ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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 バイトしてるネカフェがリニューアル工事のため、今週の平日一杯は店休に。
 まあ仕事には入れたから良し!


第49話~アウトローのお泊り勉強会・前編~

「ただいま~」

「おお、紅夜!聞いたぞ、音ノ木坂の友達の家に泊まるって!?こりゃ楽しみだな!」

 

 自宅に帰ってくると、一番に豪希が出迎える。深雪から今回の件を聞いていたようで、彼もまたかなり興奮しているようだ。

 

「友達って………そんなんじゃなくてただのクラスメイトだよ。それに泊まるって言っても別に遊ぶ訳じゃねぇんだぞ?勉強会だし、楽しむ要素なんて無いだろ」

「ったく、素直じゃねぇなあ。勉強会だろうが何だろうが、せっかくのお泊まりなんだぜ?もっとワクワクしても良いだろうがよ」

「冗談キツいぜ親父。相手が瑠璃やレナ達なら未だしも出会って間もない相手の家で泊まるなんて、本来なら1泊であってもお断りしたいところだっつーの」

 

 そんなやり取りを交わしつつ2階に上がり、普段着に着替える紅夜。そしてリビングに降りると、そこには豪希に深雪、綾の3人が居た。

 綾は兄の姿を捉えると、ズカズカと近づいてくる。

 

「兄様!穂乃果の家に泊まるって本当なの!?」

「お前もか……ああ、そうだよ」

「なんでそんな。瑠璃達の家なら未だしも、穂乃果の家って……そんなに仲良くなったの?」

「別にそういう訳じゃないんだが……何か連中が泊まりで勉強会やるって盛り上がってて、そしたら俺まで声掛けられてな……」

「だからって、兄様が付き合う必要は無いでしょ?仮に勉強に付き合うとしても日帰りにすれば良いじゃない」

「……まぁ、それはそうなんだがな」

 

 『親が許可を出したら構わないと条件を出したらあっさりクリアされたから断れませんでした』なんて言える筈も無く、紅夜は誤魔化すしかなかった。

 

「で、でもまぁ、あれだ。所詮はただの勉強会なんだし、そこまで心配しなくて良いよ」

「でも……」

 

 未だに納得していない様子の綾。そんな彼女に、深雪がクスクス笑いながら言った。

 

「綾ちゃんたら、お兄ちゃんと離れるのが寂しいのね。しょっちゅうこうちゃんのお布団に潜り込んでるんだし………お兄ちゃんを取られたくないのね」

「お、お母さん!」

 

 図星を突かれた綾は、顔を真っ赤に染める。

 

「それよりこうちゃん。コレ、準備しておいたわよ」

「ああ。ありがとなお袋」

 

 紅夜は、寝間着のジャージや替えの制服、そして着替えの入ったボストンバッグを受け取り、持って降りてきた上着やズボンを中に押し込んだ。

 

「(……ん?何か随分中身が多いな。下着もそうだが、普段着もざっと3、4日分ある。予備の服か?いや、そうだとしてもちょっと多い気がするな……)」

「どうしたの?何か足りないものでもあった?」

「……いや、大丈夫だよ」

 

 その答えに安心したように笑みを浮かべた深雪は、もう1つのバッグを差し出した。

 

「それからコレ。テスト勉強するって話だから、取り敢えず全教科の教材とノートも用意しておいたわ」

「おおっ、助かるよ。家帰ったら用意しなきゃって思ってたからな。手間が省けた」

「それは良かったわ。後、コレは穂乃果ちゃんのご家族に渡してね」

「あいよ」

 

 紅夜はそう言って、2つ目のボストンバッグや菓子折りの入った袋も受け取った。

 

「さて、少し休みたいところだが、そうも言ってはいられないしな……早速行くよ」

 

 移動に時間が掛かる以上、時間は無駄に出来ない。紅夜は受け取った荷物を手に家を出ると、愛車に積み込んでいく。

 

「なぁ紅夜、車で行って大丈夫なのか?何なら連れて行ってやるぞ?お店が実家だってんなら、その名前さえ分かれば行き方も調べやすいしな」

「いや、ありがたいけど大丈夫だよ親父。向こうで車1台停めれるだけのスペース空けといてくれるらしいんだ」

 

 そう言うと、紅夜は再び車に乗り込んだ。

 

「……んじゃ、ちょっくら行ってくる」

「ええ、行ってらっしゃい」

「楽しんできな」

「兄様!エッチな事しちゃ駄目よ!後されるのはもっと駄目だからね!?」

「いや後者どういう意味だよ……?」

 

 そんなやり取りを交わしつつ、紅夜は自宅を後にする。

 そして再び高速に乗り、駆け抜けること約30分。彼は千代田区にある穂乃果の実家、和菓子屋穗むらにやって来た。

 

「やれやれ、とうとう着いちまったか……妹さんに会うの気まずいんだよなぁ」

 

 彼と雪穂の関係は、少なくとも良いものとは言えない。何せ、これまで会うたびに彼女のあられもない姿を見ているのだ。

 とは言え、これ等は全て穂乃果や花陽の不注意によるものであるため、紅夜には何の責任も無い。寧ろ彼も巻き込まれた被害者だと言えるだろう。しかし、見られる側の雪穂からすればそんなものは関係無い。

 幾ら不可抗力でも、恋人でも何でもない男にあられもない姿を見られるのだから堪ったものではない筈だ。

 

「絶対警戒されるよなぁ~……」

 

 穂乃果の試験勉強に付き合うためとは言え、そんな男が自宅に泊まりに来るのだから間違いなく警戒されるだろうし、紅夜としても、そんな状態で一晩同じ屋根の下で過ごすのは気まずい。

 しかし、だからと言って『やっぱや~めた』とUターンする訳にはいかない。約束は守るのが彼のポリシーなのだ。

 

「……まぁ、泊まるとしても今夜だけだろうし、それさえ乗りきってしまえば此方のモンだ。そもそも妹さんの部屋に極力近づかないようにして、風呂場とかトイレに入るのならちゃんとノックすりゃ良いだけの話だしな。ここは一先ずシンプルに考えよう」

 

 そうして気分を持ち直し、車を近づけていく紅夜。そして店の前で停めるのと同時に戸がガラガラと音を立てて開き、穂乃果と割烹着姿の彼女の母、秋穂が出てきた。

 穂乃果は紅夜の車の姿を捉えると、パッと表情を輝かせて駆け寄ってくる。

 

「いらっしゃい、紅夜君!ちゃんと来てくれたんだね!」

「……ああ、約束だからな」

 

 そう言って車から降りた紅夜は秋穂へ頭を下げ、深雪から預かった菓子折りを差し出した。

 

「お邪魔します、今日は急な申し出にもかかわらず泊めていただき、ありがとうございます。コレ、良ければ皆さんで……」

「あらあら、そんなに堅苦しくしなくても良いのよ」

 

 箱を受け取った秋穂は、笑みを浮かべて言った。

 

「娘から話は聞いてるわ。ありがとうね、態々泊まり掛けで付き合ってくれるなんて」

「別に、大した事では……」

 

 紅夜は面映ゆそうに頬を掻いた。

 

「というか、本当に良いんですか?俺まで泊めていただくなんて……一応言っておきますが、これでも男ですよ?こんな見た目でも」

「ええ、勿論!その辺も織り込み済みで許可出したんだから」

 

 自分の性別を誤解していないか確認してみるも、秋穂は紅夜が男だと確実に知っている上で許可を出したようだ。

 

「…………」

「あらあら、そんな顔しなくても。別に今日初めて会った訳でもないんだし、それに……」

 

 そう言いかけ、チラリと穂乃果へ目を向ける。

 

「穂乃果ったら、もうしょっちゅう紅夜君の話するのよ?何か、スクールアイドル始めた頃からお世話になりっぱなしだとか、今度一緒に遊びに行きたい~とか。余程娘に懐かれてるのね」

「お、お母さん!」

 

 あまり知られたくなかったのか、頬を赤らめて叫ぶ穂乃果。

 

「そ、それよりホラ!早く車置いてきてもらおうよ!エンジン掛けっぱなしだからガソリン無駄になっちゃうよ!」

「はいはい……それじゃあ紅夜君、倉庫まで案内するわ。ちょっと埃っぽいから車汚れちゃうと思うけど…………我慢してね?」

「い、いえ、お構いなく」

 

 そうして、秋穂に案内されて倉庫に愛車を停め、穂むらに足を踏み入れた紅夜は、彼女の祖母や父、そして雪穂への挨拶もそこそこに、自室へと連れられる。

 

「紅夜君、此方だよ!」

 

 そうして部屋に入ると、既に海未やことりが居て。テーブルに教材を広げていた。どうやら、紅夜が最後だったようだ。

 

「いらっしゃい、紅夜君!」

「お疲れ様です」

「ああ……すまない、遅くなったな」

 

 詫びる紅夜だったが、2人は気にしていない様子だ。

 

「全然大丈夫だよ!」

「そもそも、紅夜さんはお住まいが全く違いますからね。確か、世田谷………でしたか?」

「ああ、車なら高速使って30~40分ってところだな。下道使ったり、渋滞してたらもっと掛かるだろうが」

「であれば、遅れるのも無理はありません。寧ろ、この程度の遅れで済ませてくれたのがありがたいくらいです」

「そう言ってもらえると助かる……じゃあ、早速始めようか。今は何の教科をやってるんだ?」

「今はですね……」

 

 こうしてメンバーが全員揃った事で、一行は本格的に勉強会を始める。

 基本的には指定した科目を勉強し、分からない部分は教え合うというスタンスだ。

 

「ふぅ、こんなモンかなっと」

 

 開始から約1時間、紅夜はそう呟いて体を伸ばす。

 

「ん?どうしたの紅夜君?」

「いや、別に大した事じゃない。ただ数学の課題が終わっただけだ」

 

 すると、穂乃果や海未の視線も集まる。

 

「嘘っ、もう終わったの!?」

「ああ。というか、これで試験課題は全科目終わらせた事になるな。後は復習を重点的にって感じだ」

「す、凄い……」

「確かに課題は全科目分貰ったけど、未だテストまで日はあるのに……」

「ええ、私でも未だ半分近く残ってるのですが……」

 

 あっという間に課題を終わらせてしまった紅夜に驚く3人だが、本人はあっけらかんとしていた。

 

「別に、普通に進めてたらこれくらいは出来るだろ?」

「それが出来ないから驚いてるんですがね…………」

 

 呆れたように言い返す海未に、穂乃果とことりもウンウンと頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「いやぁ~、満腹満腹!」

「ちょっ、穂乃果!はしたないですよ!?」

 

 その後、秋穂に呼ばれた事で一時中断し、夕食を摂って再び部屋に戻ってきた4人。満足した様子でベッドに大の字で寝転がる穂乃果を、海未が窘める。

 

「やれやれ、せめて女しか居ない時にしてもらいたいんだがな……」

「あはは……穂乃果ちゃんって、何時もこうだから……」

 

 男が居るにも拘わらず無防備な姿を晒す穂乃果に呆れている紅夜の隣では、ことりが苦笑を浮かべていた。

 

「と言うか、だらけてる暇なんて無いですよ?早く起きて勉強の続きです!」

「えぇ~~!?もう満腹で動けないよ~」

「『動けないよ~』ではありません!このテストの結果にラブライブ出場が懸かってるんですから!ホラ、何時までも寝転がってないで早く続きを始めますよ!」

 

 そう言って無理矢理起こそうとする海未だが、穂乃果は穂乃果でヤダヤダと枕にしがみついて抵抗している。

 

「コレじゃ埒が明かないな………」

「でも、穂乃果ちゃんの言う事も少しは分かるかな。ことりも、お腹いっぱいだと動きたくなくなっちゃうから」

「それなら、30分だけ休憩して、それから再開しようと思うんだが……2人共、どうだ?」

 

 そう訊ねると、先程まで攻防戦を繰り広げていた2人は頷いた。

 

 それから暫く世間話をして過ごしていた4人だったが、不意に海未が言った。

 

「それにしても紅夜さん、お願いしておいてこんな事を言うのもおかしな話ですが……」

「ん?どうした園田?」

「本当に、良かったのですか?何かお仕事されているのでは……?」

「仕事?何の話だ?」

 

 何を言っているのか分からないといった様子で首を傾げる紅夜だが、これには海未も『おや?』と目を丸くする。

 

「違うのですか?そのような格好をしているものですから、てっきり……」

「……ああ、そういう事か」

 

 海未が服に視線を落とした事で、紅夜は漸く彼女が言わんとしている事を察した。

 

 今の彼の服装は、紺色の作業服。ズボンもダボダボとした、ニッカポッカと呼ばれるものだ。

 土木作業員や鳶職を思わせるようなこの服装を見れば、そう思うのは無理もない事だった。

 

「別に仕事をしてる訳じゃない、こういう服しか持ってないだけだ」

「「「え?」」」

 

 3人の間の抜けた声が重なる。

 

「も、持ってないって……」

「という事は、お洒落な服とかは……?」

「1着も無いが?」

「「「えぇ……」」」

 

 あっけらかんと言い放つ紅夜に、3人は何とも微妙な表情を浮かべた。

 自分達もそうだが、紅夜も未だ10代の若者。普通ならお洒落の1つや2つしているのが普通だ。

 だと言うのに目の前の男は、お洒落を意識した服を持っていないどころかこのような作業服しか持っていないというのだから、彼女等からしたら有り得ない事だった。

 

「ち、因みに、買おうとは思わないの?」

「思わん。というか別に要らんだろ、俺みたいなのにそんな服は似合わんからな」

「いや、『俺みたいなの』って……」

 

 この返答には穂乃果ですら呆れていた。

 

 かつて見た目が原因でいじめを受けていたとは言え、紅夜は決して不細工という訳ではない。寧ろ目つきが鋭い上に無愛想な態度故に怖がられているだけであって、容姿自体はかなりのものだ。

 世間一般で言うイケメンとは違うが、仲間達からは『美人』と評されている。身長も186cmとかなり高く、体も引き締まっており、スタイル抜群。

 更に言えば、アルビノにオッドアイというレア体質の複数持ちと来たものだ。

 少しお洒落をして町を歩いていれば、たちまちスカウトが寄ってくるだろう。勿論、全員追い払われるのがオチだが。

 

 そして穂乃果達も、紅夜の見た目はかなり良いと思っている。それだけに、こんなお洒落のおの字も無いような服しか持っていないというのは非常に勿体無いと感じていた。

 

「そ、それより、もう休憩は十分だろ?続きにしよう」

 

 すると、微妙な雰囲気を感じ取ったのかそそくさと話題を変えようとする紅夜。

 穂乃果達は未だ話したそうだったが、約束の30分になっているのもあり、再び勉強に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それじゃあ、電気消すね。皆お休み~」

「ええ」

「お休みなさい、穂乃果ちゃん」

「……お休み」

 

 夜10時半。今日の分の勉強と風呂を終えた4人は、床につこうとしていた。

 穂乃果の合図に残りの3人が返事を返し、部屋は暗闇に包まれる。

 

「(やれやれ、まさかこんな事になるとはな………)」

 

 両隣を2人の少女に挟まれた状態で布団に入った紅夜は、彼女等に聞かれないよう小さく溜め息をついた。

 そう。彼は今、穂乃果の部屋で、彼女等3人と眠りにつこうとしているのだ。

 というのも、入浴を終えた紅夜が自分の寝床を確認するために部屋に戻ったところ、床に3人分の布団が用意されているのを発見。そこで、穂乃果から4人で一緒に寝る事を告げられたのだ。

 勿論紅夜は拒否するも穂乃果は譲らず、結局騒ぎを聞いてやって来た秋穂からも説得された事により、彼女等と寝床を共にする事になったのである。

 

「(まぁ下手に揉めるよりは此方の方がマシだろうとは思うが、こうもホイホイ肯定されると逆に気味が悪いぜ……コイツ等、何か企んでんじゃねぇだろうな?)」

 

 そう考えたところで、紅夜は頭を振った。

 

「(……まあ良い。どの道明日は今日の分の服とか回収して帰るだけだし、考えるだけ無駄だ)」

 

 考えるのを止めた瞬間強烈な眠気に襲われ、意識を手放す紅夜。そして、瞬く間にスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

 

 

 それから2、3時間程が経過した頃、珍しくお手洗いに起きた海未が部屋に戻ってくる。

 

「はぁ、相変わらずの寝相ですね……昔から何も変わってない」

 

 溜め息をつく彼女の視線の先に居るのは、幸せそうな表情でグーグーと眠る穂乃果。ベッドに入った時とは逆向きで眠る彼女は、掛け布団を蹴飛ばし、寝間着も捲れて腹が露出している。

 

 実は、穂乃果は昔からかなり寝相が悪く、幼い頃に海未の家でお泊り会をしたところ、その寝相の悪さに何度も苦しめられたものだった。しかも本人にはあまり自覚が無いものだからタチが悪い。

 幸いにも今の彼女はベッドで寝ているため、その上で縦横無尽に動き回るだけに留められているようだが、それでもこの状態は良くない。男と一緒に寝ているのなら尚更だ。

 紅夜がそのような邪な考えを持つような人間ではないから未だ良いものの、彼以外の男が居たらどうするというのか………?

 

「全く、この寝相の悪さは何時になったら直るのやら……」

 

 そう呟きながら穂乃果の姿勢を正し、乱れた服や布団を直してやる海未。

 そして自らも布団に潜ると、ふと紅夜に視線が向く。

 

「(それにしても紅夜さん、相変わらず眼帯は着けたままですね。寝る時くらい外せば良いと思いますが……)」

 

 学校に居る時から今に至るまで全く眼帯を外さなかった紅夜。流石に入浴時には外しただろうが、着けたまま寝るというのは相当な徹底ぶりだ。

 そんな様子に半ば呆れていると、寝返りを打った彼の顔が此方を向く。

 

 普段学校で見ているような無愛想な顔とは打って変わって、何処かあどけなさすら感じさせる無防備な寝顔。

 だが視線を落とせば、嫌でも彼が『男』だと認識させられる。

 細く引き締まった体、高い背丈……それでも海未が目を向けていたのは、彼の胸元だった。

 

「…………」

 

 思い起こされるのは、あの昼休み。絵里に言われた事で自分達の活動に自信が持てなくなっていた海未は、その胸の中で泣いた。穂乃果達の前ですら滅多に泣かなかった彼女が、ギュッと顔を埋め、大声で泣き叫んだ。

 その声を、やり場のない怒りや悔しさをぶつけたがっていた拳を、何も言わずに受け止めてくれた紅夜。

 気づけば海未は、そんな彼の方へ体を寄せていた。

 何と無く、あの時に感じた、『自分を受け入れてくれる優しさや温もり』を感じたくなったのだ。

 彼の掛け布団に余裕があるのを良いことに足を入れ、腰の位置にまで下げられていた布団を肩の位置にまで掛け直す。そして紅夜に見えないように潜ると、そっと彼の胸に顔を埋める。

 

「(心が……落ち着く……)」

 

 海未は甘えるように顔を擦り付け、意識を手放した。

 その寝顔は当然海未本人には分からないが、過去一番に安らかなものだったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………いや、何してんのコイツ?」

 

 そして翌朝、一番に目を覚ました紅夜の第一声がこれだったのはここだけの話である。

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