IS<インフィニット・ストラトス>というものがある。
簡単に言えば、パワード・スーツ。
それを
開発者曰く、本来は宇宙空間での活動を目的に開発されたものらしいんだが、そのデビューがそれはもう無茶苦茶やらかしてしまった所為でそちらの方面での研究開発はほとんど進んでおらず、専ら軍用及び、レース等のスポーツ用などで使用されるようになった。
特に軍事面に関しては、このISの登場で世界中に大混乱をもたらしたんだが、当の
また、このISは女性にしか使用できないという謎機構を備えてる所為で世界に女尊男卑の風潮が生まれてしまう始末。
世界中の軍でも部隊解体や人員削減などが行われ、主に男性が失業の憂き目に会ったりした。
女性専用なんて兵器としては欠陥品もいいところだと思うんだが、どうしてこうなったんだか。
まあ、その女性にしか試用できないってのは、最近否定されたんだけどな……
他でもない、俺、
遡ること2ヶ月ほど前のこと。
当時中学3年だった俺は、他の学生と変わらず受験戦争の真っ只中だった。
前述の通り、ただでさえ、男性不利の風潮がある所為で就職率が軒並み低下し、就職氷河期が到来してる昨今【※ただし男に限る】俺たち男は進学は結構死活問題だったりする。
ま、そういうこともあって俺は女手一つで家計を支えてくれてる姉のために、学費が安く、就職のためのキャリア教育が充実してる藍越《あいえつ》学園への入学を志望し、試験会場にやってきていた。
んで、ものの見事に迷子になってしまって、片っ端から会場と思しき部屋を空けていったらIS学園の試験会場に入ってしまい、どういうわけかISを起動させてしまって今に至る、と。
うむ、
Tが抜けるだけでこうも違うとは、世の中分からないものだよなぁ。
あははは……ハァ。溜息しかでねぇよ。
まあ、そこからは満足に状況を把握する余裕すら許されず、いろんな研究機関や病院をたらい回しにされた上で、原因不明の烙印を
おかげでまともに家にも帰られず、帰っても四六時中黒服の明らかに堅気じゃない人たちに囲まれる始末。
姉に陳情したら、ものの数分で撃退されたのが幸いだ。
とはいえ、警護は必要だからと監視は続けられた。
プライバシーの保護はどうしたんだ、人権国家。
「……アレだな、きっとISとの相性が悪いんだろうな、俺。いつぞやも誘拐とかされちまうし……千冬姉に苦労ばっかりかけてるし」
こんな風にぼやいてしまうのも何回目だっけか。
とはいえ、ぼやいたところで状況が好転するはずもなく、結局千冬姉に迷惑をかけてしまうわけで。
ハァ、苦労をかけないように学校を選んだはずが逆に苦労かけてりゃ世話がない。
世界でただ一人の男性IS操縦者なんてものになってしまったんだから、その苦労は推して知るべしといったところか。
きっと、俺の知らないところでずっと頑張ってくれてるんだろう。
まったく、頭が上がらないよなぁ。
いやまあ、今も昔も上がった試しなんて一度たりともないんだけど。
織斑家では女尊男卑の風潮がIS発明以前から吹き荒れております。
「あ、あのぅ……織斑君? 織斑一夏くーん? 聞こえてますか……?」
くだらない事に脳の容量を使ってる俺は、不意に名前を呼ばれて顔を上げる。
目の前には、副担任の
……相当無視してたらしい。そして、周りからの視線も痛い。
現実逃避なんてしてみても、やっぱりこの状況から逃げることは出来ないらしい。
いや、だって考えてもみてくれ。ISは女性にしか動かせない、男の操縦者は俺だけ。
つまり、このIS学園は女子高。教員にすら男性がほぼいないんだぜ?
……居た堪れないことこの上ないと思わないか。
友人である
実際、血涙流しながら俺に殴りかかってきたんで、返り討ちにしてやったけど。
というか、俺だって代われるなら代わってやりたい。
だけど、この能力が簡単に委譲できるんなら今ここにはいないんだよなぁ。
さて、いい加減山田先生もマジ泣きになりつつあるし、窓側からの幼馴染の視線も痛いから自己紹介を済ませる事にしよう。
「あ、はい、自己紹介ですね。織斑一夏です。何故か唯一の男性IS操縦者になってここに入学する事になりました。よろしくお願いします」
無難な自己紹介で済ます。
ただでさえ、今までと違う環境だしな。ここで外して孤立なんて憂き目に会うわけにはいかないのである。
一礼してから、席に着こうとしたそのときだった。
「ちなみに私の弟だ。故に色目、ハニートラップなんぞ仕掛けてみろ。二度と朝日が拝めると思うな。コイツは私のモノだ」
『はい?』
何故かとても聞き覚えのある声で、とんでもないセリフが発せられた。
クラスのみんなに疑問符が急浮上する。無論、俺にも浮かんでいる。
……なんで、千冬姉がいるんだよ?
教室のドアから颯爽と現れた千冬姉こと、
世界で始めてISを操縦し、飛来する2000発以上ものミサイルと世界各国の戦闘機及び軍艦をを刀一本でばったばったと切り伏せた世界最強。文武両道、容姿端麗。まさにミスパーフェクト、と言いたいところだが、その実、家事全般が苦手という意外にだらしない面も……
―――スパーンッ!
「ったぁ!?」
などと、千冬姉の特徴を頭の中で
「失礼な事を考えるからだ、馬鹿者め。だいたい、お前がいれば問題なかろうが」
いつからウチの姉は読心術なんぞ覚えたんだろうか。
それとも、俺が分かりやすいだけなのか。
というか、俺がいれば問題ないって、ずっと千冬姉の面倒見なきゃならないのかよ。
辞書には自立という言葉があってだな。
などと思いがけないところであった姉との心温まる? やり取りをしていると、逸早くフリーズから立ち直ったファースト幼馴染こと
「な、ななな、何を言っているんですかッ! 千冬さん!!」
「篠ノ之。ここは学校だ、織斑先生と呼べ」
再び教室に乾いた音が響いて、同時に机に崩れ落ちる箒。
おおぅ、何か俺のときより威力が増してる気がするなぁ。南無。
「グ、ぬ、お、織斑先生! それよりも先ほどの発言について説明を求めますッ!」
「あ、あのぅ、私も聞きたいなぁ……なんて」
だが、一度の注意にめげることなく、箒は再度説明を求めた。
んで、何故か山田先生も追随した。
まあ、確かに俺としても実の弟をモノ扱いされた件について問いただしたくはあるんだけどな。
クラスのみんなも同じことを思ってるのか、事の推移を見守っている。
「ん? 何だ理解できなかったのか? そこにいる、織斑一夏は、私のだ」
『………』
おいおい、みんな黙っちまったじゃないかよ。
いや、山田先生だけは頬に手を当ててイヤンイヤンってしてるけど。
何を想像してるんですか、先生。
というか、千冬姉、答えになってないぞ。俺が千冬姉の『 弟 』だって事はさっき言ったんだから今更だろうに。
ほら、みんなも戸惑ってるぞ?
「では、自己紹介を続けろ」
そんなクラスの様子を一切合財気にすることはなく、千冬姉は自己紹介を再開させる。
まさに唯我独尊だなぁ、おい。
まあ、
そんな変わらない千冬姉の様子にため息を吐きつつも、かなり憂鬱だったこの学園生活も少し楽しみに思えてきた俺はシスコンなのだろうか。
なんて頭を悩ませていると、隣の席の女の子が声をかけてきた。
「織斑君って愛されてるねー」
「そうか?」
「ふふ、そうだよ。……姉弟同士、愛し愛され……そして禁断の領域へ―――
うん、今年の夏はこれね。たば×ちふ本からシェアを根こそぎ奪い取るのも夢じゃないかも……」
後半の方はよく聞き取れなかったけど、そんな事を言ってから前を向いてしまった。
なんだったんだ……?
周りからもよく言われるが、そんなに俺は千冬姉に大切にされてるんだろうか。
どちらかって言うと、振り回されてる感が強いんだが。
でもまあ、それが本当なら家族冥利に尽きる。
俺にとっても千冬姉は大切な家族だしな。
何はともあれ。
隠して、クラス中から(何故か)生暖かい視線を感じつつも、俺のIS学園での高校生活はスタートするのであった。
読了感謝です。
修正したものではありますが、内容、流れ等ほぼ変わっていません。
そして、一夏への恨み辛み妬みも変わっておりません。一夏、もげろ。
誤字脱字等ありましたらご報告いただけるとありがたいです。