ADEC ~アデック;狂気に塗れた世界最凶のReunion~ 作:暁葵
EPISODE3 作戦会議
…時は遡って、アスタロトが泣き縋っている場面に映る――――。
「ちょっといいかな? アーシャ」
アモンは、涙を袖で拭きとって自室に戻ろうとするアスタロトを引き留める。
アスタロトは呼び止めるアモンに対し首を傾げる。
「どうしたの、アモちゃん?」
「実は……って、こんなところで話しちゃダメなやつだったね。私の部屋に来てよ、アーシャ」
アモンは廊下のど真ん中で、さっき考えていた”突破”についてのことを話そうとしたが、流石にいつボスに気づかれるか……そのうえサタナキアにも聞かれる可能性があるから、話を中断したのだ。
そして二人は、アモンの部屋に足を運ぶことにする――――。
「ふいぃ~、やっと到着したよ。私の部屋意外と遠いから疲れるんだよね」
アモンは自室の扉を閉めて膝を抱えて息を荒げる。
基本的にアモンは「特異情報部」というADECの計画に役立つ情報を取得するためだけに作られた部の管理長……ずっと部屋にこもってネットサーフィンをしていると、当然運動不足にもなる。
運動不足ゆえに、自室に戻る際には『ナノ級半重力装置』という超小型の半重力を発動させる便利な道具を使用しているのだ。
この道具によって、アモンは歩くことなく浮遊して移動できるのだ。
しかし、今日はなぜかその装置を持ってくるのを忘れていて、仕方なく歩いてきたのだ。
「もうアモちゃんったら~、少しは運動したらどうなの?」
「そんな禁句は言わないでよ、アーシャ。ますます疲れちゃうから……」
二人はベッドの上に座り、話の続きをする。
「で、だよ。私が話したいのはね、キミについてなんだよ、アーシャ」
「? どういうこと?」
アスタロトは再び首を傾げる。
「アーシャはさ、今回の任務を降板させられてさ、悔しいとは思わない?」
「当然だよ、私にとっては【智天使長】の任務は大仕事だからね! 悔しくないはずがないよ」
鬱憤を一気に放出させ、饒舌になるアスタロト。それを見てアモンは「うんうん」と頷く。
「だよね。だったら………」
と言って、アスタロトの耳元に口を寄せ、囁く。
「手柄を横取りすればいいんだよ!」
「………!」
アスタロトは目を見開き、驚愕する。
▼ ▲
「アーシャ~、来てあげたよぉ」
アモンは空中浮遊しながらベッドで下着姿になって眠っているアスタロトに手を振る。
しかし、当然が如くアスタロトは起きる気配すら見せない。
「…って、こんな姿見られたら一生モノの恥だよ」
そう言いながらアモンは半重力装置を停止させ、破廉恥眠り姫の前に来て脇に暖かい吐息を吹きかける。
――と、その瞬間。
「ひゃうッ――‼」
アスタロトは途端に目を覚まして甘美な声を洩らながら、頬を紅潮させる。
一方で、アモンは大爆笑していた。
「アハハハハ! 物凄いエッチな顔だったよ? というか、何でいつもそんな恰好してるの?」
その問いを耳にした直後、アスタロトは自分の姿に視線をやる。
「――――‼‼ きゃあああああああ‼」
数秒間硬直し、そして悲鳴を上げる。
「コホンッ!――」
アスタロトは咳ばらいをし、アモンに問いかける。
「…で、ここに来たってことは何か算段は整ったってことなの?」
「まぁ……その通りだね。丁度、新しいゼルエルの情報を手に入れてね……私の担う特異情報部はやっぱり優秀だね‼」
アモンは、自画自賛しながら「エッヘン!」と言わんばかりに胸を張る。
そう、その”新情報”というのは、アモンがルーン文字を解読してから後のことだった。
「みんなー、ちょっと早いけど仕事をしてもらうよ~」
アモンは扉を思い切り開いて、三日徹夜していた部下たちに仕事を押し付ける。その姿はブラック企業の課長のようであった。
部下たちは、眠すぎて制御の効かなくなった目を擦って、エナジードリンクをがぶ飲みする。
「ちょっと管理長‼ 流石に少しは休ませてくださいよ~。僕たちもうかれこれ三日寝ずに『天使』の情報漁っていたんですよ⁈」
便乗して他の部下も。
「そうですよー。せめて多少の休息ぐらい……」
部下の言葉を遮って、アモンは山積みになったエナジードリンクの缶に一蹴する。
そして、部下の胸倉を満面の笑みで掴む。
「これは”管理長”としてじゃなくて”ADEC幹部”としての命令だよ? 今度そんな減らず口叩いたら…私の『魔権』で強制労働だよ?」
アモンは部下に人間とは思えないほどの脅迫をする。
…まぁ、悪魔なのだがな。
「は……はひぃ」
部下は涙目で震えた返事をする。
その恐怖の光景を見た他の部下たちはエナジードリンクと栄養ドリンクを重ね掛けしてパソコンと再び睨めっこを始める。
そして数十分後――――。
「管理長‼ 【智天使長】ゼルエルの情報が発見されました!」
「ビンゴッ‼ それを私のスマホに転送して」
――という訳で。
「アーシャ。これが【智天使長】ゼルエルの新情報だよ」
そう言ってスマホ画面を見せつける。
そこに載っていたのは。
”智天使長・ゼルエルの持つ「神の腕」は、物理特化した血液を操る『天権』…だということは間違いないが、魔法耐性はむしろ無いということが判明した。そして【智天使長】にはもう一つの『天権』があることも判明した。その『天権』は……「奇蹟の福音」と言われている。ゼルエルはナタナエルと共に外典の監督をしていたとされ、その『天権』も引き継いでいる。…その『天権』の能力は「一時的に記憶を代償として全てを操る」といったものである”
……流石「特異」と名の付く情報部だけあることもあってか、正確な情報である。
アスタロトはそれを黙読して、直後すぐさま準備をしようとする……が。
「ちょっと待った!……と」
準備を始めるアスタロトをアモンは呼び止める。
「アーシャ。焦りは禁物っ、私に考えがあるの」
「その考えってぇ…何?」
「もしかしたら、このコトはボスも分かってると思うんだよ……」
アモンの言葉を聞いて、アスタロトは呆気を取られる。それもそのはず、自分を降板させたボスが一枚噛んでいるかもしれないと知ったら当然こんなリアクションにもなる。
「どういうことなの? ボスが関係してるって……」
「実は……ちょっと何となくで履歴調べてたらボスのアカウントログが残ってたんだよね。ボスの『魔権』って凄いから私と似たような能力ぐらい持ってると思うんだよ」
アモンはそう言ってアスタロトの肩に手を当てる。
「アーシャ。私はこの情報をボスに伝えようと思うんだよ。だからさ、それついでにもう一度交渉してみたら?」
そして、この情報を伝えるという建前と共にアスタロトにもう一度チャンスを与える。
アスタロトは瞳を煌めかせて、桃色の髪を靡かせる。
「うん! 行こ、アモちゃん」
即決。
そして…………。
「――うん。まずは服を着ようか、アーシャ」
「え? あ……そ、そそそうだね‼」
アスタロトは焦燥感を露わにして急いでクローゼットから服を漁る。
▼ ▲
「……ってわけか」
ここはソロモンが坐す「王の間」…そのソロモンが坐す玉座の目の前に跪くアスタロトとアモンがいた。
アモンは、事の顛末を要約しながら報告し、ソロモンはそれに頷く。
「ってことで、これが新情報であります」
ソロモンが頷いたのを見て、アモンは面を上げてスマホに表示された新情報をソロモンに見せる。
「――ほーん、なるほどね。いやなに、実を言うと俺もそのことには薄々気づいてはいたんだ。俺の
ソロモンは、右目を押さえながら二人に語る。
アスタロトは「流石です!」と言いながらソロモンに笑顔で称賛の言葉を贈る。
「まぁね、ここだけの話…キアーに任務を任せたのはそれが理由なんだよ。アイツの場合、いい感じに散ってくれるからな」
流石に落ち込んでいた少女に対して「駒」と言ったら絶対ストライキとか起こしそうだから、せめてサタナキアのことを駒扱いするソロモン。
「そ、そうだったんですか……?」
アスタロトは希望を取り戻したかのような瞳の輝きをして、ソロモンに質問する。
ソロモンは微笑みながら頷く。
「ま、アーシャは優秀な幹部だから早々失うわけには行かないんだよ」
「……! ありがとうございます‼」
そして、ソロモンは二人に話を持ち掛ける。
「――っていうことで、二人には今から俺の部屋に来てもらう。作戦会議と行こうじゃないか」
「「はい!」」
二人は威勢のいい返事をして早速「ソロモンの間」に歩き出す―――。