ADEC ~アデック;狂気に塗れた世界最凶のReunion~   作:暁葵

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EPISODE2 サタナキア

  EPISODE2 サタナキア

 

 

「敵影反応……アリ。――『悪魔』……デス」

 

 そこは、とある都市の一角。高層ホテルの四十二階の一室。

 

 眠っている男の横で一人の『天使』が白翼を二枚広げて、聖剣を構えて厳戒態勢に入る。

 

 その『天使』の目の前にいるのは、臙脂色のドレスと黄金の槍を装備した狂気の笑みをした少女がいた。

 

 その少女は、背中から三枚の『悪魔』の片翼を広げ嗤っていた。

 

「ヒヒヒヒヒヒヒヒ‼ やっぱり『天使』は絡繰り人形しかいないのかな? 私だってちゃんとした意志はあるよ?……ヒヒ、そんなことより――殺させてもらうよ、【座天使】カマエル‼‼」

 

 少女は、少女とは思えない狂気を剥き出しにして嗤い、嗤う。

 

『天使』…カマエルは聖剣を緋色に染めて超高速で攻撃を仕掛ける。

 

 …が、少女は見事にその短調な攻撃を躱し、黄金の槍で翼を一枚削ぎ落とす。直後、カマエルは聖剣を落として悶絶する。

 

 それもそのはず。『天使』の白翼は神聖なる力を秘めた魔力の集合体と同時に神経の収束した部位である。

 

 つまり、今カマエルはあり得ないほどの苦痛と渇望に苦しんでいた。

 

 そして少女は黄金の槍で自分の指を軽く切り、血を出す。

 

「私の『魔権』よ、唸れッ‼」

 

 少女は黄金の槍に自分の血を垂らし、直後槍の刃を深紅に染める。

 

 その深紅の槍を、カマエルの心臓めがけて――――。

 

 グサッ――‼

 

 刺す、刺す、刺す、刺す。

 

『天使』だって一応人間と同じ体の構造をしている……つまり心臓を刺しまくれば『天使』だって絶える。

 

 カマエルは断末魔を上げる暇もなく息絶える。

 

 そして、詠唱を開始する。

 

「――我が「憤怒の一滴」を以て、その血と五臓六腑を捧げ我が傀儡となれ!」

 

 彼女が詠唱した直後、カマエルの下に臙脂の魔法陣が展開され、カマエルが何の変哲もなく、間接一つ動かさず起き上がる。

 

 そして段々と翼が純白から漆黒に変わっていく。

 

「これから宜しくね♪ 私の”人形”ちゃん?」

 

 彼女は嗤った。

 

 こんな狂気的な少女が、この世にいるとは思えない……それもそのはず。

 

 彼女は『悪魔』――――。

 

 それも、ADECの一員である「憤怒の一滴」の『魔権』を持つサタナキアなのだから。

 

 

   ▼ ▲

 

 

「失礼しますわ、ボス」

 

 サタナキアは『ゲヘナの漆黒魔城』に帰還し、「王の間」に居座っているボスの前まで歩み寄る。

 

「……おう、キアー。よく帰ってきた……報告書は後で提出してくれればいいから、今は話したいことがある」

 

 青年は足を組んで血塗れになって帰ってきたサタナキアに話を持ち掛ける。

 

「はい? 何でしょうか」

「実は…明日実行される【智天使】ゼルエルの殺戮計画についてだが……お前に一任しようと思うんだ」

「本当でしょうか? 私で、よろしいのでしょうか?」

 

 サタナキアは少し怪訝の目で青年に問い質す。

 

「あぁ、当然だ。【智天使長】を殺す依頼はそうそうない…お前は幹部の中でも相当活躍しているから、今回はお前に任せるんだ」

「……そうですか、分かりましたわ」

 

 ドレスのスカートをたくし上げ、了解の返事をし、「王の間」を去る。

 

 

「……………っ」

 

 青年は、「王の間」の玉座から離れ、両腕を広げる。

「フクク………」

「アーッハハハハハハハハハ‼」

 

 そして、狂気の嗤いをする。何で、こんな突然一人でに嗤いだしたのかというと――さっき見事に難関な任務を引き受けてくれたサタナキアの愚直さが原因なのだ。

 

 …あまり、自分の部下を”捨て駒”として使うのは少々罪悪感を感じるが、ADECの構成員や幹部の間でもお調子者とか呼ばれているらしいから、少し罪の意識も軽くなる。

 

 青年は、ポケットからスマホを取り出し、【智天使】ゼルエルの情報を見る。

 

「……魔星の観測者(アンドレアルフス)

 

 青年は、左目を紫苑に染めて情報資料の上に書いてあったルーン文字を解読する。

 

 そのルーン文字を日本語に解読すると、情報源に〈天使協会〉と記されてあった。

 

 つまりこの情報は『天使』らからの情報…それを敢えてADECのいつも使用している情報サイトに流すということは、即ち偽情報だということ。

 

 つまりゼルエルの『天権』、そしてステータスはもっとあるということだ。

 

 実際、この計画を崩すわけにはいかないし、アスタロトは”駒”として優秀な部類に入る。

 

「……キアーの『魔権』は「憤怒の一滴」…確か殺した者を自身の傀儡とする能力…だったか? アイツの『魔権』のせいで結構な天使の死体が出来上がってるからなー……丁度いいや」

 

 そう、この青年――ソロモン・リュースレスは、自分の部下…それも支柱的存在である幹部を捨て駒にしようとしているのだ。

 

 ボスとは、時に寛容で時に残酷……まるで『天使』のような生い立ちだが、ソロモンにそれを話すと間違いなく殺されてしまう。

 

 でなければ、こんな汚れ仕事と邪悪な道を選択した狂気の秘密組織ADECをのボスをやっていないだろう。

 

 ソロモンはスマホの画面を閉じて「ソロモンの間」へと足を運ぶ――――。

 

 

   ▼ ▲

 

 

「うーん、にしても”突破”って言ってもどうやればいいんだろう?」

 

 ここはADECの幹部の一人…アモン・ル・ノーレッジの自室である。

 

 アモンは熟考していた。

 

 その理由は、アスタロトが可哀想で仕方ないからである。

 

 アモンはこの秘密組織ADECに入団してから四年…つまりアスタロトとは同期なのだ。その同期が、やっと手に入れた大仕事を降ろされたのだ。

 

 アスタロトがあの【智天使】殺戮計画のリーダーを任された時、大喜びしていたのだ。

 

「アモちゃんアモちゃんっ!」

「どうしたの? そんな満面の笑みで」

「実はね! 今度実行される【智天使】の殺戮計画、一任されちゃったの~!」

 

 この出来事は、アスタロトが降板される1週間前のことであった。アスタロトも色々と機器を揃えており、張り切っていたのだ。

 

 ――そんなアーシャの希望を奪ったボスも許せないが、それ以上にあの馬鹿サタナキアに一任するとか…ボスは何を考えているんだ?

 

「…にしても、私も結構偉くなったもんだよなー……いや、生意気になったっていうべきかな? 流石に折角準備していたアーシャの期待を裏切るわけには行かないしなぁ……どうやって突破しようかな?」

 

 そう、アモンは絶望しているアスタロトの気持ちを汲んで、何とかしてこの計画に参加させようとしているのだ。

 

 アモンはスマホを取り出し、数日前に届いた【智天使長】ゼルエルの資料を開く。

 

 そして彼女は資料の上に記載されていたルーン文字を見つけ、それをスクショする。

 

 ――これぞ、アモン・ル・ノーレッジの『魔権』…「智欲の夜」である。

 

 その能力は、「絶対解読不可能な文字や数秘術を読み解く」というものだ。

 

「OK”グレイオウル”。このルーン文字を日本語に解読して」

 

 アモンはまるで某神と呼ばれるグ●グルに問いかけるようにスマホに話しかける。

 

 すると、スマホ画面に表示されていたルーン文字が群青の光を放ち段々と日本語に変化していく。

 

「情報先……〈天使協会〉――なるほどね。そういうこと」

 

 何かを察したような独り言をつぶやき、スマホの電源を切る。

 

 そしてベッドから離れ、アスタロトのもとへ向かう――――。

 

 

 ……一方、サタナキアは。

 

「ヒヒ…ふひ――キャハハハハハ‼」

 自室で物凄く狂気的な笑い声を上げて傀儡としたカマエルを黄金の槍…「ブリューナク」で刺し殺す。

 

 そしてカマエルは自動的に治癒し、再び立ち上がる。その姿はまさしく「人形」…「ゾンビ」ともいえる存在だ。

 

 こんな惨いことが出来るサタナキアは頭のネジを全て取ったのではないかと疑いたくなるほどだ。

 

 そして、時刻は午前0時を回った――。そう、【智天使長】ゼルエルの殺戮計画の日がやってきたのだ。

 

 実行時刻は午前5時……『天使』どもの不意を突いて殺す――といった計画だ。

 

「まさか……この私が【智天使長】殺戮を任されるとは……嬉しいことですわ‼」

 

 サタナキアは、カマエルの脳天から槍を振り下ろし、真っ二つに切り裂く。こんな惨いことをしながらサタナキアは嗤う。

 

 そして、今日に備えて様々な魔術道具を用意する。

 

 あらゆる傀儡を操る臙脂色の操り糸、数秒だけ時を停滞させるペンタクル、「ブリューナク」を覚醒させるための触媒の血液……今、代用できる機械があるというのに、サタナキアは古典的な道具を用意する。

 

 そしてサタナキアはネグリジェに着替えてベッドに飛び込む。

 

 やはり寝て体力を培うことで、万全の状態で臨みたいものなのだろう。

 

 

    

 

 

 

 

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