不確実性下の改変   作:hrd

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古き悲しみの上に新たな涙を流すべきにあらず エウリピデス

 

 

 うちは何代も続く医者の家系です。

 幼い頃から勉学に励み、父の背中を見て走り続けました。父もまた、時に厳しく時に優しく私に医学を教えてくれました。私はその時間がとてもうれしく、より一層勉学に励みました。

 

 しかしながら母はそんな私を見て「もう少し待っててね」と頭を撫でながら言い聞かせます。

 幼い頃私は、その意味がよくわかりませんでしたが、15歳を迎えた時ようやく理解しました。私の家に、親戚の次男坊が養子として迎い入れられたのです。

 それ以降、父と私の間には医学にまつわる会話は減り、父と彼の会話は増えました。

 

 私は母の『もう少し待っててね』という言葉を思い出しました。

 なにを待つのか? 「跡取」を。

 なぜ待つのか? 「あなたは繋ぎ」

 どうして繋ぎなの? 「女の子」だから。

 

 全て私の予測です。母には聴けませんでした。

 聴いてその通りの答えが返ってきたら、私は私を保てません。

 

 だから私は両親に言いました。父のような医者になりたいのだと。父は言いました。彼が家業を継ぐからお前が医者になる必要はないんだと。

 家業に携わりたいなら看護婦として彼を支え、彼と結婚し、子供を産み幸せな家庭を築きなさい。それが、お前の幸せだと。

 父の目は、私の幸せを夢見ていましたが、私を見てはいませんでした。

 

 ──闇に身投げした瞬間でした。

 

 大量の墨の中に突き落とされたように、目の前が真っ暗となり、頭が映像と音の解析を放棄した。

 手を結び、手をほどき。息を吸い、息を吐き出す。その動作を何回も行って、ようやく父が言った言葉を処理することができた。それぐらい時間を要しないと自分を取り戻せなかった。

 

 だが自我を取り戻したことでどうしようもない怒りが這い上がる。体中を暴れまわり、嵐が出口を探して口元へかけ昇る。

 私を、侮辱するな! 

 気がついた時にはそう叫んでいた。その後も口が勝手に汚く両親を罵り続けた。

 

 

 気がつくとどこかの部屋に閉じ込められていた。

 私はただ誰かの補助として、世間一般が描く幸せを築くのではなく、父のような常に前線で活躍する医者になりたかっただけなのだ。自分の思い描く幸せをつかみたいだけなのになぜ理解してもらえない。家族は一番似た環境で暮らしているのに、その家族に理解してもらえないこの状況に苛立ちが募る。

 

 ある日、家の噂を聞いた隣町に診療所を構える医者が家に来た。彼曰く、彼の友人が構える病院が人手不足で困っており、そこで学びながら医者を目指したらどうか、という願ってもない話だった。

 私は二つ返事で了承した。

 暴言をはいてから私と両親、彼との関係はぎこちなく、四六時中緊張している状態だったからだ。

 息がつまる。精神がゆっくりと絞め殺されていく。

 

 私は町医者に紹介された山奥の病院へ行き、彼に出会った。

 人間離れした冷たい雰囲気、まなざし、美貌、一目見たときから胸がどきどきした。前髪を左に流し、左目が見えづらくなっている姿も彼をより理知的に見せた。

 外科と内科を担当する彼は多忙だった。昼間は疲労から気だるげに患者の診察をし、夜になると手術室に籠り何人もの治療に当たった。

 私の知っている限り、ほとんどの人を助けることはできなかったけれど、この病院は終末患者が多い。彼は全力を尽くしたとしか言えない。

 だから彼が落ち込まないように、励まし続けた。彼の負担を減らすために今まで以上に医学の勉強をし、彼の右腕となるように自分を研磨し続けた。

 

 ある日のことだ。一人の少女が例の町医者の紹介を経て転院してきた。

 彼は寝ており、代わりに私が話を聴いた。彼女はただの軽度の喘息だった。喘息の彼女がなぜこの病院に来たのか理解できなかったが、入院の手続きを行った。

 その日の夜、院内を巡回していると彼女の病室に彼が入っていくのを見た。彼女の様子を診るのかと思い彼の後を追ってこっそり眺めていると、彼は彼女から採血した注射器をそのまま自分の腕に刺した。

 事故か、と思い部屋の中に入る直前、彼は喜色に満ちた声で呟いた。

 

 ……マレチダ。マレチダ、マレチだ、マレ血だ。稀血だ。

 

 聴いたことのない声だった。

 私はあの子に嫉妬した。来たばかりの小娘が彼をあんなにも喜ばせている。彼のあんな嬉しそうな顔を見たことがない。

 私は病室に入った。彼は気づき、私を殺そうとした。私の両手足を折り、温度を感じない目で私を見下ろしていた。

 

「役に立ってたんだがな」

 

 私の両肩を掴み、口を大きく開けた。その時初めて喰われると思った。

 嬉しかった。私の血肉が彼の体を作る。こんな夢みたいなことを考えたことはなかった。うれしさが全身から溢れ出てくる。

 

「あなたのためになるなら何でもしたい。私を食べてあなたの血肉になるなら喜んで食べられる」

 

 彼は逡巡した後、大きく開けた口を閉じた。

 私は残念に思った。

 だが彼は約束してくれた。私が死ぬ時は、彼が私を食べる時だと。それまで彼のために尽くし、一緒にいることを。

 

 それから私は医者となり、彼のために患者の体調(餌の鮮度)管理をしている。彼の「美味い」という口福の言葉は私の幸福となった。

 

「今日はどうやって食べたい? 刺身かな? もつ煮込みかな?」

 

 新婚の会話みたいでなんだかくすぐったい。

 

「処理した方がうまいが、捨てるところが出る」

「余すとこなくきれいに全部使うつもりだけど……それともまさかの踊り食い?」

「一度締めた方が食べやすい。今日は醤油につけて食べたい」

「ならやっぱり今日の夜は刺身ね! 私が捌いてあげる! 楽しみにしてて」

「捨てるところは必要最低限にしてくれ。あと血液は輸血パックに入れといてくれ。忙しい時の10秒飯にする」

「まかせて!」

 

 私は父の言葉通り、男性を支え、体を気遣い、幸せな生活を築くことが私の幸せなんだと理解した。

 私は彼と一緒にいられれば無敵だ。

 

 

 

 

 

 クルイと宇髄は鬼殺隊の本部にいた。

 広い日本家屋に美しい日本庭園。季節の花が一年中咲いている。

 本日、クルイは鬼殺隊当首、産屋敷耀哉(うぶやしきかがや)より柱任命の儀を受けに本部へ足を運んだ。

 鴉曰く、記念すべき50匹目の鬼を倒したためだ。人と鬼の生命エネルギーを見分ける眼は鬼の探索に優れ、誰よりも速く鬼を殺していった。

 

「いってらっしゃい」「いってきます」「おかえり」「ただいま」宇髄の元でそのやりとりを2ヶ月間続けた結果、クルイはいつの間にか鬼を50匹殺していた。

 殺した人の数を数えていないように、殺した鬼の数も数えていなかった。──鴉は全て数えていたようだが。

 

 クルイは、鬼殺隊最高位の柱に就任と言われても宇髄の嫁達のように嬉々とすることはなかった。庭に立っている現在も、非常に面倒くさいと思っている。

 

「いいか、絶対に失礼のないようにしろよ」

 

 宇髄は強い口調でクルイに言いつけた。

 

「わかってるよガミ様」

 

 クルイは演技気味に肩をすくめて言い返した。

 

「そういうとこなんだよ」

「はいはい」

 

 ──来たぞ。

 

 宇髄は即座に片膝をつき頭を下げた。そんな宇髄の姿を立って見ていると、膝裏を蹴られ頭を地面に叩きつけられる。クルイの額が砂利と接触した時、襖から美しい少年、お館様こと産屋敷耀哉が姿を現した。

 くそったれ──。

 未だ姿を見ていないが、足音や気配から目の前の縁側に少年が座ったことを察する。

 

「面を上げてくれないかい、2人ともよく来てくれたね。今日はいい天気だ」

 

 たったそれだけの言葉だが、人が心地よいと感じるトーンと話し方を目の前の少年は網羅していた。リーダーに必要な人心掌握の術に、産屋敷耀哉は長けていた。

 カリスマ的に人を惹きつけていた奴の姿が頭に浮かぶ。少なからず、自分もソイツに引かれていた一人である。知識として除念したことは知っているが、あの日以降から会っていないため事実は知らない。

 

 過去の感傷を振り払うように、クルイはどうでもいいことを考えて眠ることに努めた。朝特有のひんやりとした空気と暖かい日差しが、クルイの眠気をより一層深く誘う。仰々しい宇髄の挨拶を聞き流して微睡むクルイに、宇髄はクルイの頭を握りつぶすように強く握った。

 

 クルイは起きていることをアピールするために、米神を指し2回くるくると回して掌を開ける。手刀がきたが、即座に叩き落とす。

 耀哉は、クルイと宇髄の小競り合いを見届けた後話し始めた。

 

「クルイはこの2ヶ月間で誰よりも鬼を倒した。柱となる条件が満たされた」

 

 当たり前だろ。と言いたいが、宇髄に未だ頭を抑えつけられうまく話すことができないでいる。

 宇髄は耀哉の視線を受け、クルイの頭から手を離す。同時に鋭い視線を投げつけ、言葉にせずとも余計な口をはさむなという声が聞こえてくる。

 

「今日からクルイを柱に任命する。担当地域は後から鎹鴉より追って連絡する。いいね」

 

 よくない。

 すっと息を吸い、通る声を発する。

 

「オレは柱になる気はない」

 

 宇髄が動いた。

「申し訳ございません、お館様」宇髄は再びクルイの頭を掴み地面に抑えつけた。その目は怒気を孕み凍てついている。

 常人であれば心を病む程の視線であるが、クルイはこれまでの経験から耐性がついている。

 

「理由を聴いても?」

「ある血鬼術を持つ鬼を探している。柱になれば担当地区内から出られない」

「それは、日本中を旅して回りたいということかい」

 

 クルイは耀哉を強く見つめ、頷いた。ここで妥協する気はない。

 

「君はいつも他の子とは視点が違う。最終選別の時は藤の花を持って山に入ったり、刀の要望を言ったりしたそうだね」

 

 クルイは淡々と言った。

 

「釣りをしたことはあるか」

 

 脈絡のない一言に、耀哉は一瞬虚を突かれたが、予測のできない話に口角を上げた。

 

「ないよ」

 

 人間を餌に例え、鬼を魚に例える。

 

「餌がないと魚は釣れない」

「素潜りで狩る手段もあるんだよ」

 

 現在の方法、鬼の後を追い狩る手段を伝える。

 

「労力は最小限にとどめたい」

 

 自分を餌に釣ってやる。

 耀哉はクルイの言いたいことを察しほほ笑んだ。

 

「餌と思って食いつくが最後、気がついた時には喰われているということだね」

 

 鬼のいるところに隊士を派遣するのではなく、隊士を餌にして鬼を釣る。実力のある者にとってはその方が効率的だ。

 

「言いたいことはわかった。それでもそれらの理由では例外は認められない。柱の一人当たりの担当地域は広い。柱の人数が増えることで一人当たりの警備地域を減らすことができれば、一周りにおける警備の時間を減らすことができる。それはこれまでと同様に、同じ巡回時間を使ってもその地域をより詳細に調べることができる」

 

 耀哉はクルイを見つめてほほ笑んだ。慈しみながらも有無を言わせない瞳だった。

 

「柱となる以上、覚悟してくれないか」

 

 クルイは答える代わりに瞼を閉じた。

 

「柱の刀には『惡鬼滅殺』の文字を入れるようになっていてね、しばらくの間刀を預からせてもらうよ。その代わりに、この刀を渡しておく」

 

 クルイは脇差と短刀を受け取った。せめて同じ種類の刀にしてくれと言うが、耀哉はにこにことほほ笑むだけで聞き入れてはくれなかった。

 本部を出た後、クルイは宇髄に蹴り飛ばされガミガミと説教されたのはいうまでもない。

 

 

 

 

 

──早く、早く姉ちゃんを助け出さないと。

 

 

 診療所の玄関で、少年と医者と助手が口論していた。

 

「姉ちゃんをどこにやったっ!! 早く姉ちゃんを返せ!!」

 

 少年は喚きながら医者の白衣を掴んでいる。医者は嫌悪を隠さず少年を見た。

 

「はぁー……、何度も言うけど、君のお姉さんは結核でね、この町よりも空気のきれいな病院に入院させたんだよ」

「そんなの嘘だ。父さんや母さんみたいに帰って来なくなるんだ!! お前の診療所に行く人はみんな帰ってこないんだ!! このヤブ医者!! 家族を返せ!!」

「こっの餓鬼……。人が優しく言えばつけあがりやがって。世の中の厳しさを教えてやろうか」

 

 町医者が視線で助手に指示を出す。助手は苦笑いし、少年の頭を撫でた。

 

「ごめんね、君はちょっとおいたが過ぎちゃったかな」

 

 線の細い優男である助手は、少年の後ろ首を掴み門の外まで引っ張りだす。

 

「やめろ!! 離せ!!」

 

 せめてもの抵抗に、少年は足を踏ん張り腕を振り回す。

 助手は少年の声を聴かず門の外へ放り投げた。

 少年は、全身を強く打ち地面に横たわる。身体が軋み、目に涙が溜まる。惨めな自分に嫌気がさす。泣くな。悔しいならまだ泣くんじゃない。まだ何もやってないだろうが。

 

 自分を叱咤するが、涙が込み上がる。必死に涙をこらえて空を見上げると、青空が自分の代わりに泣いているように見えた。

 早く姉ちゃんを見つけないと、家に姉ちゃんが返ってこなくなる。父さんと母さんの時と同じだ。今度は一人になる。一人は、嫌だ。

 何もできない悔しさから涙が止まらない。両腕で目を覆うが、目の端から涙が落ち続ける。何で自分はこんなに何もできないんだ。

 

 近所の人がひそひそと話す声が聞こえる。

 傍観者はさっさと消えろと、心の中で助けてくれない周りの人間を罵る。

 足音が聞こえ、すぐそばで止まり、声が降ってきた。

 

「大丈夫ですか。何か事情があるようですが、教えていただけませんか?」

 

 優しい、声の人だった。目を覆っていた腕をどけると、きれいな女の人がいた。

 

「私は胡蝶カナエと申します。あなたのお名前は?」

 

 気がついたら差し出された手をとっていた。

 

「……藤咲紫緒(ふじさき しお)です」

 

 初めて、女神を見た。

 

 

 

 

 

 青年は診察室に戻り、笑顔で医者に話しかけた。

 

「先生、追い出しましたよ」

「すまない。全く、毎日毎日……あれは誰の身内だったか」

 

 医者は、椅子に背をもたれて天井を見ていた。医者は患者を一切覚えていない。死んだ患者()を覚えても意味がないからだ。

 

「この間、山奥()の病院へ送った少女の弟ですよ」

「ああ、稀血だったって喜んでた時のか。弟も稀血か?」

「以前傷の手当と称して調べてみましたが、違いました」

「なんだそうか」

 

 人を一人、鬼が構える病院へ送ると見返りとして鬼の血が1 mL贈られる。だが稀血だと読んで字のごとく稀少な血であることから贈られる血は10 mLと跳ね上がる。

 その鬼の血を使って、二人は人間でありながらも鬼の力が使える薬を研究している。人間の可能性を広げる第一歩であり、超人を作る研究である。

 

 青年は、医者の研究を知った時目が輝いた。こんな面白い研究は他に聞いたことがない。それ以降、患者が研究の材料に見えるようになった。邪魔をする奴は鬼の餌となった。

 

「彼は、何か嗅ぎつけてるんでしょうか」

「ないだろうな。だから毎日来て探してるんだろ」

 

 医者は氷が入っている桶から小瓶を取り出した。

 

「これからはもっと慎重に、ですね」

 

「そうなる。だがこれもそろそろ試作品が完成する」小瓶の中のる赤い液体を見て医者は笑った。

 

「楽しみです」

 

 青年は柔らかい笑顔を更に深くしてほほ笑んだ。

 

 

 

 

 

 クルイは柱就任の儀を終えた後、小さな町に来ていた。鎹鴉が次の任務を伝令したためだ。

 鴉によると、この町に住む人は病にかかりやすく、すぐに死ぬらしい。噂話に過ぎない、と普通の人は笑い飛ばすだろう。聴く人によれば、笑わないだろうが。

 

 町に入ったクルイは、人目につかない町の中心地で感覚を研ぎ澄ました。足の裏から静かに入水するように、町全体の気配に溶け込み鬼の痕跡を探す。

 町中に、鬼が紛れているようには感じない。町に血鬼術は使われていない。それでも僅かに、──鬼のオーラを感じた。

 気配を感じる方角へ進むと診療所に辿り着いた。この診療所から鬼のオーラを感じる。

 

 クルイは窓から殺風景な部屋に足を踏み入れた──。

 物のないその部屋は、シンプルであり統一感のある部屋であったが、無機質で、人を寄せ付けない雰囲気を放っていた。

 部屋を見回し、床から天井の隅々まで視る。

 日陰に置いてある桶に近づき、小瓶を手に取る。中身の赤い液体を眼で視ると鬼のオーラが見えた。それは血と薬品の混ざった匂いがした。

 

 クルイは口端がゆっくりと上がっていく様を自覚した。噂話の概要が見えてくる。ここは、鬼と繋がっている。それも従属ではなく協力者として。

 この世界で初めて鬼を見た日を思い出す。あの時も、人は生き残るために人を差し出し生き抜いていた。人は極限状態に陥るとどこまでも残酷になれる。

 クルイは再び小瓶を見た。目を引くほど鮮やかな赤い液体は怪しく人を魅了している。

 ここの奴らは鬼の血を使って薬を創っているのだろう。何に使うかは大体予想できるが、それはオレの知ったことじゃない。知的好奇心は最も暴力的でない暴力だ。

 

 クルイはポケットに小瓶を入れ、部屋を歩き回った。血液の入手経路を探るが、元より物のない部屋には手掛かりになる物すら見当たらない。

 まだ会ったことがないにも関わらず、相手のプライドと警戒心の高さを感じた。

 普段から低いテンションが更に降下していく。

 

 建物内の気配が動き、誰かが部屋に近づいてくる。このまま忽然と小瓶が消えれば、ここにいる奴は怪しむだろう。

 

 クルイは鎹鴉を見た。普段使わない表情筋を使い、鴉にほほ笑みかける。ゆっくりと近づき、鷲掴む。クルイは人が部屋に入ってくるタイミングを見計らい、鴉を投げつけた。

 鴉は文句を言うように大きく鳴き、怒りを発散するように、そいつを蹴り上げ羽をばたつかせた。

 

「うわ、何だこの烏は!? くそ! どけ!」

 

 クルイはその隙に窓から逃亡した。

 持つべきものは鴉だ。嘘だけど。

 

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