前回病院で先生に高校入学を勧められて半年後。
僕は今日から高校生になる。
受験については推薦で通った。
僕の出席日数的に正規の方法では推薦は無理がある。
だが先生の友人の学校ということで問題はなかった。
いわゆる裏口入学という奴だ。
そして、今日が入学式。
僕は新品の制服に身を包みリビングに向かう。
リビングには姉さんと、母さんがいる。
「おはよう」
「あら、おはよう、花怜」
姉さんが穏やかな笑みを浮かべて言う。
だがその穏やかな笑みでも、僕には毒になってしまうのだから、悲しくなってくる。
「母さん、千花ちゃんは?」
千花ちゃん、とは僕の妹であり、白鷺家の末っ子、白鷺千花のことである。
千花ちゃんは僕や姉さんと違って高身長でモデルをしている。
一番年下で一番背が高い。
うちの姉弟は下に行くほど背が高くなっている。
「あ~、千花ちゃんなら今レオンの散歩に出掛けてるわ」
「そうなんだ。レオンの散歩なら僕も行きたかったなぁ……」
「まあ、夕方行けばいいじゃない」
「そうだね。そうするよ」
僕はテーブルに置いてある朝食を食べて、学校に行く準備をする。
準備を整えて、玄関に着いた。
「それじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、花怜。辛くなったらすぐに電話するのよ?」
姉さんが玄関まで来てくれた。
そして姉さんは僕が家に引きこもって以来、いつもこんな感じだ。
これまではそうでもなかったのに、露骨に僕の心配をするようになった。
だが、それが僕にとっての毒となっている。
「さてさてさーて、久しぶりの学校、か」
僕はこれまで通っていた姉さんと同じ学校ではなく、近所の学校に通うことになる。
ただ、そこには僕が引きこもり時代毎日相談に乗ってくれた人がいる。
それだけが救いだ。
僕が学校にたどり着き、事前に知らされていた教室に到着するとクラスの半分位の人が来ていた。
そして自分の席に座って少し携帯を弄っていると回りから声が聞こえてきた。
「ねえねえ、あの子がうちに入ってきた男子?」
「かわいい~」
「本当に男子なのかな~」
心外だなぁ。
これでも男だ。
男らしさは一切無いけど。
男らしさの無さは僕の大きなコンプレックスだ。
まず低身長で、身長が153センチしかない。
姉さんと同じ位だ。
そして見た目がウィッグや服装を変えるだけで姉さんになる位姉さんにそっくりな事だ。
だから、あえて髪は短く切っている。
「ねえねえ、」
隣の女子を呼んでいるのだろう。
僕には関係ない。
「ねえってば」
うん、僕には関係無い。
「もしもーし!」
「ヒャッ!」
僕に言ってたのか。
それにしても驚きすぎて変な声でた。
なんだよヒャッって。
「ど、どうしたの?」
「これからよろしくね!」
「あ、ああ。よろしく」
なんだ、用件はそれだけか。
驚きすぎて損した。
「それと、うちのクラスで唯一の男子って君?」
「は、はい。そう、ですけど」
「全然男の子に見えないよね~。探すのに苦労しちゃった」
「そう、なんですか?」
何なんだ、この女子生徒は……。さっきから僕の心をゴリゴリ削っていくけど、そろそろ泣くぞ?
「だって君、女子よりかわいいもん」
「か、かわいい?僕が?」
さっきから何なんだよ。
もう泣きそう。
「おいひまり、困ってるからやめとけって」
なんかイケメンな女子生徒が助けてくれた。
うん、スッゲー困ってた。
「困らせてた?ごめんなさい」
「うん、正直かなり困ってた。男に見えないって僕一番気にしてるんだけど。はっきりいってもう泣きたい。というか泣く」
とりあえず思っていることを正直に言ってみた。
そして少しして、またやって来た。
「その、さっきはごめんね?」
「プイッ」
僕は逆方向を向く。
「あちゃ~、ひーちゃんやっちゃったね~。れんくん相当おこってるよ~?」
そして逆方向を向くと別の女子生徒が立っていた。
れんくん?れんくんって誰だ?
まさか僕か?
どうやら僕は厄介な連中に関わってしまったらしい。
その後、僕の機嫌は元に戻り、少し打ち解けた。
ただしひまりの財布から小銭が少し犠牲になったが。
「花怜君って紅茶好きなの?」
「うん。紅茶は結構好きかな」
それから少し話していると、とある話題になった。
モカが急に、僕の事を見たことがある、といい始めたのだ。
「どこで僕をみたんだ?」
「羽沢珈琲店だよ~」
羽沢珈琲店?そういえば姉さんが話していたのを少し聞いたことがある気がする。
モカがみた僕って姉さんの事だ。
「モカ、それ僕の姉だよ」
「え~!?すっごいそっくりだね~」
「そうなんだよ。姉さんと見た目が瓜二つなんだ」
そして、担任の教師が入ってきた。
それから入学式が行われ、ホームルームでは自己紹介をした。
唯一の男子ということだからか、回りからはかなり注目されてうまく話せなかったが、なんとか乗りきった。
そして、高校生活初めての日を終えて、家に着いた。
ただし、休んでいる暇はない。
なぜなら、今日は病院だからだ。
僕は制服のまま母さんの車に乗り病院に向かう。
「やあ、花怜君。高校はどうだい?」
「結構楽しいです。男子が僕一人なことは少し気がかりですけど」
「心配いらないよ。すぐ慣れるさ。それで、君の病気は順調に回復している。あと一月くらいで完治するだろう」
「そうなんですか!?」
「そうなんだよ」
僕の病気があと一月で治るなんて。
これで姉さんとちゃんと話せる。
待っててね、姉さん。
僕はまた、姉さんと仲良し姉弟になりたい。
だから、僕は頑張るよ。少しずつだけどね。