この素晴らしい冒険者たちに祝福を!   作:名枕(ナマクラ)

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このすばTRPGのルルブが発売と知って買ったはいいものの、一緒にやる人がいないのでできない……思わずPCを四人も作ってしまった……この欲求をどう発散すればいいのか……

そうだ、このPC四人をメインにした小説を書いてみよう。



1話

 ふと気付けばシンプルな椅子に座っていた。目の前には美しい女性が微笑みを浮かべていた。

 

「――――さん。残念ながら貴方の人生は終わりを迎えてしまいました」

 

 彼女は何を言っているのだろうか? 俺が死んだ? よく理解できなかった。

 

 俺は両親を事故で失い、頼れる親戚もいない中で両親の遺産を頼りに何とか生活をしていた。

 高校までは何とか遺産で賄えたが、大学へ行けるほどの金や奨学金を貰えるほどの学力もなかったため、就職を目指していたはずだ。

 そんな俺が何故死んだ? ……やはり思い出せない。自覚もないまま死んだのだろうか?

 

 死因に関してはよくわからないが、目の前の女性が言うにはここは死後の世界で、彼女は日本の死後を担当している女神様らしい。

 女神様――――アクア様が言うにはこれから俺は二つの選択肢があるそうだ。

 一つは記憶を失くしての生まれ変わり。もう一つが何もない天国で暇を持て余す。

 個人的にはどちらもごめん被りたい。

 それを察したアクア様はもう一つの選択肢を俺に与えた。

 それが、異世界転生。

 所謂剣と魔法のファンタジー世界でモンスター率いる魔王を討伐する勇者候補となるというものだった。

 

 転生の説明を受けた後、その前からずっと気になっていた俺の死因について再度聞いてみた。

 俺のしつこさに根負けしたアクア様はめんどくさそうに手元の資料を読み上げていく。

「貴方の死因は、えーっと……『病院のベッドの上にて老衰で天寿を全うする』……あれ?」

「は?」

 病院のベッドの上? 老衰? 明らかにおかしい。

 少なくとも俺は老衰で死ぬような年齢ではない。就職活動を早めに見据え始めた高校生だったはずだ。

 別にテロメアの短いクローン人間や短命設定のホムンクルスみたいなSF的設定を負っているわけでもない。ごく普通の十代男子である。

 実は俺はボケ老人で記憶が退行している可能性もあるのかもしれないが、今の俺の身体は記憶の通りの十代の姿である。ならこの姿は一体何なんだという話になる。

 そんな俺の死因が老衰? 天寿を全う? いやいやおかしいだろう。

「どういう事ですか?」

「…………」

 アクア様……女神の様子が明らかにおかしい。目に見えて大量の冷や汗をかき始めている。まるで何かの間違いに気付いたかのように。まさか……

「もしかして、手違い?」

「…………そうかも……」

「じゃあ俺まだ死んでないじゃないって事ですか。なら戻してくださいよ、元の世界に」

「……できません……」

「はっ? 何だって?」

「私の権限だと元の世界に戻そうとしたら生まれ変わりしかできません……」

「はぁっ!? 何言ってんだよ!? いくら何でもおかしいだろ!!」

「だって出来ないものはできないし……」

「おかしいだろ!! 俺何も悪くないよな!? 死んでもないのに死んだ事にされて異世界に行けとか拉致じゃねぇか!! それで間違えました。戻せません? おかしいだろ!! どう考えてもお前らの責任だろうが!!」

 思わずブチ切れてしまった。当然だろう。俺が何かしたわけでもないのに向こうの間違いで勝手に拉致されて死んだことにされて、間違いでしたけど戻せません。こっちは悪くないですし。なんて言われたらそりゃキレるだろ。

 という事で盛大にブチギレたのだが、こちらの罵声に対して相手も身体をプルプル震わせて爆発するかのように叫んだ。

「――――私悪くないもん!!」

「逆ギレ!?」

「私はここに来た人を案内するだけだし!! アンタがここに来たのに私関係ないし!!」

「関係ないわけあるか!! というか死んでもないのに死んだことにされてるってどう考えてもおかしいだろ!!」

「知らないわよそんなの私に言われても!」

「――――!!」

「――――!!」

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

「ハァハァ……!!」

「ハァハァ……!!」

「い、一旦落ち着こう……これ以上罵り合っても何の意味もない……」

「そ、そうね……」

 互いに罵声を吐き出しまくり、少しだけ冷静になれたので一度落ち着く事になった。

 本当にヒドイ罵り合いで、最終的に小学生の悪口の応酬レベルまで低レベルな口喧嘩になるくらいに互いに文句を言い合った。それこそ怒りと興奮が一周回って逆に冷静になってしまうくらいには言い合った。

「で……本当に戻せないのか? どうやっても?」

「それは、無理ね。本当に悪いとは思うけど、でもアンタがここに来た以上もう元通りに戻すことはできないの」

 わかるように例えるなら、ここは一方通行しかできない道路で、元の世界に戻ろうとするなら生まれ変わりの道を通るしかなく、その場合は俺の身体や記憶はなくなって新しい人生を歩むしかないらしい。

 実際にはできないが、もし逆走しようものなら追突事故なり合体事故なり対消滅なりの予想もつかない事故が起きてもおかしくないのだそうだ。なおこれでまだ予想できる範囲での軽い事故である。下手すると世界自体が終わる可能性もあるのだとか。

「そうか…………わかった。納得できたとは言えないけど、無理言うのはやめるわ」

 紆余曲折の末、俺は自身の死と異世界への転生を一先ず受け入れることにした。

 出来ない事を無理にやらそうとしてもできない事は出来ないわけだし、相手も困るだけだし、俺も疲れるだけだし、何の意味もない。それならば前向きに考えるしかない。

「ごめんね。その代わりってわけじゃないけど、転生特典以外にもう一つ……この女神アクアの加護を上げましょう」

「アンタの加護?」

「泣いて喜びなさい。これからアンタが行く世界において圧倒的な信仰を得ているこの私直々の加護を与えてあげるのよ」

「はぁ、ありがとうございます?」

 いくらごねた所でもう戻せないのならば諦めざるを得ないし、別世界とはいえ生き返られるのならまだマシだと思うし、まあ代わりに女神の加護ならハズレという事はないだろう。

 

 

 ――――そんな風に考えていた俺をぶん殴りたい。

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

 駆け出し冒険者が集う街アクセル。その冒険者ギルドにて喧噪の中、とあるパーティが話し合っていた。

「プリーストをパーティに入れよう」

 そう切り出したのは、紅魔族の小柄な魔法使いであった。その特徴的な黒い髪を一本のおさげに三つ編みにしていているものの、性別は中性的な見た目のためよくわからない。

「そうですね。今の面子だと守りが心配ですものね」

「前衛の戦士が盾役兼ねられたら問題ないのにねー」

「ごめんなさい。でも私今のスタイルを崩すつもりはないですし……」

 それに賛同したのは変わった形をした剣――刀を手にするメガネをかけた糸目の女剣士であった。朗らかな雰囲の女性的な体形をした女性で、一見すると切った張ったをするような冒険者には見えない。

 その女戦士を見ながら揶揄するように軽口を叩いたのは軽装に身を包んだ白髪金目の女盗賊である。

「搦め手を使わない斥候職が何を言っているのか……」

「べ、別に悪いなんて言ってないじゃないし。というかアンタも壁役できないでしょうが!」

「色物じゃない純粋な魔法職に何を求めているんだキミは?」

「ぐ、ぐぬぬ……!!」

「文句があるなら代案を出してほしいものだけどね」

 この三人は一緒のパーティを組んでいるのだが、バランスの関係でこのままでは将来的にまずいことになる、という事でギルドの酒場スペースの一画にて話し合いをしていた。

「別に文句はないわよ! でもアクシズ教徒は嫌よ。孤児院にいた頃のトラウマが蘇るから」

「ああ、キミのいた孤児院は確かエリス教が経営していたんだったか」

「私はアクシズ教の方でも性格に問題がなければいいと思いますが」

「ハァ? アクシズ教で性格に問題ない奴なんているわけないじゃない」

「決め付けはよくないさ。まあ否定はしないけどね」

「とりあえず募集を掛けるとして、誰がその募集用紙を書くかですけど……」

「アタシは嫌よ。面倒だし」

「ボクもキミに書いてもらうのは避けたい」

「ハァ!? 何でよ!?」

「何でといっても、ねぇ」

「私はノーコメントです」

「ならアンタが書きなさいよ!」

「まあ仕方ないね。ちょっとささっと書いてくるね」

 そうして紅魔族の魔法使いは募集を掛けるためにギルドの受付へと向かった。

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

 あの謎の空間から女神アクアに異世界へ転生された後、何とか冒険者ギルドまで辿り着いていざ冒険者に、という所で俺は見事に躓いていた。

「くっそ。冒険者になるのに金がいるとか聞いてねぇ……」

 というか魔王を倒せと言う割りに無一文で放り出すとか本当にふざけてると思うが、よく考えたら国民的ゲームでもろくな支援もなかったのを考えると文句も言いにくい。

 しかしどうしたものかとポケットに入っていたスマホを取り出して電源を付けて……スマホが何の役にも立たない事に気が付く。

「うーん、癖って怖い。無意識に出してたわ」

 ふと画面を見てみるが、当然圏外で使い物にならない。これでこのスマートフォンにチートが詰まっていれば万々歳だがそんな事はない。バッテリーの問題もあるので光る金属板からただの金属板になるのも時間も問題だ。

 それならば使えなくなる前に誰かに売ってしまうというのも一つの手かもしれない。ファンタジーな世界であればこのスマホも利用価値はともかく希少価値はあるだろう。どこかの好事家や物好きにはいい値で売れるかもしれない。その時のために充電が切れないよう電源を落としておくか。

「――――ほう、ガラス面に光を投影しているのか。面白い道具だね、ソレ」

「……うん?」

 そう考えていると、俺の手にするスマホをのぞき込む人影がいる事に気がついた。

 ソイツは一つに編み込まれた黒のおさげに紅い眼をした魔法使いみたいな黒い衣服をまとったヤツだった。年齢は中学生くらいかもしれないが小柄で顔も将来美人になるだろうと思うのだが、男なのか女なのかがわからない。声も少年のようにも少女のようにも見えるし……どっちだ?

「というかこれ何を動力に動いているんだい? 自前の魔力? マナタイトでもなさそうだし」

「いや魔力とかじゃなくて、バッテリー……というか電気だけど」

「……電気? 電気って、雷とかのアレ?」

「うん、まあ……」

 その辺りの事は詳しくはないが、まあスマホが電気で動くのは確かだし、電気と雷が規模だけ違うだけで基本同じモノなのも確か、なはずだ。間違ったことは言っていないはずだ。……というか今コイツの目光らなかったか?

「……これ作ったのはキミかい? これの仕組みについて詳しい?」

「い、いや、仕組みとか全然わかんねーけど」

「わからないのか……まあそれは仕方ないか。一つ相談なのだけど、これをボクに譲ってはくれないか?」

 どうやらこのこどもはスマホに興味津々らしい。現状ほとんど役に立たず売ろうと思っていたスマホを欲しがるヤツにさっそく出会えたのはラッキーだが、日本で何万もしたスマホを異世界とはいえ二束三文で譲るのも勿体ない気がする。せっかくだから少しでも高値で売り付けてやろう。

「うーん、そうだな。どうしてもって言うんなら構わないけど、タダってわけにはいかないわな」

「まあそうだろうね。いくらならいいんだい?」

 いくら、と言われて通貨の相場に関して失念していたことに気付いた。そもそも千エリスってどれくらいの価値なんだ? 受付さんのあの感じだとそこまでの金額ではなさそうだけど、

「……逆にお前どれだけ金持ってるんだよ。お前のお小遣いで足りるのか?」

「む、もしかしてキミ、ボクの事こども扱いしていないかい?」

「いやどう見てもこどもだろ」

「……ふむ、まあボクは別にそれに腹を立てたりはしないが人を見かけだけで判断すべきではないさ。少なくともキミよりかは自立してると思うけど」

「はあ?」

 何を前提に自立していると言っているのかと訝しげな視線をこどもに向けるが、こどもはフッと笑いながらその根拠を口にした。

「ボクはこう見えて冒険者として自立している。それに対してキミはどうやら冒険者になるための登録金すら持っていないようじゃないか」

「うぐっ」

 まずい。さっきの受付でのやり取りを見られていたのか。つまりコイツは俺が冒険者登録も出来ないくらいに金がないって事を知っているわけで……。

「そこで取引だ。ボクがそのギルドの登録料、千エリスを支払おう」

「……それでこれを譲れってか? 流石に足元見すぎだろ」

「いやいや、ボクもそこまで鬼じゃあない。もしその電気で動くという板を譲ってくれるのならボクのパーティでキミが冒険者稼業に慣れるまでは面倒を見てあげよう」

「はぁ?」

「見たところキミ、仲間はいないだろ? もちろん募集をかけて仲間を募ることもできるだろうが、その仲間が一から十まで指導してくれる親切なパーティとは限らない。悪い話じゃないと思うけど」

「…………」

「それに、ボクはキミ自身にも少し興味があるからね。邪険には扱わないさ」

 その時浮かべたその魔法使いの笑みが、何故か綺麗だと感じてしまい、少しばかりドキリとしてしまった。コイツの性別もわからないのに……男かもしれないのに……不覚である。

「……わかった。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくね」

 

 結局、この少女だか少年だかわからない小さな魔法使いにいいようにされてしまったのだった。

 

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

 こうして俺は性別不詳の魔法使いの口車に乗せられて冒険者登録を済ませてパーティにも入る事になったのだが……

「……という事で彼にパーティに加入するプリーストになってもらったよ」

「どういう事よぉっ!?」

 その性別不詳の魔法使いにホイホイついていったらパーティに話が通ってなかった。

「というかコイツよりにもよってアクシズ教徒じゃない!!」

「大丈夫、彼はまともだ」

「信じられるかぁ!!」

「せめてその板状の玩具を弄るのやめてから言ってくださいね」

「何でこんな狂信者と一緒にいないといけないのよ……!」

 ヒドイ謂れようである。ただこの魔法使いはスマホから目を離すべきである。ここに来るまでずっとスマホ弄ってやがる。歩きスマホ、ダメ絶対。

 しかし何故狂信者扱いされているのだろうか? 俺は別に宗教に入信した記憶がないんだけど。

「いや狂信者って……そもそも俺無宗教なんだけど」

「はぁ?」

「はい?」

「いや、キミはアクシズ教徒だろう?」

「アクシ……? なにそれ?」

 何だその宇宙から落とされてきそうな衛星みたいな名前は。

「本当に知らないの?」

「知らん」

「嘘は……多分吐いてないみたいですね」

「本当に知らないの?」

 白髪の女の子に疑いの目を向けられる中、スマホから目を放さない魔法使いがアクシズ教について簡単に説明をしてくれた。

「アクシズ教は女神アクアを信仰する集団さ」

「最大宗派のエリス教を目の仇にしてる、ろくでもない集団よ」

「エリス神はアクア神の後輩であるはずなんですけどね」

「信者数ではエリス教と比べるまでもないが、その分信者からの信仰は深いものばかりだ。全員が狂信者クラスに女神アクアを崇めているよ」

「『デストロイヤーの通った後はアクシズ教徒以外草も残らない』……なんて言われてるくらいにはしぶといわ」

「信者全員が基本的に刹那的思考の持ち主で、今が楽しければそれでいいを体現していますね。犯罪じゃなければ何をしてもいいと軽犯罪を繰り返す信者の方も少なくありません」

 何だその狂った集団は。というかあれか、そのアクシズ教の御神体のアクアって俺をこの世界に転生させたあの女神の事か。何だアイツ自分を祀ってる宗教を圧倒的とか言ってたけどマイナーなんじゃねぇか。……つか何だデストロイヤーって。

「そもそも何で俺がそのアクシズ教徒だと?」

「いやだってそのペンダントどうみてもアクシズ教でしょ?」

「その衣服もアクシズ教の意匠のものですし」

「その目の青い輝きは間違いなくアクシズ教徒」

 どれもあの女神にお詫びとしてもらったものばかりだった。というか俺の目今青くなってるの?

 まあ常識レベルで狂信者集団として知られているらしいアクシズ教徒と勘違いされるのも嫌だし、変えられない目の色とか今一着しかない服はともかく、とりあえずペンダントだけでも外しておこう。

「……ん? あれ? 外れない……!?」

「ちょっと何フザケてんのよ。ちょっと貸しなさい」

 さっきまで嫌疑の目を向けていた白髪短髪のちょっと語気の強めな女の子が手伝ってくれるが、ペンダントが取れる事はなかった。

「外れないですね……」

「呪いのアイテムかよ……!?」

「アクシズの呪い……」

「やっぱアクシズ教ってクソだわ」

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

「おっと、そういえば自己紹介がまだだったね。ではボクから……」

 スマホから目を離さなかった性別不詳の魔法使いがそう言ってからスマホを机に置くと、こちらを向きながらバッとポーズをとった。

 

「我が名はらいらい! 紅魔族随一の性別不詳にして、雷電の申し子となる者!」

 

「…………ふざけてるのか?」

「失礼なヤツだなキミは。これはボクらなりの自己紹介だぞ」

「え……ここからこんな自己紹介が続くの? こんなふざけた名前と挨拶が常識なのか?」

「違うわよ!!」

「紅魔族特有の名前と挨拶ですね。らいらいは紅魔族ですし」

「ボクに言わせてみれば他の連中の方が変なんだが」

「……紅魔族?」

 また知らない単語が出てきた。何だよコウマゾクって。

「……コイツ、ホントに何も知らないわね……」

「今は後にしよう。いつまでたっても終わらないし」

「ちなみにらいらいは雷魔法の使い手ですよ」

「だろうね」

 逆にあの自己紹介での雷電の申し子やらこの格好で雷関係ない上に魔法使いじゃないとか言われると戸惑う。

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

「では続いて私が……私の名前はサラです。一応剣士を生業としています」

 朗らかでおっとりとしてそうなメガネで糸目の女性は何と剣士という前線で戦う冒険者だった。意外である。

 よく見ると手には日本刀のような得物を手にしていた。……ってあれ、この世界にも刀あるのか?

「それって刀?」

「そうですよ」

「なに? アンタその変な剣の事知ってんの?」

「ああ、俺の国で使われてたっていう武器だからな」

「そうなんですね。私は父の集めていた遺品を受け継いだだけなので刀についての詳しい来歴などは知らないんですが、この子は神器の一つらしいです」

 神器……多分、というか女神による転生特典の事だろう。異世界に異文化が流出してるけどいいんだろうか。

「ちなみにこの子の銘は『血桜一文字』です」

 ……これ命名したのは日本人だな。間違いない。

「刀の事を知っているのならわかるかもしれませんが、私は何かを守る事が不得手でして」

「ああ、確か刀って折れやすいんだっけ?」

「はい。まあこの子は相手の血を吸わせたら折れたり曲がってもまた直ったりするんですが」

「妖刀じゃねぇか」

 血を吸う刀とか、敵が持ってる武器とかだろ。「今宵の刀は血に飢えている」とかそういう辻斬りキャラの持ってそうなヤツじゃねぇか。それがこんなところでファンタジー出されても怖いわ。

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

「じゃあ最後にノアの番だね」

 最後の一人は、短めの白髪に金色の目をした、どこか斜に構えていた女の子であった。動きやすさ重視の服装から推測するに、おそらく盗賊とかの斥候役なのだろう。

「……ノアよ。まあよろしくしなくていいわ。どうせすぐお別れすることになるでしょうし」

「いくら何でもちょっと辛辣すぎない?」

「ノアさんはエリス教の孤児院で育ったらしくて、アクシズ教に対してトラウマを持っているんです」

「それは果たしてイコールで繋がるのか……?」

「アクシズ教徒のエリス教徒への嫌がらせは日常茶飯事でよく問題になりますしね」

「アクシズ教曰く、エリス教徒への軽犯罪はセーフらしいよ。もちろん世間一般では普通に犯罪だ」

 本当にクソだなアクシズ教。

「じゃあ自己紹介も終わった所で、ノアは彼にスキルの構成について一緒に考えてあげなよ」

「はぁ!? 何でアタシが!? 言いだしっぺのアンタがしなさいよ!!」

「ボクはほら、この板を調べるので忙しいから」

「このクソ紅魔族がぁっ!!」

「女の子がそんな言葉使うのはどうかと思いますけど……さすがに同意します」

「流石にヒドイわこれは……当事者の俺の気持ちも考えてくれ」

「ええー、まあ仕方ない。ならみんなでスキルの構成について考えようか」

「だからまずその玩具から手を離しなさいよ」

 

 

 ◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇

 

 

 さて、ギルドにてみんなの意見を聞きながらスキルの構成を考えたり、武器屋などでみんなに金を借りて一先ずの装備を整えた後、初めてのクエストを受けることになった。

 そのクエストの内容は、平原にいるジャイアントトードという巨大なカエルの討伐だ。

 ジャイアントというくらいだからデカいカエルだとは思っていたのだが、思っていた以上にデカかった。人一人軽く丸呑みに出来るくらいにデカい。圧し掛かられただけで多分死ぬ。

 これで初心者向けのクエストだというのだから異世界おかしい。

 そんなカエルが三匹、目の前にいる。はっきり言って怖い。

「何、アンタビビってんの?」

「いや、これはビビるだろ……これで初心者向けって嘘だろ……」

「さっさと慣れないとやっていけないわよ。ま、アンタは間抜け面晒してみてればいいわ!」

 そう言うとノアが凄まじい速さでジャイアントトードに向かって走り出す。棚引くマントから覗く両手にはそれぞれ短剣が逆手に握られていた。

 その鋭い剣閃が二度走る――――が、カエルは何とその巨体に見合わぬ機敏さで跳躍、見事に躱しきったのだ。

「ハァッ!? 何でカエルがそんな動き……!?」

「追撃しま――――っ!?」

 ノアに追随していたサラが刀を抜き、着地したばかりのカエルに切りかかろうとするが、何かに足を取られたのか、何とこけた。まさかのドジっ娘である。

「いや、これヤバくねぇか!?」

「――――雷光よ、我が意に従い、敵を撃て! ライトニング!!」

 焦る俺の横にいるらいらいの詠唱によって杖先から放たれた二筋の雷が二匹のカエルを穿った。

「……何で二匹だけ?」

「……最初から何でもできる存在などありはしない……という事の証明かな」

「は? ……ああ、まだまだ未熟って事ね」

 しかし今のでも仕留めきれなかったのか、カエルはこけたサラを捕食しようとする。

「くっ、あぶな――――」

 カエルの捕食を転がって躱したサラだったが、避けた先にいたのは大口を開けたもう一匹のカエルであった。

 回避直後ではどうしようもなく、そのままサラの身体がカエルの大口に呑み込まれた。

「サラ!?」

「く、食われたーーーーーっ!?」

「チッ……! 邪魔ぁ!!」

 ノアがサラを助けようと対峙するカエルを切り刻もうとするが、それすらもカエルは華麗に躱した。何であの巨体であんなに優雅に躱せるんだ……!?

「我が意の前に沈むがいい! ライトニング!!」

 再びらいらいの杖先から放たれた二筋の雷撃が二匹のカエルに命中するが、それでもまだ倒れない。もはや死に体のように見えるのにまだ倒れない。

 故にカエルは止まらない。

「ちょ、まっ――――」

 先のサラに続いてノアがカエルの餌食となった。

「また食われたーーーー!?」

 前衛が二人とも食われた。そしてフリーの無傷なカエルがもう一匹残っている。

 そのカエルが後方のこちらに向かってくるのは自明であった。

「や、やめっ――――」

 二分の一の確率だったが、結果を言えばらいらいが犠牲になった。

 運よく俺は生き残ったが、俺以外の全員が食われてしまった。つまり俺だけでこのカエルたちを何とかしないといけないという事である。

 捕食に夢中になっているのかカエルたちが動く様子はない。今なら攻撃を中てる事も容易いだろう。

 けれど今まで命を賭けた戦いどころかケンカすらほとんどしたことのない俺にこのカエルどもを何とかできるのか?

 ああ、もうダメだ、おしまいだぁ……思わずそんな弱音が口から漏れそうになる。このまま逃げてしまいたい衝動に襲われる。今なら逃げることも容易だろう。

 だけど、俺がやらないと三人は死んでしまう。なら、やらないといけない。

 先程より重く感じるメイスを握り直し、カエルへ対峙しようとした――――

 

 

「――――ザッケンナコラー!」

「うがーーーっ!!」

 

 

 ――――瞬間、そんな叫びと共に、二匹のカエルの口から二人の仲間が抜け出してきた。

 

「ノア! らいらい!」

 

「さっさと、死ねェ!!」

 カエルの口から抜け出すと同時にノアは二本の短剣を巧みに操り、自身を食っていたカエル――――ではなく、いまだに捕食中のカエルを切り刻んだ。

 切り刻まれて力なく地面に倒れていくカエルの口から零れ落ちたサラは、その足が地面に着くと同時に踏み込み加速――――そのまま先程までノアを捕食していたカエルの身体を一閃した。

「――――斬捨て御免」

 その呟きとともに、ずずん……というカエルの巨体が地面に倒れ込む音が鳴り響いた。

「ハァッ!! ハァッ!! ハァッ !! ハァ!! これだからッ! 肉体労働は嫌なんだッ!! 穿て! ライトニング!!」

 カエルから距離を取りながら放たれたらいらいの雷撃は狙いが甘かったのか、あるいはカエルの勘が鋭かったのか見事に躱されてしまった。

 しかし復帰したサラ、ノア、らいらい三人に対してカエルは残り一匹。これで形勢逆転、勝てる……! そう思っていると急に頭上から影が差して暗くなった。

「へ……?」

 何事かと思い頭上を見れば、視界に広がっていたのはピンク色のカエルの口内。そこでようやく思い出した。

 

 ――――そうだ。俺もカエルにとって敵だったわ。

 

 咄嗟に身体が動こうとするが、その前にバクりと食われた。

 ぐちゃりと身体に纏わり付く嫌悪感と身体を押し潰されるような圧迫感が俺を襲う。

 視界は闇に閉ざされて、声を上げようにも上げられない。生臭さを全身が包み、全身は徐々に狭くなる空間に締め付けられていく。

 

 死んだ……今度こそ本当に死んだ……。

 

 そんな諦念を抱き始めた時、突如として身体を締め上げる圧迫感から解放され、暗闇の世界に光が差した。

 

「大丈夫ですか?」

「アンタ何ボーっとしてんのよ。そんなに食われたかったの?」

「まあ無事なようで何よりだ」

 どうやら俺を捕食していたカエルをこの三人が倒してくれたらしい。

 三人の姿を見て心底助かったという自覚が湧き出てくる。なお全員粘液まみれである。

 しかし初心者向けの討伐クエストでこのザマとは、予想もしていなかった。ゲームで例えればチュートリアル戦で全滅しかけるという難易度なわけで。やはりゲームと現実は違うというのを体感させられた。

「冒険者って、大変なんだな……」

「当たり前でしょ」

 こうして、全員粘液まみれになりながらも、初クエストを達成したのだった。

「あ、あと二匹狩らないとダメですね」

「……嘘だろ」

 

 その絶望感に思わずその場で倒れ込んだのは仕方のない事だと思う。

 

 

 

 ――――こうして、俺の新しい人生が始まったのだった




続きません。




簡単なキャラ紹介

・PC1:らいらい:紅魔族のウィザード。魔法は雷しか使わないボクっ娘。劣化版めぐみん。

・PC2:ノア:現地人の盗賊。スティール以外は戦闘技能系が多い脳筋娘。罠解除とか追跡技能は持ってない。

・PC3:サラ:現地人の戦士。戦士と言いながらカバー系のスキルは取ってない殺意マシマシ娘。神器持ち設定があるもののチートデータの許可がなければ刀というなの長剣を振るう事になる。

・名無し:転生者のプリースト。実は死んでなかった系転生者。アクシズ教じゃないけどアクシズ教徒。



ちなみに最後のジャイアントトードとの死闘は実際に一人でダイスを振って戦闘をしてみた結果です。処理ミスはありましたが、まさに死闘となりました。

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