Fate/Grand Orger in 仮面ライダーゴースト~英霊の力を纏いし、雪花の少女~ 作:風人Ⅱ
―炎上汚染都市冬木・市内地跡―
先程の通信でロマンに指示された座標に向かい、燃え盛る街中を警戒を忘れずに進んでいく彩人とマシュ。
その道中、周囲の何処までも広がる炎の街を見渡し、二人の表情に沈痛の念が浮かんでいた。
「しかし……見渡す限りの炎ですね。資料にあるフユキとは全く違います。資料では平和的な地方都市であり、2004年にこんな災害が起きた事はない筈ですが……」
「……そうだな……この年のもっと昔に、悲惨な大火災があったっていうのは聞いた事あるけど……」
「?先輩、フユキの事をご存知で?」
「ん……まぁ、少しね」
そう言ってマシュに苦笑いを向ける彩人だが、見知った街が炎の海に包まれる光景を見つめるその心境は穏やかではなかった。
元の時代で住んでいた父の家はどうなった?
桜や藤村は?
この年に冬木に来ていたと言う両親の安否は?
気にならない訳がない。寧ろ今すぐにでも父の家を確かめに走り出したい衝動もある。
しかしその一方で、確かめた所でどうにもならないという冷静な自分があるのも確かだ。
今の自分達は身を守るだけでも精一杯。さっきの化け物のような存在が徘徊するこんな危険な状況の街を寄り道している余裕などない。
此処で焦らずとも、カルデアがこの歪んだ時代を元に戻すという試みを実行しようとしていた事は、先程の説明会でにわか知識しかない自分でも何となく伝わった。
ならば此処はマシュ達と共に行動した方が、この事態の早期解決に到れる筈だと自分の中の衝動に言い聞かせながら、父の実家がある街の方角を見据える彩人。
「……先輩?どうかしましたか?」
「……いや、何でもないよ。先を急ごう。もう少しでドクターの言ってたポイントに辿り着く筈だ」
「そうですね……ですが気を付けて進みましょう。大気中の魔力濃度も異常です。これではまるで古代の地球のような―――」
「きゃあぁあああああああああああああああああああッッッ!!!!!」
「「?!」」
警戒心を強めるマシュの声を遮るように、突如二人の耳に届いた女性の悲鳴。
二人の進行先の方から響いたその悲痛な声を耳にし、彩人とマシュは驚きを露わに振り返った。
「今の悲鳴は?!」
「どう聞いても女性の悲鳴です……!急ぎましょう、先輩!」
◆◇◆
―爆心地付近―
彩人とマシュが女性の悲鳴を聞いて駆け付ける一方。その悲鳴が聞こえた爆心地付近では、先程彩人達を襲った群れとはまた別の魔獣達が一人の女性を追い掛ける姿があり、魔獣の群れに追われて必死に街中を逃げる女性……何故かこの地にレイシフトしたカルデアの所長であるオルガマリーは、背後から追い掛けて来る魔獣達を見て今にも泣き出しそうなほど余裕のない表情を浮かべていた。
「何なのっ、何なのよコイツ等っ?!なんだって私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないのっ?!もうイヤっ、来てっ!助けてよレフっ!いつだって貴方だけが私を助けてくれたじゃないっ!!」
『ガァアアアアアアッ!!』
彼女も突然自分の身に起きた事態に混乱してるのか、まるで子供のように癇癪を起こしながらここにはいないレフに助けを求めるオルガマリーだが、そんな彼女の背後から魔獣の一体が飛び掛かり、オルガマリーに頭から食らい付こうと口を開いた。その時……
―バッ!!―
「ヤァアアアアッ!!」
―ズシャアァアアアアッ!!―
『グルァアアアアッ?!』
「ひぃっ!……へっ?な、何っ?」
オルガマリーの前方から一つの人影……悲鳴を聞いて駆け付けたマシュがオルガマリーの頭上を飛び越えながら、彼女に襲い掛かろうとした魔獣の頭を大盾で引き裂いて撃退したのである。
その突然の展開にオルガマリーも驚愕して思わず足を引っ掛けて転び、目尻に涙を浮かべながら自分を守ったマシュの背中を見て更に困惑を深める中、マシュは残りの魔獣と対峙しながらオルガマリーの方を見て目を見開き、一足遅く駆け付けた彩人も尻もちを付くオルガマリーを見て驚愕を露わにした。
「あ、貴方は?!」
「オルガマリー所長……?!」
「あ、貴方たちっ?!ああもうっ、一体何がどうなっているのよォおおおおおおおーーーーーっっっ!!!!」
「お、落ち着いて下さいっ!取りあえず下がってっ!マシュっ!そっちは頼むっ!」
「りょ、了解です……!戦闘を開始しますっ!」
彩人とマシュの登場でいよいよ混乱極まるオルガマリーを彩人に任せ、地を蹴って残りの魔獣達に目掛け突っ込んでいくマシュ。
対する魔獣達も突如現れたマシュを敵性と定めて一斉に獣の如く襲い掛かるが、マシュは最初に飛び掛かってきた魔獣の腹の下に潜り込んで胸に大盾を突き刺し、そのまま力任せに別の魔獣に向かって押し飛ばして建物の壁に打ち付けると、魔術達を一カ所に集めたのを確認すると共にすかさずゴーストドライバーのトリガーを引き、素早く押し込んだ。
『ダイカイガン!』
『シールダー!オメガドライブ!』
「はぁあああああァッ!!」
―ズドォオオオオオオオオオオオオオンッ!!!―
『『グゥッ?!!ガァアアアアアアアアアアアアッ!!?』』
―チュドォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!―
電子音と共に背後に出現した巨大な目の紋章から注がれるエネルギーを右足に収束させ、未だ壁にめり込む魔獣達に助走を付けてオメガドライブを打ち込み、一体が爆発すると共に巻き添えを食らってもう一体も爆発し、纏めて撃破されたのだった。
「……ふぅ……戦闘終了。お怪我はありませんか、所長?」
「………………」
魔獣達の撃破を確認し、襲われていたオルガマリーに安否がないか確かめるマシュ。
だが、オルガマリーはそんなマシュを信じられないものを見るような目で見つめて何も言葉を発さず、硬直してしまっていた。
「所長?」
「…………どういうこと?」
「え……ああ、私の状況ですね。信じ難い事だとは思いますが、実は―――」
「サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァントでしょ……!そんなの見れば分かるわよ!私が訊きたいのは、どうして今になって成功したかって話よ!いえ、それ以上に貴方っ!私の一世一代の演説に遅刻した一般人っ!」
「え、えぇえええッ?!怒るの俺にですかッ?!」
「そうよっ!何でマスターになっているのっ?!魔術回路も持たないあんたなんかがマスターになれる筈ないじゃないっ!その娘にどんな乱暴を働いて言いなりにしたのっ?!」
「なんたる理不尽ッ?!言い掛かりにもほどがありますってッ!!」
「そうです、落ち着いて下さい所長っ。誤解です。強引に契約を結んだのは寧ろ私の方です」
「っ?なんですってっ?」
「経緯を説明させて下さい。その方が、お互いの状況把握にも繋がるでしょう」
と、自分達が此処に至るまでの経緯を懇切丁寧に説明していくマシュ。
すると彼女の話を聞いて幾分か納得を得ると共に冷静さを取り戻したのか、オルガマリーの表情にも段々と落ち着きが戻り始めていた。
「―――以上です。私達はレイシフトに巻き込まれ、ここ冬木に転移してしまいました。他に転移したマスター適正者はおらず、所長がこちらで合流できた唯一の人間です。……でも、希望が出来ました。所長がいらっしゃるのなら、他に転移が成功している適性者も……」
「……いないわよ。それは貴方の説明で確定したわ……認めたくないけど、どうして私とそいつが冬木にシフトしたのかも分かった」
「?所長達がご無事だった理由に説明が付くのですか?」
「消去法……いえ、共通項ね。私と貴方とそいつも、レイシフト装置の"コフィンに入っていなかった"。生身のままのレイシフトは成功率が激減するけど、ゼロにはならない。……一方、コフィンにはブレーカーがあるの。シフトの成功率が95%を下回ると電源が落ちるのよ」
「あ……だから他の適性者達は、レイシフトそのものを行っていない……ここにいるのは俺達だけ、って事ですか?」
「……一般人のわりに頭の回転は速いじゃない……つまりそういう事よ」
「成る程……流石です、所長」
案外落ち着けば頼りになる人なのか、素直に感心の声を漏らすマシュにオルガマリーも「ふんっ……」と鼻を鳴らして返すと、気を取り直すように腰に手を当てて高らかに声を張り上げる。
「まあいいわ、状況は理解しました……遠坂彩人。緊急事態という事で、貴方とキリエライトの契約は認めます。ここからは、私の指示に従ってもらいます。……まずはこの土地の観測拠点に向かいなさい。それまでは貴方に、私の護衛を任せます。全力で役目を果たすように!」
(……うーん……何だろうな……何か、無理に偉そうなキャラを作ってそうにしか見えないというか……ドクターから話を聞いた影響かな……?)
しかし、こんな余談の許さぬ状況だ。先程の彼女からして冷静にさえなれば頼りになるのは分かった事だし、ここはあまり緊張させてもいけないようにと、彩人は軍人さながら綺麗な気を付けのポーズを取りながら、無駄にキレある動きで敬礼し、
「イエッサーッ!了解デスッ!偉大なるマリー所長ッ!」
「な、何よソレっ……?気持ち悪いわねっ……お、おだてようたってそうはいかないんだからっ!」
「仲が良くて結構です。では、新手が来る前に移動しましょう。目的地の座標まで、もう間もなくですので」
◆◇◆
―爆心地―
オルガマリーと思わぬ再会を果たし、共に座標に急ぐ彩人一行。道中、彩人は見覚えのある住宅街の変わり果てた町並みを痛ましく見回しながら、隣を歩くオルガマリーに口を開いた。
「マリー所長……今さらなんですけど、この街って一体……?」
「……そうね……きっと、歴史が僅かに狂ったのよ……そうとしか思えない」
「歴史が、狂った……」
「そう。この街で起きている、"何か"が原因で人類史が狂って、結果として100年先の未来が観えなくなった……それを解析、無いし排除すれば、ミッション終了。この時代は元の姿を取り戻し、私も貴方達も、晴れて現代に戻れるわ」
「成る程……」
ではやはり、事態を早期解決するには彼女達と行動を共にするのが一番という事かと、この街が元に戻る保証を得て彩人が内心ホッと胸を撫で下ろしていると、先行していたマシュが不意に立ち止まり、二人の方に振り返った。
「着きました。ここが例の座標位置になります」
「ご苦労様。……後はベースキャンプの生成ね。いい?こういう時は霊脈のターミナル、特に魔力が収束する場所を探すのよ。そこならカルデアと連絡が取れるから、きっとこの付近に……」
「所長、そのポイントならここです。レイポイントは所長の足下だと報告します」
「うぇ?!あ……そ、そうね、そうみたいっ。わかってる、わかってたわよ、そんなコトは!」
「ええー?ホントですかぁー?―ドグォオッ!―ゲフゥッ?!」
「マシュ。貴方の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒にして召喚サークルを設置するから。は や く !」
「りょ、了解です……」
ぉおぉおおぉぉおおっ……!と、オルガマリーをちょっとからかおうとして手痛い裏拳を溝に返され、悶絶する彩人を他所に物凄い形相で指示するオルガマリーに気圧されるまま盾をポイントに設置するマシュ。
同時に、オルガマリーが盾の前で何か詠唱らしき物を暫し口ずさんだ瞬間、盾を中心にマナの粒子が立ち上り、三人の周りに青いサークルのような空間が出現した。
「これは……カルデアにあった召喚実験場と同じ……」
―PPPP!―
『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったぞ!ふたりともご苦労さま、空間固定に成功した。これで通信もできるようになったし、補給物資だって―――』
「はあッ?!なんで貴方が仕切ってるのロマニッ?!レフは?レフはどこ?レフを出しなさい!」
『うひゃあぁああッ?!しょ、所長、生きていらしたんですか?!あの爆発の中で?!しかも無傷?!どんだけ?!』
「どういう意味ですかっ!いいからレフはどこっ?!医療セレクションのトップが何故その席にいるのっ?!」
『い、いや……何故と言われるとボクも困るっ。自分でもこんな役目は向いていないと自覚してるしっ。……でも、他に人材がいないんですよ、オルガマリー。現在、生き残ったカルデアの正規スタッフはボクを入れても二十人と満たない。ボクが作戦指揮を任されているのは、ボクより上の階級の生存者がいない為です」
「いないって……じゃあ、まさかレフさんは……」
『……レフ教授は、管制室でレイシフトの指揮を取っていた。あの爆発の中心にいた以上、生存は絶望的だ……』
「そんな―――レフ、がっ……?」
「……所長……」
レフの存命が限りなく低いであろう事を知らされ、まるで親を亡くした子供のような虚ろな目を浮かべるオルガマリー。しかし、途端に何かを思い出したように我に返り、
「いえ、それより待って、待ちなさいっ、待ってよねっ……。生き残ったのが二十に満たないっ?じゃあマスター適性者はっ?コフィンはどうなったのっ?!」
『……47人、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何名かは助ける事が出来ても、全員は―――』
「ふざけないでっ!すぐに冷結保存に移行しなさいっ!蘇生方法は後回しっ!死なせないのが最優先よっ!」
『ああっ!そうか、コフィンにはその機能がありましたっ!至急手配しますっ!』
そう言って、コフィン内の適性者達を冷結保存する為に一時通信を断つロマン。
そうしてロマンが戻ってくるまでの間、二人のやり取りを聞いていたマシュは驚きを露わにした目でオルガマリーの横顔を見つめていく。
「驚きました……冷結保存を本人の承諾なく行う事は犯罪行為です。なのに即座に英断するとは、所長として責任を負う事より、人命を優先したのですね」
「バカ言わないで!死んでさえいなければ後でいくらでも弁明出来るからに決まってるでしょう?!だいたい47人分の命なんて、私に背負えるハズがないじゃない……!死なないでよ、たのむからっ……!ああもうっ、こんな時レフがいてくれたら……!」
(……流石に余裕がないな……いや、それも無理はないか……)
何せ人命が掛かってるのだ。適性者達の身に何かあれば、その責は全て責任者である彼女に降り掛かる事になるのだから、此処まで必死になるのも当然か。
両手を組んで祈るように呟くオルガマリーの弱々しい背中を見つめ、彼女が所長として立たされる苦悩の一端が垣間見えたような気がした彩人が同情を覚える中、適性者達の冷結保存を終えたロマンから再び通信が届き、適性者達の冷結保存の完了、更にカルデアの細かな損傷についてなどの一通りの報告が語られていく。
『……報告は以上です。現在、カルデアはその機能の八割を失っています。残されたスタッフでは出来る事に限りがあります。なので、こちらの判断で人材さレイシフトの修理、カルデアス、シバの現状維持に割いています。外部との通信が回復次第、補給を要請してカルデア全体の立て直し……というところですね』
「結構よ。私がそちらにいても同じ方針を取ったでしょう……はあ……ロマニ・アーキン。納得はいかないけど、私が戻るまでカルデアを任せます……。レイシフトの修理を最優先で行いなさい。私達はこちらでこの街……特異点Fの調査を続けます」
『うぇ?!所長、そんな爆心地みたいな現場怖くないんですか?!チキンのクセに?!』
「ほんっとう、一言多いわね貴方はっ……今すぐ戻りたいのは山々だけど、レイシフトの修理が終わるまで時間が掛かるんでしょ?この街にいるのは低級な怪物だけだと分かったし、デミ・サーヴァント化したマシュがいれば安全よ。事故というトラブルはどうあれ、与えられた状況で最善を尽くすのがアニムスフィアの誇りです」
そう言いながら気を取り直すように髪を払い、オルガマリーは背後の彩人とマシュに目を向けながら、指揮官として高らかに一同に通達する。
「これより遠坂彩人、マシュ・キリエライトの両名を探索員として、特異点Fの調査を開始します。……とは言え、現場のスタッフが未熟なのでミッションはこの異常事態の原因、その発見にとどめます。解析・排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでからの話になります」
『了解です。健闘を祈ります、所長。これからは短時間ですが通信も可能ですよ。緊急事態になったら遠慮なく連絡を』
「…………ふん。SOSを送ったところで、誰も助けてくれないクセに……」
『所長?』
「なんでもありません。通信を切ります。そちらはそちらの仕事をこなしなさい」
『?分かりました……あ、そうだ。その前に、こちらで作業中にあるモノを発見しましたので、今からそちらに転送しますね』
「……?あるモノ?」
何だ?、と揃って一同が首を傾げていると、サークル中心にバチバチとスパークが発生して光が生まれ、光の中から何やら黄金の札のような物が転送され、オルガマリーの手に握られた。
「これは……確か霊基召喚補助用にカルデアで開発してた……」
『"呼札"、ですね。彩人君達がそちらのポイントに辿り着くまでの間、せめて彼が自分一人でも身を守れる礼装がないかと探して見つけたものです。それがあれば、新たなサーヴァントを召喚して彩人君の力になるのではないかと。どうか役立てて下さい……ご武運を』
プツンッと、その言葉を最後に今度こそロマンとの通信が途絶える。
オルガマリーもそんなロマンの残したセリフに「ふん……」と鼻を軽く鳴らしながら転送されてきた呼札を手の中で弄んでいると、マシュがおずおずとした様子でオルガマリーに向けて口を開いた。
「……所長、よろしいのですか?ここで救助を待つ、という案もありますが」
「そういう訳にいかないのよ。……カルデアに戻った後、次のチーム選抜にどれほど時間が掛かるか。人材集めも資金操りも一ヶ月じゃきかないわ。その間、協会からどれほど抗議があると思っているのっ?……最悪、今回の不始末の責任として、カルデアは連中に取り上げられるでしょう。そんな事になったら破滅よ。手ぶらでは帰れない。私には、連中を黙らせる成果がどうしても必要なのっ……」
「……成る程。責任者には俺達に分からない苦労がある、って事ですか」
「……そういう事よ……悪いけど付き合ってもらうわよ、彩人、マシュ。とにかくこの街を探索しましょう。この狂った歴史の原因が何処かにあるハズなんだから……あ、その前に、ハイ」
特異点の探索に向かおうとした矢先に手の中の呼札を見て思い出したように言いながら、ポイッと乱雑に彩人に呼札を投げ付けるオルガマリー。
彩人はいきなり投げ付けられた呼札を見て「うぉおぅ?!」と慌てた様子で驚きながらも、何とか落とさぬようにキャッチし、ホッと一息吐きながら渡された呼札をまじまじと眺めていく。
「ええっと……確かこれ、サーヴァントを新しく呼び出せる道具なんですよね?ドクター曰く」
「そうよ。けど、効果はあまり期待しない方がいいわ。何度かカルデアの実験場でも使われたけど、どれも失敗ばかりでまともにサーヴァントを呼べた試しがないんだから。……ま、試しに貴方もやってみれば?ちょうど召喚サークルがあるのだし」
「ん……じゃあ、試しに一つ」
せっかくロマンが送ってくれたのだし、此処は試しにやってみようと、オルガマリーと入れ替わりに召喚サークルの中に足を踏み入れて、呼札を盾の上に設置しようとする彩人だが、後ろでその様子を見ていたオルガマリーは何やら意地の悪い笑みを浮かべつつ、
「でも気を付ける事ね。仮にサーヴァントを召喚したとしても、その英霊がマシュみたく協力的とは限らないわ。……最悪、神話に出て来る怪物のような存在の反英雄が出てきて、貴方を出会い頭に食い殺すかもしれないわよ?」
「エ……?マジでっ?」
「大丈夫です、先輩。いざと言う時には私が先輩達をお守りしますから、どうかご安心を」
「や、う、うーんっ……そう言ってくれるのは有り難いんだけどっ……」
今はマシュもサークル形成の為に唯一の武器である大盾を手放しているし、仮にここでそんな危険なサーヴァントが召喚されればマシュを空手で戦わせることになる。
……しかし、このままマシュを一人で戦わせて彼女に負担を強いるより、新たなサーヴァントを呼んで少しでもマシュの負担を減らせるのならばと、彩人は一瞬逡巡した後に決心した表情で呼札を盾の上に置き、彩人が離れたと共にサークルが起動し始める。
「動き出した……!来るか、新しいサーヴァント!」
「ふん。それぐらいならまだ実験で何度も目にしてるわ。問題は其処から……って、ウソっ?!」
召喚サークルの起動の様子を馬鹿馬鹿しげに傍観していたオルガマリーの表情が、驚愕のモノへと一変する。
何故なら、起動した召喚サークルから凄まじいまでの輝きが発せられ、三本の輪が立ち上り、今にも何かが現れそうな気配がヒシヒシと伝わって来るからだ。
―バシュウゥウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!―
「こ、この感じ……?!まさか、ほんとに来るのかッ?!」
「ま、まさかッ?!実験じゃ一度も成功した試しがないのにッ?!」
「ッ!先輩下がってっ!何かがっ……何かが来ますッ!!」
「マシュッ……!!」
召喚サークルから発せられる気配を感知し、彩人を守る様に前に出るマシュ。
マズい。もしサーヴァントが本当に召喚されるなら、最悪ここで戦闘になる可能性も捨て切れない。
そうなれば武器無しでマシュが戦わねばならなくなると、恐れる事態に現実味が増して背筋を冷たい物が駆け抜ける感覚を覚える中、召喚サークルが一際まばゆい輝きを放って収束し、光の柱を形作って次第に光が晴れていく。
その様子を一同が固唾を飲んで見守る中、
(゚Д゚)
_φ___⊂)__
/旦/三/ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
「…………」
「…………」
「…………」
偉大な英雄───とはとても思えない、お洒落な帽子を被った一人の青年が机に向き合った姿勢のまま、筆を手にポカーンと彩人達を見つめる姿があったのだった……。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………えー、と…………」
光が止み、現れたサーヴァントを見て何とも言えぬ微妙な空気が一同の間を流れる。
そんな空気を感じ取ったのか、召喚されたサーヴァント……"神山 飛羽真"はポカーンとした表情のまま彩人達の顔と、机の上の原稿用紙を交互に見て、周囲の炎の街を見て、もう一度彩人達に目を向けて、一言。
「あの、ごめん……確かに「もうそろそろ寒い季節になってきたし。いっそ炎の海の中にでも飛び込めたらなー」みたいなこと言っちゃったけど、別に本気で叶えて欲しかったわけじゃ……」
「「「いや、アンタ(貴方)誰(ですか・よ)っ?!」」」
気まずげに申し訳なさそうな顔で謝罪する飛羽真に向かって、彩人達の息のあった大音量のツッコミが炎の街に木霊する。
……何だかここに来て初めて、三人の心が一つになったような気がした。
お久しぶりです皆様。長らく更新をほったらかしにしていてすみません。
今回は少し以前投稿していたのとは違った形で、とあるキャラに登場して頂こうかと構想を練り直しております。
今後の展開も少しづつつ変わっていく予定ですので、長い目で観て頂けると幸いです。