Fate/Grand Orger in 仮面ライダーゴースト~英霊の力を纏いし、雪花の少女~   作:風人Ⅱ

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プロローグ②

 

―カルデア内部・通路―

 

 

―――人理継続保障機関・カルデア。

 

 

その内装は一面鉄製の板に支配された一見冷たそうな空間になっており、一方で施設内の設備は全てカルデアの技術を駆使して作り上げた近未来的なモノばかりと、国連承認の下とあって莫大な予算が注ぎ込まれているのが伺い知れる。

 

 

そんなカルデアの廊下にて……

 

 

 

 

 

「……zzZZ……ZZzz……」

 

 

 

 

両手を大っぴらに広げながら、呑気に寝息を立てて大の字に鉄の床の上の廊下に寝っ転がる人影……カルデアへの入館認証の為に外のゲート前に立っていた筈の彩人が、何故かいつの間にかカルデアの施設内に足を踏み入れ、しかもグースカと気持ち良さげに眠る姿があったのだった。其処へ……

 

 

『……キュウ?』

 

 

彩人が眠る廊下の向こうから、一匹の謎の獣がトテトテと小走り気味に走って現れた。

 

 

外見は白くモコモコの毛並みだが、その姿は狐と羊を足して二で割ったような見た目の為に、どの種の生き物なのか一目では判断が付かない。

 

 

しかし案外人懐っこいのか、謎の白い獣は床に倒れて眠る彩人の姿を視界に捉えて一瞬足を止めるも、すぐに彩人の下に歩み寄り、鼻を近付けて匂いを嗅いだ後、彩人の頬を舌で何度もペロペロと舐めていく。

 

 

『キュウー?フォウ、キューウ!フー、フォーウ!』

 

 

「―――フォウさん……!そちらは正面ゲートです!外出には許可証、が…………?」

 

 

まるで起きろと言わんばかりに不思議な鳴き声を上げて、彩人の頬を舐める白い獣が現れた方向の廊下から、白い獣の飼い主らしき一人の少女がやって来た。

 

 

薄い桜色の髪に黒のスタンダードな眼鏡、白衣という研究者然とした服装が特徴の姿。

 

 

台詞からして恐らく白い獣を追ってきたのだと思われる少女は、最初は白い獣を見付けそのまま連れ戻そうと近付くが、白い獣の傍に倒れる彩人の存在に気付いて一瞬驚いた様子で動きを止めるも、スヤスヤと床の上で眠る彩人の顔を暫しジッと見つめた後、何やら神妙な顔つきで床に両膝を着き、彩人の顔をソっと覗き込んだ。

 

 

「……驚きです……こんなに無防備で、危機感のない睡眠状態があるなんて……」

 

 

「…………んぅ…………ぅっ…………っ…………?」

 

 

まるで珍しいモノを見付けたかのように、まじまじと彩人の寝顔を好奇心溢れんばかりの眼差しで見つめていく少女。すると、白い獣に頬をしつこく甜められ続けたせいか、彩人の閉じられた瞼が漸く徐々に開かれていき、未だ眠気が残る目を擦りながら徐ろに上体を起こしていく。

 

 

「……っ……なんか今、頬を甜められたような……って、あれ……?キミ、は……?」

 

 

「あ……」

 

 

何故か妙にベトベトする頬を手で拭っていた所、いつの間にか自分の傍に座っていた少女の存在に気付いて驚き、思わず反射的に少女にそう問い掛ける彩人。

 

 

一方の少女も、其処で彩人の顔をジッと見過ぎていた事に気付いて我に返り、一瞬恥ずかしそうに頬を紅くするもすぐに平常を装い、彩人に向けて挨拶するかのように一礼した。

 

 

「お目覚めの所、急に驚かせてしまいすみません。……しかし、朝でも夜でもなければ、ベッドですらないこんな床の上で眠るのはあまりオススメ出来ないと言いますか……取りあえず、今はおはようございます、先輩」

 

 

「ぇ……先輩、って……あー……ごめん、誰だったっけ……?あ、いや、それよりここは……?」

 

 

「ああ、それは簡単な質問です。大変助かります」

 

 

と、何やら独特な受け答え方をして微笑むと共に、少女は床に着けた両膝の汚れをパンパンッと払いながらゆっくりと立ち上がり、説明を始める前に自己紹介からし始めた。

 

 

「先ずはじめに、私はマシュ・キリエライトと申します。そしてここは、カルデア正面ゲートから、中央管制室に向かう通路です」

 

 

「カルデア……ゲート……?……あっ……」

 

 

薄い桜色の髪を持つ、眼鏡を掛けた少女……"マシュ・キリエライト"と名乗る彼女にそう説明され、一瞬頭に理解が及ばず怪訝な反応を見せるも、直後に自分が此処に来た時の記憶……カルデアのゲート前で認証を行った時の事を思い出した。

 

 

(そう、か……俺、あの後ちゃんとカルデアに入れたのか……あれ?けど、なんかその後の記憶が……?)

 

 

「……あの、こちらからも質問宜しいでしょうか、先輩?」

 

 

「……!あ、あぁ、何?」

 

 

「いえ、その……先程は随分とお休みのようでしたが、通路で眠る理由が、ちょっと……」

 

 

「え……お、俺、ここで眠ってたの……?」

 

 

「はい、スヤスヤと。教科書(テキスト)に載せたいほどの熟睡でした」

 

 

「は、ははは、そう……それは、多分載せてもあんまり他の人の役には立たないんじゃない、かなっ……?」

 

 

何故か関心の眼差しを向けるマシュの言葉に対し、記憶にはないがこんな場所で寝ている所を人に見られた言う恥ずかしさから苦笑いを返すしかない彩人。とその時、マシュの隣で何やら忙しなくウロウロしていた白い獣がピョンピョンと跳ね、何か彼女に訴え掛けるように叫び始めた。

 

 

『フォウ!キュー、キューウ!』

 

 

「……失念していました。あなたの紹介がまだでしたね、フォウさん」

 

 

「フォウ……って、もしかして、その生き物の名前?」

 

 

「はい。こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権生物です。私はフォウさんにここまで誘導され、お休み中の先輩を発見したんです」

 

 

『フォウ。ンキュ、フォーウ!』

 

 

と、マシュに紹介された事で満足したのか、謎の白い獣……フォウは何処となく上機嫌な様子でクルクルとまるで犬のように回った後、そのまま踵を返して来た道を引き返し走り去っていってしまった。

 

 

「……またどこかに行ってしまいました……あのように、特に法則性もなく散歩しています」

 

 

「そ、そう、なんだ……変わった生き物だね……」

 

 

「はい。私以外にはあまり近寄らないのですが、先輩は気に入られたようですね……おめでとうございます。カルデアで二人目の、フォウのお世話係の誕生です」

 

 

「え、あー、その……あ、ありが、とうっ?」

 

 

何やらいきなり可笑しな係を押し付けられたが、フォウが自分に懐いているという事が何か喜ばしいのか、嬉しそうに笑うマシュの顔を見て不思議と水を差す気にはなれず、取りあえずお礼を言っておく彩人。と、その時……

 

 

「――ああ、そこにいたのかマシュ。だめだぞ、断りもなしで移動するのは良くないと……おっと、先客が居たんだな」

 

 

二人が会話していた最中、フォウが走り去っていった側の廊下の向こうから、また新たに一人の人物が現れた。

 

 

深緑色のハットを頭に深く被り、肩から長い髪を下ろし、帽子と同じ柄の深緑色のスーツでピシッと正装した、柔からな笑みを浮かべた男性。

 

 

一見人当たりの良さそうな雰囲気を纏った男性はどうやらマシュを探していたようで、彼女を発見して歩み寄るが、マシュだけかと思いきや一緒にいた彩人の存在に気付いて僅かに驚くも、すぐにまた柔からな笑みを浮かべてまじまじと彩人の全身を爪先から頭まで観察していく。

 

 

「君は……そうか、今日から配属された新人さんだね。私はレフ・ライノール。ここで働かせて貰っている技師の一人だ。ようこそカルデアへ。歓迎するよ。君の名前は?」

 

 

「あ、えっと……はい。遠坂、彩人です。よろしくお願いします」

 

 

「こちらこそ。遠坂彩人君、か……ん?遠坂?もしや、君がそうなのかい?遠坂家現当主、遠坂凛女史のご子息の?」

 

 

「え?は、母の事をご存知で?」

 

 

「勿論だとも!あのシュバインオーグの弟子にして、天才と名高い彼女の事は我々の世界で知らぬ者はいない程だからね。だからこそ、私はマスター候補の一人として彼女のご子息である君の名を上げたんだよ」

 

 

「?俺の、名前を……?」

 

 

ハット帽子を被った男性、"レフ・ライノール"にそう言われてイマイチ何の事か分からずピンッと来なかったが、その時ふと、ここに来るきっかけとなった1週間前の駅前でカルデアのスタッフと名乗る男性との話の中で、「"レフ教授からのご指示で"」と言う内容があった事を思い出した。

 

 

「……もしかして、あのスタッフさんが言ってたレフ教授って……?」

 

 

「そう、私の事だよ。……まぁ実際の所、君には英霊との契約に必要な魔術回路の生成が出来ないという理由から候補から落とされ掛けたのだけど、私にはどうも、君にはまだ未知の可能性があると感じられてね。だからせめて、数合わせの緊急で出来た一般枠に君を落とし込めないかと思い、君の下にスタッフを寄越したという事さ」

 

 

「あ……そう、だったんですか」

 

 

自分の母はレフが称賛する程の凄い人であると言うのに、その息子である自分は才能がないにも関わらず数合わせの枠で呼ばれ、しかも当の自分は好奇心と興味本位の軽い気持ちでその枠に着いたと言う後ろめたい心境から気まず気に頭を掻く彩人だが、レフはそんな彩人の肩の上に手を置き、柔らかく微笑んだ。

 

 

「けど、一般枠だからと言って悲観しないで欲しい。今回のミッションには、君達全員が必要なんだ。……魔術の名門から38人。才能ある一般人から10人。何とか48人のマスター候補を集められた。分からない事があったら、私や、マシュに遠慮なく声を掛けてくれ」

 

 

「……分かりました。すみません、気を遣わせてしまって」

 

 

「気にしなくていいさ。……ん?そう言えば、彼と何を話していたんだいマシュ?らしくないじゃないか。以前から面識があったとか?」

 

 

「いえ、先輩とは初対面です。この通路で熟睡していらしたので、つい……」

 

 

「熟睡?……ああ、さては入館時にシュミレートを受けたね?霊子ダイブは慣れていないと脳にくる。シュミレート後、表層意識が覚醒しないままゲートから開放され、ここまで歩いてきたんだろう」

 

 

「?それは、えと……つまり、寝ぼけていた、と……?」

 

 

「一種の夢遊状態だね。彩人君が倒れたところで、ちょうどマシュが声を掛けたのさ。見たところ異常はないが、万が一という事もある。出来れば医務室まで送ってあげたいところなんだが……」

 

 

うーんと、レフは何やら困った調子で懐から取り出した懐中時計を開き、時刻を確認していく。

 

 

「すまないね、もう少し我慢してくれ。じき所長の説明会が始まる。君も急いで出席しないと」

 

 

「所、長……?説明会、ですか?」

 

 

「ああ。ここカルデアの責任者にして、ミッションの司令官だよ。時計塔を統べる十二貴族の一つとして、それなりに有名な名前なんだが……まぁ、所長を知らなくてもマスターとしての仕事に影響はないし、問題ないな」

 

 

「や、それはそれで後から何か問題になりそうな気がしなくもないと言うか……」

 

 

と言うか、上司の責任者をそんな軽く扱っていいのかとツッコミたい気持ちが山々なのだが、当のレフは「だいじょーぶだいじょーぶ」と軽い感じで笑うばかりで特に気にしておらず、そんなレフの調子から彩人も「それならまぁ……」と納得した中、二人の会話を聞いていたマシュが突然挙手し、口を開いた。

 

 

「レフ教授、先輩を管制室にまでご案内してもよろしいですか?」

 

 

「うん?あぁ、いいよ。一緒に行こう。君も、それでいいかな?新人君?」

 

 

「あ、はい。助かります」

 

 

なにせまだカルデアに着いたばかり。管制室とやらが何処にあるのかも分からないので、案内してもらえるというのなら大変助かる。

 

 

なので、わざわざ案内役を買って出てくれたマシュにお礼を言おうと彼女に目を向けるが、其処でふと、彩人は先程から気になっていた疑問を思い出した。

 

 

「あの……ところで、君はなんで、俺を先輩と?」

 

 

「……………………」

 

 

彩人が疑問に思ったのは、先程初めて会った時からマシュが自分を呼ぶ時に使う「先輩」という呼び方。

 

 

見た目からして恐らくマシュは自分より一個下ぐらいだと思うので、その呼び方もまあ珍しくはないだろうが、何故わざわざ"先輩"呼びなのか。

 

 

それが気になるあまり、彼女本人にその理由を問い質してみるが、その事を指摘されたマシュは何やら照れた様子で黙って俯いてしまい、そんな彼女に代わり、レフが歩きながら説明し始めた。

 

 

「まぁ、あまり気にしないで。彼女にとって、君ぐらいの年頃の人間はみんな先輩なんだ。でも、はっきりと口にするのは珍しい……いや、もしかして初めてかな?私も気になってきたな……ねぇマシュ。なんだって彼が先輩なんだい?」

 

 

「理由……ですか?」

 

 

レフにまでそう問われ、マシュは淡い桃色の髪を僅かに揺らしながら顔を上げて、改めて彩人の目を見つめる。その拍子に、前髪が覆って隠されていた彼女の左目が露わになる。

 

 

まるで彩人の心の内まで探るように眼鏡の奥から見つめてくる円らな紫の瞳に、少し病的と思えるほどに色白い透き通った肌と、触れたら柔からそうな艶っぽい唇。

 

 

異性と視線を交えると自ずとそういった女性的な部分に目が向いていってしまい、自分の視線が自然とそれらを捉えていると気付いた彩人が「ぅっ……」とどぎまぎして思わず目を泳がせると、マシュは彩人を見つめたまま妙に自信に満ちた声音ではっきりと告げた。

 

 

「彩人さんは、今まで出会った人の中でいちばん人間らしいです」

 

 

「ふむ。それは、つまり?」

 

 

「まったく驚異を感じません。ですので、敵対する理由が皆無です」

 

 

「なるほど、それは重要だ!カルデアの人間は一癖も二癖もあるからね!私もマシュの意見には賛成だなぁ。彩人君とはいい関係を築けそうだ!」

 

 

「は、はははっ……それは、どうもっ……」

 

 

恐らく人生で初めて同年代の娘と見つめ合いをした末に、何だか良くわからない評価を頂き、それを聞いて何故か上機嫌なテンションで笑うレフという良くわからない状況から、若干お疲れ気味な表情で苦笑いを浮かべる事しか出来ない彩人。

 

 

魔術の世界の人達ってこんな変わり種ばっかなのだろうか……と、既に今の時点で前途多難な予感を覚え始める彩人の隣で、レフの台詞を聞いたマシュが途端に不安げな顔を浮かべ始めていた。

 

 

「レフ教授が気に入ると言う事は、所長がいちばん嫌うタイプの人間という事ですね。…………先輩。このままトイレにこもって説明会をボイコットする、という手も考えた方が良いかと」

 

 

「……え?マジで?」

 

 

「止めといた方がいい。それじゃますます所長に目を付けられる。ここは運を天に任せて、出たとこ勝負だ。ほら、管制室に着いたぞ……虎口に飛び込むとしようじゃないか、彩人君。なに、慣れてしまえば愛嬌のある人だよ」

 

 

「え"っ、い、いや、あの、運とか出たとこ勝負とか言われましてもっ……!俺、何か良くわからないけどラックに関しては父さん寄りらしくてっ、その辺の運要素は空っきしっ―ドォンッ!―でぇええええええッ!!?」

 

 

「まあそう言わず、何事も挑戦だよ。成せば成る!」

 

 

「……その言い回しは、成らなかった時の事を一切考えてないようにも聞こえますが……」

 

 

なにやら不穏な事を口にする二人のせいで身構える彩人の言い分を無視し、扉を開けた管制室に背中を押して彩人を投げ込む楽しげなレフ。

 

 

そんな二人のやり取りに溜め息をこぼしつつ、マシュも彩人とレフの後を追って説明会の開始時間がすぐそこに迫る管制室へと足を踏み入れるのあった。

 

 

 

 


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