Fate/Grand Orger in 仮面ライダーゴースト~英霊の力を纏いし、雪花の少女~ 作:風人Ⅱ
―???―
―どうして、そんなこと言うの? あなたに聖杯をあげると、決めたの。あなたの願いをかなえてあげる。あなたが、ブリテンを救えるように。そのためなら、何だってできるし、なんだってするわ―
───ユメ。ユメを見ている。
―早く会いたい、早く会いたい、早く会いたい!!私のセイバー!!私の、私だけの王子様!!―
見知らぬ誰かの顔。
見知らぬ誰かの声。
初めて目にする顔、聞く声の筈なのに、何故か遠い昔から知っているような気がする……。
―……けど初めてだ。オレ、ぜんぜん嬉しくない。獲物を前にしても心が弾まない。おまえとならぎりぎりの所で殺し合えるってわかってるのに、笑えない―
場面が移り変わる。
先程の彼女とは、また別の誰かの顔。
やはり初めて目にする顔の筈なのに、自分は彼女を知っているような既知感がある……。
―ああ、わかった。オレはおまえを殺したいんじゃない。ただ、おまえが『有る』のが我慢できないだけなんだ―
───光が広がり、闇へと墜ちてゆく。
何故かは知らないが、無意識にそれがユメから覚める時が来たのだと自然に分かった。
―……あなたのほしいものは、なに? ―
……俺が……欲しかったモノは───
◆◆◆
―特異点F―
───西暦2004年。1月31日、冬木市。
特異点Fと称され、人理焼却が成される特異点が存在するとされるその時代の町並みは、当時の様子とは遠くかけ離れた光景に変貌してしまっていた。
周囲一帯は炎の海。建物などの全ても崩れ落ち、街の人間の気配も一切感じ取れない……。
まるで数十年前に一度この街で発生したとされる大火災を彷彿とさせる光景だが、そんな中で特に目立つのは、街の全域に痛ましく残る、"何かと何がが争った形跡"。
明らかに人為的で、しかしどうあっても人間の手では決して不可能な破壊の痕跡が街の所々に見受けられるも、街の人間が残らず消え去ったこの街にその顛末を知る者は一人もいないだろう。
そんな街の某所にて──
『───キュウ、キュー。フー、フォーウ!』
「…………………………」
赤い炎が周囲に走るとある広場中央に、カルデアスの光りに呑み込まれた筈の彼等の姿はあった。
突然のレイシフトで気を失い、火災地の真っ只中に放り出された彩人は両腕を広げて死んだように眠っており、そんな彼の頬をレイシフトで共に付いてきたフォウが舌で何度も舐め起こそうと試みる。
その隣には……
「──先輩。起きてください、先輩」
フォウと同様、気絶する彩人の身体を揺さぶって起こそうと何度も呼び掛ける少女……あの火の海に包まれたカルデアにて、機械の下敷きになり重傷を負った筈のマシュの姿があった。
見たところ外見に負傷してる箇所は見受けられないが、そんな事よりも彩人を起こすのを優先と考えているのか何度も彼に呼び掛けるが、一向に彩人が目を覚ます気配はない。
「起きません……ここは正式な敬称で呼び掛けるべきでしょうか──マスター。起きてください、マスター」
「……………………、ぅ…………っ…………?」
ペチペチと、頬を軽く叩きながらそう呼び掛けるマシュ。それが効いたのか、彩人の目が漸く重い目蓋を開き、微かに開いた目で寝ぼけた様子で一点を見つめた後、自分の顔を覗き込むマシュに気付いて彼女に視線を向ける。
彩人「…………マシュ……?」
「良かった……目が覚めましたね、先輩。無事で何よりです」
「…………ここは…………って、マシュッ?!傷はッ?!無事だったのかッ?!」
ガバァアッ!!と、目覚めたばかりとは思えぬ俊敏な動きで起き上がり、血相を変えてマシュの身体を見回していくが、何処を見ても、彼女の身体に傷を負った部分は見受けられない。
頭から流れていた血も、機械の下敷きにされた身体の何処にも怪我の痕跡は、一切。
「あれ……怪我が、なくなって……?どうして……?」
「…………それについては、後ほど説明します。その前に今は、周りをご覧ください──」
「え……?」
そう言って、何やら険しい表情を浮かべて立ち上がり、彩人に背を向けて身構えていくマシュ。そんなマシュの言葉に彩人も一瞬怪訝な表情を浮かべ、マシュの視線を追って振り返ると、其処には……
―……ガコォンッ!―
『Gi―――GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!』
マシュが見据える崩れた廃墟の陰から、ゆっくりとその姿を現す異形の存在……全身の皮や肉、目玉などが爛れ落ちるグロテスクな外見をした熊のような姿の魔獣の姿があったのだ。
しかもその一匹だけでなく、周囲の廃墟の陰からも続々と似たような姿をした魔獣達が現れ、あっという間に彩人達の周りを包囲してしまった。
「うぉおおおおッ?!ちょ、ええぇッ?!なんで熊っぽいモノに取り囲まれてるんだ俺達ィッ?!」
「──言語による意思の疎通は不可能。敵性生物と判断します」
一体何事ッ?!と、意識を取り戻した矢先に明らかに殺る気満々な謎の魔獣達に囲まれ混乱する彩人とは対照的に、冷静に魔獣達を分析し終えたマシュは静かに腰に手を翳していく。
すると次の瞬間、マシュの腰にバックル右部にレバーが備え付けられたベルトのようなツールが出現された。
「っ?!マ、マシュっ?何を?!」
「見ていて下さい、先輩───いいえ、マスター!貴方は、私が守ってみせます!」
マシュの腰に現れた謎のドライバーを見て驚愕する彩人に対し、マシュはまるで自分を奮え立たせるかのように力強く叫びながら更に懐から薄紫色の眼球をモチーフにしたようなアイテム……眼魂を取り出し、左側面のボタンを左手の掌で押し込むように押し起動させると、開いたドライバーのバックルの中へ起動した眼魂を装填しながらバックルを閉じると共に、バックル右部のトリガーを外に引く。その時……
『アーイ!』
―バシュウゥゥゥゥゥッ!!―
「っ?!ベ、ベルトから何か出てきた……?!」
そう、マシュのベルトから音声が響くと共に、バックル中央の目の部分から勢いよく何か……まるでパーカーのような黒い外見に、紫のラインが入った幽霊のような異形が飛び出し、そのままマシュの頭上に浮遊したのである。
『バッチリミナー!バッチリミナー!』
更にドライバーから響き渡る、謎のラップ調の待機音声。その奇っ怪なベルトに周囲の異形達も戸惑いを露わにする中、マシュは静かに印を結ぶような動作で構えを取っていき、そして……
「──変身っ!」
―ガシャアンッ!―
『カイガン!シールダー!』
『Here we go!覚悟!ト・キ・メ・キ・ゴースト!』
高らかに叫ぶと共にマシュがトリガーを押し込んだ瞬間、韻を踏んだ電子音声と共にマシュの服装が研究服から変化して露出の多い漆黒の甲冑姿となる。更にその上から宙を舞っていたパーカーのような姿の異形がマシュに覆い被さるように羽織られ、全く別の姿へと変身していったのであった。
「マ、マシュっ?!その姿は……?!」
「──マスター、指示を。私と先輩の二人で、この事態を切り抜けますッ!」
「え、ぇええええッ?!」
目が覚めたらまた火の海の街の真っ只中で、気が付けば周りを化け物に囲まれ、重傷を負ったハズのマシュが何故か無事かと思ったら突然やかましいベルトで変身して戦うと言い出したりと、最早何が何だかと情報処理が追い付かない彩人だが、それを他所に、マシュは頭に被さるフードを徐ろに脱ぎ去りながらそんな彩人を守るように魔獣達の前に立ち塞がり、ドライバーの中心に現れた法陣からマシュの身の丈を軽く超す巨大な盾を出現させてその手に取った。
「この力、お借りします、タケルさん。マシュ・キリエライト───命燃やして、行きますッ!!」
ダァアンッ!!と、勢いよく蹴り上げた地面を爆発させて一気に目前の魔獣の前へと滑り込むと共に、変身したマシュはその手に握る大盾を一息で軽々と振りかざし、魔獣の一体に一閃を叩き込んで戦闘を開始していくのであった。