魔王と勇者が悟空とベジータ   作:レイチェル

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防音室が欲しい。
しゅ、趣味のサックスを練習するためなんだからね!別に『魔貫光殺砲』とか『気円斬』とか大声で練習したいわけじゃあないんだからねッ!!


本にもう一人入るようです

~あらすじ~

 本の中に入った悟空、ベジータ、悟天、トランクス。悟空は魔王の仕事である書類仕事に悪戦苦闘。ベジータと悟天とトランクスの三人は盗賊(三十人)から食料金品を強奪。

 本から出るには勇者のベジータが魔王の悟空に勝たなくてはならない。

 こんな調子で、果たして出られるのでしょうかね?

 

 

 

 

 

 ここはカプセルコーポレーションのブルマの研究室。そこに何故かヤムチャがいた。

ブルマが聞く。

 「ねえヤムチャ、本当にいいの?確かに入ってもらたほうがデータがたくさん取れていいんだけど……」

ブルマの言葉を遮るようにしてヤムチャが言う。

 「何言ってんだよ、水臭いな。ここんところ暇だったからな。ここへ来たのだって暇つぶしだ。それに悟空やベジータ………はともかく、トランクスや悟天が本から出てこなくて心配なんだろ?」

ブルマが心配そうに言う。

 「そりゃあそうだけど………あんた、あいつらに比べて弱いでしょ?」

そんなブルマの言葉にヤムチャは困ったように笑いながら言う。

 「厳しいこと言うなあ~………。確かに俺はあいつらに比べたら弱いけどさ、それでも地球人の中じゃあ結構強い方なんだぜ?それに…………」

 「それに?」

ヤムチャは少しおどけたように言う。

 「もし強い奴がいても、悟空やベジータがすぐやっつけるだろ?」

その言葉にブルマは笑いながら言う。

 「それもそうね。それじゃあ頼んだわよ」

 「おう!」

ブルマがシルクハットに傘を持ったロボット―おとぎマシーンをヤムチャのもとに持っていく。

 「おや、また誰か入るのですか?」

相変わらず人間のように流暢にしゃべるロボット。そんなロボットに驚きもせず、ヤムチャが答える。

 「ああ、俺が入ることになった。よろしくな!」

 「はい、よろしくお願いします。それでは本を後ろの壁に立てかけてもらえますか?」

ヤムチャは『勇者の冒険』と書かれた本を壁に立てかけた。

おとぎマシーンが掛け声をかける!

 「ちゃんとまっすぐに立ってくださいね?いきますよ…………本に~入れや!」

次の瞬間、ヤムチャは悟空やベジータたちと同じく本に吸い込まれるようにして入っていった。

 「早く帰ってなさいよ………」

その時、研究室に飛び込むようにして入って来る者がいた。

 「ヤムチャ様!あれ?ブルマさん、ヤムチャ様はどこですか?」

 「あら、プーアルじゃない。今までどこに行ってたの?」

 「さっきまでお手洗いに………ってそんなことはどうでもいいんですよ!トイレの窓から外を見たら女の人が『ヤムチャはどこにいるの?!』って鬼のような形相でこっちに向かってくるのが見えて……」

それだけでブルマはどんな状況なのか分かってしまった。

 「つまり、ヤムチャはまた彼女と喧嘩したわけね。それでここに逃げてきたと………。全く、なにが暇つぶし、よ!」

男女の修羅場に進んで巻き込まれたいと思う人はいない。だからそんな状況に巻き込まれてしまったブルマは、ここにはいないヤムチャに向かって文句を言う。

 「はああ。あ~あ、………全く、ヤムチャは相変わらずね」

文句を………

 「そういえば、ブルマさんも昔はよくヤムチャ様と喧嘩してまたね」

 「ふふ。懐かしいわね~。丁度その頃だったわ、孫くんのお兄さんのラディッツって人が地球に来て、そんでもって孫くんが死んじゃったのは」

 「その後に来たベジータさんにヤムチャ様は殺されちゃって………」

 「で、わたしがそのベジータと子供を作っちゃうんだものね~。ほんと、世の中どうなるかわからないわよね」

ブルマの心は大きかった。

 「ところで、ヤムチャ様はどこにいるんです?」

ブルマは『勇者の冒険』と書かれた本を指差して言う。

 「その中」

 「へ?」

世の中、どうなるかなんてわからない。

 

 

 

 

 

 ここはとある村の酒場。勇者と剣士と魔法使いは盗賊たちを見事に倒し、勝利の祝杯を上げていました。

 勇者が剣士に言います。

 「盗賊たちの剣を奪っては切りつけ、また奪っては切りつけて。あっという間にやっつけちゃうんだもん。ぼくなんて五人くらいしか倒せなかったよ。」

勇者に褒められても剣士は浮かない顔です。

 「いや、そんなことねえよ。振るった剣、みんな壊しちまったからな。奴らの使ってた剣が安物だってことを差し引いても、壊しちまうのはよくねえよ。まだまだ未熟だってことさ」

剣士が勇者に向き直って言います。

 「それよりもさ、よく盗賊の親分を倒せたな!鍛えていて強くなったなあ……とは思ってたけど、まさかあんな強い奴を倒しちまうなんて思わなかったぜ!」

その言葉に勇者は首を振ります。

 「そんなことないよ。あいつの方が明らかに強かった。ぼくが勝てたのなんて運が良かったからだよ。

 それにあの時魔法で怪我を治してくれなかったら、ぼくはこうして生きていられなかったからね。助けてくれてありがとう」

そう言って魔法使いにお礼を言いました。

魔法使いは少し照れたように言います。

 「私はそれしか特技がないから………。教会にいた頃も他の魔法は全然発動できなかったの」

 「は!?お前、教会にいたのかよ!

剣士は驚いて魔法使いに聞きました。

 「う、うん。私はお父さんもお母さんもいないから……」

そう言って悲しそうに目を伏せました。

けれども剣士はさらに聞きます。

 「ん?普通そういう場合はシスターか僧侶になって、教会で街の人たちを助けたりするんじゃないのかよ?」

 「えっ……そ、それは……その…………」

そう言って魔法使いは黙ってしまいました。

 勇者は剣士を窘めます。

 「もうやめなよ!変なこと聞いてごめんね」

魔法使いは首を振って答えます。

 「ううん。あなたが謝ることなんてないの。変なのは『私』だから……」

魔法使いが何かに思いつめて言った言葉に、勇者と剣士は何も言えませんでした。

 そんな雰囲気を壊すように勇者がわざと明るく言います。

 「そんな顔しないで。いっぱい美味しいもの食べて、嫌なことは忘れちゃおうよ!!」

 「……ありがとう」

 そしてまた楽しく食べ始めました。

 勇者が魔法使いに聞きます。

 「そういえば君はどこに行くの?ぼくらは魔王を倒しに、人間界と魔界をつなぐ『銀鏡の湖(シルバーレイク)』へ行くつもりなんだ。魔界へはそこを通らないといけないからね。もっとも、高位の術師になれば魔法でいけるって聞いたことがあるけどさ」

魔法使いは驚いて答えます。

 「え?あなたたちも?!」

 「なんだ、お前も行くのか?ずいぶん物好きだな」

剣士が可笑しそうに言いました。

 それもそのはず。銀鏡の湖(シルバーレイク)は勇者たちのいる場所から山脈を二つ、川を三つ超えた先の森の奥にあり、人が立ち入らないようなところにあるからです。

 「……あ。いえ、私は……その………」

 「丁度いいや。一緒に行こうよ。他にも盗賊がいるかもしれないし、道中危ないよ」

 「………」

魔法使いは黙って下を向いてしまいました。何かを考えているようです。

 「それとも、もしかして他に一緒に行く人がいるの?」

 「だけどな、一人で行こうっていうのはなしだからな」

魔法使いは何かを決意したように前を向きました。

 「………ちょっとこっちに来てください」

魔法使いはそう言って、酒場の奥の人目につかないところまで歩いて行きました。

勇者と剣士も後に続きます。

 「え?!ちょ、ま!!」

 「わああああ!一体何やってるの?!」

剣士と勇者がうろたえました。なんと魔法使いは、着ていた長袖の服を脱ごうとしていたからです。

 当然のことながら勇者と剣士は男で、魔法使いは女の子です。

 「これを見てください」

魔法使いは長袖の服を脱ぎました。

 「「!!!」」

勇者と剣士は息を飲みました。

 そこにあったのは少女の白い肌に発育が期待される膨らみかけた胸………ではありません。明らかに人間のものではない鱗でした。少女と同じ緑色の髪の鱗です。それが体の中心から広がるようにしてあったのです。

 勇者と剣士がその鱗を見るのを確認した魔法使いは服を着ました。

 「………初めは胸の辺りの皮膚が固くなったことだったんです」

少女がぽつりぽつりと語り始めました。

 「……それがだんだん緑色になり、鱗になって……どんどん広がっていきました」

 少女はそこで言葉を切りました。まるで、何から話せばいいのかを考えているようでした。

 勇者と剣士はじっと待ちました。

 「ある日、教会の前で赤ん坊を抱いたひとりの女性が倒れていたそうです。ですけどその女性はひどく衰弱していて、次の日に亡くなったそうです」

剣士が言います。

 「まさかその赤ん坊って………」

魔法使いは頷いて答えます。

 「はい。母は事切れる前『娘のことをよろしくお願いします』と言ったそうです」

 「あ、あの……えっと、その……」

勇者は声をかけますが、言葉になりません。

魔法使いはにっこり笑って、

 「大丈夫です。そういうのは珍しくないので」

と言いましたが、その顔は今にも泣き出しそうでした。

 「私の鱗は見た通り、人間のものではありません。調べたところによると、人間と魔族が交配することによって生まれることがあるそうです」

勇者と剣士はなんとなく話が見えてきました。

 「じゃあ、銀鏡の湖(シルバーレイク)に行くっていうのはもしかして……」

勇者の問いに魔法使いは頷いて答えます。

 「はい。魔界に行けば父に、お父さんに会えるかと思って………私はもう教会にはいられないから」

それを聞いた剣士は、厳しい顔で尋ねます。

 「お前さ、父親に会えば自分の抱えていること、全部解決すると思ってんのかよ?」

 「っ!」

その物言いに勇者は慌てました。

 「ちょ、やめなよ!こんなにもお父さんに会いたがっているのに、そんな言い方……」

 「魔界に行ったところで父親に会えないかもしれない。もし会えたとしても、お前を娘だと認めてくれないかもしれない。もしかしたら父親も死んじまっているかもしれない!それに………」

剣士は続けて言います。

 「もしそうなったら傷つくのはお前なんだぞ!!」

声を荒げてそう言いました。

その時の剣士の顔がちょぴり赤くなっていたことが、勇者にだけはわかりました。

 「………のよ」

魔法使いが小さな声で言いました。

 「え?なんて言ったの?」

勇者が聞き返します。

 「あなたには解らないのよ!」

今度は大きい声で言いました。

 「教会でいつも治療していた町の人が、この鱗を見て私のことを『化物』って呼ぶ。その気持ちがわかるっていうの?!」

 「…………」

剣士は何も言いません。

 「………私には夢があったの。どんな重傷の怪我でも、治せないのもあるけど病気も治すことのできるこの力で、町の人たちを助ける僧侶かシスターになるっていう夢が………。でも、いつも頼っていた人がこの鱗を見るなり手のひら返し。神父様はここにいてもいいっておしゃってくださったけど、もう無理。私には、もう、ここに居場所なんてないのよ………」

勇者と剣士は黙って聞いています。

 「……私は、『お父さん』に会いたい…………。例え、私を娘だと思ってくれなくても。お母さんが死ぬ直前まで私を思ってくれた。そんなお母さんはもういない。私にはもうお父さんしかいないの!」

魔法使いが勇者と剣士に向き直って言います。

 「だから私はあなたたちと一緒に行くことはできません。今まで私に良くしてくれてありがとうござい………」

 「そんなこと言うなよ!」

剣士が怒鳴るようにして、魔法使いの話を遮ります。

 「そうだよ。ぼくらがそんな理由で可愛い君を除け者にするはずないじゃないか!」

勇者の言葉を魔法使いは否定します。

 「可愛くない!私には鱗があるの!!鱗は今でも広がり続けてる。それに私は結構体が丈夫なの。だから一人で旅を………」

 「じゃあなんで!」

剣士は言います。

 「なんでお前はそんな辛そうな顔で泣いてるんだよ?!」

 「え?」

そう言われて、魔法使いは初めて自分が泣いていることに気づきました。

 「え?あれ?………教会を出るとき、もう泣かないって決めたのに………」

魔法使いは手で涙を拭きますが、次から次へと溢れてきます。

 「辛い時は無理するなよ。そのための『仲間』だろ」

 「………仲、間?」

勇者も頷いて言います。

 「そうだよ。盗賊の親分にやられたとき、君が魔法で治してくれなかったら、ぼく死んでたもん。君がいないと困るんだよ」

魔法使いがうつむいて言います。

 「………私、一緒にいてもいいの?だってあなたたちは魔王を倒しに行くんでしょ?私のお父さんは魔族で人間じゃないし………」

剣士が言います。

 「あんな死にかけた人を、魔法といえど一瞬で治すのはかなり難しいはずだ。お前はそれをあっさりとやってのけた。それだけ努力したんだろ?そんな人が悪い奴じゃないってことくらいは分かるさ」

勇者も言います。

 「魔物たちはさ、魔王のために食料を奪ってるんだ。それってさ、魔界にある食料だけじゃあ足りないってことだろ?ぼくの予想だけど、きっと他の魔族や魔物もそんな魔王にうんざりしてると思うんだ。それに、ぼくはこう見えても『勇者』だからね。困っている可愛い女の子を放ってはおけないよ!」

魔法使いは聞きます。

 「………一緒にいてもいいの?」

勇者は答えます。

 「もちろん」

 「………仲間になってもいいの?」

 「もうなってるじゃないか」

 「………町の人たちみたいに、私を『化物』って呼んだりしない?」

 「そう呼んだりなんて、絶対にしない」

勇者は魔法使いに手を差し出して言います。

 「ぼくたちと一緒に行こう!」

 「………ありがとう!」

勇者の手を取ってそう言った魔法使いは、今度は嬉しさで泣き出しました。

 そんな様子を影で見つめる者が一人。

 「勇者の一行に魔族のハーフ………。これは報告しておいたほうが良さそうですね」

そう言って、なんと長い尻尾が出てきました。それは人間ではない、すなわち魔族であることの証拠でした。

 「おっと、危ない危ない。全く、長い尻尾は邪魔ですね。さて次は…………王都へ行き、どこの村に大量の食料があるのかを調べなくては。せっかく魔物で襲わせても、何もなかったじゃあ洒落になりませんから」

そうして、その魔族はいつの間にか消えてしまいました。

 

 弱い勇者と、剣を持たない剣士と、僧侶になれなかった魔法使い。三人の旅は、まだ始まったばかりです。

                              『勇者の冒険』より抜粋

 

 

 

 

 さて、盗賊から食料金品を強奪したベジータ、悟天、トランクスの三人はといえば、

 「で、トランクス。本当にカカロットはこっちに来ているんだろうな?気が感じられんのだが?」

 「うん、絶対に来てるよ。だって入るところをこの目で見たからね。………って、あ!悟天それオレの肉!!」

 「へへ、早い者勝ちだよ!」

食事の真っ最中だった。奪った食料だけでは足りず、奪った金で酒池肉林の豪遊三昧だ。

 ちなみに三人がいるところは国で一番大きい町である王都の食堂だ。近くの街よりも王都の方が魔法の杖が高く売れるから、という情報を盗賊の一人から少し(ベジータにとってのほんの少し)乱暴に聞き出し、やってきたというわけだ。魔法の杖を売るついでにベジータの着ていた青い鎧も売った。もちろんその価値を知っていたトランクスは止めたのだが、ベジータの『邪魔だ。動きにくい』という言葉に逆らえる訳がなかった。というわけで、いまベジータは農夫が着るような貧相………もとい動きやすい服を着ている。

 トランクスはといえば、盗賊が使っていた剣をちゃっかり拝借していた。その数、なんと六本。壊してしまった時のための予備だ。

 魔法の杖と勇者の青い鎧を売ったことにより、かなり高額な路銀が手に入った。どれくらい高額かというと、少なくとも十年は遊んで暮らせるくらいだ。

 テーブルの上にの料理が少なくなっていき、ベジータが口を開く。

 「おい、店員!このメニューに書いてあるもの、全部もってこい」

 「お、お客さんそれ今日でもう四回目じゃないですか!ちゃんとお金はあるんでしょうね?」

ベジータがテーブルに『どん』と、金貨が大量に詰まった麻袋を無言で置く。

それを見た店員は焦ったように、

 「は、はい!すぐにご用意いたします!!」

と厨房の方へ走って行ってしまった。

 この調子だと、路銀が尽きる日は近いかもしれない。

 ベジータがトランクスに向き直って言う。

 「で、お前は『魔王』とやらになったカカロットがどこにいるのか知っているのか?」

 「本で読んだだけだから正確な場所とかはわからないけど、どうやって行けばいいのかはだいたいわかるよ」

 「え?お父さん魔王なの?」

トランクスは、悟天の言葉をとりあえず無視してベジータに説明する。

 「まず、この世界は二つの世界に分かれているみたいなんだ。今オレ達がいる人間界と、魔族や魔物が住んでいる魔界」

そこまで説明したところで悟天が話に割り込んできた。

 「ねえ、魔族や魔物ってなに?」

それにトランクスは、どう答えようか少し考える。

 「ん~……なんていえばいいかな?魔界に住む人間みたいなやつが魔族で、動物みたいなのが魔物って言えばいいのかな?あ、でも人間みたいって言っても、角が生えてたり尻尾があったり鱗があったりするけどな。さっき言った動物みたいな魔物も、頭が二つあるワニだったり………まあいろいろあるんだよ」

 「ふ~ん………」

どうやら悟天は納得したようだ。

 「で、この二つの世界は隣り合ってはいるけど、地続きにはなっていなくて、ある特別な場所からでしか行き来することができないんだ」

 「特別な場所?」

ベジータが聞き返す。

 「うん。銀鏡の湖(シルバーレイク)って呼ばれる湖みたいなところ。確か山脈を二つと川を三つ超えた山奥にあるらしいよ」

山脈を二つと川を三つ。当然のことながら、移動手段に車も電車もないこの世界だ。常人ならば、どんなに早くても数週間はかかるだろう。

 「へえ~、結構近くにあるんだね!」

 「飛んでいけば二十分くらいか?」

そんなすべての旅人を敵に回すような、悟天とベジータの発言にトランクスは、

 「………うん。まあオレたちならそれくらいで着くけどさあ……」

頷くことしかできなかった。

 「隣り合っているけど、それぞれ別の世界として存在してるから、悟空さんの気が感じられないと思うんだけど?」

トランクスがベジータの疑問にそう答えた。

 「確かに、あの世にいる界王や界王神の気も感じにくいからな」

どうやらベジータは納得したようだ。

 その時、ベジータが追加で注文した料理が来た。

 「じゃあこれ食べ終わったらさ、お父さんのところに行こうよ!」

そう悟天が提案した。しかしベジータは何とも言えない微妙な顔になる。

 「別にそう急ぐこともないだろ?」

 「え、どうして?」

なんでだかわからない、という顔をする悟天にトランクスが小声で説明する。

 「実はな、パパが勇者で悟空さんが魔王なんだ」

 「え?そうなの?!」

小声、と言っても三人はテーブルを囲んでいる。

 「しかも、どうやらこの本から出るにはこの話を終わらせなくちゃならないみたいなんだ」

 「この話ってどうやって終わるの?」

二人の会話は、

 「そりゃあもちろん勇者が魔王を倒してめでたしめでたし、だよ」

 「えっ!じゃあここから出られないじゃん!!ベジータさんがお父さんに敵うわけないよ!」

ベジータに筒抜けだった。

 「バカ!声が大きい!!パパに聞かれたらどうするんだよ?!」

 「あ、……ごめん。聞こえてないかな?」

この時、ベジータはよっぽど「聞こえてるぞ」と言いたくなった。

 「じゃあトランクスくん、ぼくたちどうすればいいの?」

 「オレが知るかよ………。ん、待てよ………」

 「どうしたの?」

トランクスが向き直って言う。

 「あのさあ、」

今度は小声ではない。

 「やっぱりこれ食べ終わったら銀鏡の湖(シルバーレイク)に行こう。そこの近くに住んでる人で、会ってみたい人がいるんだ」

 「どんなやつだ?」

ベジータが聞く。

 「『番人』って呼ばれている人。もしかしたらだけど、オレたちもっと強くなれるかもしれない」

そう言ったトランクスの目は、真剣そのものだった。

 

 

 

 

 一方その頃ヤムチャはというと、

 「……う、う~ん…………。ここはどこだ?」

 「あ、兄貴起きましたか?」

なぜかむさくるしい男から兄貴と呼ばれていた。

 




前回言った修行回。次の次辺りになりそうです。

批評、酷評お待ちしております。

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