ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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 明日から派遣先の入構日だ~。

 1週間以上待機させられたり貸出品のチャリ(フロントタイヤが歪んだ粗悪品)パクられたり(奇跡的にも奪還成功)したけど、漸くです。   


 まあ、それはさておき、最新話をどうぞ!


第43話~アウトローとラブライブ~

「んぅ~~っ!……よし、取り敢えずはこんなモンで良いかな」

 

 μ'sの新曲が発表されてから数日後の放課後、紅夜は1枚の書類を書き終えたところだった。

 その書類に書かれているのは、音ノ木坂学院の校風や設備、生徒の雰囲気、周辺の施設と言った学校関連の情報だった。

 そう、彼が書いていたのはレポートだ。

 試験生としてこの学校で生活する際、学期ごとに理事長である雛に提出する事になっているのである。

 

「(まぁ、提出期限は学期末な訳だが……1度見せておいた方が良いかな?いや、その前に絢瀬かな)」

 

 そうして立ち上がった紅夜は、教室を出て生徒会室へ向かう。だが……

 

「……居なかったか」

 

 絵里達は居らず、そもそも生徒会室が開いていなかったのだ。

 

「まぁ、毎日やってるとは限らんしな……仕方ない。彼奴のクラスも知らんし、今日のところは出直し──」

 

 肩を落としながら歩いている時だった。

 

「きゃっ!?」

「うおっ!?」

 

 猛スピードで階段を駆け降りてきた花陽とぶつかりそうになる。

 

「な、何だ小泉か……一体どうしたんだ?そんなに慌てて」

「こ、紅夜先輩!大変なんです、急いで部室まで来てください!」

 

 そう言うや否や、走り去ってしまう花陽。そんな彼女を呆然と見ていると、再び階段からドタドタと足音が聞こえてくる。

 

「紅夜先輩、さっき花陽が通らなかった!?」

 

 その声へ視線を向けると、そこには真姫の姿があった。

 

「あ、ああ……何か知らんが、随分慌てた様子で走っていったぞ」

 

 そう言って、紅夜は花陽が走っていった方を指差す。

 

「そう……」

 

 真姫はそう答えた。

 どうやら、真姫も彼と会う前に花陽に会ったらしく、いつになく慌てている彼女を不思議に思って追い掛けていたらしい。

 

「それにしても、あそこまで慌ててる小泉は見た事無いな……一体何があったのやら?」

「……私にもよく分からないけど、少なくとも何かあったってのは確実よね……先輩、私達も行くわよ!」

「は?」

 

 紅夜が聞き返した次の瞬間には、真姫は紅夜の手を掴んで走り出していた。

 

 他の生徒達から好奇の視線に晒されながら廊下を駆け抜けた2人は、アイドル研究部の部室へ辿り着く。

 ドアを開けると、そこにはにこを除いた全員が揃っていた。

 

「あっ、真姫ちゃん!それに紅夜君も!」

 

 2人に気づいた穂乃果が声を掛ける。

 

「紅夜君も来てくれたんだね!」

 

 ことりも彼等に気づいて声を掛ける。海未も彼に気づくと、ペコリと頭を下げた。

 

「よ、よう……さっき西木野に会ってな」

「それで2人仲良く来たのかにゃ?」

 

 そう言って、握られた2人の手を指差す凛。

 

「え?アンタ何言って…………ッ!?」

 

 何を言っているのかと首を傾げる真姫だったが、自分が紅夜の手を掴んでいるのを思い出すと、顔を真っ赤に染めて即座に手を離した。

 

「こ、これは!その……」

 

 すると、良い言い訳が見つからなかったのか、真姫が紅夜に目を向けた。

 『何とかしろ』と、その目は語っている。

 

「(やれやれ、お前が勝手に引っ張ってきたんだろうが……)」

 

 紅夜はその理不尽さに呆れながらも、話を逸らした。

 

「そんな事より、小泉がやたら慌てて走っていっんだが、何かあったのか?」

「あぁ、実はね──」

「ラブライブですっ!」

 

 答えようとした穂乃果を遮って、花陽が声を上げた。

 

「ラブライブが、遂に開催される事になったんです!コレはスクールアイドルファンにとっては一大事ですよっ!」

「……いや、そもそもラブライブって何だよ?」

 

 首を傾げる紅夜に、花陽は説明を始めた。

 

 

 簡単に言えば、ラブライブというのはスクールアイドルの全国大会だ。

 全国からエントリーしたグループの中からランキングの上位20組が出場し、優勝を決めるというものである。

 

「噂には聞いていましたけど、まさか本当に開催されるとは……!」

 

 スクールアイドル好きなだけあって、パソコンを操作しながら語る花陽の目は生き生きとしていた。

 

「へぇ~、そんなに人気なんだ」

「まぁ、スクールアイドルは全国的にも流行ってるみたいですからね」

「盛り上がること間違いなしにゃ!」

 

 共に画面を見ていた穂乃果、海未、凛も口々に言う。因みに、真姫や紅夜は少し離れた所から様子を窺っていた。

 

「今のアイドルランキングから上位20組が出るとなると……1位のA-RISEは先ず確実に出場するとして、2位と3位は……もう、正に夢のイベントです。チケット発売日は何時で、初日特典は何なのでしょうか……!」

 

 恍惚とした表情でスマホを取り出し、ラブライブの専用サイトを開く花陽。

 

「……て言うか花陽ちゃん、もしかして見に行くつもりなの?」

 

 すると、花陽が鋭い目で穂乃果を睨んだ。

 

「そんなの当たり前じゃないですか!コレは、スクールアイドルの歴史に残る一大イベントなんですよ!?見逃すなど有り得ません!」

「お、おぉう……」

 

 その剣幕に圧される穂乃果。その様子を、真姫は呆れたように見ていた。

 

「アイドルが絡むとホント人が変わるわよね、花陽って」

「ああ。彼奴のアイドル好きは知ってるつもりだが、まさかここまでとはな……」

「凛は此方のかよちんも好きだよ?」

 

 遠巻きに見ている真姫や紅夜が呟くと、凛がそう言った。

 

「でも、見に行くだけか……」

 

 すると、穂乃果が拍子抜けしたように言う。

 

「……?高坂、それってどういう意味だ?」

「いや、てっきり私達も出場目指そうって言うのかなって思って……」

 

 そう言いかけると、花陽がとんでもないと言わんばかりに手をブンブン振りながら後退る。

 

「そ、そんな!私達なんかがラブライブに出場だなんて恐れ多いです!」

 

 コロコロ態度が変わる花陽。

 

「本当にキャラ変わりすぎでしょ……」

「というかお前、『私達()()()』って自分で言うのかよ……仮にも自分が所属してるグループなのに」

「凛は此方のかよちんも好きにゃ~!」

「お前はどんな小泉でも好きだろうが」

 

 花陽を全肯定する凛に、紅夜は溜め息混じりにツッコミを入れた。

 

「でも、私達だってスクールアイドルやってるんだし、目指してみても良いかもね」

「て言うか目指さないと駄目でしょ!」

 

 ことりがのほほんとした表情で言うが、穂乃果は寧ろやるべきだと主張する。

 

 彼女等μ'sもスクールアイドルであり、その活動を通じて学校をアピールしようとしている。さればこそ、このラブライブはまたとないチャンスであり、目指すべき目標である。

 

「そうは言っても、現実は厳しいわよ?ただでさえ、私達は他のスクールアイドルと比べても後発で、知名度も0ではないにせよ、そこまで高い訳でもないんだから」

 

 そこで、真姫が厳しい意見を述べた。

 

「確かにそうですね。ランキングも始めた頃と比べれば上がってきてはいますが、それでも出場を目指せるようなものとは言えな………ッ!?」

 

 そう言いながらランキングに目を通す海未だったが、そこで彼女の目が変わった。

 

「穂乃果、ことり!コレを見てください!」

「え、何?」

「どうしたの海未ちゃん?」

 

 不思議そうにしながらも、言われるがままパソコンの画面を見る2人。すると、海未が何に驚いていたのかを理解した。

 

「うわっ、凄い!」

「順位が上がってる!」

 

 そう、μ'sの順位が以前より大幅に上がっていたのだ。

 

「嘘っ!?」

「……何だって?」

「ホント?見せて見せて!」

 

 これには真姫や紅夜も驚き、凛と共にパソコンの前に群がる。

 

 どうやら、以前投稿した7人のPVの反応がかなり良かったらしく、コメント欄も称賛の声で溢れていた。

 

「あっ、紅夜君!コレ見て!」

「……?何だ高坂、変なコメントでも書かれてたか?」

「そんなんじゃないよ!紅夜君の事もコメントに書かれてるの!」

「……俺の?」

 

 首を傾げながらも、穂乃果が指差すコメントへ目を通す紅夜。

 

 

『学校のHPで、そちらのグループにマネージャーが居たと知りました。私達には居ないのでとても羨ましいです』

『今はマネージャーじゃないらしいけど、今後その人はどうするつもりでしょう?』

『これだけのパフォーマンスを作れるのもマネージャーさんの存在あってこそなんだから、早く復帰すべきですよ!』

『いや、寧ろうちに欲しい!』

 

 

 等々、称賛のコメントやマネージャーへの復帰を望んだり、はたまたうちに来てほしいという声が上がっていた。

 

「………………」

 

 紅夜は反応に困った。

 4月のμ's初ライブ以降、彼は花陽を始めとした新メンバーの加入には関わっていたものの、練習にはそこまで関わっていない。

 彼が見た練習と言えば、精々にこが加入する前に彼女を誘き出すためのカモフラージュとして練習を見た時と、部活動の練習動画の撮影に巻き込まれた時だけだ。

 

「(コイツ等、一体どこを見て俺の功績だと思ってるんだ……)」

 

 紅夜がそのコメントに呆れていると、穂乃果が袖を引っ張る。

 

「皆、紅夜君はマネージャーやるべきだって言ってるみたいだよ?私達がここまでこれたのも紅夜君のお陰だし!」

 

 その言葉に他の面子も相槌を打つが、紅夜はとんでもないとばかりに手を左右に振った。

 

「馬鹿を言うな高坂。そもそも今回のPVに関しては、俺はほぼノータッチだった。なのにコイツ等は、まるで俺も関わってきたかのように言ってるんだぞ?流石にコレは……」

 

 『訂正させるべきだ』、そう言おうとした紅夜の口は、穂乃果の指に止められる。

 

「確かに、前のライブと比べたら紅夜君が練習を見てくれる時間は凄く少なかったと思うよ。でもね、大事なのはそれだけじゃないと思うんだ」

「穂乃果の言う通りですよ、紅夜さん。たとえ短時間でも、貴方の指導が私達のスキルアップに繋がっていたのは事実です」

「それに練習以外でも、紅夜君のお陰で解決出来た問題もあるんだから、『自分は何もしてない』なんて思わないでほしいな?」

 

 穂乃果、海未の後に続けてことりも口を開く。彼女が最後に言った言葉は、図らずも以前紅夜が言った事と同じだった。

 

「(まさか、あの時言った事をそのまま言われるとは……コレが所謂ブーメランってヤツか)」

 

 紅夜は内心そう呟きながらも、未だ優しさに満ちた視線を向けてくる穂乃果達に気まずさを感じ、思わず目を逸らす。

 そんな彼に微笑ましさを感じたのか、彼女等はクスッと笑みを溢した。

 

「それにしても、こんなに色々なコメントを貰えるなんて凛達も人気者になったモンだにゃ~」

「……人気者かは分からないけど、少なくとも有名になってきてるのは確かね。最近だと学校に来る中学生もチラホラ見かけるし」

 

 すると、他の面々が一斉に真姫の方へ振り向いた。

 

「ちょっと真姫ちゃん、それ本当!?」

「え、ええ……実際何度も見てるし話もしてるから、間違いないわよ」

 

 顔を思いっきり近づけてくる穂乃果に戸惑いながらも、真姫はそう言った。

 

 それから彼女が言うには、以前校門前で中学生の少女2人に出待ちされ、写真を撮ってほしいと頼まれたと言う。

 

「嘘!?私そんなの1回も無い……」

「そういう事もあります。何せアイドルの世界は残酷な格差社会でもありますから」

 

 項垂れる穂乃果に花陽がそう言う。

 すると、その中で唯一驚かなかった紅夜が口を開いた。

 

「何だ西木野、お前もか」

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 彼の言葉に、真姫を除いた5人が驚く。

 

「……そんな言い方をするって事は、紅夜先輩もなの?」

「……まぁな」

 

 そう返した紅夜は、2日前の事を思い出した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「さて。今日は用事もある訳だし、さっさと帰りましょうかね」

 

 その日、紅夜は深雪から買い物の手伝いを頼まれており、残る事無く帰ろうとしていた。

 下校中の生徒からの好奇の視線に晒されながら校門へ車を進めていると、門の前に中学生らしき2人の少女が居るのに気づく。

 当初、彼はこの学校の生徒の妹か後輩が待ち合わせをしているか、あるいは他の受験生が下見に来たのだろうと考えており、あまり気にしていなかった。しかしどういう訳か、2人は何度も此方を見ては、ヒソヒソと何かを確認するかのように話している。

 

「(……何だコイツ等?)」

 

 首を傾げていると、やがて彼女等は出口前で停まった彼の車に近づいてきて声を掛けてくる。

 

「……何だ?」

 

 話し掛けられた以上は無視する訳にもいかず、窓を開けて応対する紅夜。

 

「あ、あの。長門紅夜さんですよね?μ'sのマネージャーやってたっていう……」

「ああ、そうだが」

 

 一瞬、何故自分の事を知っているのかと疑問に思う紅夜だったが、直ぐに先日撮影した紹介動画を思い出し、そこから知ったのだろうと納得する。

 彼が答えると、その少女達は安堵した様子で要件を話し始めた。

 

 態々学校までやって来た上に『μ's』と口にした時点で何と無く察しはついていたが、やはり彼女等に会いに来たらしい。

 

「そ、それでですね。えっと……」

 

 何やら歯切れが悪くなる少女。心なしか、頬が赤らんでいる。

 紅夜としては、深雪を待たせているためにさっさと出発したいところだが、仮にもマネージャーとして認識されている以上は下手な対応は出来ず、一先ずこれだと思った事を口にした。

 

「あぁ~、もし彼奴等に用があるなら呼ぼうか?未だ校内に残ってる筈だし」

 

 そう提案するが、何故か首を横に振る。

 

「(彼奴等に用があるんじゃないのか……じゃあ何の用で……)」

 

 そこで、紅夜はハッとした。

 

「まさかとは思うが……俺に用があるのか?」

「……ッ!」

 

 どうやら当たりだったらしく、彼女は一層頬を赤らめて頷いた。

 そしてスマホを取り出し、自分と写真を撮ってほしいと頼むのだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「……という事があってな。まさか、お前等の誰でもなくて俺に頼んでくるとは思わなかったよ」

 

 話を終えた紅夜は、ヤレヤレと肩を竦めた。

 

「それで、その方達と写真を撮ったのですか?」

「まあな」

 

 海未からの質問に頷く紅夜。

 繰り返すようだが、世間では彼もμ'sのメンバーの1人として見られている。であれば、態々学校までやって来た者に対して不愛想な態度を取ってイメージを下げさせる訳にはいかない。

 加えて、当時は深雪を待たせていたため、下手に断って話を長引かせるよりは、彼女等の望みを叶えてさっさと解放してもらう方が得策だと判断したのだ。

 

「……確かに、その時の紅夜さんの都合を考えたらそれが一番だったとは思いますが」

 

 紅夜の意見を聞いた海未は一応納得した素振りを見せるが、だからと言ってすんなりと受け入れる事は出来なかった。

 それは他の面子も同じようで、彼の考えに納得は出来ても内心では複雑だった。

 

「私達ですら紅夜君と写真撮った事無いのに……」 

 

 穂乃果が思わず心情を溢す。

 

「いや、彼奴等と違ってお前等と写真撮る理由は無いだろ。学校来たら普通に顔合わせるんだし」

「そうだけど、それとこれとは別なの!」

「どれとどれだよ……」

「にゃー!」

「うわ危なっ!?急に飛び掛かってくるな星空!」

 

 そうしていると、部室のドアが開いてにこが入って来た。

 

「あら、やけに賑やかだと思ってたらアンタも来てたのね。紅夜」

「ああ、そこのお嬢様に引っ張られてな………っと」

 

 そう答えながら穂乃果と凛を引き剝がす紅夜。

 

「ふ~ん、まあ良いわ。そんな事より聞きなさい、重大ニュースよ!」

「重大ニュース?」

 

 ラブライブに続いて今度は何を言うつもりなのかと耳を傾ける一行。

 

「フッフッフ………聞いて腰抜かすんじゃないわよ?今年の夏、遂に開かれるのよ。スクールアイドルの祭典が!」

 

 だが、にこの持ってきた話題は既に知っているものだった。

 

「ラブライブの事ですよね?さっき話してたんですよ」

「………ああ、もう知ってたのね」

 

 期待した反応ではなかったようで、にこは白けた表情で言う。

 

 

「(矢澤、ドンマイ)」

 

 紅夜は、そんな彼女に心の中で合掌するのだった。

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