俺は妹しか愛せない   作:俺がいる最高

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彩風花蓮と五十嵐リオン

『明日の放課後、頼みたい事があるから生徒会室に来て』

 と昨日、家に帰ったら花蓮先輩からメールが来ていたので、俺は特別相談部に行く前に生徒会室へと向かった。

 そういえば、生徒会室なんて初めてだから緊張するな。どんな人がいるんだろう。

 有紗には先に部室に行けと言ったのだが廊下で待っていると聞かなかった。

 仕方なく有紗を廊下で待たせ、俺は2階の一番西側にある生徒会室の前に来た。

「2年の花園紅蓮です。生徒会長の彩風先輩に呼ばれて来ました」

 とドアをノックして確認する。

『紅蓮君ね。入って来てちょうだい』

 中から花蓮先輩の声がして生徒会室へと入っていった。

 室内には生徒会長の花蓮先輩を含め6人の役員がいた。

 一番奥の席に花蓮先輩が座っており、その隣にはイケメン副会長の五十嵐リオン先輩が立っている。

 その2人を囲むように座っているのが会計2名と書記2名の役員達だ。

 花蓮先輩以外の全員が俺が入ってくるなり驚いた顔でこっちを見ていた。

「お嬢さま。こいつが例の殿方ですか」

 リオン先輩が俺を見ながら言ってくる。

「リオン。学校ではお嬢さまではなくて会長と呼びなさいといつも言っているでしょう?」

 花蓮先輩がリオン先輩に注意する。

 この五十嵐リオン先輩は実は彩風財閥のご令嬢である花蓮先輩の執事だ。

 髪はコバルトブルーで顔立ちはとても綺麗でまさに美形男子の鏡で、滅多に感情を表情に出さない。

 花蓮先輩と同じクラスでいつも彼女の隣に立っている。

 その他の役員はみんな直接会うのは初めてだ。

「それで先輩、俺に頼みたい事ってなんすか?」

「えぇ、生徒会ではボランティア活動として地域の清掃運動をしているのだけれど、それを今度はうちの部がやる事になったの」

「マジすか……めんどくせぇ」

「お嬢さ……いえ、会長。何故こんな男と同じ部活なんかに入っておられるのですか!」

 リオン先輩はどうやら俺の事を目の敵にしているようだ。

 そりゃそうだな。どこの馬の骨ともしらない男とここ数日で仲良くなったなんて。特に花蓮先輩は男受けはいいので特定の誰かと仲がいいなんて聞いたこともないからな。

「リオン。彼はあなたが思っているような人ではないわ。それに彼は極度のシスコンで妹にしか興味ないんですもの」

「シスコン?気持ち悪いですね」

 ……ほっとけ!

「早速明日から初めてもらいたいのだけど、紅蓮君はリオンと有紗さんの3人で南門から約3キロを歩いてゴミを拾ってもらいたいの。コースはリオンの指示に従ってね」

「花蓮先輩は?」

「わたしは北門から飛鳥さんと月野さんの3人で行くわ」

「か、花蓮先輩!?」

 リオン先輩が驚きの顔を上げた。

「あのお嬢さまが男性と名前で呼びあっているなんて……」

 リオン先輩は大げさに床に膝を着けている。

「分かりました。ボランティア活動の時にこの男がお嬢さまに相応しいかどうかこのボクが試させてもらいます」

 ……えぇ!?ちょっとどういう事?

「好きにしなさい」

 いやいや、花蓮先輩。リオン先輩をどうにかしてくださいよ…。

「そういうことだから明日は覚悟しておくんだな」

 ……はぁ。なんでこうなるんだよ…。

 

 

 

 

 そして翌日の朝、ボランティア活動のためいつもより早く学校に来た俺達の前にリオン先輩が立っていた。

「……フッ。逃げずに来た事はほめてやる」

「な、なんすかそのセリフ!?これからするのただのボランティア活動だよね!?」

「お嬢さまは既に他の者達と共に学校を出ている。さぁ覚悟はいいか?」

 ……だからちょっと待ってよ!

「け、決闘すか?なら俺ちょっと自信ありますよ」

「……ほう。だがその自信もすぐに折れる事だろう」

「……ちょっと待ってくださいっ!!」

「有紗!?」

 なんと有紗が大声を出して止めたのだ。

「い、いきなり何ですか!兄さんをいじめるなら私が相手します…」

 そう言っている有紗の体は震え、顔には冷や汗をびっしょりかいている。

「……フッ。部外者は黙っていろ。これは男と男の決闘だ」

「……でもっ!」

「有紗!大丈夫だ。俺の事は心配しなくていい。俺の事は俺がケリをつける」

「……分かりました。でも無茶はしないで下さい」

「おう!」

 有紗は俺から離れ、じっと俺を見つめている。俺はリオン先輩に向き直り、

「……待たせたな、リオン先輩。そっちがその気ならこっちも全力でいきますよ」

「当たり前だ。決闘開始だ」

 ……こうなりゃ仕方ねえ。今まで暴力で訴えてくる連中のために護身術を身につけて体も鍛えてるからな。まぁなんとかなるだろ。

 やるだけやってや……

 

 ガシャっ!

 

 何か嫌な音がしてリオン先輩の手元を見ると、何故か銃を持っていた。

 ……あれってモデルガンだよな…。

「せ、先輩!?それは…?」

「安心しろ。実銃だ」

「銃は反則だろ~~~~!!!」

 俺は一目散に逃げ出した。

「待てぃ花園紅蓮~!」

ドドドン!!ドン!ドドン!!

 

 リオン先輩は銃を乱射しながら俺を追っかけて来た。

「兄さんっ!頑張って下さい!!」

 有紗の声援が聞こえる。でもーー

「…待てーー!!正々堂々勝負しろーー!!」

「うおぉおおおおお!!」

 俺は雄叫びを上げながら校門を抜け歩道を走っている。

 ーー死ぬ…!!マジ死ぬ…!!こんなん勝負になるわけねぇだろ!!

「フンッ!男らしくない奴だ。やはり貴様はお嬢さまの傍にいていい人間ではない!!」

 

 ドン!!

 

「お嬢さまの傍にいるのはこのボクだ!!」

 ーー危ねっ!もう少しで当たるとこだった。ヤバイ。それにしてもーー

「俺は別に好きであの人に近付いたわけじゃねぇ!しょうがなかったんだよ!だからもう必要以上に近付かないから勘弁してくれーー!!」

 ーーマジで勘弁してくれ~~!

「言い訳など聞くものか!!お嬢さまの傍にいていいのはこのボクだけ!そう、お嬢さまを一番愛しているのはこのボクだ!!」

 ーー意味わかんねぇ~~!!

 俺は逃げて逃げて逃げまくった。そして大通りに出てしまった。

 リオン先輩は相変わらず俺を追ってきているが、俺を捕らえるため道路に出た。

 ーー危ねぇっ!!!

 幸い車は通ってなかったが、俺はとっさに先輩の元へと駆けていた。

 俺は先輩を押し倒す形で歩道へと転んだ。

 

 ドサッ!!

 

「いててーー。大丈夫すか?」

 俺はリオン先輩の安全を確認するが、

 ーーむにゅっ!!

 っと何か普通ではありえないような音がした。

 この手の感触ーーまさかっ!

 俺は咄嗟に手元へと視点を移すと目の前にはリオン先輩の胸を揉んでいる俺の手があった。

 ーーな、何じゃこれ~~~!!

「ちょっ!先輩!!」

「……ん?」

 先輩は気を取り直し、自分の胸元を見ると、

「~~~~っ!!!」

 顔を真っ赤にして手を上げた。

「に、兄さん……」

 近くには今駆けつけたような有紗が口に手を当てて目を細めて俺を見ていた。

「ま、待って!わざとじゃーー」

 ていうか先輩っ女ーー

 

 ーーバチンッ!!

 

 俺は大きな平手打ちをくらってーー気絶した。

 

 

 

 

「…………ん」

 目が覚めると、

「……知らない天井だーー」

 …なんてくだらないセリフを言って辺りを見渡す。

 そこは保健室ですぐ隣の椅子に花蓮先輩とリオン先輩が並んで座っていた。

「……起きたようね」

「……花蓮先輩…」

「…ごめんなさいね。この子が無茶をしたようで」

「ごめんなさい……」

 2人が俺に頭を下げてきた。

「い、いや別に大丈夫っすよ。それよりリオン先輩って……」

 俺は疑問に思っている事を口にした。

 確かにあの時俺が触ったのは先輩の胸でーー

「やっぱり女の子なんじゃーー」

「…えぇ。そうよ。リオンは女の子なの。でもこの事は誰にも言わないで欲しいの」

「お嬢さま!この男が黙って言う事を聞くわけ「いいですよ」…へッ!?」

「俺は別にそんな事を言いふらしてメリットなんてないですから」

…そうだ。びっくりしたけど俺がこの事を言いふらすなんて、そんな事をしたいとは思わない。

「…ありがとう。あなたって人は本当に……」

 そう言って花蓮先輩は儚い笑みを浮かべた。

「そんなあなたにもう一つお願いがあるのーー」

「お嬢さま!」

「…聞いてくれる?」

「はい」

 俺は真剣な眼差しでこちらを見てる先輩のお願いを断る事なんて出来なかった。

 そして先輩は静かに語り出した。

 それは俺にとっても衝撃の事実だった。

「実はわたし、縁談の話が来ているのーー」

 

 俺はこの時の先輩の切なく、儚げな表情を忘れる事は無かったーー。

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