個性?いいえ【スタンド】です   作:A卿

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お久しぶりです。
なんだか知らない内にお気に入り登録が80超えててビックリしました。
読んでくださった皆様に感謝。

遅くなった理由はバイト始めた結果時間がなくなったからです(泣)。

クオリティ下げないように頑張りますので、今後もよろしくお願いします!



我輩は隼である

 我輩はハヤブサである。名前はあるのかないのか、どっちなのか自分でもよく分からん。

 

 前にも言ったように、俺はペットショップだ。ハヤブサであり、スタンド【ホルス神】を持っているんだから間違ってはないだろう。

 別のジョジョでは同じスタンドを持つネズミが2匹いたような記憶もあるが、アレは成り立ちが大分特殊だったはず。

 生まれついてのスタンド使いである俺と同じスタンドはまず存在しないと考えていいだろう。

 そもそも、この世界にスタンドを発現させる『矢』があるのか分からない。

 俺以外のスタンド使いを見たことが無いのも、この世界が『ジョジョの世界』だと確信できない1つの要因だ。

 

 閑話休題(話がそれた)

 

 ともかく、俺は自分がペットショップだという事を知っているが、その名を誰かに付けられた訳ではない。自分で付けてしまっても良いんだろうが、生憎(あいにく)名乗る相手がいない。

 森に住む動物としては、名前があっても使わないのだから仕方がない。

 故に、名前があるとも無いとも言えてしまうという訳だ。

 ……適当ともいうが。

 

 故郷を捨てて、人の住む街へ行こうとは思わない。人間社会に馴染むことは難しいだろうからな。

 どうせ見世物にされるのがオチだ。

 結局、生まれ育った場所が一番安全かつ楽だという訳だ。当然の帰結だが。

 

Kuaaa……」

 

 さて、色々と面倒なことを考えていたからか腹が減った。当然ながら、腹が減ったからといって飯が出てくるような環境ではない。獲物は自分で狩らなければならない。自然界は厳しいのだ。

 

 まぁ、俺は腐っても猛禽類。当然、食性肉食であり、天敵が少ない森の中では餌の方が見つけやすい。そもそも狩りをする生き物なため、そこまで苦労する訳ではないが。

 それに、ハヤブサにとっての天敵は()()()()()()()()()。これも当然だが、俺が普通のハヤブサではないことが最大の理由である。スタンドの中でも応用性に富み、攻撃力も高い【ホルス神】を使えば、大抵の野生動物は瞬殺できる。

 

 ところで、ハヤブサの食性をご存知だろうか?ハヤブサの餌は自身よりも小さな鳥や蛇、昆虫などが主だが、時たま大型の鳥を餌とすることがある。俺の場合、その対象に熊などの大型哺乳類も含んでいる、というのが他の猛禽類との違いだ。

 もっとも、熊鹿以外は食えたもんじゃないんだが。誰が好き好んで猿の肉なんぞ食うか。

 

 っと、いたいた。今回の飯は熊か…。肉は美味いが量が多いのがなぁ……。しかも親子連れかぁ。

 これが鳥ならスタンドを使うまでもなく蹴り殺して終わりなんだが……。熊はそうもいかない。蹴り殺すには急降下する必要があるが、熊を狩る時は大体木々の間を抜ける形で飛んでいることが多いため、速度も高度も足りないから駄目なのだ。

 結論、熊を狩る時はどんな状況であれ―――

 

Krrrakaka(ホルス神)】!

PIYAAAAAAAAAA!!!!

 

 ―――結局こうなる。

 

 本来のデザイン(スタンド像)を出さず、標的と同数の氷柱を形成させる。冷気が集まり、急成長する氷柱が、氷結した水滴による白い尾を引きながら獲物に迫る。

 そして、獲物が悲鳴を上げる暇さえ与えず、刺さると同時に破裂した。

 大分威力を落としはしたが、それでも生き物を殺すには過剰。親子連れの熊たちは、肉片となって爆発四散した。

 

 南無三。

 例え人の記憶があろうとも、子熊に対して何とも思わないのは、自我が体に引っ張られているのだろうか?この惨たらしい殺し方にも、食事が楽になる程度の認識しかなく、それを悪いことだとも思わない。人の持つ感性は、自然では役に立たない。精々寄生虫と腐ったものを食わずに済むくらいだ。

 ……それなりに長く生きていれば、気に病むこともなくなるのだろうか?

 

 いや、こんなことは忘れてしまおう。考えても無駄だ。

 かつて、フランスの哲学者ルネ・デカルトは著書の中で述べた。

 ――― Cogito ergo sum (我思う、故に我あり)――― 

 ならば、こうして思考している『俺』は紛れもない俺自身であり、その『器』が人間だろうが鳥だろうが関係ない。俺は俺。その事実があれば良い。

 

 思考に区切りをつけて、粉々になった死体の肉を啄む。因みに、態々(わざわざ)爆砕したのは寄生虫対策だ。生肉は良くても、寄生虫を食うのは流石に嫌だ。

 

 ―――一羽の隼が空へ飛び立つ。遠退くその姿を、物陰から見ているものに気付くこともなく。


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