「担当上忍~!?」
「そうだ。お前には今年卒業見込みのある下忍三人の担当上忍を任せたい。もちろん、卒業試験込みでな」
火影室に呼び出されたナルトは里の長である六代目火影であるはたけカカシから下された命に首を傾げる。
「でもさ、カカシ先生! オレってば、ついこの間まで色んな任務に引っ張りダコだったんだぜ。サクラちゃんもサスケに付いて行って里に居ねぇし。そんな余裕あんの?」
ナルトの質問にカカシは目を細めて笑う。
「今の忍界は五里が和睦を結んでいることでかつてない程に安定している。それにお前も将来火影になる気なら、後世の育成に携わることも大事だ。なによりナルト。お前はついこの間、お子さんが生まれたばかりだろ? 担当上忍なら、ある程度時間が出来るし、ヒナタを安心させてやんなさいよ!」
「あ、ありがとうだってばよ! カカシ先生」
穏やかな口調で言うカカシにナルトは照れ笑いを浮かべて頬を掻く。
妻であるヒナタが長男であるボルトを妊娠していた頃に、ナルトは多くの危険な任務に身を投じて碌に面倒が見れず、ヒナタの実家である日向家に頼りっきりになってしまっていた。
出産にこそ立ち会えたものの、やはり子供の面倒も任せっきりになっていて、申し訳ない気持ちもある。
なにより、長男がもう少し大きくなるまでは家族としての時間を大事にしたいという想いもあった。
そこでカカシが念のため、冗談めかしてだが釘を刺してくる。
「一応言っとくけど、時間を取りたいばかりに試験を手抜きするなんて真似はするなよ?」
「へっ! わかってるってばよ、カカシ先生! 未来の木ノ葉を背負うガキを見定めるんだ。手抜きなんて出来ねぇし、してやらねぇよ!」
そう言って手の平に拳を軽く打ち付けるナルト。
そしてカカシは指示を出した。
「ならこれから、イルカ先生の所へ行って担当の卒業生に関する資料を貰ってくれ。頼んだぞ、ナルト」
「任せてくれってばよ!」
親指を立てて火影室を後にするナルト。
「さて、と。アイツに先生が務まるか不安だけど、ま、なるようになるでしょ」
火影という里のトップを目指す以上、下の者の育成に無関心という訳にはいかない。
それに歴代の火影も善悪はともかくなんだかんだで優秀な忍びを育て上げている。
カカシ自身がそれに該当するかは自信はないが、どの道、一度くらいは
ここから先はかつての部下を信じるだけだとして書類仕事に戻った。
「まさか、お前が先生になる日が来るとはなぁ」
「どういう意味だってばよ、イルカ先生」
感慨深げに言うイルカにナルトは少しだけ拗ねたような態度を取って見せる。
しかしすぐに意識を担当する生徒に向けた。
「それで、オレが担当するのはどんな奴らなんだってばよ?」
「ほら、これが資料だ」
渡された資料に目を通す。
子供の頃はこうした書類や資料に目を通すことをめんどくさがっていたが、流石に木ノ葉の忍として任務をこなしていくうちに読むのは慣れていった。
それでも、シカマルやサクラなど、同期の頭脳派には敵わないわけが。
「日向の家の子供も居んのか……」
最初に目を通したのは日向家特有の白眼を持った気弱そうな少年。
次に活発そうであり、生意気そうなトンガリ頭の少年。
最後に大人しそうな金髪の少女だった。
こうして資料を見ると、自分が下忍として、教室で待った時のことを思い出す。
忍者としてスタート────正確にはまだスタートラインにすら立っていなかったのだが。それでもこれから忍者として活動していくことに興奮を抑えきれなかった。忍者の厳しさなど知らなかった子供の頃の自分。
それを写真に写る子供たちに投影してしまうのはナルト自身、なんだかんだで精神的に成長したからだろう。
(とにかく、カカシ先生みたいに大遅刻だけはしないようにしねぇとな!)
心の中でそう決意しながらナルトは細かな情報を頭に叩き込んでいった。
忍者アカデミーでの卒業試験を合格した子供たちが集まる教室の中にナルトが入ると教室の中でどよめきが走る。
「え!? アレってうずまきナルトさん! なんでここに!?」
「もしかしてどこかの班はあの人が先生に付くってこと!?」
「えー。いいなぁ! ズルい~!」
数年前の暁のペインとの戦いから第四次忍界大戦。そして月の落下事件など、里や忍界を救った英雄として人気と知名度は絶大なモノがある。
それは数年程度では衰えてはいない。
そんな感じに室内が騒がしくなると、イルカが一喝した。
「静かにしろ! お前たち! これからお前たちは担当上忍の指示の下で様々な任務をこなしてもらう! 上忍の先生の指示に従って任務遂行に励み、各々の技を磨くように! それでは各先生、お願いします」
言われてグループになった卒業生生徒たちに上忍たちが近づいていく。
当然ナルトも自分の担当する生徒へと近づいていく。
「オレがお前たち第七班の担当上忍の、うずまきナルトだってばよ」
新品の額当てをした子供たちが驚いた表情をし、それを見た周りが「いいなー」とか「わたしもナルト先生が良かったー」などと言う。
「早速外へ出ろ、お前ら。これから厳しい任務の始まりだってばよ!」
そう言ってナルトは卒業生3人を促した。
「とりあえず、同じ班でやっていくんだ自己紹介でも始めるか!」
かつての自分と同じように適当な広場に腰を下ろさせて自己紹介を始める。
「オレの名前はうずまきナルト! 好きな物はラーメンとおしるこ! 趣味は花の水やりってところか。そんでもって将来の夢は火影になることだ。こんな感じで左から順にな!」
言われて左に居た日向家の少年がは、はい! と緊張した様子で始める。
「ボ、ボクは日向コムギって言います! す、好きな物は卵料理で、趣味は家庭菜園、です……将来の夢は、特に……」
オドオドとした様子で自信無さげに話す姿はかつてのヒナタを思い起こされる。
次に明るい茶の髪を逆立たせた元気のある少年がおう! と勢い良く手を上げてから、頭の後ろに回す。
「オレは、火縄ヒヒ! 好きなもんは肉料理全般! 趣味は写真を撮ったり、見たりすること! 将来の夢は色んな所を旅して見て回ることだぜ!」
旅と聞いて、ナルトはかつて自来也の連れられた修行の旅を思い出す。
師の修行は厳しかったが各地を渡り歩くのは素直に楽しかったなと思い返す。
最後に金髪の大人しそうなぼんやりとした感じの女の子が話を始めた。
「ながれメイ……趣味と好きな物は薬の調合。将来の夢は医療忍者になって薬の研究にをすること、です?」
「いや、なんで最後は疑問形なんだってばよ……」
中々に癖のある性格の生徒が集まったな、と思いながらナルトは本題に入る。
「それじゃあお前ら。これからこのメンバーで任務に当たるがその前に明日やることがあるってばよ」
「あ? なんだよやることって、先生」
不思議そうに訊くヒヒと不思議そうにしている2人の反応にかつての自分を重ねながらナルトはカカシと同じ答えを返した。
「サバイバル演習だ。こっからが、お前たちのホントの卒業試験を開始するってばよ」
ナルトの言葉に3人は動揺が走ったが、ヒヒが笑い飛ばした。
「冗談きついぜ先生! だったら、学校での卒業試験はなんだったんだよ!」
「あれは下忍になる可能性のある生徒を選別する試験だってばよ。試験を受けるための試験ってとこか? ちなみに、この試験は脱落率66%の超難関試験。落ちたら、忍者学校に戻るか、忍者の道をスッパリ諦めるかだってばよ」
「つまり、下忍になるには先生に実力を認めてもらうことが条件?」
「そういうこった。細けぇことはこのプリントに書いてあるから。しっかりと頭に叩き込んどけってばよ!」
3人は渡されたプリントを険しい表情で睨む。
その姿にナルトは内心、懐かしさで苦笑した。
(カカシ先生も、オレたち第七班の説明ん時、こんな気持ちだったのかもしんねぇなぁ)
自分たちも試験に合格するために意気込んでいた。
こういうところは幾分か時間が経っても変わらない。
「じゃ、明日、指定された場所にちゃんと来いよ! 時間を守ってな!」
「おー! ちゃんと全員揃ってんな! えらいぞー」
「バカにすんな! 当たり前のことじゃねぇか!!」
「そうだよなー…………カカシ先生に聞かせてやりたいってばよ」
なんせ、ナルトたち第七班の演習の時、担当上忍であるカカシは数時間遅刻した上に、謝罪する気あるのかと言いたくなる言い訳を聞かされたのだ。
(うん。今思い出してもちょっとムカッとするってばよ)
これから忍者になれるかの瀬戸際なのにあの遅刻癖と態度。あの時はサスケは段々と機嫌が悪くなり、サクラは集合場所を間違えたのではないかと不安になり、ナルトもジタバタと文句を言っていた。
(まぁ、そのおかげで変な緊張はしなくてすんだんだけどさ……)
そこまで考え、メイが感情の乏しいが透き通った声で質問した。
「それで、試験の内容は?」
「あぁ、コレだ」
「鈴、ですよね? 2つ」
「そうだ。この鈴を取れた奴は合格。つまり最低ひとりは学校に戻ってもらう。お前たち
色々と考えたが、やはり先生であったカカシと同じ方法がこの試験にはうってつけだと考え、同じ内容の試験にすることにした。
ナルト自身、そういうのを考えるのが苦手だったのもあるが。
やや挑発じみたナルトの言葉にヒヒがビシッと指差して豪快に宣言する。
「上忍だか里の英雄だか知らねぇが! 俺の実力ならそんな鈴、ソッコーで取り上げてやんゼ!!」
「それは口じゃなくて実力で証明してみろってな。それっじゃ今からきっかり2時間。よーい、スタート!」
こうして、卒業生の下忍試験が始まった。