有名人な姉が、僕は苦手だ。   作:深き森のペンギン

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第1話 僕は姉が苦手

ぼんやりとした意識の中、僕は目覚めた。

ふと時計を見ると、時計は10時を指している。

そして今日は平日。

特に学校行事の代休や創立記念日などといったものではない。

 

僕はいわゆる不登校という奴である。

よって、平日のこんな時間に起きても特におかしい事ではないのだ。

 

僕は部屋を出て、階段を降りて1階に降りる。

リビングには母さんが掃除をしている姿があった。

 

「おはよう、母さん」

 

「あら、花怜。起きたのね。ご飯置いてあるから、食べなさいよ。貴方最近何も食べてないんだから」

 

起きて早々に母さんに心配された。

そういえばここ最近ほとんど食べていない。

食欲が無いのだ。

 

こう言うことは結構ある。

最近は前ほどは起こらなくなってきたが。

 

「花怜、今から千聖ちゃん迎えに行ってくるから。お留守番よろしくね?」

 

「う、うん。分かった。行ってらっしゃい」

 

僕の姉は子役をやっている。

今日はドラマの撮影で学校を休んでいる。

 

姉さんはとても優しい人だ。

僕は多分姉さんが肉親じゃなかったら好きになっていたはずだ。

 

そして、姉さんは僕が不登校になった、間接的な原因である。

僕が中学1年のころ、僕はクラスメイトに好かれていた。

クラスの人気者、という立場だった。

 

だが、それは僕の思い違いだったんだ。

クラスメイトの目的は僕じゃない。

有名人である姉さんに近づくための道具に僕を使っているだけだ。

 

その事に気づいて、僕は変わっていった。

当時明るかった性格がどんどん暗くなっていき、しまいにはクラスメイトの顔を見ると吐きそうになったりもしてきた。

 

そして、一番変わったことがある。

 

これまでは僕と姉さんはとても仲がよく、よく二人で出掛けていた。

だがしかし、僕は姉さんが苦手になってしまった。

 

姉さんを見ると、クラスメイトの顔がフラッシュバックして、気分が悪くなる。

大好きな姉さんのことを直視することも、名前を聞くことも、できなくなってしまった。

 

その事に僕は深く絶望した。

 

またあの頃のようになりたい。

屈託の無い笑顔を浮かべて、姉さんと仲良くしたい。

 

そんな言葉が脳内でこだました。

 

僕はリビングでテレビを見ていると、リビングのドアが勢いよく開いた。

 

入ってきたのは、我が家の愛犬、レオンだ。

レオンはソファに座っている僕の隣に座った。

 

レオンは鳴きながら、僕の太ももに頭を擦り付ける。

 

「レオン、心配してくれてるのか?」

 

僕がそう訊くと、レオンは元気よく吠えた。

 

「そうか。レオンは優しいな。なあレオン、僕ってまた前見たいに戻れるのかな?また姉さんと仲良くできるかな?僕にはわからないよ」

 

するとレオンは少し寂しそうな顔をして、その後、僕の顔を舐め始める。

 

「レオン、心配してくれてありがとな。僕もすこしづつ頑張るよ」

 

そしてレオンと戯れていると、母さんが姉さんを連れて帰ってきた。

姉さんは僕の方を見ると、優しく笑いかけてきた。

 

「花怜、体は大丈夫なの?」

 

「う、うん。まあまあかな」

 

「そう?それにしては顔色が悪いわよ?」

 

姉さんはこれしきの事では騙せない。

さらに姉さんは僕に顔を近づけてきた。

 

「べ、別に心配しなくていいから!僕は部屋に戻るよ」

 

「それじゃあ、お大事にね?」

 

「わ、分かったよ」

 

結果的に姉さんから逃げるようにリビングを去っていった。

僕は部屋に戻って、ベッドで惰眠を屠る。

 

数時間位たっただろうか。

母さんが部屋に入ってきて、起こされた。

 

「花怜、病院の時間よ。起きなさい」

 

「分かった。準備するから、先待ってて」

 

「はいはい、わかってるわよ」

 

僕は定期的に病院に通っている。

その甲斐あってか、最近はさっきくらいなら姉さんと話せるようになってきた。

 

「母さん、お待たせ」

 

「それじゃあ行きましょう、花怜」

 

そして僕は母さんの車に乗って病院に向かう。

病院には色々な人がいた。

 

日課で病院に通っている老人や、何やら事情を抱えていそうなマスクを着けた女性など、さまざまな人がいる。

 

「白鷺花怜さ~ん」

 

僕の名前が呼ばれた。

僕は診察室に向かう。

 

「先生、お久しぶりです」

 

「花怜君、お姉さんとはどうだい?」

 

診察室に入ってすぐ、先生にそう聞かれた。

 

「最近になって、一言二言位なら話せるようになってきました」

 

「それはいい傾向だね。その調子だと、あることをすればすぐに治ると思うよ」

 

「あること?」

 

突然、先生からあることを告げられた。

 

「花怜君、高校に行くつもりは無いかね?」

 

「高校、ですか?僕の出席日数で行けるんですか?」

 

「私の知り合いがやっている私立の学校があってね。生徒数の減少で男子生徒を募集しているんだ」

 

「そうなんですか」

 

「学力については、心配いらないだろう。君、勉強は得意なんだろう?」

 

「はい。これだけは自信があります」

 

「なら大丈夫だ。君の件はその友人に伝えておくよ」

 

「ありがとうございます。先生」

 

こうして、僕は来年から高校に通う事になった。

でも、本当にこれが治るのだろうか?

 

それは、未来の僕だけが知っている事だ。

今はただ、毎日ゆっくりとでも、歩みを止めずに歩いていこう。

 

いつか姉さんと仲良く話せる日が来るまでは。




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