計画に関わる需要な要素のひとつである一夏の中にいるもの。
正式名称は一夏チルドレン。
詳しく言うなれば未来の一夏が産んだ子供の内の一体。
束と同じ場所からやってくる存在であり未来の化け物になる存在。
未来の一夏は自身のその存在を過去に送ることができる。
束も同様に自身を過去に送る。
一夏が自身の子供を過去に送るのは自身の存在の確立のためである。
自身の子供を過去に送り未来の自分の存在を保証するため。
束は自身の計画をやり直すために。
未来からきた一夏チルドレンはこの世界の一夏に寄生するように未来から送られた束と織斑夫妻が誘導する。
自身の子供と一夏は強い繋がりを持っているため、何処に居ても一夏の持つネットワークで通信する。
このネットワークはISコア同士が行っていたものを未来の一夏が改良したものである。
例え過去に送られてもその通信が行われる。
しかし、この世界ではその通信が阻害される。
この理由は未来の一夏には分からないことであり、一夏を深く理解している束にも分からなかった。
この現象は度々起こることなのだが束はこれを問題視しなかった。
だから、計画は失敗するのだ。
気付かない束は一夏を求める。
一夏チルドレンとそれを産む一夏が束にとって必要な存在であり、また愛しい存在なのである。
故に、求めるのだ。
愛しい人であり、化け物を。
自身の交尾相手である一夏を求めてしまうのだ。
IS学園にて行方不明者の数が増加している。
その事実を知るものは少なくない。
学園内の教職員、生徒、亡国機業、国連、各国の政府そして篠ノ之束。
国家代表候補生にも行方不明者が出ている現状では、万が一外に情報が洩れないようにするために国と篠ノ之束が協力している。
現在、IS学園内では行方不明者についての対策等は行っている。
表面上は束による感染した人物の思考を誘導するウィルスをIS学園にばら蒔き、行方不明者の家族にも当然ウィルスに感染している。
このウィルスは束の細胞により作り出されており、感染経路としてISコアに触れる、その触れた人間との空気感染あるいは接触感染より爆発的に広がっていく。
このウィルスに感染していない人間は存在しない。
千冬も感染しており、異常な事態を異常と捉えることをしない。
大衆はどれだけ行方不明になっていても気にも止めない。
例え家族や友人、恋人、クラスメイトが行方不明になってもいつも通りの日常を送るだろう。
そうなるように束が作り出したのだ。
しかし、あくまで思考を誘導するだけであり、自力で気づく者もいる。
そうとも知らない各国の政府はこのウィルスに喜んで飛び付いた。
これなら計画を完遂できる。
長年の望みが果たされる。
今現在、IS学園に入学した者、転入してくる者、国家代表操縦者にはこの思惑について知る人間はいない。
例え勘付かれても一夏の餌にしてしまえば問題ない。
と、各国の政府、国連は考えている。
何故、束は人間の思考を完全に制御する術を持っているにもかかわらずそうしなかったのか。
束は考えた。
餌を完全に制御してしまえば計画を容易に完遂できる。
しかし、その先は束が望む結末ではなかった。
人類全てが成体となった一夏の餌になり束を含めた宇宙に存在する全ての生命が、完全体の一夏に餌として服従するしかなかった未来になることを考えれば苦労など気にするまでもない。
簡単に人類を制御したとき、何らかの要因で計画が失敗するのだ。
まるで、意思を持った運命が邪魔をするかのように。
だから、これまでの失敗を踏まえて行動しなければならなかった。
未来を変えるためには多少の犠牲は付き物である。
例え、アレの餌になってもアレの中に溜め込まれているデータベースにアクセスして、箒やその他の人間を再生すれば良い。
未来から来た束にとって容易なことである。
これから一夏は世界を食べ尽くすだろうが、束は諦めない。
何度だって繰り返しても、絶対に一夏を必ず自身の物にしてみせる。
そうすることでこの宇宙に存在する生命は束と一夏の子供で溢れて幸せに暮らせる。
計画が成就した暁には箒や一夏、千冬と一緒にこの世界を旅でもしようか。
だが、優先して取り戻すのは一夏チルドレンでありそれに寄生されている一夏だ。
そして、産まれてくる一夏の第一子を自身の子宮に埋めて再度出産を果たす。
そうすることで束は満足感を得るのだ。
一夏の子供は束が産む。
そうすることで一夏を独り占めできる優越感が得られる。
あの自ら人柱となった織斑夫妻を利用してきたのだ。
今回は成功する。
しかし、束は気付いていなかった。
己の滑稽さを。