魔王と勇者が悟空とベジータ   作:レイチェル

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狭い部屋って本当に嫌だ。フュージョンの練習をしたら足をベットの脚にぶつけるし、手を電気の傘にぶつけて埃が落ちてきた。

広い部屋に住みたい。


現状把握

 「……はあ、はあ…………ここまでくれば、やつももう追ってこないだろうな」

そう言って勇者は岩陰に身を隠しました。

勇者はせまりくる魔物から逃げていました。5mくらいの、頭が二つもあるワニの魔物です。勇者はまだ村から出発したばかりで武器もなく、弱かったからです。勇者は知らないことですが、これは頭に二本の角がある魔族が放った魔物でした。

 「よう!何やってんだ?」

 「わ!!」

勇者は突然後ろから声をかけられて驚きの声をあげました。

後ろを振り向くと一人の青年がいました。腰には一振りの剣があります。しかしその剣は状態が悪くボロボロでした。

 「静かに!今向こうに魔物が…………!」

 「ふ~ん………」

そう言うと青年は腰にさした剣をふって、あっという間に魔物を倒してしまったではありませんか!その代わり、剣はあっという間に崩れて使い物にならなくなってしまいました。

 使い物にならなくなった剣をポイっと捨てて、青年は言います。

 「よっと。こんなもんでいいか?」

勇者は目を白黒させてお礼を言いました。

 「えっと………助けてくださりありがとうございます!それにしても強いんですね!

それと剣が使い物にならなくなったみたいですけど大丈夫なんですか?」

 「そんなんじゃあねえよ。オレはただ腹が減っていただけだ。

剣は……まあ、いつものことだ。その辺の盗賊からとった安物だしな」

勇者は驚きました。青年の腹が減っていた、という言葉に対してです。

 「えっ?これって食べられるの?!」

 「当ったり前だろ!料理すれば結構うまいんだぜ、これ」

そう言って青年は魔物の死体を担いで歩き出しました。

 「オレの剣はもう使い物にならないからな。街まで行って、一緒に食おうぜ!」

そう言って青年はニッと笑いました。

その言葉に、勇者はとても喜びました。

 「本当に?!実ぼく、魔王を倒すために村を出てからまだ何も食べていないんだ」

 「ふ~ん。お前も大変なんだな……」

すると青年は驚くべきことを口にしました。

 「なあ、オレもついて行っていいか?」

 「え?」

 「だから、オレもその魔王を倒す旅について行くって言ってるんだよ!」

勇者は戸惑いながら尋ねます。

 「もちろん大歓迎だけど、本当にいいの?」

 「ああ。オレはさ、これでも一応剣士で今は武者修行の旅の最中なんだ。だから魔王を倒しに行くっていうのは願ったり叶ったりなんだよ。それに………」

 「それに?」

青年―いえ、剣士はニヤリと笑いました。

 「面白そうだからだ!」

勇者は思いっきり吹き出して笑いました。

 「これからよろしく」

 「ああ、一緒にやっていこうぜ!」

こうして、勇者の旅に剣を持たない剣士が加わりました。

                           「勇者の冒険」より抜粋

 

 

 

 

 

 さて、悟空が診察を拒否して逃げ回っている頃、ベジータはといえば、

 「カカロットの奴が魔王でオレが勇者だと?ふざけるな!!」

ものすごく機嫌が悪かった。

 ちなみにベジータは青い鎧をきている。脱いだところで、ほかに着るものがないからだ。

 「しかもオレがあの貧相な村の出身だと?!」

どうやら村の人たちから色々と話を聞いたらしい。

 「オレは………!」

サイヤ人の王子なんだ。そう言おうとして、

 「………」

やめた。

 思えばフリーザの下で働いているとき―いや、言いなりになることしかできなかったときは、こう言って自分の存在意義を確立してきた。そう言わないと自分がどこにでもいる普通の人になってしまうような気がしたからだ。

 サイヤ人の王子だと口に出して言わなくなったのはいつからだろうか?

そしてベジータは、

 「…………フン、くだらん」

考えるのをやめた。そして拳を前に突き出す。風が吹く。草が、木が、揺れる。また突き出す。

 いつもの修行だった。そうしているうちに少し機嫌が直ってきた。

 修行している間は、自分が強くなることだけを考えていればいいからだ。

 「ん?」

 しばらくすると、ベジータは自分に近づいてくる気に気がついた。明らかに人間の気ではない。

 「GYOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

現れたのは頭が二つある5mくらいの巨大なワニの魔物。それが雄叫びを上げて走ってくる。

 そう。なぜか一直線にベジータに向かって。それにベジータは、

 「消えろ」

ただ一言だけつぶやく。そう言って、右手を魔物に向かって突き出す。右手に少しだけ気を込める。そして気功波を出して二つの頭だけを消滅させた。そう、気功波。ファイナルフラシュでもなく、ビックバンアタックでもなくただの気功波だった。

 それで終わり。いともあっさりと魔物を倒してしまった。

 ………まあ、ベジータだから当然といえば当然かもしれないが。

 「ウォーミングアップにもならなかったな」

そう言ってあたりを見回す。誰もいない。

ぐー…………

ベジータの腹の虫が鳴った。そして横には倒したばかりのワニの魔物の死体。

 「…………美味ければいいんだがな」

 

 数分後、ワニの魔物の死体はベジータの手によってこんがりと焼かれていた。

それをベジータは一口食べた。

 「…………」

眉間に皺を寄せる。どうやら不味かったようだ。まあ、塩やこしょうがない上に血抜きもせず、ただ焼いただけの肉なんぞ不味くて当然なのだが………

 「………フン」

また一口食べる。これしか食べるものがないし、何よりお腹が空いていたからだ。

 そんな今の自分の状況に、ベジータは昔を思い出していた。

 「そいうえば、昔はよくこうしていたな………」

それは自分がフリーザ軍の兵士としてほかの惑星を攻め落としていた時のこと。攻め落とし、異星人を皆殺しにして、その殺した異星人を、『食べて』いた。

 「…………」

 地球に馴染んだ今から思い出しても、それが間違った選択だとは思っていない。むしろ食べていなくては、きっと死んでいだのは自分だ。だから後悔はしない。それにこの肉は、その時に食べていた異星人よりも幾分うまい。だがブルマの作った料理には足元にも及ばなくて………

 「………クソッ!」

なぜかブルマのことを思い出してしまった。

だからそんな考えを頭の中から追い出すように、また肉をほうばる。

 すると、またこちらに何かの気が近づいてくるのを感じた。けれど今度はそちらに顔を向けない。見知った気だったからだ。

 「パパー!」

 「トランクス、お前も来たのか」

そう、面白そうだからと悟天と二人で来たトランクスだった。だが悟天は近くにいない。

 「ところで……なんだ、その剣は?」

ベジータはトランクスの腰に下げられたボロボロの剣を指差しながら聞く。

 だけどそれよりも気になったことがあったのか、トランクスは声を荒げて、

 「パパこそなんでその青い鎧着てるの?魔王をやっているんじゃ………ま、まさか勇者から奪い取ったの?!!」

と聞いた。ベジータは、何を言っているんだ、というようにトランクスの言葉を訂正する。

 「違う。ここへ来たら服がこの鎧になってたんだ」

 「え?ってことは……パパが勇者?!」

ベジータは舌打ちしながら、何も知らないであろうトランクスにこんなことを教えた。

 「カカロットのやつは魔王と呼ばれているらしい」

ベジータの言葉に、トランクスは大げさとも思えるような声を出す。

 「嘘だあ!」

 「そう思いたいのなら、勝手にそう思っていろ」

そう言ってベジータはまたワニ肉を食べ始めた。どうやらこの話はこれで終わらせたいようだ。

 一方でトランクスはまだ戸惑っている。

 「え、ってことはパパが勇者で悟空さんが魔王………。それで、この話は勇者が魔王を倒して終わるから………」

トランクスは冷や汗をかきながらベジータに聞く。

 「…………パパ、勇者のパパは魔王の悟空さんに勝てるの?」

 「なぜそんなことを聞く?」

 「いや、その………ここから出るには、この本の話を終わらせなくちゃいけないみたいで………で、この話は勇者が魔王を倒してめでたしめでたしだから………」

トランクスがそーっとベジータをみる。

 「…………」

 どうやらベジータもこの状況が分かったようだ、しかし何も言わない。いや、何も言うことができないのか。

 「パ、パパ?」

 「……カカロットなんぞこのオレが少し修行すれば必ず倒せる」

ベジータはそう言った。だけどトランクスも馬鹿じゃあない。だから二人の実力もわかる。

 「悟空さんに勝てるの?」

 「……当たり前だ」

一瞬の間があり、答えた。それだけでトランクスは分かってしまった。

 すなわち、本から出るのは難しい、と。

 「……パパ、俺もこの肉食べていい?」

もうこうなったら現実逃避である。

 「好きにしろ」

そう言われて、トランクスはベジータの横に座り肉を一口ほうばる。とたんに顔をしかめる。

 「うわ……まず」

 「そりゃあそうだろ。なんせただ焼いただけだからな」

 「………」

それでもトランクスは食べる。お腹が空いているとかそういう問題ではない。ただ単に、残すのがもったいないからだ。

 しばらくしてベジータがさっきの質問をもう一度してきた。

 「トランクス、その腰にさしたボロい剣はなんだ?」

 「これ?ん~……見ての通りすぐに壊れるボロい剣だよ。」

ベジータは訳がわからない、という顔でまた聞く。

 「なぜそんなものを持っている?」

 「もしかしたら俺、剣を持たない剣士かもしれないから、かな?」

なぜか最後は疑問形だった。

 「オレに聞くな。それよりもなんだ、剣を持たない剣士というのは?」

 「『勇者』の一番最初の『仲間』だよ。でも笑っちゃうよな、剣を持たないのに剣士だなんてさ」

笑いながらそう言った。

 しかしベジータは笑わなかった。代わりにこんなことを言い出した。

 「未来からやってきたお前の話は覚えているな?」

 「え……ああ、未来を変えるためにタイムマシーンに乗ってやってきた『トランクス』のこと?うん、覚えてるよ。ママも、悟飯さんも話してくてたしね」

トランクスは突然こんな話が始まって不思議そうだ。

 「ならあいつが剣を持って戦っていたことは知ってるか?」

トランクスは大きく頷く。

 「その剣でフリーザとその父親をやっつけたんでしょ?でもその後クリリンさんの奥さんと戦った時に壊れ………あれ?」

どうやら共通する部分を見つけたようだ。

ベジータが少し笑いながら言う。

 「壊れるまで、その剣で戦ってみるのも悪くないと思うぞ」

 そんな風に言われて、トランクスはもう一度剣を見る。かざしたり、軽く振ってみたりする。

 「俺、ここにいる間は剣で戦ってみるよ」

そう宣言した。ベジータは満足そうな顔をしている。

 「よーし、その意気だ。いろんな戦い方を身につければ、それだけで強くなれる」

どうやらトランクスを強くしたくて、こんな提案をしたようだ。

 「それに、例えものにならなくても、いい経験になるなからな」

ワニ肉を食べ終わったベジータは、立ち上がってトランクスに言う。

 「よし、そうと決まれば早速修行だ」

 「は、はい!」

こうしてトランクスの、剣を使った初めての修行が始まった。

 「やあああああ!」

 「そんなものか、トランクス!」

そう、一緒に来たはずの悟天のことなどすっかり忘れて。

 




わかる人はいないと思いますが、勇者の一人称を俺からぼくに変更しました。

 ところで、ヒルデガーンと未来悟飯と未来トランクスの力関係ってどうなっているんでしょうかね?

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