが企画した登録者10万人記念のサインは完全に彼女等のおふざけから始まったもので、それ故に応募も大して来ないだろうと、抽選5名とかなり少なめに設定されていた。

 瑠璃達としては『応募が2、3人来たら万々歳』程度にしか思っていなかったのだが、その予想に反してかなりの数の応募が殺到。その数は数万にも上り、設定した当選者数が少なかったのもあり、倍率数千倍というとんでもない事態になったのである。

 

「いやはや、あれにはビビったよな~」

「ああ、雅なんて焦りながら紅夜に電話してたくらいだし」

「ホントホント、なんで紅夜君に電話なんてしたんだろうね?」

 

 当時の事は彼女等としても中々の思い出になっているのか、そう言って笑い合っている。

 最近では少しずつ感情を見せるようになったとは言え、基本的には表情を動かさない紅夜もケラケラと笑っていた。

 

「(紅夜君って、こんな風に笑ったりもするんだな……)」

 

 穂乃果は、幼馴染み達と楽しそうに笑い合う紅夜の姿を微笑ましく思う反面、その笑顔が自分達にも向けてもらえない事を残念に思った。

 別に、笑ったからどうこう思う訳ではなく、寧ろそういう感情はどんどん前に出してほしかったのだ。

 

「(今まで見た紅夜君の顔って、殆んど真顔だもんね……笑った顔なんて、あまり見た事無いかも)」

 

 

──もっと笑ってほしい。その笑顔を自分達にも向けてほしい。

 

 

「(でも、私だって……私達だって、紅夜君の友達なんだもん……!)」

 

 穂乃果は、目の前で紅夜と楽しそうにしている瑠璃達や、アメリカでも同じように接していたのであろう彼の走り屋仲間達に嫉妬した。

 確かに、彼女等と比べれば付き合いは短いし、共通の趣味も殆んど無い。ましてやプライベートでの交流なんて皆無だ。

 それでも、彼と仲良くなりたい、互いに信頼し合える仲になりたいという気持ちに嘘は無い。その気持ちの強さなら、瑠璃達にも負けないつもりだった。

 

「(何時か絶対に………笑ってもらえるような仲になるんだから!)」

 

 心の中で改めて決意する穂乃果。

 そんな彼女の心の片隅には、それ以上の特別な何かが芽生えようとしているのだが、それに彼女が気づくのはもう少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 あれから暫く話した後、話題は再びリーダー決定戦に戻る。

 

 

「成る程。新リーダーがセンターねぇ……」

 

 事情を聞いた達哉がそう言った。

 

「なぁ園田ちゃん。ちょっとその勝負の結果とやらを見せてもらっても良いかな?」

「?え、ええ。構いませんが……」

 

 そうして達哉には、カラオケ、ダンス、そしてチラシ配りの結果が書かれたメモが渡される。

 彼は一通り目を通すと、紅夜に渡して意見を求めた。

 

「……見たところ、総合的には全員ほぼ同じようなものか」

「そうみたいね。花陽は歌の成績が良い代わりにダンスの成績が低くて、凛はその逆。ことりは歌やダンスは平均的でもチラシ配りは抜きん出ていた、と……」

 

 綾もメモを覗き込む。

 

「……」

 

 紅夜は暫くメモを眺めた後、こんな質問を投げ掛けた。

 

「今更なのを承知で聞くが……そこまでしてでもリーダーって必要なのか?」

「「「「「「えぇっ!?」」」」」」

 

 すると、穂乃果を除いたμ'sの面々が驚く。

 

「確かに紅夜君の言う通り、別に無くても良さそうだよね」

 

 穂乃果も紅夜の意見を支持した。

 

「ちょ、ちょっと!アンタ等それ本気で言ってるの!?」

「「うん!(ああ)」」

 

 信じられないものを見るような目で訊ねてくるにこに、2人は同時に頷いた。

 

「別にリーダー無しでも全然やっていけると思うよ?今までずっとそれでやってきたんだし」

「そうだな、俺も一応はリーダーの地位に収まってはいるが、正直言って誰がリーダーでも変わらんからな」

 

 そんな2人の返答には瑠璃も相槌を打っていた。彼女もまた、BLITZ BULLETというチームのリーダーではあるものの大してリーダーらしい事はしておらず、WeTuberグループとして活動していくにあたり、便宜上リーダーを名乗っているだけに過ぎないのだ。

 

「で、ですが、やはりリーダーは居た方が良いのでは……?」

「そうよ!リーダー不在のグループなんて、今まで聞いた事無いわよ!?」

 

 それでも難色を示す海未に、にこが同調する。

 これまで様々なアイドルを調べてきた彼女にとっては、リーダーが居ないグループなど前代未聞であり、中そうすんなりと受け入れられるものではなかった。

 

「と言うか、そもそもセンターに関してはどうするつもりなの?一応は新リーダーがセンターになるって話だったでしょ?」

「そんなの皆でやれば良いじゃない」

 

 綾がそう言った。

 

「皆?」

「そう、皆よ」

 

 鸚鵡返しに聞き返す真姫に頷き、綾は言葉を続ける。

 

「大体リーダーもセンターも、別にこの人じゃないと出来ないってなるような大層なものでもないんだし。そもそも、センター1人だけを態々決める必要ってあるの?グループなのに」

「そうだな。俺や瑠璃達もチームでダンスする時は、誰がセンターなんて決めてないしな」

「てか、そもそも皆1回は目立つようにポジション調節してるしな!」

 

 紅夜と達哉が綾の意見を支持すると、それに穂乃果も頷いた。

 

「綾ちゃん達が言ったように、誰か1人だけが主役になるんじゃなくて、皆が主役になるんだよ!皆が歌って、皆がセンターになれる。そんな歌って出来ないかな?」

 

 そう言ってメンバーを見回す穂乃果。

 

「……まぁ、そうですね。前代未聞ではありますが、だからと言って出来ないという事は無いかと」

「ええ。別に作れない訳じゃないわ」

 

 海未と真姫が頷いた。

 

「ダンスはどう?そういう振り付けって、作れそうかな?」

「うん、出来ると思うよ。この7人なら!」

 

 振り付け担当のことりも、穂乃果の意見に頷いた。

 

「わ、私も。そんな曲が出来たら素敵だと思います!」

「凛もそう思うにゃ!」

「……まぁ、言われてみればその通りね」

 

 満場一致で、意見は固まった。

 

 

 

 

 

 その後、紅夜達は先に帰っていき、穂乃果達は置いてきた荷物を回収するために学校へ戻ってきた。

 

「でも、本当にリーダーを決めなくて良かったのかな?」

「いいえ、花陽。リーダーはとっくに決まってますよ」

「不本意だけどね」

 

 不安そうに呟く花陽に、海未と真姫が答える。そんな彼女等が向けた視線の先には、全ての発起人の姿があった。

 

「何事にも囚われず、一番やりたい事や面白い事に真っ直ぐ向かっていく……それは、穂乃果にしか出来ない事です」

「それに、今此所には居ないけど、無愛想な態度で私達とは距離を取ろうとしてる癖に、何だかんだで道を示してくれる人が居るでしょう?」

 

 その言葉に、全員が1人の青年の姿を思い浮かべる。

 

「そうね、私も彼奴には助けられたわ。お金取られた恨みはあるけど」

「それはにこ先輩が穂乃果先輩や海未先輩のポテト盗ったのが悪いにゃ」

「う、うっさい!」

「………」

 

 花陽は、そんな彼女等のやり取りを見た後、

 

「……フフッ、そうですね!」

 

 満面の笑みで頷いた。

 

「…………ありがとう、紅夜君」

 

 前を歩きながらもそのやり取りを聞いていた穂乃果は、何処かで車を走らせているであろう紅夜に向けて、小さく礼を言った。

 

 

 

 それから数日後、スクールアイドル専用サイトにμ'sの新曲が投稿される。

 その曲には、このようなタイトルが付けられていた。

 

 

 

 『これからのSomeday』と。

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