イナズマジャパン発表式の数日後…
選ばれた選手達はそれぞれ荷物を手に宿泊施設へと向かう為のバスへと乗り込む。
沢山の人に見送られ、発車したバスの中はみんなの、特に代表キャプテンである
「うるさ…」
窓の外に目線を向けつつも眉をひそめた優衣は小さく呟くように毒を吐く。迷惑極まりない、そんな表情を隠す気もなく晒している。
隣に座っていた一星もそんな彼女を一瞥し全くだ、と吐き捨てる様に言うと同じく顔を顰めていた。
そして、また二人の間に流れる沈黙…と、そこで一星は優衣に目を向けることなく声をかけた。
「お前、話に混ざって来いよ。暇なら点数稼いでたらいいだろ」
「ばーか、確かに暇だけどそんな無闇に関わるもんじゃないし。
そりゃ、話しかけられたらぶりっ子するけどそれ以外だとボロ零した時の対処が面倒」
見てもいないのに何故彼女が暇だと分かったのか。特に否定をしない辺り、図星なのだろう。
きっと、彼は興味が無い振りをしつつも彼女が自然と暇だ、と口から零した言葉を聞いていたのだ。
一星の言葉を聞いた優衣はそれだけ答えると、ポケットから女の子の物とは思えないシンプルなカバーの付けられたスマホを取り出しモノクロのイヤホンを差し込む。
とんとん、と音をさせながら画面を少しだけつついたり、スライドした後
耳に入れる部分の片方を手に取り一星を見上げる。
例え座っているとしても明らかに小柄な彼女は自然と見上げる様な体制になってしまう。
「一緒に聞く?」
「…少しの間だけならいいか」
じっと優衣の手に持たれたイヤーピースの付けられた先の部分を見つめ、小さく頷くとそれを手に取り耳に入れる。
「っうわぁ!」
瞬間、一星は大きな声を上げて慌てた様子で耳からそれを取り外した。
耳に流れ込んで来たのは歌詞を聞き取れないほどの大音量で流された曲。耳の奥まで響き脳にまだ振動が残るような感覚、鼓膜が破れそうな程の音。耳に微かな痛みが残る。
うるさかったバスの中だが、その中の声より一弾にうるさく響いた彼の声は一気に辺りの目線を集め、一星は慌ててすみません、とぺこぺこ頭を下げ謝りると、席に座り直しギロっと平然とした様子で隣に座った彼女を睨みつける。
「お前っ…!」
「ごめん、音量大きくし過ぎた」
特に悪気も無く、謝った彼女。わざとでは無く本気で操作を間違えてしまった様だ。
それに怒筋を浮かべていた一星は諦め気味にはぁっと溜息をつく。
「絶対ヘマするなよ」
「する訳ない」
「お前の言葉が信用出来ないから言ってんだ」
「会って一日目でそんな事言う?まぁ、見てなって」
軽く返答した彼女は再度、目を伏せスマホの画面を触り耳にイヤホンの先を入れる。
隣で一星はそんな彼女を不安げに見つめ、溜息を零した。それも無理は無い、先程のようなもう一度されてみろ…たまったもんじゃないからだ。
そんなこともいざ知らず、彼女は何処か呑気に外の景色を眺めつつ耳元で流れる音楽に耳を澄ましていた。
(なに?聴きたい?)
(誰が言った?全力で否定する)
(…あっそ、まぁいいや)