織斑一夏は理解できない   作:五番目

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織斑一夏は理解できない

辺り一面に血と肉だけの光景に何も感じなくなってから、一体どれだけの時間が経ったのだろうか。

 

織斑一夏は、目の前の肉が篠ノ之箒と呼ばれていることを知らない。

 

何故なら、一夏は言葉が理解できないからだ。

 

肉が囀ずるのは只ひたすらに雑音であり、一夏にはその雑音が日本語であるなど理解できるわけもなかった。

 

山田摩耶と呼ばれる眼鏡を掛けた可愛らしく胸の大きい女性が何を言っても一夏は理解できない。

 

当然ウネウネと動き、触手が宙を舞い、粘液を至るところに飛ばす肉の塊が女性であるなど一夏には理解できていない。

 

一夏は生まれたときから、血と肉しかない世界を生きていた訳ではなかった。幼い頃は一緒に箒と剣道をしていたと、記憶している。

 

幼い頃は正常だったのだ。

 

何もかも、普通であった。

 

しかし、今は血と肉の地獄絵図が広がり、今では全てが赤い。

 

一夏がIS学園と呼ばれる場所に所属している事を理解していない。

 

何故なら、一夏は文字が読めないからだ。

 

机らしき物に本が置いてあるが、一夏はそれを教科書と理解できない。

 

目の前の粘液がこびり着いている本の中身を開いて

も、そこに書かれているのは日本語でなく、英語でもない。

 

まるで、ミミズがのたうち回っているような落書きを文字であると、一夏には理解できなかった。

 

肉の塊が直立をして何事かを囀ずりながら激しく自己を主張している有様を見て、一夏は何故興奮しているのか理解できていない。

 

その肉の塊が人間で言うセシリア・オルコットと呼ばれており、国家代表候補生であると主張し、一夏を挑発しているなど、言葉が理解できない一夏には何とも思わず、只、じっと見ていた。

 

一夏は何か黒っぽく四角い何かを持ちながら囀ずる肉の塊が自分自身の姉である織斑千冬であることなど理解できていない。

 

一夏にとって動き回る肉が人間であることなどどうでもよかった。ましてや、女性である事など些細な問題でしかなかった。

 

何を見ても、何を聞いても、何を味わっても、全てがどうでもよく、人生の楽しみなど見つけられる訳がなかった。

 

故に一夏は理解できない。

 

自身が世界初の男性IS搭乗者であること。

 

千冬が一夏を守る為、IS学園に在籍させたこと。

 

テロ組織に狙われていること。

 

一夏が他の人間と違うことに天才科学者に興味を持たれたこと。

 

大勢の人間が、一夏の見えている世界が違っており、一夏が自分以外の人間は既に絶滅しており、全員宇宙人だと思い込んでる事など。

 

理解できるわけがないのだ。

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