Fate/Grand Orger in 仮面ライダーゴースト~英霊の力を纏いし、雪花の少女~   作:風人Ⅱ

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プロローグ⑤

 

―彩人のマイルーム―

 

 

「──成る程、そんな事があったのか……」

 

 

「えぇ、まぁ……。それで所長の怒りを買ってしまって、場合によっては此処を追い出されるかも……みたいなっ」

 

 

それから数十分後。成り行きでロマンのサボりに付き合う羽目になってしまった彩人は、一時はロマンの一方的な一人語りや仕事の愚痴など延々聞かされた後、話の流れから自身の身の上や此処に来る事になった経緯を話す事になり、彩人から一通り話を聞いたロマンは何処か困ったように頭を掻きながら複雑げな笑みを浮かべた。

 

 

「それは災難だったね……けど、出来れば彼女を恨まないでやってくれ。所長も中々複雑な立場でね。三年前に前所長……彼女のお父さんが亡くなって、まだ学生だったのにこのカルデアを引き継ぐ事になったんだ」

 

 

「学生って……そんな若い頃から、ですか?」

 

 

「うん。当時のマリーは、カルデアの維持だけで精一杯だった……そんな時、カルデアスに異常が発見されてね?今まで保障されていた百年先の未来が視えなくなって、協会やスポンサーから批難の声は山のように届いた……加えて、彼女にはマスター適性がない事も判明してね。十二のロードの一つ、魔術協会の天体学科を司るアムニスフィア家……その当主がマスターになれないなんて、スキャンダルも良い所だろ?そんな状況でも、彼女は所長として最善を尽くそうとしてる。この半年間、彼女は心身共に張り詰めて来たんだ。だから、君に辛く当たったのも、何も君が嫌いだからじゃないさ」

 

 

「……そうだったんですか……」

 

 

ロマンから聞かされたオルガマリーのバックボーンを知り、彩人は思わず視線を落として自分の膝の間に座って寛ぐフォウを見下ろす。

 

 

先程の説明会で最初に会った時は自分もキツそうな人だなと思ったし、彼女のあの高慢的な態度には多くの候補生達が反感を覚えていたが、それも全ては、そういった並ならぬ苦労を経験してきた背景があったが故の余裕の無さから来るものだった。

 

 

……そりゃ俺みたいな半端者は目の敵にされて当然かと、ますます彼女に対して申し訳ない気持ちを彩人が覚える中、ロマンは先程聞かされた彩人の話の中で、もう一つ気になる話を指摘してきた。

 

 

「しかし、ボクも報告でチラッと聞いただけだったけど、君って魔術回路を自分で作る事が出来ない体質なんだよね?」

 

 

「?あ……そう、みたいですね……正直、回路を作るって経験をした事がないから、その感覚も分からないし、あんまり実感が沸かなくて自分でも良く分からないんですけど……」

 

 

「ふむ、それは不思議だね……全く魔術の家系が関わっていない一般人ならともかく、君のお母さんは五つの属性全てを兼ね備えた「五大元素使い(アベレージ・ワン)」と呼ばれる超一級の魔術師だ。そんな魔術師の母を母体にしてる以上、例えどんなに魔術の才が無かったとしても、魔術回路が全くのゼロなんて事はあり得ないと思うけど……」

 

 

「は、はぁ……成る程……」

 

 

何かまた良く分からない用語が飛び出してきたが、取りあえず分かるのは母がとんでもなく凄い魔術師であると言う事ぐらいだろうか。

 

 

……というか今更ながら気付いたが、母がそれほどまでにこの世界で名高い有名人であるなら、その息子である自分が魔術師の知識も才能も無いペーペーなどと知られ渡っては母の立場的にとんでもないスキャンダルになるのではないだろうか?と、改めて自分がここにいる問題性に気付き内心冷や汗を流す彩人だが、そのとき突然ロマンの端末に通信が届き、管制室にいるレフの声が響き渡った。

 

 

『ロマニ、あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれないか?Aチームの状態は万全だが、Bチーム以下、慣れていない者の若干の変調が見られる。これは不安から来るものだろうな。コフィンの中はコックピット同然だから』

 

 

「やあレフ、それは気の毒だ。ならちょっと麻酔を掛けに行こうか」

 

 

『ああ、急いでくれ。いま医務室だろ?其処からなら二分で到着出来る筈だ』

 

 

ピッと、ロマンへの要件を伝え終わったと共にレフからの通信が途絶える。だが、その会話内容を聞いていた彩人は首を傾げ、訝しげな目でロマンの顔を見た。

 

 

「医務室って……あの、ここ俺の部屋ですよね?さっきの管制室まで二分じゃとても……」

 

 

「あー……うんっ、やぁっ、参ったなぁっ、ハハハハハハッ……まぁ、少しぐらいの遅刻なら許されるだろうっ。Aチームに問題はないようだしっ」

 

 

「でも、レフさんは今すぐ来てほしいって言ってましたよ?」

 

 

「おや?レフともう面識があるのかい?」

 

 

「えぇ、ここに着いたばかりの時に色々話を聞かせてもらって……カルデアで技師をしてるって聞きましたけど」

 

 

「そっ。彼は擬似天体カルデアスを観る為の望遠鏡、近未来観測レンズ・シバを造った魔術師だ。因みに、レイシフトの中枢を担う召喚・喚起のシステムを構築したのは前所長。その理論を実現させる為の擬似量子演算機……ようはスパコンだね。これを提供してくれたのが、"アトラス院"。このように多くの才能が集結して、今回のミッションは行われる。だからボクみたいな平凡な医者が立ち会ってもしょうがないけど……ま、お呼びとあらば行かないとねっ」

 

 

そう言って椅子から徐ろに立ち上がりつつも、「やれやれ、いっそ"働いたら負け"って理論もアトラス院で実現してくれたなぁー」などとボヤくロマン。彩人もそんなロマンの愚痴に苦笑いしつつも、話を聞かせてくれたお礼にせめて見送りぐらいしようかとベッドから立ち上がろうとした、その時……

 

 

 

 

 

―…………ブツゥンッ!!!―

 

 

「……ッ!!?えっ?!」

 

 

「ッ?!な、何だっ?!明かりが消えたっ?!」

 

 

 

そう、二人が動き出そうとした矢先に突如室内の明かりが前触れもなく落ち、目の前が真っ黒に染まったのである。

 

 

急に何だ?、と突然の事態に二人も動揺を露わにし、見えないと分かりつつも思わず辺りを見回す中、直後……

 

 

 

 

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアアァァァンッッッ…………!!!!!!!―

 

 

 

 

 

 

 

「……?!今、遠くから何か……?!」

 

 

「まさか……爆発音かっ?!」

 

 

 

視界を暗闇で塞がれる最中、遠方から確かに聞こえた爆音のような音……。

 

 

その不審な物音を耳にして更に混乱を深める二人を他所に、カルデア内にけたたましいアラーム音が鳴り響き、それと同時に無機質なアナウンスが流れ出した。

 

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は、六十秒後に閉鎖されます。職員は、速やかに第二ゲートから退避して下さい。繰り返します―――』

 

 

「そんな馬鹿なっ……!一体何が起きてるっ?!モニターっ!!管制室を映してくれっ!!みんなは無事なのかっ?!」

 

 

突如館内に流れる緊急アラームの内容に驚愕し、ロマンは慌てて端末に管制室の様子をモニターに映すよう指示する。直後、端末の画面に管制室の様子が映し出されるが……

 

 

 

 

 

―ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!―

 

 

「……な……んだ、これ……?」

 

 

 

 

 

モニターに映し出されたのは、正に地獄絵図と呼ぶしか出来ない光景……。

 

 

彩人が知る管制室の姿は其処になく、轟々と燃え盛る炎に包まれ、倒壊した瓦礫や鉄屑に押し潰され床に帯びたしい量の血を広げてゆく死屍累々の数々……。

 

 

その光景を前に彩人も言葉を失って絶句する中、ふと脳裏に先程別れたマシュとの会話が過ぎった。

 

 

「ちょっと待った……管制室ってっ、マシュはっ?!」

 

 

「っ……これは……もう、全員っ……」

 

 

「ロマ二さんっ!!」

 

 

「…………彩人君、君はすぐに避難してくれ。ボクは地下の発電所にいく。カルデアの火を止める訳にはいかない……。もうじき隔壁も閉鎖する、その前に君だけでも外に出るだっ!」

 

 

「けどっ!」

 

 

「ここで君まで死なせる訳にはいかないんだっ!いいねっ?とにかく早く避難するんだぞっ?!」

 

 

そう言って彩人に早急にカルデアから避難するように言い付けた後、ロマンはそのまま急ぎ地下の発電所に向かうべく部屋を飛び出した。

 

 

そして、アラームが鳴り響く部屋に一人残された彩人は唇を強く噛み締め、何か逡巡するようにモニターに映し出された火の海に包まれる管制室をジッと見据えていると、彩人の足下にフォウが歩み寄り顔を見上げて来た。

 

 

『フォーウ……?』

 

 

「──ああ。分かってる……」

 

 

そうだ。何を迷う必要があるか。例え魔術が使えずとも、自分にはこの体がある。

 

 

様々な経験を積んで鍛え上げてきた、何よりも信頼出来る武器があるではないか。

 

 

それさえある限り、出来ない事なんてない筈だ。

 

 

「行こう──マシュを助けにっ!」

 

 

『フォウっ!』

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

部屋の外へと飛び出した瞬間、眼や鼻、喉を突き刺すような黒い煙が通路中に蔓延していた。しかしそれらに見向きもせず、彩人は激しく咳き込みながらもフォウと共に管制室に向かって猛ダッシュで通路を駆け抜けていく。

 

 

(モニターに映っていた管制室は、火の海だった……あれじゃ誰も助かる筈がない……けどもしかしたら、誰か生き残ってる人がいるかもしれないっ……!)

 

 

望みを捨てるな。諦めるな。そう自分に言い聞かせるように心の中で何度も叫びながらアラームが何度も鳴り響く通路を突っ切り、漸く辿り着いた管制室内へと迷いなく踏み込んだ彩人。其処に広がっていたのは……

 

 

―ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!!!!!―

 

 

「……ッ……!これはっ……!」

 

 

───モニター越しに見た景色より、より鮮明なリアルな地獄……。

 

 

充満する黒煙に、肉が焼けるような吐き気を催す異臭。

 

 

辺りを見渡しても、生存者は一人も見当たらない。

 

 

唯一無事なのは―――あのカルデアスという地球儀だけだった……。

 

 

『システム レイシフト最終段階に移行します。

 

座標 西暦2004年、1月31日 日本 冬木。

 

ラプラスによる転移保護 成立。

 

特異点への因子追加枠 確保。

 

アンサモンプログラム セット。

 

マスターは最終調整に入って下さい 』

 

 

(アナウンス……?実験はまだ続いてるんだ……もう、誰も生きていないのに──)

 

 

思わず心の中でそう言い切ろうとした瞬間、パァンッ!と乾いた音が響き渡る。

 

 

それは、自分で自分の顔を思い切り叩いた音。

 

 

目の前の地獄に圧倒される、自分に活を入れ直す為のモノだった。

 

 

「しっかりしろっ、違うだろっ……!簡単に諦めるなっ……!まだ生存者がいるかもしれないっ!」

 

 

思い出せ、此処まで来たのは何の為だと、このカルデアに来た当初に出会った彼女の顔を脳裏に思い起こして己を奮い立たせ、燃え盛る業火に焼かれる肌も顧みずに炎の中をただひたすら走り抜け、生存者を探して必死に視線を走らせる。その先に……

 

 

 

 

 

「……………………、ぅ……………………」

 

 

「───ッ!!?マシュッ!!!!」

 

 

 

 

 

轟々と立ち上る炎の向こうに、頭から血を流して床に力なく倒れ伏すマシュの姿を視界の端に捉えた。

 

 

それに気付き、彩人は一目散に炎の中を突っ切り、マシュの下へと駆け寄っていく。

 

 

「マシュっ、良かったっ……!!しっかりっ!今助け───っ!!?」

 

 

あとはマシュを連れて此処を抜け出せばと、彼女の生存を確かめて思わず安堵の吐息を溢しながらマシュを支えて立ち上がろうとするが、彼女の身体を見て、その顔が凍り付いてしまう。何故なら……

 

 

 

 

マシュの下半身──その上に倒壊した機械が降り注ぎ、彼女の腰から下が潰されてしまっていたからだ……。

 

 

「…………」

 

 

「………………、あ……せん、ぱい…………?」

 

 

言葉を失い、絶句する。

 

 

───だが、それも一瞬。

 

 

あまりにも絶望的な状況を前に崩れ落ちそうになる気持ちを踏み止まらせ、頬を伝う汗を拭い去り、マシュを安心させるようになんでもないように笑い掛ける。

 

 

「大丈夫。すぐ退ける。こんな鉄屑、すぐ───」

 

 

「…………いい、です……助かりません、から……それより、はやく、逃げないと…………」

 

 

―ボォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォッッッ!!!!!―

 

 

「……っ?!今度はなんだっ?!」

 

 

マシュの弱々しい声を遮るように、周囲の炎とは別の何かが燃える音が響き渡る。

 

 

ソレに釣られて振り向いた先にあったのは、天体が真っ黒に染め上げられたカルデアス……。

 

 

その地球儀が、突如として次第に"真っ赤"に染まっていき、再び管制室内にアナウンスが鳴り響く。

 

 

『観測スタッフに警告。

 

カルデアスの状態が変化しました。

 

シバによる近未来観測データを書き換えます。

 

近未来百年までの地球において 人類の痕跡は 発見 できません。

 

人類の生存は 確認 できません。

 

人類の未来は 保証 できません 』

 

 

無機質に何度も響き渡る、アナウンスの声。

 

 

その内容は人類の未来、これから先の希望が総て途絶えたこと……。

 

 

つまり、人類滅亡──人理が焼却されたことを意味していたのだった……。

 

 

「…………カルデアスが……真っ赤に、なっちゃいました……いえ、そんな、コト、より───」

 

 

『中央隔壁 閉鎖します。

 

館内洗浄開始まで、あと、18

0秒です 』

 

 

入り口から響く別のアナウンス。

 

 

直後、彩人達が入ってきた扉が封鎖されていき、完全に閉じ込められてしまった。

 

 

「……隔壁、閉まっちゃい、ました……もう、外に、は……」

 

 

「うん……そうだな。一緒に閉じ込められちゃったな。……ま、なんとかなるさ」

 

 

───なんとかなる、か。

 

 

機械の下敷きになったマシュは助け出せない。

 

 

天井は今にも崩れそうで、周りはもう逃げ場がない。

 

 

……それでも、そんな気休めぐらいは、口にしても許されるだろう。

 

 

それでせめて──目の前の彼女の中の不安を、少しでも和らげられるのであれば……。

 

 

『コフィン内のマスターのバイタル 基準値に 達していません。

 

レイシフト 定員に 達していません。

 

該当マスターを検索中……発見しました。

 

適応番号48 遠坂彩人 を マスターとして 再設定 します。

 

アンサモンプログラム スタート。

 

霊子変換を開始 します 』

 

 

「…………あの…………せん、ぱい…………」

 

 

「うん。なんだい?」

 

 

「…………手を…………手を、もう一度…………握ってもらって…………いいですか…………?」

 

 

「……ああ。こんなコトで良ければ、何度でも―――」

 

 

灰や火傷で黒ずんだ右手を服で拭い、しっかりと、マシュの手を掴んで優しく握り締める。

 

 

遠い昔、幼き日の自分が夜が怖くて眠れなかった時、母にしてもらった時のように。

 

 

心なしか、自分の手を力なく握り返すマシュの顔も安堵で和らいでいるように見え、そして……

 

 

 

 

 

『レイシフト開始まで あと

 

 

 3

 

 

 2

 

 

 1

 

 

 全工程 完了。

 

 

ファーストオーダー 実証を 開始 します 』

 

 

―シュウゥゥゥッ…………バシュウゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウウゥゥゥッッッッ!!!!!!―

 

 

 

 

 

───カルデアスから放たれた光りが、全てを飲み込んでいく。

 

 

火の海に飲まれ、地獄と化した管制室も。

 

 

手と手を繋ぎ合わせる自分とマシュの姿も。

 

 

何もかもが白く塗り潰され、次第に意識すらも遠退いていき、完全に目の前の視界がブラックアウトする寸前―――

 

 

 

 

 

 

『──チョーカイガン!』

 

『ムゲン!』

 

 

 

 

 

 

───何処か遠くから、反響して何かが聞こえ

 

 

視界が暗転する寸前、一枚の"純白の羽根"が、ユラリと目の前を遮ったような気がした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

特異点F    人理定礎値C

 

AD.2004 炎上汚染都市 冬木

 

 

 

 

 

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