織斑一夏は理解できない   作:五番目

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織斑一夏は理解できずに服従する

一夏は子供の頃から周囲の子供と違っていた。

 

家事ができない千冬の代わりに一夏が料理、洗濯、掃除などをしていた。

 

顔も覚えていない親が居なくなってから千冬と二人で生活をしていた。

 

何故、自分たちだけ親が居ないのかと千冬に聞いたことがある。

 

幼い一夏は千冬の話を聞いてもちゃんと理解できていなかったが、千冬の話す雰囲気でなんとなく察した。

 

幼い頃から一夏は自分の家庭が普通ではないと分かっていた。

 

忙しくしていた千冬の代わりに家事をやりだしたのは、支えたかったからだ。

 

幸せだったのだ。

 

千冬と二人で生活をし、学校に通い、箒と剣道をする日々が楽しかったのだ。

 

しかし、一夏の幸せな生活は無くなったのだ。

 

ある日を境に人が居なくなり宇宙人が世界を支配した。

 

千冬と一緒に見た映画みたいだと思った。

 

一夏は窓から肉の塊が街中を歩いているのを見て夢だと思った。

 

しかし、どれ程の時間が経っても夢は覚めない。

 

いつも食べていた筈のものがよく分からないものとなり、食感はべちゃべちゃ、ブニブニとしていて自分が何を食べているのか分からない。

 

一夏と千冬が住んでいた家はドロドロとした粘液や内臓のようなもで溢れていたものの、かろうじて原形は残っていた。

 

幸いにも家の間取りは変わっていなかったので、どこがどの部屋、どこに何があるかぐらいは把握できた。

 

自分の部屋もあったが、服等のいつも使っていた物は正常に見える。

 

しかし、机だったものの上にミミズの落書きが書かれているものがあった。

 

一夏は全く読めない。

 

それでも、一番理解できないのが一夏と一緒に住んでいる宇宙人だ。

 

触手が蠢き粘液をあちらこちらに跳ばして、何事かを呟いている。

 

千冬はどこに行ってしまったのか。

 

もしかしたら、目の前の宇宙人に食べられてしまったのかと思った。

 

しかし、仮にそうなってしまっても幼い一夏には何もすることができない。

 

一夏は目の前の宇宙人に命を握られている故に思った。

 

この宇宙人の気分次第でどうにでもなることを理解した一夏は目の前の宇宙人の奴隷になることを決めた。

 

その内外へ出なくなった一夏は、空腹のため冷蔵庫らしきものを開けてみることにした。

 

そこには色々な肉片のようなものだったり、おかしな色の液体が入った容器があった。

 

この瞬間一夏は思い付く。

 

目の前の宇宙人に抵抗すればどうなるかなど考えたくない。

 

宇宙人が触手を振れば、その触手で殺されると思った一夏は精一杯の媚を目の前の宇宙人に売ることにした。

 

そうすれば、少なくとも殺されることはないかもしれないと幼い一夏が考えた必死の作戦だった。

 

何よりも一夏は目の前の宇宙人から生き残るのに必死すぎたのだ。

 

文字や言葉を理解できれば宇宙人は一夏を殺さないかもしれないと思った。

 

なんとしてでも、目の前の宇宙人に気に入られようとする。

 

一夏は文字を覚えようとする。

 

しかし、覚えられなかった。

 

自分で書いても、その文字が理解できないのだ。

 

幼い一夏はそれが意味のない行為だと知り早々に諦めてしまった。

 

宇宙人と会話などできないと諦めた一夏は、言葉を発することをしなくなった。

 

しかし、料理や掃除、洗濯をすれば気に入られるかもしれない。

 

故に覚えようとする。

 

食材は宇宙人が持ってくる。

 

食材だった物は肉片のようなものにしか見えないためにそれぞれの違いを覚えようとする。

 

料理は、何を食べても血の味しかしないものを必死で覚える。

 

同じ肉でも僅だが味が違っていたのだ。

 

とはいえ、塩味が強い、少し酸っぱい等の違いだが、自身を飼っている宇宙人に美味しいものを作らなければ殺されると思ったのだ。

 

実際に作ってみると宇宙人は一夏を褒めるように触手で頭を撫でる。

 

掃除や洗濯に関しても同じく必死で覚える。

 

毎日宇宙人の体から肉片がポロリと落ちるのだ。

 

その肉片を洗濯することを覚えたのは、洗濯して干していた場所から肉片を自身の体に着けていたのだ。

 

彼ら宇宙人は脱皮や抜け毛をして、綺麗にした後、もう一度自身の体に着ける習性があるのだ。

 

それを洗濯機があった場所に、宇宙人の体から落ちた肉片を入れて洗剤があった場所から、洗剤らしきものを入れて洗い干す。

 

部屋中が臓器のようなものと血と粘液で足の踏み場がなくなってしまうときがあるのだ。

 

それを気に入られるために綺麗にしてみると宇宙人が一夏を触手で頭を撫でるのだ。

 

これが正解なんだと思い、以降し続けている。

 

一夏は自身の有用性を知らず知らずのうちに宇宙人に言葉でなく行動で示していた。

 

これを一夏がIS学園に入学するまで続けていた。

 

すべての宇宙人は皆同じ姿をして歩き、よく分からないが動く肉の塊に乗って移動している。

 

1体で、あるいは羽根つきの速く動くやつに2体と人数はそれぞれ違うがどこかに向かっている。

 

人間のように触手と触手を繋ぎ歩いている。

 

大きな宇宙人と小さな宇宙人、大きな宇宙人同士といった組み合わせで。

 

以前と違うのが人間以外にも犬や猫を見かけないのだ。

 

ときどき、一夏よりも小さい宇宙人が歩いている。

 

その小さい宇宙人から何か細長いものが伸びていて大きな宇宙人が触手で握っているのを見かける。

 

一夏はそれを大きな宇宙人のペットだと理解する。

 

自身にもあれを付けないのは何故だろうと疑問に思うが、飼っている宇宙人が付けないのだからいいかと頭の中から疑問をなくした。

 

ある日一夏は宇宙人に連れていかれた。

 

自分と同じ大きさの宇宙人がたくさんいるのだ。

 

思考が止まっている一夏はここに居ればいいと思うことにした。

 

ただ一夏を飼う宇宙人に可愛がれればそれでいいと思った。

 

こうして、いつも間にかいつも通りの日常として一夏は生きていく。

 

生き残りあわよくば、生き残っているかもしれない千冬を探すために、ひとまず宇宙人の奴隷として生きていくことを決めた。

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