ナルト先生の新人下忍育成記   作:赤いUFO

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Cランク任務・壱

「今日、お前も任務で里の外へと赴くのだったな」

 

「はい、父さま」

 

 朝食を終えて今日の任務のために荷物の点検をしているコムギに父であるコショウはどこか感慨深げに言う。

 言葉は短く、彼なりに息子を激励する。

 

「まだ下忍とはいえお前も木ノ葉の忍者だ。その額当てに恥じない行動を心掛けなさい」

 

「……はい。わかっています」

 

 それが、息子に伝わっているかはまた別問題であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行ってくんな!」

 

 ヒヒは荷物を肩にかけ、これからの初めて里の外に出ることへの期待感に胸がいっぱいだった。

 

 ────カラクリ玩具屋『火縄』

 

 それが、火縄ヒヒの実家だった。

 父は中忍。母は下忍のまま忍者を引退し、父である火縄イオウが忍者時代に培ったカラクリ技術を子供用の玩具を製作し、販売と修理を縄張りとして営業している店である。

 ヒヒの口鉄砲も、イオウが開発したとある玩具をヒントに編み出した忍術である。

 

「元気なのはいいけど、先生の足を引っ張るんじゃないよ!」

 

 母である火縄ナベかそう言うと、だいじょうぶだって! と返す。

 

「バッチリ活躍して! 大手を振って帰って来るからよっ!」

 

「アンタのそういうところが不安なのよ……」

 

 浮かれている息子に呆れながらナベは心配そうに眉を寄せた。

 

「まぁ、いいわ。怪我だけはしないようにね」

 

「おう! じゃあ行ってきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「薬や忍具点検終わり。これで準備良し」

 

 いつも通りの淡々とした口調で荷物を詰めた鞄に封をすると、下忍になってから借りた集合住宅(アパート)を出た。すると、知っている人がいた。

 眼鏡をかけた、蛇のような顔に真っ白い肌。それは、彼女が少し前まで世話になっていた孤児院の院長だった。

 

「カブト先生」

 

「やぁ、メイ。もう出発かい? 早いね」

 

「はい。先生はどうしてここに?」

 

「君はボクが院長になって初めて忍者になった子だからね。外の任務を受けたって聞いたからちょっと様子を見に来たんだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 頭を撫でると普段無表情のメイが少しだけ嬉しそうに目を細めた。

 カブトはメイに医療忍術と薬に関する知識を叩き込んだ師だった。孤児院の院長になる前は凄腕の医療忍者だったというのも聞いたことがあり、メイ自身の目標でもある。

 

「私も、もっと頑張って。先生みたいな医療忍術を身に付けたいです」

 

「……それは、やめた方がいいんじゃないかなぁ」

 

 メイが自身の目標を言うと、何故かカブトは困ったようにやんわりと否定する。その態度にメイは首を傾げるのがいつものやり取りだった。

 

「とにかく。頑張りなさい」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい! ナルトォ!!」

 

「ゲキマユ先生! 久しぶりだってばよ!」

 

 集合場所に向かう途中、昔世話になった人物に呼び止められて嬉しそうに早歩きで近づいた。

 車椅子に乗った、片足に根性と書かれたギブスを付けている男性。

 マイト・ガイ。

 かつて現、六代目火影であるはたけカカシのライバルであり、木ノ葉────いや、忍界最強の体術使いだった忍者である。

 先の大戦で片足を失い、車椅子生活を余儀無くされたが、不貞腐れることなく今でも変わらないそのノリがナルトには嬉しかった。

 

「これから、任務か?」

 

「あぁ。担当してる新人下忍と一緒に近くの村までな!」

 

「ということはCランク任務か。そういえばナルト。新人下忍といえば、お前はどうするんだ」

 

「何が?」

 

 さすがに話を飛ばし過ぎたか、とガイは改めて言う。

 

「中忍試験だ。今回は、雲隠れの里で行うから、そろそろ下忍の推薦や準備も始まるぞ」

 

 ガイに言われてナルトはあー、と声を出した後に、懐かしそうに頬を緩めた。

 

「中忍試験かぁ。懐かしいってばよ。オレ、結局中忍にならなかったけど」

 

 ナルトは第四次忍界対戦後に火影になったカカシの推薦を持って下忍から上忍へと一気に繰り上がった。

 ただし、その時のナルトは火影クラスの実力を持ちながら、頭脳面や礼儀作法などの面で問題があり、それらを数年がかりの講習を受けさせられることとなった。

 

 その間に中忍試験を受けさせる案もあったが、ナルトの能力から試験そのものが台無しになりかねない上に、他の受験生との実力差が開き過ぎているため、下忍から上忍という異例の出世となった。

 何せ、実力は五影レベル。頭脳面は下忍というアンバランスな忍だ。いくらなんでも他の受験生たちの心を折る結果になりかねない。

 

「今年生徒を受け持ったリーも、試験までに鍛え上げると張り切っていたぞ。オレは、1年しっかりと青春させるよう言ったんだがな!」

 

「ゲジマユが?」

 

 ガイの愛弟子であるロック・リー。彼もナルトと同じ、今年の新人下忍の担当上忍になっている。

 腕を組んで少し考えるナルト。

 

「オレ、今回アイツらを推薦するのは止めようと思うんだ」

 

 以外な解答にガイは意外そうに目を大きく開けた。

 ナルトならば、今回の試験に必ず教え子を推挙すると思っていたからだ。

 

「どうした? なにか、生徒たちに問題があるのか」

 

「いや、アイツらがどうこうじゃねぇんだ。問題はオレのほうなんだってばよ」

 

 ナルトは自分の手の平を見つめる。

 

「オレ、まだ先生として未熟もいいところだし。誰かに物を教えるって思った以上に難しいってわかった。今はイルカ先生とかに色々と教えてもらってる最中だし。それにどうせなら、アイツらがしっかり合格させてやりてぇ。だから、しばらくはアイツらに力を付けさせるつもりなんだ」

 

 木ノ葉丸に螺旋丸を教えたことはあったが、教えたのはあくまでも術の概要と修業方法であって、後は木ノ葉丸個人が自力で習得した。

 それをナルトが伝授したというのは少々語弊があるだろう。

 

「ま! アイツらも優秀だしさ! もしかしたら、こっから一気に成長して、推薦すっかもしれねぇけどな! あ! いけね! そろそろ行かねぇと!」

 

「あぁ。引き留めて悪かったな」

 

「じゃあな! ゲキマユ先生!」

 

 走って去っていくナルト。その背中を見ながらガイは中忍試験で初めて見たナルトを思い出していた。

 まだ幼く、真っ直ぐに前だけを見ていた落ちこぼれの少年は、いつの間にか大きな青年へと成長していた。

 体だけでなくその心も。

 その背中を見送ってガイは笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生おっせぇよ!! 時間ギリギリじゃねぇか!」

 

「わりいわりい。ちょっと世話になった人と話しこんじまってよ」

 

 里の門の前で既に集合していた3人の教え子と今回の依頼人。

 文句を言うヒヒを宥めながら今回の依頼人と話をする。

 

「それでは木ノ葉の方々。今回の護衛、よろしくお願いします」

 

 依頼人は五十代のご夫婦だった。

 夫婦は木ノ葉隠れの里の近辺にある小さな村に住む夫婦で、木ノ葉に食料卸し、また、木ノ葉から購入した日用品などを村に持ち帰る商人だった。

 今回、この夫婦の護衛がナルトたちの任務となる

 

「あぁ、任せてくれってばよ!」

 

 頭を下げる夫婦に、ナルトは快活な笑みでそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここら辺も、大分移動し易くなりましたねぇ。以前はここまで移動するのに苦労したものですが、歳を取った私たちには大助かりですよ」

 

 荷を乗せた馬車を馬で引きながら、夫人が世間話をしていた。

 大戦以来、木ノ葉を含め、各里は外へと開いて良き、その一環で交通も少しずつ整備されて行っている。各国でも多くの技術が開発され、そのうち、一気に栄えるかもしれないというのはカカシの弁だ。

 

 始めて里の外を出た下忍たち。特にヒヒは、外の景色を興味津々に見ていた。

 

「外に興味を示すのはいいけど、ちゃんと警戒を怠るなよ。ここら辺だって、野盗とか出ることもあるんだからな!」

 

「野盗が出るんですか?」

 

「オレたちみたいな忍が護衛に居りゃあ、滅多に出ねぇけどな。それでもゼロじゃねぇ。気を抜くなよ!」

 

 里の近くに在る村とはいえ、こうして移動してい間を狙われて強盗に及ぶゴロツキの集まりは途絶えることがない。

 だが、こうして忍者が護衛に就いていれば、彼らは諦め、手を出してこない。

 ナルトたちが護衛して見せているだけで、ゴロツキたちへの牽制になり、抑止になっているのだ。

 それでも襲ってくるなら、物を知らない馬鹿か、その野盗たちがそれだけ切羽詰まった状態なのか、忍者を相手に出来るだけの手練れが居るということになる。

 もっとも、そんな事態は滅多にないのだが。

 だからこそのCランク任務なのだ。

 

「へ! 仮に野盗なんて出てきても、俺たちがあっという間にやっつけてやるよ!」

 

 強気な態度を取るヒヒに婦人が柔らかな笑みを浮かべた。

 

「頼もしいわね。それじゃあよろしくね」

 

「おう!」

 

 親指をグッと立てるヒヒ。

 そこでメイが質問する。

 

「その村までは往復どれくらいかかるんですか」

 

「行きで2日。帰りはペースが違うから早くて1日で帰れるぞ。トラブルがなけりゃあ、向こうで休憩する時間も入れて、3日半くらいの想定だな」

 

「なるほど」

 

 ナルトの説明に納得したようにメイが頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休憩を挟みながら、半日ほど移動しすると、それが起こった。

 

「わりい、おっちゃん。馬を止めてくれ!」

 

 ナルトが指示を出すと、夫人が慌てて馬を止める。

 すると馬車を囲うように、20人程の男たちが現れた。

 男たちは刀や鎌など、刃物で武装していた。

 

「テメェら! 命が惜しければその荷台を置いてけ!!」

 

 この場でのリーダー格らしき男が、偉そうな叫び声で常套句を言ってきた。

 ナルトは危険がない様に依頼人に指示を出す。

 

「2人は危ねぇから、そこを動かねぇでくれ」

 

 ナルトの指示に怯えたように夫婦がコクンと頷いた。

 木ノ葉の忍びを確認すると野盗のリーダー格の男が叫ぶ。

 

「お前ら! あの人に強くしてもらった修業を思い出せ! もう俺たちは忍者なんて怖くねぇ!」

 

『おう!!』

 

 すると、野盗たちは、印を結び、チャクラを練り始めた。

 

「なっ!? どういうことだってばよ!!」

 

 野党がチャクラを練ったことに驚きながらもそれに硬くなっている暇はない。

 チャクラを練り、身体能力を上げた野盗たちは一斉に襲い掛かってきた。

 

「プッ!!」

 

 ヒヒが口鉄砲で飛ばしたコインを野盗の1人の刀に当て、体勢を崩されたところで顔面に跳び蹴りをかました。

 

「このガキィ!!」

 

 着地を狙われて鎌を振り落とされるが、割って入ったコムギが柔拳を叩き込み、内臓にダメージを負わされた敵はそのまま胃液を吐いて倒れる。

 

「ぐわっ」

 

「なんだ! 体が、痺れて……っ!?」

 

 反対方向では、メイが手裏剣(痺れ薬付き)を投げ、行動不能にする。

 チャクラを練れると言っても、彼らはそれだけの素人だったようで、正式な訓練を受けた木ノ葉の忍たちに呆気なく無力化されていく。

 

「だりゃぁああっ!!」

 

 最後にヒヒがリーダー格の男の鳩尾に体当たりを喰らわした。

 

「どうだぁ!!」

 

 リーダー格を倒したヒヒがガッツポーズを決める。

 依頼人に向けてVサインをしていると、まだ動けるリーダー格の男が鬼の様な形相で立ち上がった。

 

「ヒヒ君、後ろっ!?」

 

 コムギが叫んでヒヒが振り向くと、そこには刀を振り下ろそうとしている男が居た。

 

「調子にのんな、クソガキィ!!」

 

 その刃が、ヒヒに届こうとした時、男の体が大きく吹っ飛んだ。

 

「このバカ! 油断すんなってばよ!」

 

 ナルトが男を殴り飛ばしたのだ。

 見ると、自分たち下忍3人が10人倒している間に、ナルトはもう半分を倒していた。

 そして自分が殴り倒した男の胸ぐらを掴んだ。

 

「おいテメェ! チャクラの扱いなんて誰に教わった!」

 

 彼らのチャクラの扱いは精々チャクラの練り方を教わったばかりのアカデミー生レベルだが、独学でチャクラの練り方なんて習得できるわけがない。

 こいつらにそれを教えた者が居る筈だ。

 

「クソッ!! なんでだ! あの人は俺たちに忍術を教えてくれたのに……!」

 

「おい! あの人って誰だ!」

 

 ナルトが体を揺さぶると、男はそのまま意識を失ってしまった。

 

「先生……」

 

「大丈夫だ。そう不安そうな顔すんなってばよ、コムギ。ただ、こいつはちょっと厄介な任務になりそうだぜ」

 

 何ともなしに嫌な予感に襲われながら、ナルトは曇り空になった空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ。やっぱ、そう簡単にいかねぇか」

 

 木ノ葉と野盗の戦闘を見ていた男は双眼鏡を外し残念そうに、しかし予想通りとばかりに木の枝に座っていた男は頭の後ろに腕を組んで背を預ける。

 

「それにしてもあのうずまきナルトがこんなしょぼい任務を受けてるなんて、木ノ葉はホントに人材が厚いねー。羨ましい」

 

 そんな中で外していた双眼鏡を再び目に当てる。

 レンズに映っていたのは1人の少女だった。

 

「だが、オレのツキもそう捨てたもんじゃねぇなぁ。精々オレのために役立って貰おうかねぇ。いいだろ? メイ」

 

 イヤらしく口元を歪めてその場から男は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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