俺は妹しか愛せない   作:俺がいる最高

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飛鳥恵美梨と2人のギャル<後編>

「花園…だっけ?ちょっといい?」

 翌朝、教室に入ると不意に声をかけられた。

 振り返って驚いた。そこには昨日の2人、鷹鳥麗奈ともう1人の女がいた。

 まさかもう復讐に来たのか…?

「な、なんだよ」

 俺はあくまで平静を保とうとしたが吃ってしまった。

 改めて見るとこの2人、この学校の中でも相当な部類のギャルなわけで、はっきり言って超怖い。

「あんたさ、最近エミと仲いいらしいじゃん?」

 鷹鳥は不機嫌そうに話し出す。

「最近エミが付き合い悪いのってあんたのせいでしょ」

 鷹鳥が俺の事を睨んでくるので俺は怯んでしまった。

「それにあの冷酷生徒会長、彩風花蓮もあんたとは楽しそうに話してるって噂聞いたし?」

 俺が黙って鷹鳥の話を聞いてると、鷹鳥の後ろにいたもう1人の女が1歩前に出て、

「ていうか~なんでさっきから黙ってんの~?レイちゃんの話を無視するとかマジウケるんですけど~」

 と相変わらずの間抜けな口調で言った。

「あんたのせいで~、ウチら迷惑してるんですけど~」

 しかしその声には少し苛立ちが含まれていた。

「あんたさえいなければエミとも生徒会長とも喧嘩せずに済んだんだからね」

 最後にそう言って俺を睨みつけると、鷹鳥はまた勝手に1人でどこかに言ってしまう。

「じゃ、そういう事だから~、今後はあたし達に近づかないでね~」

 これまた昨日と同じパターンで、もう1人の女が別れの言葉を告げて鷹鳥を追いかける。

 こいつらの行動パターンが少し読めたな。

 まぁ、俺には関係ないけどな。

 ーーどいつもこいつも勝手な事ばっか言いやがって…。

 俺は最近の中で一番の怒りを覚えてしまったーー。

 

 昼休み、恵美梨の方を見るとあの2人と楽しそうに談笑しながら昼飯を食っていたーー訳ではなく、殺伐とした空気が流れていた。

 鷹鳥は不機嫌そうに黙ってパンを頬張り、もう1人のギャルBーー雲雀 恵(偶然聞いた)は場を盛り上げようとあたふたし、恵美梨は乾いた笑みを浮かばせている。

 一度だけ恵美梨と目が合ったが直ぐに逸

らされ、それから目が合うことはなかった。

 その時、俺は異様に悲しくなった。

 何を考えてるんだ、俺は。

 生まれた時から他人は全て敵、家族以外の誰からも愛されず、俺自身も家族以外は愛さない、愛せないと心に誓ったではないか。

 なのに今の俺はまるで他人ーー恵美梨にどこか期待していたんだ。

 だからさっきの恵美梨の態度に悲しんでしまったんだ。

 だからといって俺は別に恵美梨と仲直りしたい訳ではない。べ、別にツンデレとかじゃないんだからねっ!とか頭の中でこんな事を言ってる俺はやはりどうかしてる。

 

 

 

 そして放課後、いつまでたっても恵美梨が来ないので担任であり特別相談部の顧問である杏先生に訳を聞くと、どうやら用事があると言って帰ってしまったようだ。俺は嫌な予感がした。このまま恵美梨はもう2度と部室には来ないんじゃないかと。

 俺は何故かそんな事を考えていた。

 そして次の日からも恵美梨は部室には来なかったーー。

 

 

 

 

 恵美梨が部室に来なくなって2週間がたった。

 あれから俺達は1度も会話をしていない。

 もちろん今までも部室以外では話す機会がなかったので対して変わらないが、問題は態度だ。

 今までも俺に対しては無愛想だったがそれが拍車

はくしゃ

がかかったようにさらに態度が悪くなった。

 といっても全く目を合わせてくれないって程度なのでそこまで気分は悪くないが、多少は腹が立つ。

 一緒につるんでた鷹鳥と雲雀さえも避けるようになっていた。

 そんなある日。放課後、部室に行くといつものように花蓮先輩は本を読んでいて、瑠樺

るか

はゲームをしていた。

 俺は2人に挨拶を交わすと、椅子に腰掛けた。

 俺の隣には有紗が腰掛け、じっと床を見つめている。

 俺も特にする事がないのでいつも鞄に入れてあるハンドグリップを取り出し、ニギニギする。

 そう、いつもうるさい恵美梨が居なくなった今、特別相談部は完全に独自の暇つぶしの場と化していた。

 すると突然、ガラッと戸が勢いよく開けられた。

 そして中に入って来たのは、まさかの鷹鳥と雲雀だった。

「なっ……!?」

 俺はびっくりして勢いよく席を立ってしまった。

 だってこいつらはもうここには来ないと思っていたからだ。

 何しに来たんだ?と問おうとしたが、2人の様子が少しおかしかったので自然に引っ込んでしまった。

 鷹鳥はいつものように堂々とはしておらず、俺達と目線を合わせようとしない。

 雲雀にしても、鷹鳥のブレザーの裾を弱々しく握りソワソワとしている。

 俺と花蓮先輩はどうしたんだ…?と顔を合わせる。

「あ……あのさ…」

 やがてずっと黙っていた鷹鳥が口を開く。もちろん一向に目線をあわせようとはしないが。

「……ちっ!なんであたしがこんな事頼まなきゃいけないのよ!」

 鷹鳥は舌打ちをすると雲雀の肩を組んで後ろに向くと、雲雀に向かって小声で話す。

「しょ、しょうがないじゃん?ていうか「あいつらのせいでこうなったんだからあいつらが何とかするべきっしょ」って言ったのレイちゃんじゃん?」

 雲雀も鷹鳥につられ、小声で話す。

「ま、まぁね?これは頼みじゃなくて命令よ、命令。責任とってもらわなくちゃ」

「そうそう」

 ……おいおい。勝手に入って来ておいて2人でこそこそと話しおって…。

 本当にこいつら、やりたい放題だな。

 暫く2人だけの世界に入ると、漸

ようや

くこちらに向き直り、指をさして力強く発言した。

「あ、あんたらのせいでエミと喧嘩したからっ責任とりなさいよね!!」

「そうだそうだ!」

 と横にいる雲雀が煽ってくる。

 すると今まで黙っていた花蓮先輩が漸く状況を理解したようで、2人に向かっていつもの調子で話す。

「鷹鳥さん、雲雀さん」

「な、なによ…」

 しかしその目はいつも以上に冷徹で、相当怒っているようだ。

「貴方達、恥ずかしくないの?」

「「……へ?」」

「散々わたしの可愛い後輩達をコケにしといて、よくもそんな口が聞けるわね、と言っているのよ」

 うんうん、全くその通りだ。こういう時って本当に頼りになるよな、この人。

「は、はぁ?」

 しかし予想通り、鷹鳥達は反抗してくる。

「最近、飛鳥さんが貴方達とも離れて1人で過ごしている、と紅蓮君から聞いていたけど、それは貴方達が今まで飛鳥さんに接して来た態度を鑑みれば納得出来るわ」

「だから何言って……」

「どうせまたしつこく飛鳥さんを脅すように問いただしたのでしょう?」

「別にそんな事……」

「それになりより、一番腹が立っているのは関係ない紅蓮君にまで悪態をついたそうね。」

「そ、それは……」

 鷹鳥が必死に抵抗するも、それを花蓮先輩が許さない。

 口喧嘩でこの人に勝つ事が出来る人なんて果たして存在するのだろうか?

「覚えておきなさい、わたしは別に何を言われても構わないけれど、わたしの大切な紅蓮を侮辱する事だけは絶対に許さないわ」

 段々と花蓮先輩の声は低くなり、わなわなと震え、怒りのオーラが部室全体に広がる。

 その目は真っ直ぐに、そして鋭く2人を見据える。

「ひ……っ!」

 2人はそんな花蓮先輩の態度に怯えるように抱き合う。

「もしまだわたし達に不満があるならかかって来なさい。2度とたてつけないぐらいズタボロにしてあげるわよ?」

「「ご、ごめんなさい……」」

 2人は声を合わせて花蓮先輩に謝る。

 しかし、

「あら?謝る相手が違くて?」

 と2人を見る。

「は、はぁ?あんた調子に……」

「何か?」

 鷹鳥が反抗しようものなら花蓮先輩は鋭く相手を睨みつける。

 すると鷹鳥は大人しく俺の方を向き、

「わ、悪かったわね…」

 と頭をほんの少し傾ける。

 その様子をオロオロと雲雀が見ていたが、花蓮先輩がニコッと笑い、くいッと顎で命令すると慌てて鷹鳥の真似をする。

「ご、ごめんなさいっ!」

 俺に向かって頭を下げる2人。

 きっと鷹鳥の方は悔しくて悔しくて堪らないだろう。

 まぁ、雲雀の方は随分と花蓮先輩の事を恐れているようだが。

「それと」

 花蓮先輩は立ち上がり頭を下げている2人に近づくと、

「飛鳥さんにも謝っておきなさい。何かまた問題があったらどうなるか」

 慌てて頭を上げる2人に向かって二やっとしてこう放った。

「どうなるか…分かるわよね?」

 すると2人は「ひぃ!」と小さな悲鳴を漏らし、

「もう2度とこんな事はしませ~ん!!

 」と泣きそうな声を出しながら一目散に部室を飛び出していった。

 2人の後ろ姿を見、やれやれ、と小さくため息を付く花蓮先輩を見て、俺は確信した。

 こうやってうちの生徒会長は着々(ちゃくちゃく)と権力を上げていくのだな、と。

 次の日から生徒会長には楯突くな、と一部で噂になったという。

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