あの後、何とか残りのジャイアントトードを狩ったものの、クエストの報奨金はなんとその晩の飯代の他にみんなへの借金の返済に充てられることになったため宿に泊まる金がなくなった。……いや何でだ。
「愛の鞭だと思ってくれ。金のない時の身の振り方も一度経験しておいた方がいい」
街に戻ってきてひとっ風呂浴びた時に普通に女湯に入っていった事で性別が判明したらいらいの言葉に思わず反論しようとするが、またもやらいらいの弁舌に言いくるめられてしまった。
というか金のない俺はどこに泊まればいいんだと立ち尽くしていると、俺のその様子に見かねたのかノアが俺に声を掛けてきた。
「……どこで寝たらいいのかわからない、みたいな顔してるわねアンタ」
「まさにその通りなんだけど……」
「ハァ……野宿を避けたいんならついてきなさい」
「え? あ、待ってくれよ」
そう言ってノアが案内してくれたのは馬小屋だった。
「何故馬小屋……?」
「ここなら宿と比べて格安で泊まれるのよ。ほんとに何も知らないわね……」
ノアの話では金のない駆け出し冒険者は馬小屋で寝泊まりしているのだそうだ。
野宿よりはマシかと割り切る事にした俺だが、何とノアも馬小屋に泊まるのだと聞いて驚きを隠せなかった。しかも一緒の場所で。
「お前、俺からふんだくった金あるのに馬小屋泊まるの?」
「ふんだくったとは失礼ね。貸した金を返してもらっただけじゃない。というかどこに泊まろうとアタシの勝手よね」
「……もしかして俺の付き添いで?」
「ハァ? 自惚れないでよね。別にアンタに付き添ったわけじゃないから。アタシは節約しないといけない理由があるってだけ」
そう言いながらもシーツ代わりに藁の上に敷く大きな布切れを貸してくれたノアは口は悪いが根は良い奴なのかもしれない。いや良い奴なんだろう。
「一応、念のため言っとくけど。もし変な気でも起こしたらアンタのその股にぶら下がった粗末なモノちょん切るから。気を付けなさい」
……まあ、口は悪いな、うん。
疲れたのは確かなので藁の上に敷かれた布の上に横たわるが、中々寝付けない。寒いし臭いし寝心地は悪い。最悪だ。元の世界の布団が恋しくなる。隣にカワイイ女の子が寝ているけどそれを加味してもなお酷い。
ちなみにらいらいとサラは大部屋を借りて他の宿泊客と共に雑魚寝をするとのこと。大抵の駆け出し冒険者の生活スタイルなのだそうだ。早く俺もそのスタイルになりたい。馬小屋生活を早く脱却しよう。
身体は疲れているから眠れそうに思うんだが、これじゃ中々寝付けやしない。
こんな状況ですぐに寝れるヤツなんているのかよ……そうノアに問い掛けようとするが、耳に入ってきたのは規則正しい呼吸音……寝息だった。
「マジか……もう寝てやがる」
まさかと思いそちらを見てみると、寝返りを打ってこちらを向く姿勢になったノアの姿が視界に入る。
閉じられた瞼から伸びる意外と長いまつ毛。寝間着らしき薄目の衣服に、規則正しい呼吸で上下する胸元。
……よく考えたら、場所はどうあれ今俺女の子と同じ場所で寝てるんだよな。しかも今までに会った事のないくらいの美少女と一緒に。
どくん……と、意識すると心臓の鼓動が早くなる。
もっと……もっと近くで見たい……
これは寝付けないからもぞもぞしているだけで、近付いているのは不可抗力なわけで……と誰に言うでもない言い訳を頭の中で思い浮かべながら、少しずつ、少しずつ近付いていく。
別に触ろうとか何かしようとか考えていないのだが、特に意味もなく衝動のままに近付いていき……
「ん…………?」
「あっ……」
「…………」
ノアとバッチリと目が合っていた。これは言い逃れ出来ないヤツでは……!?
あ、でも金色の目が綺麗だ。まるで吸い込まれるかのように、もっと見ていたいという感情が芽生えてくる……ってそんな場合じゃない!
でもこのままだと間違いなく私刑にされる……! と、とりあえず何とか誤魔化さないと……!
「か、髪に芋けんぴが……!」
「────フン!」
「ギャン!?」
言い訳を言い切る前に額に衝撃が走る。目の前に星が舞う。頭突きをされたのか、痛みを感じると共に意識が遠のいていく。
「────次はないわよアクシズ教徒……!」
視界が暗くなる中で、そんなドスの効いた声が最後に俺の鼓膜を震わせたのだった。
◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇
額の痛みとともに目覚めた異世界初の朝は爽快なモノ……とは決して言えなかった。
一応疲れてたからか頭突きを食らった後はそのまま泥のように眠っていたけど、疲れはほとんど取れてない。まだ身体がだるい。あと頭痛い。
しかし馬小屋生活から脱却するために今日も今日とて仕事だとノアと共にギルドへ向かおうと思ったのだが、ノアは少し用事があるので先に行けと冷たい視線をこちらに向けながら告げてきたので、先に一人ギルドに向かう事になった。
今日は楽なクエストがあればいいんだけどなぁとか考えながらもギルドに着くと、酒場のスペースでらいらいとサラの二人が既に待っていた。
「あ、おはようございます。よく眠れましたか?」
「おはよう。一応寝れはしたけど、もう馬小屋生活は避けたい……」
ノアの寝姿に魅了されたことは秘密にする。男なら仕方のない事だと思う。むしろ俺はまだ理性が働いていた方だろう。
「その意気や良し、といった所だね。ボクとしてもよく眠れたようで何よりだ」
無理に金を巻き上げやがった癖にこの口振りとは。この野郎……いや野郎じゃなかった。このアマ……いやアマというほど女っぽくないんだが。ややこしい。
「そういえばノアはどうしました? いっしょだと思っていたのですが」
「ああ、アイツならちょっと用事があるとかで後からギルドに来るってさ。先に依頼選んどいてって言ってた」
「そうかい。ところで昨日貰った『スマホ』とやらが光らなくなったんだけど、何故かわかるかい?」
「え? ちょいと見せてみな……あー、多分バッテリーが切れたんだな」
らいらいから受け取ったスマホを弄るが、電源ボタンを押してもうんともすんとも言わない。おそらくバッテリー切れだろう。一応昨日渡した時点でバッテリーの容量は80%くらいはあったはずなのにこの短期間で0にするとは……まあずっと弄ってたもんなぁ。
「バッテリー……魔力を内包するマナタイト鉱石みたいに、電気を内に秘めた物質かい?」
「え? うん、たぶん大体合ってるけど……」
何この子理解力が高すぎて怖いんだけど。何でバッテリーが切れたって言葉だけでそこまでわかるの? むしろマナタイトコーセキって何?
「つまりスマホを再び動かすためには新しいバッテリーとやらに入れ替える必要があるというわけだ」
「まあ、そうだな。それか充電するか」
「充電! 新たに電気を補充、つまり蓄える事が出来るのかバッテリーというものは!」
「う、うん。あ、でもその辺りの仕組みとかは詳しくわからないけど」
「流れる電気を蓄える物質が既にあったなんて……! で、どうやって充電するんだい? 仕組みはわからずとも方法は知っているだろう?」
「ライトニングを撃てばいいのでは?」
「さすがにそれはこのスマホ自体が壊れるだろう。きっと他に方法があるのさ」
そう口にしてこちらを見つめてくるらいらいの赤い目がギラギラと輝きを増していっている。いや比喩表現でなく、ガチで光ってるんだけどどういう事なの……!?
というかそんな期待を込めた目で見られても、その……困る。
早く方法を言うんだと目で訴えてくるらいらいから思わず顔を逸らしたくなる。だが黙っていてもさらに圧が強くなるだけなので勇気を振り絞って口にする事にした。
「……充電は、できない」
「…………は?」
ギラギラに光っていた赤い目が一気に暗くなった。
「電気って、電圧とか電流とか……そういう強さとかに繊細な部分が多くて、決まった規格の電流とか電圧じゃないと充電ができない」
そうだと思う。詳しくないから真偽はわからないが、少なくとも前の世界でも国が違えば変電器とかがないと使えないなんて普通にあったくらいだ。まして規格化された電気がないこの世界じゃ、どうやっても充電なんてできるはずがない。
「……な、ならバッテリー自体を交換すればいいんだね。さあ、早く新しいバッテリーを出したまえよ」
自身の言葉に希望を取り戻したのか少し目の輝きも戻ってきた。だが無常……現実は無常……!!
「……持って、ない」
「…………は?」
取り戻したらいらいの目の輝きが、再び陰った。
「な、ならどこでバッテリーとやらはどこで手に入れられるんだ? 何なら取りに……」
「……バッテリーは、自然物じゃない、人工装置だ。緻密な計算と専門知識のもとに設計されてるから、何かで代用とかも多分できない……そして俺は、そんな専門知識なんて、持ってない」
「な、ならこのスマホは、どうなるんだ……? どうやったらまた動くようになると……?」
「……バッテリーがあれば、専門知識があれば、そもそも充電さえできれば、そのスマホは再び動き出しただろう。でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、らいらい。だから────そのスマホは、ここでお終いなんだ」
その言葉を聞いたらいらいは、ショックを受けたような、というか、絶望という言葉を体現したかのような表情を浮かべていた。
◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇
「動かない……動かない……動かない……動かない……」
画面の暗くなったスマホをタップし続ける装置と化したらいらい。
いくら声を掛けても元に戻る気配がないので、俺たちはこのらいらいの状態異常を時間が解決して再起動するのを待つ事にした。
「もう、確認してなかったらいらいもそうですけど、ちゃんとその辺りも伝えた上でそういう取引をしてくださいよ」
「えあっす……」
さすがに悪い事をしたかなぁ……いや俺自身はしてないんだけど、説明くらいは事前にしておくべきだったか。
しかしバグったらいらいを看護するサラを見て思う。何でサラは冒険者になったんだろうか。
見た目からしてこんな冒険者みたいな切った張ったの鉄火場に好んで来るような人種には見えないんだけど……ノアとからいらいは血の気が多そうだからまあわかるけど、サラの場合は何か理由でもあるんだろうか?
「……? どうかしましたか?」
「あ、いや、サラは何で冒険者なんてやってんのかなって思って」
「復讐のためです」
「そっか…………うん?」
……何だろう、なんとなく気軽に聞いてみたら、間髪入れずに何か予想外の言葉が出てきたんだけど。
キャッチボールしようとしたら向こうから野球ボールを投げるようにボウリングの玉を投げられたような……例えるならそんな感覚だ。
「……復讐?」
「私には父がいました。母は私が小さい頃に流行り病で亡くなったらしく私は男手一つで育てられました。考古学者をした父は、その仕事の関係で貴重な資料なり神器を持っていたんです。ですがある日、父は何者かに殺されました。父の持っていた神器や資料はほとんど持ち去られていました。残ったのは私の持つこの血桜一文字のみ。なので私は父の仇を討とうと決めたんです」
……何だろう。気軽に聞いたつもりの話がクッソ重たいんだけど。というかこの話気軽に話していい内容じゃないと思うんだけど。俺はただ世間話をしたかっただけなのに何で結構深めな身の上話になってるの?
「……そ、それで、何でそこで冒険者?」
「何の力もない小娘だと手がかりを探すのも一苦労なので、せめてまずは力を付けようと……」
ああ、成程。言われてみれば千エリス……大体千円くらいで冒険者カードというスキルを瞬時に覚えられる道具と冒険者っていう社会的立場を得られると考えたら、おかしくない選択肢ではあるのか。
「父の持っていた神器や資料は数も限られていますので、その売買のルートを調べられたら……まあその手がかりすら現状見つけられないので今は力をつけるのに専念しているわけですけど」
「その売買のルートの関係者を見つけてその持ち主を辿っていくってわけか」
「はい。情報を聞き出してその後殺します」
途方もない道のりだなぁ。調査のための時間に仇を討ち果たすための鍛錬。復讐がいい事かはともかくとして………………うん? 今なんか文脈おかしくなかったか? なんか殺すって聞こえた気が……?
「……え? その殺すって、誰を?」
「誰をって、その関係者をですけど」
「え? いや関係者別に仇と関係ないんじゃ?」
「本当に関係なければ殺しませんが、父の神器や資料を持っている、あるいは持っていた人物となるとつまり、父を殺した可能性があるという事ですよね?」
「まあ、可能性はあるけど……」
「────なら殺します」
……その時のサラの僅かに見えた眼光は、途轍もなく冷たいもので、思わず俺の背筋が凍った。
「疑わしきは殺します。身の潔白が証明できなければ殺します。可能性があるのなら、それは仇です。違いますか?」
あ、やべー。この人まとも枠だと思ってたけどそんな事なかったわ。むしろ一番やべー可能性すらある。てかこのパーティのまとも枠って俺しかいなくない?
……ま、まあ動機とか復讐に関しては俺関係ないし、無理に止めて矛先がこっちにくるのも怖いし、そこに触れなければきっとサラはほんわか女子だろうし、あまり深く関わらなければ問題ない…………いやまて。
これもし実際にサラが行動を起こした場合、同じパーティメンバーの俺たちも何かしらの責任を負わされるんじゃないか? 本命の仇が相手ならさすがに俺たちも強くは言えないけど、そこまで関係のない相手まで仇認定されてコロコロしてこっちに飛び火して、それを何度も何度も繰り返して……これ他人事じゃねぇな。
「えーっと、その、何というか。関係者はあんまり殺さない方がいいと思うけど」
「何でそんなことを言うんです? もしかして、仇……?」
「ちがいます」
ただでさえ冷たい眼光なのに目のハイライトが消えたら怖い以外の何物でもなくなってしまう。とりあえず刀抜こうとしないで。刀から手を放して。
「か、関係者ってだけで殺してたら、情報持ってる人も怖がって提供してくれる人がいなくなるだろ。それこそ仇を討つ事から遠ざかるぞ」
「情報提供を嫌がるという事は、仇認定してもいいのでは?」
「やめてくださいしんでしまいます」
……ちょっとこの人短絡的すぎない? いや復讐関係だけ直情的になるのか? どっちにしてもこのままだとアカン事になるのは目に見えるようだ。というか鞘から少しずつ引き抜かれていく刃が既に目に見えてヤバい。
「もっと言うと、その関係者が白でも黒でも殺すのはサラの目的を考えるとデメリットの方が大きいと思うぞ」
「デメリット?」
「白黒関係なく関係者を殺してたら情報提供なくなるのは当たり前だ。誰だって殺されたくないもの」
もちろん俺も殺されたくない。現在進行形で。
「で、相手が白の場合は言わずもがな、黒の場合、無暗に殺すと仇にサラの情報が行く可能性もある」
殺さなくても情報が行く可能性はあるが……まあそれに関しては黙っておこう。
「仇に不用意にサラの事を知られたらどんな手を取ってくるかわからない。直接サラを排除しようとしてくるか、あるいはサラの手の届かない場所に行く可能性だってある」
「む……」
「そのせいで仇を討てなくなったら本末転倒、だろ……?」
だからその刀を抜く手を戻してください。少しずつ抜いていくのやめてください。怖すぎるんで。
「……そう、ですね。私少し焦っていたのかもしれないですね」
そう言ってサラは刀を完全に納めて息を吐いた。とりあえず俺の命の危機は去った……!
「あ……すみません。あまり面白い話ではなかったですよね」
「いえ、こちらこそすみません……。というか俺にこんな話聞かせてよかったのか?」
「構わないですよ。別に減るような話ではないですし、少なくとも貴方は仲間ですから」
そう言って微笑むサラの眼差しに先程の冷たさは存在しなかった。
その事にほっとしながらも、つい気になった事を聞いてみることにした。
「ちなみに他の二人はこの話、知ってるの?」
「はい。知っていますよ」
「ちなみに、もしも、もしもの話だけど……ノアやらいらいが仇だってなったらどうするんだ……?」
俺の質問に、サラはにっこりと笑みを浮かべてこういった。
「────殺します」
◇ こ ◆ の ◇ す ◆ ば ◇
「遅れて悪いわね。何かいいクエストあった……って何これどうしたのこのボクっ子?」
用事とやらが終わったのかギルドに出てきたノアを出迎えたのは未だに動かないスマホをタップし続けるらいらいとそれを見守る俺たちの姿だった。
「実は……」
俺たちはらいらいが何故こうなったかを説明すると、ノアは隠す様子もなく大きなため息を吐いた。
「……アホらし。アンタたちそんな事で時間を無駄にしてたの?」
「すみません……」
「いやそんな事って、声かけても反応がないんだから待つしかないだろ」
「アクシズ教徒は黙ってろ」
やめてくれ、その言葉は俺に効く。というか俺に対して辛辣すぎない?
「というか、こんなモン叩けば治るでしょ」
「さすがにそれは……」
どうかと思う……なんて言っている間にノアはスマホタップロボと化したらいらいの頭を何のためらいもなく叩いた。止める間なんてなかった。
「ちょっ、おまっ……!? 絶望してるヤツの頭思いっきり叩くとかマジか!? ひと昔前の家電じゃないんだぞ!」
「うっさいわねー……というか何意味の分かんない事言ってんのよアンタ」
「カデン……?」
昨日の事で口悪いけど良い奴認定してたノアのこうも雑な対応に思わず驚いてしまったが、当のノアは特におかしなことはしていないとでもいうかのような態度であった。というかコイツ結構雑だな。
そして肝心のらいらいはというと……
「────はっ……!? ボクは一体……!?」
……何と正気に戻っていた。
「ええー……」
「ほら、治ったじゃない」
「治りましたね……」
「……あれ、ノア? いつの間に来たんだい?」
「アンタが呆けている間に、よ」
「……らいらいは家電だった?」
さっきの目の明滅もあり、俺の中で『らいらい家電説』が浮上したのだった。
「さて、ようやくノアも来た事だし今日のクエストについて決めようか」
「むしろアンタ待ちみたいだったんだけど」
「誤差みたいなものだろう? 細かい事は気にしないでくれ。それより雷電撃ちたい」
「コイツ、自分の欲望に忠実すぎだろ……」
異世界生活二日目だけど、大まかにならこのメンバーの事がわかってきた気がする。
「このボクがひたすら雷電を解き放つだけで全てが終わるクエストを探そう。肉体労働断固反対」
らいらいは頭脳面が飛びぬけて高い。人を口車に乗せるのが上手いという点もあるが、全くの未知の物体であるはずのスマホを俺のふんわりとした説明や状況から推測して俺が知っている以上にその構造や仕組みを理解していくその知能の高さは空恐ろしいものがある。
ただし、自分のやりたい事や興味のある事以外にその能力の高さを活かそうとしない。スマホを渡した時の『冒険者として独り立ちできるよう俺の面倒を見る』という約束をいきなり仲間に丸投げしようとしたくらいだ。
総括としては、欲望に忠実な知能の高いヤバい奴。
「肉体労働しないって冒険者が何言ってんのよ。ま、パパッと終わるのにしましょ」
ノアはわかりにくいが、根は優しい女の子だ。金がなくなってどうすればいい俺をわざわざ馬小屋まで案内してシーツを分けてくれる辺り世話焼きな性分なのかもしれない。自然と仲間や他人を気遣える辺り根っこは間違いなく善人なのだろう。
ただ、その口の悪さとガサツさが目立つ上に、考えるよりも早く身体が動く性質なのか盗賊なのに慎重さが全く見当たらない。盗賊としては致命的なのではと疑わざるをえない。
総括としては、根は良くても考えるより先に手が出るヤバい奴。
「じゃあ今日も討伐系のクエストを探しましょうか」
サラはこの我の強いメンバーを纏めてくれるおっとりしたお姉さんだ。纏めると言っても前に引っ張っていくリーダーとしてではなく、緩衝材のような役割と言った方が適しているだろう。
ただし、その本質は狂った復讐者だ。会ったばかりの俺を仲間扱いしてくれているが、俺より長い付き合いである仲間の二人も仇なら殺すと即答するくらいには復讐に傾倒している上に、仇の関係者は仇と判断するくらいに仇判定の範囲が広すぎて逆に恨みを買いそうなくらいには箍が外れている。さっきの会話で多少マシになってくれているといいのだが、あまり期待はしない方がいいだろう。
総括としては、目的が絡むと箍が外れるヤバい奴。
……三人とも美人ではあるし長所もあるのは確かだけど、短所も結構ヒドイ。
「……おかしいな、俺以外やべー奴しかいないじゃないかこのパーティ」
「一番ヤバいアクシズ教徒が何言ってんのよ」
え? 俺コイツらと同列なヤバさなの?
……こうして、一日は過ぎていくのだった。