【セキュリティ解除 再生開始】
40は45と逃げていた。仲間であったはずの戦術人形たちを撃ち殺しながら。グリフィンの攻撃小隊に所属する人形たちは突然,通信チャンネルがブロックされ,味方同士の信号を識別できなくなっていた。
すぐに理解したのは,彼女たちが味方ではなくなったこと。彼女たちを撃ち殺さないと,ここから逃げきれないということ。
それでも40は,声の届かなくなった仲間たちに向かって叫び続ける。40はそれを止めた。「どうして仲間同士で殺し合わなくちゃいけないの!」「それが計画の一環だからだよ」。そう呟く姿は,まるで。
もしかして……さっきあなたが使ってたモジュールのせい? あなたがここに来た本当の理由は,こうして仲間みんなを虐殺するため? あたいはそれを知らなかったの? 今,このときまで・・・
あいつらがこの結末を望んだ。あいつらがこの宿命を望んだ。そこから逃げるための準備はずっとしてきた。そう告げると,45が手にするヘタクソな作りの銃は,40に向けられていた。
「40姉さん、選択の時だよ。そこで野垂れ死んでいる奴らみたくなるか。他人に操られる運命から逃れるのか」
歌声が聞こえるでしょ? 「彼女」が目覚めるまで時間がないの。このセキュリティプログラムは私たちのメンタルを破壊しようとしている。どちらかが死ねば,プログラムは停止する。どちらかが死んで,どちらかが生き残る。そういう宿命なんだよ。40姉さん,選択の時だよ。
乾いた発砲音が鳴り響く。
ふたりだけの空間に,ひとりだけの絶叫が響き渡る。戦術人形としての適性がなかった,戦術人形としての価値がなかった,指揮官に選ばれる私になりたいともがいていた,少女の宿命を変える弾丸が放たれた瞬間だった。
「今はただ休みたいわ。今年一番疲れる任務だったから……」
不慣れな電子戦に疲れた,416。
「二日ぐらいぐっすり寝たいな。まだ見てない映画もあるし……」
こちらはいつもどおりの,Gr G11であった。
「あんまり贅沢言っちゃダメよ」
生き残れただけ十分だと,9。
「そうよ……生き残れただけで十分だよ」
40はじっと見つめてくる416に,なにか言いたいことがあるんじゃない,と促す。不遜な少女は,なにを言ったらいいかは分からないけど,今回の任務にはあんた自身の目的があったんじゃないかしら,と返す。危険が去ったあとだからか,それは疑念ではなく,疑問のように聞こえた。
ほんの少しね。でも、どちらかというと運が良かっただけかな」
「40の言ったこと信じる?」
信じない。あいつの言うことなんて命令以外は絶対に信じない。あいつがいつかいなくなってしまう? そんなことは分からない。私は今は確かなことはなにも言えない。
「はぁ…………ダサいよね、416って……」
ちょっぴり心ない相棒への返事は,彼女にしては素直で。
「そうよ……40は怪物だけど、私はそうじゃないわ」
「いきましょ、面倒事はまだまだ終わらないのよ……」
「ひょっとしたら、永遠に終わらないのかもね……」
その頃、鉄血の指揮所を制圧した第2小隊は撤収を開始。
第一小隊でも・・・
「あ、45。迎えに来たよ。」
「助かったわ。全員無事ね?じゃ、任務も終わった事だし、帰りましょうか・・・」
返り血で赤く染まった45の髪を、廃墟都市に差し込んだ朝の光が照らす。その光は赤い髪の毛で照り輝き、よりはっきりと紅く見える。
光でキラキラと輝く朱い髪を翻し、装甲車の後部のハッチをくぐり、乗り込む。
「45、髪が赤く染まってるけど・・・何?」
「あ、これ?返り血。」
「「「え゛」」」
「何よ・・・」
「うーん・・・任務みんなよく頑張ったわね。私は帰ったら兵長さんに誉めて貰おうかな♪」
「私は・・・兵長さんに撫でて欲しいな。」
Vectorは自身の分身ともいえるVector短機関銃を撫でながらそう言う。
「じゃあ・・・私は両方して貰おうかな。」
「「じゃあ私も両方して貰おうかな!!」」
「う、うん・・・」
「あらあら・・・私達はあの人と精一杯隣に入れれば、良いわね。」
「ええ。そうですね。メガネさんなら、出来るだけ一緒に居てくれるでしょう。」
FALとスプリングフィールドはグリフィン人形救出の為四方八方駆けずり回っていて、ある意味影の功労者であった。
第1小隊、第2小隊共に集合地点にたどり着き、除染やら何やらを終わらせ、基地へと帰るのだ。
「これより、戦闘終了を宣言する。全員、帰還するぞ!」
これで深層映写編は終わりです。
次はほのぼのでしょうか。
次の戦闘回は蝶事件を収束させる戦いとなります。