ADEC ~アデック;狂気に塗れた世界最凶のReunion~   作:暁葵

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EPISODE5 熾天使の悪夢

  EPISODE5 熾天使の悪夢

 

 

 アスタロトとアモンは、ADECへと帰還してサタナキアの遺体を焼却炉に放り込み、煉獄の炎で焼き弔う。

 

「キアーちゃん……ごめんね。でも、私だって名誉が欲しいんだ!」

「ま、そう深く受け留めなくてもいいんじゃないか? アーシャ。ボス直々の命令だったし、しかも【智天使長】も殺せたじゃないか」

 

【智天使長】を殺せた……不可解に思っただろう。ゼルエルは誰にも殺されていないし、そういった行動も一切なかったはずだ。

 

 なのに何故、アモンは【智天使長】を殺せたと完遂したような言い方をするのだろうか――――それは先程の取引の場面に遡る。

 

 実は、あの時二人が贈呈したユニコーンはユニコーンではないのだ。

 

 あの時渡した獣は――――ADECボスである、ソロモン・リュースレスが発動した『魔権』の一つ…「旋律に啼く金の魔角獣」(アムドゥキアス)と呼ばれる召喚獣だ。

 

 この召喚獣は、謂わばバイコーンと呼ばれる純潔を喪失した者にのみ懐くユニコーンと対になる存在。

 

 ユニコーンは純潔を喪失した者を引き裂くように、バイコーンは純潔な者を引き裂く…つまり『天使』は確実に引き裂かれるのだ。

 

 今頃、ゼルエルは「旋律に啼く金の魔角獣」の鳴き声によって金塊に換えられているか、餌になっているかの二択だろう。

 

 

 しかも、アスタロトの「絶望の宣告」によって一時的にユニコーンに変身し、更に強化魔術などを施している。

 

 「臓腑を狩る魔槍」(ヴァルヴァドス)によって臓物も強化され、「輪廻に踊る暁の不死鳥」(フェルニクス)も付与して不死状態にするというバフかけまくりのチート性能と化しているのだ。

 

 アモン率いる「特異情報科」の調べによって、ゼルエルの『天権』…「奇蹟の福音」は生命に関すること、概念を操ることは出来ないらしい。

 

 ソロモンはその情報を聞き入れこの作戦を案じたのだ。

 

 そんなこんなで、アスタロトとアモンはサタナキアの死体が灰燼に消えるさまを見届けて、「王の間」へと踵を返す。

 

 

   ▲ ▼

 

 

「……ということで、あっさり”偽契約”を受諾していました」

 

 アスタロトが跪きながらここまでの顛末を玉座に坐すソロモンに報告する。

 

「そうか………――――フハッ」

「あ、あの? ボス?」「どうしたんですか? ボス」

 

 二人はいきなり変な声を洩らすソロモンを心配するが、その心配は一瞬で解けた。

 

「ハハハハハハハハハハハ‼‼」

 

 哄笑。哄笑。哄笑。

 

 サタナキアがまさかのまさかで無様に呆気なく返り討ちにあったこともそうだが、我ら闇に属する悪魔の組織ADECを疑いもなしに即座に信じ込む『天使』も『天使』だ。

 

「――さて、貴様らの任務、非常に大儀であった。報酬として四百万をそれぞれの口座に振り込んでおこう……」

「あ、ありがとうございますっ!」

 

 アスタロトの返事は、物凄く威勢がよく、燦然とした輝きを放っていた――。

 

 

   ▲ ▼

 

 

 一方そのころ、教会では――――。

 

『やめろ……どういうことなんだ!?』

〈ヒヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンンッッッ‼‼‼‼〉

 

 悪夢の後はまた悪夢…まさしくそんな状況だ。ゼルエルと男は教会の最奥に逃げ込み、眼前に居るのは金の馬鎧を装備した漆黒の一角獣だった。

 

「旋律に啼く金の魔角獣」が変身を解き、突如として二人を襲撃した。一応「旋律に啼く金の魔角獣」は獣であっても『悪魔』の魂を宿せし召喚獣だ。

 

 多少の思考力はある。目的としては、ゼルエルを金塊にして喰らい、男の方をトランペットにしようと考えているらしい。

 

 男はゼルエルを盾にして逃走を試みるが、それは虚無の彼方へと消え去り、潰える。

 

 男は真っ先に餌食となり、金化のブレスを吐いて男を金の延べ棒にする。そして牙や蹄で緻密に彫刻を施し、一瞬にしてトランペットに換えて軽く吹いてみる。

 

 呻き声が聞こえ、教会を災厄が覆い尽くす。そしてゼルエルは必死に抵抗するも、当然無駄。

 

 チートバフが施された「旋律に啼く金の魔角獣」にとって『天権』なぞただの戯れに過ぎないのだ。ゼルエルはサタナキア戦を彷彿とさせる命乞いを魅せるが、治まらない。

 

〈グゥゥゥゥルルアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ‼‼〉

 

 まるで異形の肉食生物のような咆哮を上げてゼルエルを獅子のような牙で引き裂き、再びブレスを吐く。

 

「旋律に啼く金の魔角獣」の食料は金。つまりゼルエルは食用なのだ。

 

 その鰐のような顎を用いて、金塊と化した憐れな【智天使長】を貪り喰らう――――。

 

 

   ▲ ▼

 

 

「さて……キアーも消え、【智天使長】も消えたんだ、これで両成敗っと! さっさと寝て、明日の業務に備えるかなっとッ!」

 

 まだ午前九時にも関わらず睡眠欲が顔を出し、ソロモン己の欲望に忠実に従い、「ソロモンの間」へと向かう。

 

 ――と、その瞬間。再び最悪な事態が巻き起こる。

 

  ブウウウウウウゥゥゥゥゥッ‼ ブウウウウウゥゥゥゥゥッ‼

 

 突如として敵影侵入警報が組織中に鳴り響き、そして「王の間」の扉をガンッ! と強引に開けた下級構成員が報告をする。

 

「『天使』の侵入を確認ッ‼ その数約二百、熾天使クラスと座天使クラスで固められております!」

「ナッ――‼ 熾天使クラスだと………仕方がない。構成員だけでは一瞬で蹴散らされるだろう……」

 

 熾天使は天界だと大天使の次に高い位の『天使』だ。ただの構成員や下級『悪魔』を宿す者でも簡単に吹き飛ばされるだろう。

 

 ゆえにソロモン・リュースレスは決意する――――。

 

「我が行く、ある程度の戦力を後衛に配置しろッ‼」

「ハッ!」

 

 構成員は敬礼をし、即座に現場に向かう。ソロモンもまた、玉座の後ろに隠された”武器”を取り出し、『魔権』…「七十二魔の絶望の鍵」に保管された『魔権』を行使する。

 

「…「刹那を廻る黒翼」(バティン)――」

 

 

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