魔法少女リリカルなのはBlack The MOVIE 1st   作:黒崎ハルナ

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Act.10 Hentai Pandemonium/変態の巣窟

「なんだアレ」

 

 と、俺は隣で自分と同じ様に呆気に取られている高町に状況説明を求めていた。

 こいつがジュエルシードに対してほとんど無知なことは知っているが、それでも自分の頭だけでは目の前の光景を冷静に分析することは不可能だったからだ。というか、なんなら夢とかの類いにして欲しいとすら思ったほどだ。

 もう一度言おう。

 

「いや、マジでなんだアレ」

 

 プール中央で偉そうに我が物顔で陣取り、うねうねと水の触手らしきものを動かしている化け物。水場でジュエルシードが暴走したのだから、そういう形状なのは納得できる。デザインセンスについても、それなりに及第点だろう。

 唯一問題なのは、そのジュエルシードが知り合いの女の子たちを触手で捕まえていることだった。

 

「……ユ、ユーノくんパス!」

「えッ! 僕ッ!」

 

 高町がユーノに絶妙なキラーパスを投げつける。パスを受けたフェレットことユーノは、あたふたと手を動かしながら顔を赤く染めていた。なんだ、ただのエロペットか。

 

「た、たぶんだけどジュエルシードを発動させた人間、捕まったっていう更衣室荒らしの願いと興味が形になったんじゃないかな、と……」

「つまり?」

「つ、つまり女の子の服を集めたいっていう願いだから……」

 

 ヤバい。ものすごく帰りたい。

 要するに今回のジュエルシードは、さっき恭也さんが話していた更衣室荒らしの犯人が残した執念にも似た想いが形になったものらしい。原因がくだらなさ過ぎて、笑う気すら起きなかった。

 それでも、ジュエルシードはジュエルシードだ。その危険性については理解している。

 とにかくあの二人に危害が及ぶす前に、なんとかしなければなるまい。ジュエルシードを牽制しながら、俺は周囲を観察する。これこそ俺の得意分野だ。

 先ずは、捕らえられている二人の安否。

 

「いやあああああ、やらしい動きするなぁ!」

「ぬ、脱がされちゃう……」

 

 ……真面目に考えるだけ無駄ではなかろうか。いや、割とマジで。

 アリサ・バニングスが悲鳴に近い抗議の声を上げ、月村すずかは涙目になりながら水着を奪われないように必死の抵抗を続けている。側から見る分には非常に艶やかな光景だが、悲しいくらいに色気がない。せめて、無駄にスタイルが良い忍やノエル、妥協してファリン辺りが被害者だったのなら、俺は全力でジュエルシードを応援していた。

 それなのに、何が楽しくて自分よりも年下の幼女たちの触手プレイを見なければいけないのか。

 

「だからやめなさいって!」

 

 とりあえず、怪我などの危険は無さそうではある。今まさにビキニの下を脱がされようとしているバニングスを見ながら、そう結論づけた。

 続いて、ジュエルシードの暴走体がいる付近の状況。

 幸い、と言って良いのかは微妙だが、すずかとバニングスの二人を除けば、他に一般人が巻き込まれた様子は見られない。二人が捕まっている原因は、おそらくユーノが結界を発動する際に全員を切り離せなかったからだと予想がつく。

 運が悪かった。二人には悪いが、そう割り切るしかない。

 最後に確認したのは、この場での戦闘要員こと高町なのはだ。

 流石に武器を更衣室に忘れて来た、なんて無様は晒してはいなかった。首にぶら下げた紅い宝石を握りしめて、ジュエルシードの動向を警戒している。

 直ぐに待機状態の紅い宝石を起動しないのは、すずかたちが捕らえられているからだろう。

 それでも、顔をしかめてジュエルシードを睨んでいた。

 なるほど、確かにこいつは恭也さんの妹だ。戦いに対するスイッチの切り替えが恐ろしく速い。

 

「──だいたいわかった。高町」

 

 俺は水着のポケットから待機状態のヴァリアントコアを取り出した。魔法という暴力を使う為の必須アイテム。ジュエルシードが街中にばら撒かれている状況とはいえ、こんな場所に行く時も武器を常備している自分に悲しくなってくる。カムバック、平和なスローライフ。

 

「特別に、俺が手を貸してやる。感謝しろよ?」

 

 俺は高町とユーノに対して恩を着せてやろうと思った。

 コアの中心部を押して、ヴァリアントをアームズに変形させる。起動の瞬間、視界が一瞬だけ歪んだ気がした。世界が入れ替わる。

 フォーミュラスーツは展開しない。リボルバーだけなら、万が一すずかに魔導師であることがバレたとしても誤魔化せるが、フォーミュラスーツのままだとそれも難しいからだ。

 

「だから、安全な方法で確実に仕留めろ。すずかに傷一つでも付けたら、マジで許さないからな」

「……うん! わかった!」

 

 何故か高町は嬉しそうに返事を返して来た。何か変な誤解をしている気もしなくもないが、そんなことはどうでもいい。

 

「決まりだ。先ずはあの二人を救出するとこから──」

 

 と、その時だ。

 

「「きゃああああああ!」」

「──だ……な?」

 

 ぺい、と何故かジュエルシードが全裸になった二人を吐き出した。水着は脱がされたらしく、その姿が見えないところから、あのジュエルシードが体内に吸収したのだろう。変態の化身みたいなジュエルシードだ。まあ、人質の救出という手間を省けたのは助かるが。

 

「返せ! 戻せ!」

 

 涙目でバニングスがジュエルシードに近づいて行く。怒りで我を忘れているのか、それとも羞恥心から恐怖が薄れているのかはわからないが、それは悪手だろう。俺は思わず叫んだ。

 

「あの馬鹿ッ!」

 

 案の定、ジュエルシードは咆哮を上げて高波を生み出した。その大きさは全裸の二人を楽に飲み込めるほどに巨大だ。これはいけない。

 

「……加速(アクセル)

 

 咄嗟に俺はプールに向かって走り出した。わざわざ隠していたフォーミュラスーツを展開して、体内のナノマシンをフル稼働させる。こうなっては、なりふり構っていられない。ナノマシン によって強化された脚力を駆使して、ほぼ全力で駆け抜けた。

 

「術式展開。選択、障壁魔法」

 

 すずかとバニングスの前に立ち、左手を高波に向けて広げる。その間、僅か一秒弱。素晴らしい手際に自画自賛しながら、俺は障壁をして襲ってくる高波を弾いた。

 

「今だ!」

 

 あえて名前を呼ばずに、俺は後方にいるユーノに指示を飛ばす。極力、すずかに身バレする要素を排除する為だ。高町のアホはそこら辺を理解しているかは怪しいが、ユーノは違うと信じたい。

 

「ごめん二人共、プールサイドでちょっとだけ眠ってて」

 

 言って、ユーノは俺のとは異なる丸型の魔法陣を展開する。ふわり、と翡翠色の光がすずかとバニングスを包み込むと、二人は力尽きたように眠ってしまった。

 

「でかした。後でペットフードを奢ってやる」

「いらないよ!」

 

 倒れた二人を抱き抱え、プールサイドに横たわらせる。真っ裸なのもアレなので、近くにあったタオルをかけてやった。これで人質の心配は排除。後は……

 

「ユーノくんナイス! これなら……」

『Barrier jacket』

 

 ペンダントになっている宝石から女性の声が聞こえると、高町の姿が水着から白い防護服へと変わる。

 

『Cannon mode,setup』

 

 機械的な杖に変形した紅い宝石が、今度は槍のような形状に変形する。

 俺はこの時になって、ようやくまともに魔導師としての高町なのはの姿を見た気がした。前回も前々回も、高町に興味らしい興味を持っていなかったからだ。

 槍にも見える杖の先端をジュエルシードに向けて構え、左手は杖の横に取り付けられたトリガーにかかっている。その構え方から、高町の戦い方は俺とは違うタイプの射撃型。前回見たあの火力から推察するに、典型的な固定砲台タイプだろう。

 

「趣味や興味は人それぞれですが、人様に迷惑をかける変質的行動は良くないと思います!」

 

 やや怒りが篭った声で、高町が断言した。

 すでに彼女の足元には魔法陣が展開され、砲撃の為に必要な魔力が貯められている。まあ、女性の敵のような発動理由に加えて、大切な友人を危険に晒されたのだから、その怒りも肯ける。

 

「封印すべきは忌まわしき器ジュエルシード……」

 

 バサリ、と杖から羽が生えた。おそらくは魔力によって生成されたものだ。高町の趣味なのか基本構造なのかはわからないが、集めた魔力を分散しない為のものだと、フォーミュラが解析してきた。

 

「……あれ? なんだか違和感が……」

 

 不意に、高町がやたら不穏な一言を発した。まさか、と俺は改めて周囲を確認する。

 

「な、なんだかわからないけど、とりあえず封印!」

『Shooting』

 

 胸に抱いたその不安を消し飛ばすように高町が叫んだ。

 放たれた砲撃は巨大なジュエルシードを丸ごと飲み込み、そのまま建物内の壁へと突き刺さる。相変わらずふざけた火力だ。余波でプールの水が弾け飛んでるじゃないか。

 

「……ん?」

 

 雨が降るみたいに頭上からプールの水が落ちてくる中、俺は高町の違和感の正体を理解した。

 

「水着と下着はたくさん出てきたけど……」

「肝心のジュエルシードは何処だよ?」

 

 ぷかぷかとプールに浮かび上がる女性ものの下着と水着。数えるのがアホらしくなる量の中には、元凶たるジュエルシードの姿がなかった。

 

「反応が消えてない。まさか、分裂してるのか?」

 

 困ったときのユーノ先生が一つの仮説を立てた。

 この仮説が本当なら、ジュエルシードはこのプール内で増殖を繰り返しているということだ。

 

「ジュエルシードってのは、そんなこともできるのか?」

「たぶん、発動者の強過ぎる願いに反応して起きたんだと思う」

「ああ……確かに一人分で満足するような感じでもなさそうだしなぁ……」

 

 俺はプールに浮かぶジュエルシードがかき集めた戦利品たちを見ながら呟いた。これだけの量を欲するほどの欲望だ。分裂くらいしても不思議ではない。欲望の内容が、何一つ共感も尊敬もできないのがアレだが。

 一つ言えることは、今年に入って以来、最高にヤル気が削がれる戦闘だと言うことだ。

 

「はあ……帰りたい」

 

 早く本体を見つけないと、と張り切る高町とユーノを尻目に、俺は深々と溜息を吐き出したのだった。




リリカルライブ最高でした!
黒崎は運良くアリーナ席で見れたんですが、もうね……途中からなんか涙が出てきたんですよ。自分の中でこれだけ大きな存在になってたんだなぁ、って。まあ、物販を並んでる間のリアル『snow rain 』には参りましたけど(笑
そして、新プロジェクト始動のお知らせ。はたして何が始まるのやら。今からワクワクが止まりませんよ。
すいません。たぶんテンションが上がり過ぎて、しばらくこんなノリになりそうです。

登場人物紹介
黒道リクト
変態過ぎるジュエルシードにドン引き。とはいえ、当たり前のように性欲はあるし、年相応に知識や興味もある。ただし、ロリコンではない(重要)
高町なのは
友人が触手プレイされたあげくに全裸にされるという珍事を目撃した。性知識に関しては、当たり前だがほとんど無知。なんならピュア。
ユーノ
困ったときのユーノ先生。通称ユノペデュア。又の名を淫獣。原作でも風呂やら着替えやらで顔を赤くしていたあたり、ミッドチルダの性教育はかなり早い模様。
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