ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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 ううっ、スクスタ……終わらないでくれ……何もシリーズ10周年に合わせて終わる必要無いだろ……


第46話~海未とアウトロー~

「にっこにっこに~!」

「だからそういうふざけた真似したらワシワシMAXするって何回も言ってるやんな、にこっち?」

 

 海未がとあるファストフード店に入ると、直ぐに目的の人物を発見する。

 ついでに、彼女に勉強を教わっているにこも。

 

「ちょ、ちょっと待って希!何度も言ってるけどコレは別にふざけてた訳じゃなくて、こうする事でスイッチが入るって言うか、脳が活性化して、問題が解きやすく───」

「その言い訳、コレで何回目かな?」

「……3回目くらい?」

「正解は……12回目や!」

「ごめんなさ~い!!」

 

 何処へ行っても、あの漫才のようなやり取りは起こるようだ。

 

「全く、あの人はまた………」

 

 こんな状況でも何時もの調子を崩さないにこに呆れ、思わず溜め息をつく海未だが、何時までも突っ立っている訳にはいかない。

 勉強会の邪魔をしてしまう事にはなるが、それでもはっきりさせたい事があるのだ。

 

「おや、海未ちゃん。ウチ等に何か用かな?」

 

 すると、希が海未に気づく。

 

「邪魔してすみません。希先輩にお話があって………」

「ふ~ん……」

 

 希は暫く海未を見つめると、やがて『分かった』と短く答えた。

 

「じゃあにこっち、一先ず今日の勉強会はこれでお終いね」

 

 すると、にこは安堵の表情を浮かべるのだが、希はその一瞬を見逃さなかった、

 

「ああ、ちょっと待っててな海未ちゃん。忘れ物……」

 

 そう言うと、希はスマホを取り出してやりかけの問題集を撮影する。

 

「え~っと……希さん?今の写真は一体……?」

「おや、さっきので脳が活性化したのに分からんの?」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら訊ねる希。

 一見からかっているだけのようだが、にこにはちゃんと見えていた。

 彼女の眉間に青筋が浮かんでいるのを。

 

「……はい。家で仕上げてきます」

「よろしい……じゃあ海未ちゃん、行こっか」 

 

 そして、希は海未を連れて店を出ると神社まで連れてきた。

 

「それで海未ちゃん、ウチに話って?」

「……実は」

 

 そうして、海未は公園での出来事について語った。

 

「……成る程、えりちにそんな事言われたんやね」

「はい。確かに私達は素人ですが、あの言い方には我慢出来なくて………」

 

 そう答える海未の手に、再び力が入る。

 

「まぁ、海未ちゃんの気持ちは分かるよ。えりちも言い方キツいからなぁ、そう思うのは無理ないで」

 

 そこまで言った希は、『せやけど』と言葉を付け加える。

 

「えりちがそう言うのも頷ける」

「ッ!……何ですか、それは?」

 

 海未はショックを受けたように、言葉を絞り出す。

 

「それって……つまり希先輩も、私達が下手だと?私達みたいな素人には、見てくれる人を感動させるようなパフォーマンスは出来ないと仰有るのですか!!?答えてください!!!」

 

 そう声を荒らげながら、希に掴み掛かる海未。先程の件もあって、怒りの沸点はかなり低くなっていた。

 

「う、海未ちゃん落ち着いて。何もそんな風には思ってないよ」

「……………」

 

 暫く希の胸倉を掴んだまま荒い呼吸を繰り返していた海未だが、やがて落ち着きを取り戻し、手を離す。

 

「すみません、希先輩。つい、カッとなってしまって……」

「ええんよ。あんな風に言われて落ち込んでるところに、追い討ち掛けるような事言ったのはウチなんや。怒るのは無理もないで」

 

 希はそう言った。

 どうやら彼女自身、自分の発言で海未を怒らせる可能性がある事を知った上であのような言い方をしたようだ。

 

「……それで、先輩。生徒会長の言った事にも頷けるというのは……一体、どういう?」

「つまり、えりちはそうやって批判出来るだけのものを持ってるって事やで」

 

 希はスマホを取り出すと、WeTubeのアプリを起動させる。そして履歴からとある動画を探し出し、海未に見せる。

 

「ッ!こ、コレは……」

「分かった?それが、えりちが海未ちゃん達や他のスクールアイドルに対して、素人だ何だと言う理由なんや」

「…………………」

 

 その動画と希の言葉に、海未は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから日は流れ、試験まで1週間を切った。

 外では蝉が鳴いており、夏を感じさせる。

 

「いやぁ~、夏ですねぇ……」

 

 昼休み。アイドル研究部の部室へ向かいながら、紅夜は呟く。

 

「この試験を乗り越えれば、待ってるのは夏休み…………向こうに帰ったら、Silviaと遊んでやらなきゃな。ずっと置き去りにしちまったから、寂しがってるに違いない」

 

 試験生として通うにあたって、アメリカに置いてきたもう1台の愛車の姿を思い浮かべながら歩いていると、同じく部室へ向かう希の姿があった。

 

「東條か………お前もこれから?」

「あっ、紅夜君。いやぁ、ちょっと脱走兵達を捕まえてたんよ」

「脱走兵………?」

 

 何の事かと首を傾げる紅夜だったが、彼女に続いて現れた練習着姿の穂乃果、凛、にこの3人を見て悟った。

 大方、練習や運動を言い訳に昼休みの勉強会をサボろうとしてお仕置きされたのだろう。

 

「全くコイツ等ときたら……………ん?」

 

 そこで彼は、そんな3人の更に後ろから現れた海未に気づく。

 彼女もサボろうとしていたという訳ではなさそうだが、希と一緒にお仕置きしていたようにも見えない。

 普段より明らかに覇気が無いのだ。

 

「(そう言えばコイツ、最近元気無いよな………)」

 

 実は、紅夜は海未の変化には気づいていた。

 最初は少しボーっとする程度だったが、最近では完全に上の空になる事が多く、授業中や勉強会でもそんな様子だ。

 

「(一応、聞いておこうかな)」

 

 紅夜は、希に向き直った。

 

「おい東條、ソイツ等連れて行ったら先に勉強会始めておいてくれ。それから園田、お前はちょっと此方に来い」

 

 そうして紅夜は、海未を連れて中庭にやって来る。

 

「さて………園田」

 

 すると、彼女は体をびくつかせながら答えた。

 

「ッ……な、何でしょうか?」

「いや、そんなに怖がらなくても……別に説教しようって訳じゃないんだから」

 

 少し怯えた様子の海未にそう言って、紅夜は本題に入った。

 

「最近、元気が無いみたいだから心配になってな。おまけに授業や勉強会でも、あまり集中出来てないみたいだったし…………」

「す、すみません……」

「いや、だから説教じゃないんだって………それより、大丈夫なのか?具合が悪いなら、保健室で休んだ方が良いぞ。1日くらい休んだって、高坂に教える程度なら俺と南で十分カバー出来るし」

「いえ、そういう訳ではないんです。ただ………」

「ただ?」

「以前、生徒会長から言われた事なのですが………」

 

 それから海未は、希の時と同じように公園での出来事を語る。

 紅夜は、その時の絵里の言動にかなり驚いていた

 

「……本当に、彼奴がそんな事を言ったのか?お前等のダンスは人を感動させられるものではないと?」

「はい。A-RISEや他のスクールアイドルも、生徒会長からすればただの素人だと。今回動画を上げたのも、それを分からせるためだと言っていました」

「そうか、絢瀬がそんな事を……」

 

 未だアイドル研究部と揉めていた頃の対応から穂乃果達に対して当たりが強いとは思っていたが、そこまでするとは思っていなかった紅夜は、かなり驚いていた。

 

「………まぁ、取り敢えず話は分かった。つまり、彼奴に言われた事で落ち込んでたって事か?」

「……いえ、少し違うんです」

「違うのか?じゃあ、何故?」

「それは……」

 

 海未が語ったのは、その後希から聞いた話だった。

 

 実は、絵里は幼少の頃からバレエをやっており、当時から観客を魅了してきた実力者なのだという。

 

「偶然、希先輩が当時の映像を持っていたので見せていただいたのですが………確かに、パフォーマンスのクオリティーも私達とは比べ物にならない程で………」

「今まで自分達がやってきた事に対して自信が無くなっていた………と言ったところか?」

「………はい」

 

 海未は頷いた。

 

「それに、貴方の事もあるんです」

「俺の?」

 

 まさか自分が指名されるとは思わなかったのか、紅夜は自身を指さして聞き返した。

 

「………すまない。前に何か、気に障るような事でも言ってしまったか?」

「い、いえ!そういう訳でもないんです。あの時の生徒会長の話に貴方の話題も出ていて……」

「俺の……?具体的に、何て言ってたんだ?」

「あの時、生徒会長はこうも言っていたんです。私達やA-RISEを始めとした他のスクールアイドルも、紅夜さんには敵わないと。同じ素人同士でも、ラブライブに出るなら貴方の方が良いと、そう言っていました。貴方が生徒会長や希先輩に見せたパフォーマンスの事も合わせて」

「そ、そうか………」

 

 紅夜は顔を覆った。

 まさか、そこで自分を引き合いに出されるとは思っていなかったのだ。

 

「その事を考えると、これまでの私達は何だったのか、このまま続けても良いのかと………そう思うようになってしまって……」

 

 そう言って、海未も黙ってしまう。

 それから暫く沈黙していたが、やがて紅夜が口を開く。

 

「……分かった。取り敢えず、今までの話を纏めるが……」

「はい」

「要は、今のお前等の実力が、未だ小さかった頃の絢瀬やスクールアイドルでも何でもない俺より劣っているように思えたから、これまでの活動に自信を無くし、この先が不安になっていた………という事か?」

「………はい」

 

 海未は頷いた。

 

「成る程な……まあ一先ず、お前の悩みについては分かった。聞かせてくれてありがとうな」

 

 自分がその場に居た訳ではないが、あの海未がこうなる程だ。きっと、それだけ大きな悩みだったのだろう。

 

「い、いえ!私こそ、こんな個人的な悩みに時間を取らせてしまって…………」

 

 頭を下げようとする海未だったが、紅夜は優しく肩を掴んで止めさせる。

 

「別に謝る必要は無い。どんな悩みでも、1人で抱え続けるよりは誰かにぶちまけた方が気が楽だろうからな」

 

 そう言って、紅夜は海未の頭を優しく撫でた。

 

「それに、絢瀬はあんな風に言ったそうだが、俺はお前等のパフォーマンス、それなりに評価してるんだ」

「……紅夜さんが?」

「ああ。それに俺だけじゃない、瑠璃達や、レナ達もな」

「……レナ?」

 

 聞き慣れない人名に首を傾げる海未。

 

「何だ、言ってなかったか?レナってのは俺のアメリカでの仲間で、居候先の娘なんだ。前に動画で見せたろ?ホラ、お前等が初めて勧誘してきた時に見せたダンス動画。その時の女3人組の中で褐色肌の女がレナだ。覚えてるか?」

「……ああ、言われてみれば、そんな方も居たような」

 

 かなり前の事だがぼんやりとは覚えていたらしく、海未は頷いた。

 すると、紅夜は取り出したスマホを操作し、彼女等とのやり取りを見せた。

 

「大河から映像を貰って彼奴等にも見せたんだ。その結果がコレだよ」

 

 そう言って画面を指差す紅夜。そこにはアレクサンドラ達からのメッセージがある。

 彼女やエメラリアからのメッセージは英語だが、その単語から絶賛してるのが直ぐに分かる。日本人である零や和美は日本語で打っているため、最早言うまでもない。

 

「コイツ等だけじゃない。あの初ライブの後、瑠璃達も褒めていたよ。『粗削りな部分はあるけど、初めてにしては中々のものだったし、ライブも楽しかった』ってな。あの日の連中の反応を思い出してみろ。退屈そうにしていたか?」

「……いえ。とても、楽しんでくれていました」

「そうだろ?確かに絢瀬に言われた事はショックだったかもしれんが、こうしてお前等を評価している奴も居るんだ。スクールアイドルのファンサイトでも、かなり人気が出てたじゃないか」

 

 『だから』と付け加え、紅夜は海未と視線を合わせた。

 

「自分達じゃ誰かを感動させられないなんて、そんな事考えなくて良い。そのパフォーマンスは、もうとっくの昔から出来ていたんだよ」

「……ッ!」

 

 海未は顔を上げ、紅夜の顔を見つめた。

 彼の真っ赤な瞳は、優しく彼女を見つめている。嘘偽りなど全く無い、彼の本心だった。

 そしてそれは、海未が一番言われたかった言葉だった。

 

「紅夜、さん……!」

「ちょ、おいおい。何も泣かなくたって……まぁ、良いか」

 

 紅夜は周囲を見回して誰も居ない事を確認すると、優しく言った。

 

「今だけは、思う存分泣けば良い。一応世話になってるんだ、胸くらい貸してやるよ」

 

 それから暫くの間、海未は紅夜の胸に顔を埋めて泣いていた。

 

「私……私ッ!あの時、凄く……悔しくて……ずっと、ずっど!頑張っできたのに……!」

「……ああ、そうだよ園田。お前も彼奴等もよくやってる。『START:DASH』も『これからのSomeday』も、本当に良かった。俺も、教えたのがお前等で良かったって、割と本気で思ってるんだ」

「ッ!うっ、うぁ、ああぁぁぁ……!!」

 

 海未は彼の胸の中で幼い子供のように泣きじゃくった。最早言葉になっていない、紅夜ですら聞き取れない言葉を叫びながら、あの時の悔しさをぶつけるかのように、何度も彼の胸に拳を叩きつけた。

 紅夜はそんな彼女を優しく抱きしめ、その怒りや悔しさを、ただひたすら受け止めていた。

 

 

 そして彼女が泣き止んだ頃には、既に昼休みの半分が終わっていた。

 

「すみません、紅夜さん……何度も殴ってしまって」

「気にするな、あれくらい何て事無い」

 

 すまなそうに言う海未に、紅夜はそう返す。これまでのトレーニングや、彼女がそもそも弓道部員である事もあり、本音を言えば地味に痛かったが、これ以上彼女の心に余計な負荷を掛けないためにも、ここは格好をつけておく必要があった。

 

「それにしても、まさかあんなに泣きじゃくるとは思わなかったな」

「い、言わないでください!恥ずかしい……」

 

 顔を真っ赤に染める海未。彼女自身、あそこまで泣いたのは初ライブの日以来だった。

 

「まぁ、そうやって悔しいって思うのは、それだけ真剣にやってきたって証拠だ。恥じる事は無い」

 

 紅夜がそう言うと、彼のスマホがメッセージの着信を知らせる。

 送り主は希からで、彼等が中々来ないのを心配しているようだ。

 

「さて、じゃあお前も落ち着いた訳だし、そろそろ行こうか。またあのサボり魔共が何か企むかもしれんし、これ以上遅くなったら東條に何言われるか分かったモンじゃないからな」

 

 紅夜はそう言うと、『ホラ』と手を差し出す。

 

「行くぞ」

「…………」

 

 暫く紅夜の手を見ていた海未だが、やがて笑顔を浮かべる。

 

「はい、そうですね!」

 

 そうして差し出された手を取り、共に部室へと向かう。

 そんな海未の顔は、先程からかわれた時よりも赤く染まっているのだった。

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