妾の子供として父親に愛されずに生きてきた。
あの家には自身の居場所などない。
シャルロットは心の中で、助けを呼んでいる。
大好きだった母親が死んでからとても寂しい思いをしてきた。
そんな母親が言ったのだ。
いつか、シャルロットを愛してくれる人が必ず現れる。
シャルロットは思った。
王子様のような人が来てくれる。
シャルロットは何時までも夢を見続ける。
自身を愛してくれる人が現れるその日まで。
シャルロットは妾の子供であるが、それでもデュノア社長の娘であることは隠しようがない事実である。
シャルロットはある日、ISの適性検査を受けた。
その日からシャルロットの運命は崖を転がり始める。
あの父親に命令された。
父親でありデュノア社の社長でもある人から、IS学園に転入して男性初のIS搭乗者である織斑一夏に接触し情報を手に入れろ、と言われた。
更に、接触しやすいように男装をしろ。
デュノアの名前があり女として生まれたことは承知の事実である。
誰もが疑うようなことで、男装をしてIS学園に入れるということはスパイとしてデュノア社に情報を流すため。
父親に命令されたシャルロットは逆らうことが出来なかった。
いつか自身をこんな状況から救ってくれる人が来る。
夢見がちなシャルロットは本気で、王子様のような存在が自身の元に来てくれるということを信じていた。
自身がどれだけ汚れ仕事をしていても必ず現れる。
そう信じる、信じずにはいられなかった。
しかし、シャルロットは気付かない。
王子様など現れる訳がない。
自身を助けてくれる存在などありはしない。
IS学園にスパイとして送ったのは、織斑一夏の情報が欲しいといったこともあるがそれだけではない。
デュノア社長がIS学園に送ったのはスパイとしてだけではなく、フランス政府に取り入れるためだった。
フランス政府は自国に向けてこう言ったのだ。
IS学園に適性のある人間をIS学園に入れた企業には全面的な支援をする。
これはフランス政府だけではなく世界中のどこの国もこれを企業に向けて発表した。
その言葉の裏に隠されたことをデュノア社長は気付いていなかった。
とある情報を掴んでいたデュノア社長は情報通りに適性のある人間をIS学園に入れた。
その情報とは国連が主導で計画を進めており、目的を果たした後莫大な利益が生まれることは間違いない、といった情報が流れている。
更に、IS適性を持つ人間をIS学園に入れた国に対して国連が甘い蜜を吸わせてやる。
その計画にフランスも参加する、という話が既に決定されている。
織斑一夏の情報を手に入れて、甘い蜜を啜りたいがために正常な判断が出来なくなっていった。
本来であればこんな戯言に乗る者はいない。
しかし、誘導されている人間は気付かない。
こうして各国はIS学園に適性のある人間を送り続ける。
篠ノ之束の計画とは違って国連が進めている織斑一夏を使う計画を進めるために。