気づいたら俺は、赤ん坊になり今こうして俺の母親のおっぱいを飲んでいる。
・・・いやいやいや話が分からないだろ?俺も全く分からないんだ。
勘違い女に刺された後どうなったのかも分からない。情報を得ようとしても、如何せん今の俺の身体は未だ赤ん坊で歩くことはおろか、ハイハイすらもできない。出来るとしたらこうやってモゾモゾと身体を揺り動かすくらいだ。あ、待っておむつじゃないんだ。粗相してないから俺のオムツを脱がさないでこらやめ、やめア————ッ!!
閑話休憩
ひどい目にあった・・・どこの世界に20代の男が同い年くらいの母親にオムツを交換させられる奴がいるんだよ・・・・
俺の気を無理矢理紛らわす為に情報を一旦整理しよう。
・どうやら前の世界で流行っている転生モノ?とにかく前世の記憶はある。
・今世の俺の家族構成は父、母、姉、俺の四人構成。
・テレビを聞く(俺の身長だとテレビが見えない)限り俺が刺された事件が放送無かった事と日本ではなく、この国は重桜というらしい。けど言語は日本語ならぬ重桜語。これらの事から転生モノ?と判定。
・テレビから聞こえてくるのは艦船?とかセイレーン?とか。艦船?船?どうゆうこっちゃ。なんだか世間一般はその艦船なるものに、いい感情を持ち合わせていない。
・この世界には前世の国連にあたるのか?アズールレーンという軍事連合がある。これはセイレーンにフルボッコされた各国が協力してセイレーン倒しましょう!って経緯がある。・・・セイレーンやばいな。艦これの深海棲艦ポジでだな。
ザっと軽くまとめたけど・・・・うん。これ紛れもなくアズールレーンの世界でいいんかな?申し訳ないんだが、アズールレーンは名前しか知らないんだ。前世のDr担当の奴がどうたらこうたら言ってたなぁ・・・こんなことならちゃんと話を聞いてあげればよかったゴメンな。
殺されるわ、赤ん坊になってるわ、艦船だ、何だか次から次へと情報が流れ込んできて頭がパンクしそうだ。だが不思議とワクワクしている俺がいる。理由は分からないんだが、子供の頃に山で秘密基地を作っていたあの高揚感と言えば伝わるかな?年甲斐もなくめっちゃワクワクしてる。めっちゃワクワクしてる。大事だから二回言いました。
この高揚感のまま出かけたいのに赤ん坊だからねー、出かける事すらできないんだよねー。あーあ、外はどうなってんだろうなーと、母にチラっと見る俺。母は俺の視線に気づき、にこやかに俺に向かって手を振る。あらやだ可愛い。・・・じゃなくて俺は外に出たいの!外出したいの!母上!!あっ違う、オムツじゃなくて、お外にね?行きたいの、分かる?お外。決してオムツ変えてくれのコールじゃないんだよ。だからその手に持ってるオムツをね手放してくれませんかねー・・・来るなこっちに来るな!カ、カエレ!!・・・あ、ここ家じゃん帰ってるじゃん・・・あぁ~~~~。
やあやあ皆さんこんにちは。俺です。そう同い年くらいのマッマにオムツ交換された俺です。なんやかんやあって俺も年を取りなんと3才!光陰矢の如しとはこのことですなぁ。
ぶっちゃけおっぱい飲んで寝ての繰り返しだったからな。あ、たまに姉ちゃんが寝てる俺にマジックペンで俺の顔に落書きしてはマッマに怒られてた。アホす。そんな光景を見て朗らかに笑うパッパ。これが家族って奴か。前世では俺は親に捨てられて孤児院育ちだったからなーあっはっは。いやまぁ、辛かったけどそれだけじゃなかったよ?俺にはたくさんの兄弟、姉妹がいたからなドヤァ。チビッ子の面倒は俺と姉ちゃんで見るからさ。だから遠慮なく新しい家族を作ってもいいんだよ?ん?
「あー!また灯ちゃんが変な顔してる!お母さん!」
なんて考えてたら姉ちゃんが俺を指さして母さんを呼ぶ。変な顔とはなんだ、俺は新たな生命の誕生を温かく迎え入れようと優しい笑顔をしていたじゃないか。あと俺の名前はあかりである。姉ちゃんくらいだぞ俺をとうちゃんなんて言うのは。
「灯ー。小さい時から変顔してると癖付いちゃうからやめなさい」
マッマからも変顔と思われてた件について。母さんが昼飯を持ちながら食卓に来る。姉ちゃんと俺で卓上を布巾で拭く。
「ん、二人ともありがとね。そうだ灯、お父さん呼んできてご飯出来たわよって。隣の工場にいるはずよ。」
かしこま!さっきの会話の通り父さんは町工場を営んでいる。なんでも爺ちゃんの代から続いているんだとか。偶に工場に行ってパッパを手伝ってはお小遣いを母さんに内緒で貰う。お小遣いといっても100円200円だけどね。それでもこの年には貴重な金額である。父さんありがと。
「とうさーん!母さんがご飯出来たってー!」
小さな工場のドアを開け、叫ぶこうでもしないと父さんは気づかないんだ。返事が来るか少し待つが返答なし!偶々近くにあったメガホンを掴みもう一度呼ぶ。
「とうさーん!」
奥の方でゴソゴソと動く物音。旋盤という機械から親父がひょっこり顔を出した。
「おおー灯か。どうしたんだ?」
鉄くずを掃除しながらこちらに来る父さん。見た目20前半だが中身は33のアラサーである。ハッキリ言おう詐欺であると。ご飯できたってよ。
「ありゃ、もうそんな時間か。ん?母さんは午前中にピアノ教室じゃなかったっけ?」
それは午後から。午前中なのは明日だよ。
「そっかそっか。それにしても灯はよく覚えてるなー」
手を洗いながらのほほんとする父さん。今はこうして田舎の小さな町工場の工場長をしているが、母さん曰く大学時代は凄かったと。重桜国で一番頭がいい奴が集う大学で余裕の首席で卒業していったんだとか。余りにも優秀な為に国のお偉いさんがスカウトしたが、父さんの意思は強く町工場の後を継いだ。
母さんも母さんで有名なピアノの演奏者だったらしい。大会に出ては優勝を総なめしていた。音大に入学して、父さんの居る大学で演奏しにいったらそこで父と会う。互いに一目惚れだったそうだ。母さんは絶対に父さんに着いていくと決めていたらしく、卒業後すぐに二人は結婚。父さんの居るこの田舎に嫁いだ。
僕が考えた理想の両親!みたいな絵から出てきたかのような凄い二人の経歴だが、全部本当の事なのだ。ほえー・・すっごい。
「伊達に母さんの手伝いしてるからね」
かくいう俺も前世のミュージシャンの技を活かし、母さんの手伝いをしている。ギターを弾こうとしたが手が小さいせいで上手くコードを抑えることができなかった。・・・こ、これからだし!すぐに弾けるし!ギターがダメならピアノじゃ!と母さんのピアノ教室で弾いたら母さん驚く、生徒がたも驚く驚く。
どうして弾けるのかと聞かれて、前世がミュージシャンでしたから。と馬鹿正直に答えるわけにはいかず、母さんの見てたら出来たと。苦し紛れにも程がある言い訳があっさりと信じられたのは罪悪感が沸いた。それ以来母さんからピアノ教室の授業の時は手伝って欲しいと言われ手伝っている。今では俺と姉さんはピアノ教室のマスコットキャラクターの地位を手に入れた。
生徒といっても幅が広く、おばあちゃんから幼稚園児までいる。みんな俺より年上だけどな!おばあちゃんからはお菓子を貰い、お姉さんや女子高生からはペットの様に頭をわしゃわしゃと撫でられた後、思いっきりハグされた。・・・・柔らかったです。
「灯も小鳥もいい子に育って俺は嬉しいよ」
父さんがまだ濡れてる手で俺の頭をワシワシと撫でる。ちょ、冷たいんだけど!
「はっはっはっは」
父さんは散々俺を撫でた後、俺と手を繋ぎ自宅へと戻った。勿論濡れた手のまま俺を撫でた父さんは母さんに叱られていた。ですよねー。
灯は生まれて初めての血の繋がった家族。普通の家族に戸惑いを覚えつつも順応していこうとしています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。