俺の千冬姉がこんなに可愛いはずが……あった   作:pluet

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第2話

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、教壇に立つ山田先生はモニターを消した。

 

「はいっ、これで午前中の授業は終わりです。皆さんお昼ご飯を食べてきてくださいねー」

 

 山田先生がそう言うや否や、がたがたと、教室中から席を立つ音が聞こえてくる。

 そんな喧騒の中、俺は深くため息を吐いた。

 ようやく、この長く辛い時間が終わった、と。

 

 いや、まいった。山田先生の授業の内容が何一つ分からないんだもんな。

 日本語で説明されてるのに、まるで知らない言語で説明されてるみたいだった。

 

 やっぱ、入学前の参考書を古雑誌と一緒にまとめてゴミに出したのはマズかったなぁ。

 具体的には俺の頭に千冬姉の一撃をお見舞いされる程度には。

 死滅した二万個の俺の脳細胞に黙祷を捧げる。

 

 一応 板書はノートに写したけど、単語から分からないんだから意味がない。

 なんだよ、PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)って。

 ええい、辞書はないのか辞書は。

 

「あるわけないだろう、馬鹿者」

「うん? なんだ箒か」

「箒か、じゃない。何だあの体たらくは……。勉強はできる方だったろうが」

 

 目元を抑えながら、呆れ果てたと全身で表していた。

 のっけから失敬な奴だな。

 

「いつの話だそりゃ。だいたいそう言う次元じゃないだろ、コレは……。お前等と違って事前知識ってのが皆無なんだぞ、俺は」

「入学準備を怠ったお前が悪い」

「……はい」

 

 何も

 言い返せない

 事実だもの  いちか

 

 どっかの詩人みたいだな。

 とは言うものの、実際に参考書があったとしてもそれを読み込めるだけの時間が俺にあったのかといえば首を傾げざるを得ないわけで。

 やらないよりはマシだったんだろうけどな。

 

 まぁいい、俺は他の子よりもスタート地点が後ろだっただけだ。

 ここから挽回すればいい。

 亀でも兎に勝てるんだから、たゆまぬ努力こそが最大の近道なんだ!

 

「まぁ、ここの生徒は兎みたいに怠ける奴はほとんど居ないだろうけどな」

 

 身も蓋もない事を言う奴だ。

 どうして俺の身内はこうセメントな奴ばっかりなのか。

 

「………はぁ、説教ならメシの後にしてくれよ。箒も一緒に行くだろ?」

「あ、あぁ、別に構わない……」

「そっか。あ、でもその前に寄るところがあるから付き合ってくれよ」

「つ、付きッ!? こほんっ……いいぞ。それでどこ「ちょっとよろしくて?」……」

 

 箒の声を遮って後ろから聞こえた声に振り向くと、そこには“いかにも”と言った感じのお嬢様お嬢様(?)した女の子が立っていた。

 高貴オーラがこっちまで漂ってくる。

 ていうか、金髪ロールお嬢様って実在したのな。1つ前の次元の話かと思ってたぞ。

 

「あぁ、別にいいけど何の用だ? 俺達これからメシなんだけど」

「まぁ!? 何ですのそのお返事は。この(わたくし)に声をかけてもらえるだけでもその身に余る光栄なことでしょう。ならば相応の態度と言うものがあるのではなくて?」

「………」

 

 ご多分に漏れず……というか、テンプレ乙だな。

 さっき列挙した特徴に高慢も追加しておこう。

 というか、相応の態度ってなんだ。ご機嫌麗しゅうございますとでも言えばいいのか?

 どう考えてもめんどくさい手合いだ……うん、スルーしよう。

 

「あーあー、んんっ! 失礼いたしました、貴方様にお声をかけていただけること、まことに光栄に思わないこともないでございますことよ(棒) ………ふぅ、これでいいか?」

「いいわけないでしょう!? バカにしてるんですの!?」

「おお、どうしよう箒、バレてしまった」

「……それ以前に似合わなすぎて鳥肌が立ったぞ」

 

 そう言って箒は頭に手を当てやれやれと呆れてしまっていた。

 何故だ、俺の演技は完璧だったじゃないか。

 

「ちぇ、次はもっと精進するか。じゃあ、俺達はこれで」

「あ、はい。ご苦労様でした――――ってぇ!? お待ちなさい!!」

「おお、見たか箒、ノリツッコミだ。最近の外国人はお笑いに関しても造詣が深いらしいぞ」

 

 ジャパニーズOWARAIだぜ。

 海外にも普及するなんて、なんだか感慨深いものがあるな。

 

「いいからお黙りなさいッ! 話が進まないじゃないですか!!」

「あぁ、それはすまん。で、君は誰なんだ?」

「な、な、なんですって!? 貴方はイギリス代表候補生にして、入試主席であるこのセシリア・オルコットを知らないと言うんですか!?」

 

 いや、主席とか代表候補生とか知らないし。いつそんな発表があったんだよ。

 そもそも、日本の代表候補ならともかくイギリスの事まで把握しておけってのは酷じゃないのか?

 まあ、日本の代表候補生とやらも知らないんだけどな。

 

 なんて、此処で口を滑らすとまた話が進みそうにないから黙っておく。 

 

「……とりあえず何か凄そうな子だと言うのは分かった。ちなみに何組なんだ? 俺達は一組なんだけど」

「お・な・じ・クラスですわッ!! いったい、貴方はどこに目玉をお付けになっていやがるのかしらッ?!」

 

 一気にまくし立てた所為か、ぜーぜーと息を荒くしているセシリア。

 とりあえず、汚いのか丁寧なのか、よく分からん言葉遣いだな。

 そんな事を思っていると、隣の箒が訊いてきた。

 

「一夏……お前、自己紹介を聞いてなかったのか?」

「え、いや、あの時は千冬姉の登場で混乱しててさ。その後も授業とかのことでいっぱいいっぱいだったし……」

「……まぁ、あれでは仕方がなかったかもしれんが」 

「だよな。正直クラスの人の名前なんてお前ぐらいしか分からないぞ」

「……喜んでいいのか、そこは」 

「~~~~ッ!! こっちの話を聞きな「廊下で何を騒いでいるんだ、貴様等は」あうっ!?」

 

 パシンッと、そろそろ聞いただけで、PTSDを発症しそうな音が廊下に響く。

 ついでに黄色い悲鳴も響きわたる。

 我らが千冬姉の登場だ。俺が行く前に用件の方がこちらに来てしまった。

 

「はぁ、お前が遅いからこちらから来る羽目になった」

「あ、ごめん……はい、弁当。今朝、電話で言ってた千冬姉の分ってのはこういうことだったんだな」

「あぁ、今日は入学準備で山田先生に泣き付かれて帰れなかったからな。あの天然駄肉メガネめ……」

 

 仮にも同僚に向かってヒドイ言い草だ。

 弁当なんかで大げさだなぁ……。

 

「別に学食があるんだからそこで食べれば……」

「いつも家に帰れないんだから昼ぐらいはお前の料理が食べたい。……そう思うのはいけないか?」

 

 ぐっ、その聞き方は卑怯だろう。

 

「……作り手冥利に尽きます」

「よろしい。それにしても、篠ノ之はともかくオルコットもか……貴様等、今朝言った事は忘れるなよ」

 

 箒達に一睨みしてから、颯爽と去って行く千冬姉。

 なんというか、クラス皆の千冬姉への態度が微妙に納得できててしまう。

 我が姉ながら格好良過ぎだろう。

 

 ま、何にせよ、これで寄り道する必要はなくなったな。

 

「よし、俺の用は済んだし学食行こうぜ箒」

「え、あ、あぁ……。だが、いいのか? あれを放っておいて」

 

 箒の視線の先には、さっきの千冬姉の一撃から未だにリカバリーできていないセシリアが頭を抱えたままプルプルと蹲っていた。

 あ、ちょっと涙目になってる。

 あの痛みと衝撃は経験者にしか分からないからな。

 

「ま、いいんじゃないか? しばらくじっとしてれば痛みは引くだろ。なぁ、経験者?」

「お前ほどじゃないがな」

 

 なんて軽口を叩きながら、学食に向かう俺達。

 そういえば、さっきのセシリアは結局何の用だったんだろうか?

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 さて、時間は流れ、放課後になったわけだが、昼休みにした決意に早くも挫けそうになってる俺がいる。

 

 やっぱり、意気込みだけじゃ乗り切れない局面もあるってことだな。

 いつの間にかクラス代表に仕立て上げられるし、セシリアと決闘する事になるし……。

 まぁ、売り言葉に買い言葉で喧嘩を買ってしまった俺も俺なんだけど。

 

 授業にすらついていけないのに、実践でどうにかなるのか?

 俺、ISをまだ数回しか起動させたことないんだけど。それも試験の時を除いて起動させただけってレベル。

 試験にしても、操作になれる前に自爆されたせいでほとんど動かしてないし。

 

 まったく、喧嘩を買う前の俺にもう少し冷静になれと言ってやりたい。

 ……結果は変わらない気もするが。

 

 せめて知識だけでも何とかしようと思うんだけど、参考書の再発行はいつ頃になるのやら。

 というか、普通何部か余分に作るもんじゃないのか? 経費削減とかか?

 こうなったら箒辺りにでも借りて勉強するかなぁ……多少はマシかもしれないし。

 

 などと、机に座って頭を抱えていると山田先生に声をかけられた。

 

「あの~、織斑君? ちょっといいかな?」

「あ、山田先生にちふ……織斑先生」

「……まぁ、見逃してやろう」

 

 危ねぇ。また叩かれるところだった。

 

「それで、どうしたんです?」

「あのですね、織斑君のお部屋が決まったので、そのお知らせに来たんです」

「へ? 部屋って寮のですか? 部屋は全部埋まってるから1週間ぐらいは自宅通学になるって聞いてたんですけど」

「そうなんですけど、事情が事情ですから……相部屋にしてでも必ず寮に入れろと政府の方から特命が来ちゃいまして……」

 

 なんて特命だ。

 無理矢理って……相部屋の子はどう考えても女の子じゃないか。

 男女七歳にして同衾せず、常識だろ。いったい日本政府の倫理観はどうなってやがる。

 

 といっても、特命である以上は覆せないんだろうなぁ……

 俺、こんなんでも一応重要人物指定なんだろうし。警護の問題もあるってことか。

 身の丈に合わないことこの上ないな。

 

「……分かりました。でも、荷物の方はどうするんです? さすがに男でも、この身一つでって訳にもいかないんですけど」

「あぁ、それなら―――」

「私自ら用意してやった。感謝しろよ」

「……へっ? 今なんて?」

「私が、用意した」 

 

 じーざす……ッ!!

 実の姉に部屋を物色されたと言うことですか!?

 あ、いや、赤の他人にされても困るわけだが……

 

「安心しろ、お前の部屋の押入れの奥に隠してあった鍵付きの箱は開けてない」

「か、鍵付きって……っ!! だ、ダメですよぅ、織斑君ッ!! そんな、ふ、不潔です!!」

「ちょっ、違っ!? 押入れの中にそんなものは置いてねぇ!!」

 

 ……押入れには。

 

「あぁ、確かに押入れにはなかった。なにせ机の引き出しの二重底から見つけたのだからな……」

「ち、千冬姉ッ!?」

「織斑先生だ」

 

 ばこっと叩かれる。

 千冬姉の所為じゃんか! 理不尽だ!!

 さっきの千冬姉の発言のせいで、クラスに残ってた子達の視線とひそひそ話が全身に突き刺さる。

 山田先生は顔を真っ赤にさせたまま「だ、ダメです…ッ……そんなの……!」とか呟いている。何を想像してるんですか!?

 

「まあ、それに付いては後で家族会議をするとして、荷物の方は当面の着替えと携帯の充電器ぐらいでよかったな?

 洗面用具等の足りないものは購買で買うといい」

「……了解です。それで、俺の部屋はどこなんです?」

「あぁ、それは――――」

 

 千冬姉の言う事を聞き逃しまいと、クラスの子達も聞き耳を立てている。

 そして、聞いてしまう。

 

「私の部屋だ」

 ―――――――爆弾発言を。

 

「なっ!?」

『なっ!?』

『なんだってーーーッ!?』

 

 爆発したのはこちら側だったけど。

 

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 で、千冬姉に連れられて部屋に到着してしまった。

 どうやら千冬姉は寮長だったらしく、職員寮ではなく学生寮の方に部屋があった。

 つまり―――

 

「ねぇ、織斑君って千冬様の部屋に住む事になるのかしら。先生と生徒だけどいいのかな」

「二人は姉弟なんだし別にいいんじゃない?」

「あーん、せっかく織斑君の部屋に押しかけようとか考えてたのにぃ。これじゃ無理じゃない~」

「行けば? もれなく死ねるけど」

「……遠慮しまーす」

 

 後ろの方で女の子がひそひそと……ッ!!

 それなのに、ウチの姉上様ときたら

 

「どうした? 入らないのか?」

「……」

 

 我関せずと完全に無視している。

 その強靭な精神を見習いたい。無理だろうけど。

 まぁ、ここで立ち止まったまま衆人の注目を浴び続けるのは勘弁願いたい。

 さっさと部屋に入ろう。

 

「し、失礼しまーす」

「一夏、今日からお前の部屋でもあるんだ。そんなに仰々しくする必要はないぞ」

「いや、でも織斑先生……」

「馬鹿者」

 

 ぱしっ と軽く頭をはたかれる。

 はて? 何も間違ってはないハズだけど?

 制裁にしても威力は低かったし。

 

「ここからはプライベートな時間だ。二人の時は……」

「! あぁ、そうだな。分かったよ、千冬ね「お姉ちゃんと呼べ」って、はぁッ!? 」

「だから、二人の時は『お姉ちゃん』と呼べと言っている」

「お、おね、おねえちゃ……って、言えるかぁ!! いだっ!?」

「姉に向かってなんて言い草だ」

「殴ることないだろ!?」

「すまんな、照れ隠しだ。……あぁ、そうだとも、これは別にお前の夜のおかずの中に姉ジャンルがなかった事に対する八当たりでは断じてない」

 

 後半の方は聞こえなかったけど、何が照れ隠しだよ。

 いつも通りの不敵な笑みを湛えた顔なのに……

 

「まあ、姉弟のスキンシップはここまでにして置くか。さて、一夏?」

「な、なんだよ千冬姉……」

「今日の授業一切ついていけてなかったな?」

「うぐっ!? はい、その通りです」

 

 素直に認める。事実だし。

 

「どうしてお前はある一点を除いてそつなくこなすというのに、ここぞというときにミスをするんだ。大体お前はだな―――」

「申し訳ございません……」

 

 ちくちくと嫌味を言われ続ける。

 うぅ、千冬姉だって私生活はだらしないじゃんか。

 ……この部屋だって着てた物も脱ぎっぱなしで散らかし放題だし。

 やっぱりここでも片付けるのって俺がやらなきゃいけないのか?

 

 なんて失礼な事を考えていたら、千冬姉に睨まれた。叩かれる前にすぐに思考を放棄する。

 また叩かれたら敵わないからな。

 

「まぁ、何が言いたいかと言うとだ。お前に合わせてクラスの授業を遅らすわけにはいかない」

「そりゃそうだ」

「だから、私が毎日個人授業をしてやる」

「えっ!? いいの「そんなのダメですッ!!!」って、箒!?」

「ほう、盗み聞きしてるとは思っていたが、まさか、突入してくるとはな。少々見誤っていたようだな、篠ノ之箒という女を」

 

 いやいや、千冬姉はどうしてそんなに冷静なんだよ。

 部屋のドアが叩き斬られたんだぞ? 不法侵入の上に器物破損じゃん。

 そして、箒は木刀を降ろせ、話はそれからだ。

 

「ISに関しては私が一夏に教えます! だいたい、教師が特定の生徒に贔屓をしてはいけないでしょう!!」

「ふんっ、それがどうした。これは私の親友の言葉で、唯一賛同する言葉だが『有史以来、人は平等であった事など一度もない』

 つまりはそういうことだ。だいたい、今は私達家族のプライベートな時間だ。生徒だの教師だの関係ない」

 

 ぐいっと、千冬姉に抱き寄せられる。ちょっ、恥ずかしいんだけど!

 あぁ、しかも箒の怒りが加速したぞ。

 

「ぐぬぬっ! 一夏! お前からも何とか言えッ!!」

 「え、あ、いや、俺はどうせなら千冬姉に教えてもらいたいんだけど……?」

 

 先生なんだから、生徒に教えてもらうよりもいいはずだし。

 なんで千冬姉はそんなに勝ち誇った顔をしてるんだ?

 

「ふ、分かったら負け犬はこの部屋から出ていくのだな」

「……一夏」

「お、おう」

「放課後は空けておけ……鍛えなおしてやる」

「へ? なんでだよ? というか、放課後はお前は剣道部とか言ってた……」

「問答無用だ! いいな、絶対空けて置けよ!!」

「フリだな」

「違います!! それじゃあ、失礼しましたッ!!」

「あぁ、そうだ篠ノ之」

「……なんですか?」

「そのドアの修理代は請求させてもらうからな」

「? ドアって……あ……」

 

 あ……って、お前自分で壊したこと忘れてたのかよ。

 まぁ、壊したと言うより斬ったんだけど。 というか、剣道の全国制覇すると木刀でドアを叩き斬れるレベルになるのか。

 ちなみに学生寮のドアは防犯上の理由により、特性の防刃防弾仕様になっているそうな。斬鉄剣かよ。

 アイツが剣の類を持ってるときは、絶対怒らせないようにしよう。

 

「う、あ……分かりました……」

「ならばいい。では、そうそうに立ち去るといい」

 

 千冬姉がそう言うと、箒は何故かこちらをキッと睨んで部屋から出て行った。

 ……俺は悪くないと思うんだが。

 

「さて、うるさいのもいなくなったことだ。さっそく勉強を教えてやろう」

「了解。……っと、その前に一つ訊きたいんだけどいいか?」

「ん、なんだ?」

「この部屋ベッドが一つしかないんだけど……俺のは?」

 

 寮長の部屋だから、普通の個室よりは広いみたいだけどさすがにベッドまでは置いてない。

 後から簡易ベッドみたいなのを運び込むんだろうか?

 

「何をバカな事を。一つしかないならそこで寝ればいいだろう」

「……その場合、千冬姉はどこで寝るんでしょうか?」

「ベッドだが?」

「一緒に寝るのかよッ!?」

 

 いくら姉弟とはいえ、それはダメだろ! 

 

「当たり前だ。何をそんなに恥ずかしがる事がある。昔はよく一緒の布団で寝たじゃないか。

 あぁ、なんなら一緒に風呂でも入るか?

 生憎お前の好きな大浴場には入れないが、ここの寮長部屋の風呂ならば、多少手狭だが入れない事はあるまい」

「いやいや! 何言ってるんだよ千冬姉ッ!? 別々に入ればいいだろう!?」

「ちっ、お前もくだらん倫理観に縛られたものだな」

 

 倫理は大事だろ。超大事だろ。

 人として守らなきゃならない一線だよ。

 

「まあいい、とりあえず勉強の方が先だ。ほら、さっさとノートを持って来い」

「わ、分かった。でも、絶対一緒に寝ないからな!」

「そんなに私と寝るのが嫌なのか……?」

「ちがっ、嫌とかじゃなくてな!?」

「冗談だ。いいから準備しろ」

 

 うぅ、良い様に千冬姉に振り回されてる気がする……。

 自室ってもっと寛げる様なところじゃなかったっけ? 精神的に追い詰められてる気がするんだけど。

 授業で使ったノートを鞄から引っ張り出しながら、そんな事を思う俺なのであった。

 

 

 

 こうして俺のIS学園での初日は幕を閉じた。

 ……ちなみに、ちゃんと風呂と寝る場所は別々だったという事をここに明記して置く。

 

 




読了感謝です。
千冬姉に「お姉ちゃんと呼べ」と言わせたいがために始まったこの作品。
ううむ、もう少しブラコンっぷりをアピールできればいいんですが、技量が足りませんね。
格好いいブラコン……難しい。

誤字脱字などありましたら、ご報告をいただけるとありがたいです。
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