自由人で、遊び人   作:おいら一人で哲学するのニャ

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思ったよりも見ていただいているようで、嬉しいです。
一応書きたい話だけ、飛ばし飛ばしに書こうと思ういます。




アカデミア中等部
入学試験 VS試験官


とある日、遊と明日香は担任に呼びだされたため職員室に来ていた。遊は何で呼ばれたのか聞いていなかったが、明日香は聞いていたようで、何でも進学の話だそうだ。

若干危なくなってきた生え際を触りながら書類とにらめっこしていた先生は、二人が来ると柔和な笑みを浮かべて迎えた。

 

「よく来てくれた二人とも」

「ご託はいいから、とっとと本題を話せニャ」

「こらっ!」

「ニャ!?」

明日香に頭を叩かれた。

担任は気にしていない様だが、礼儀を重んじる明日香は目上への不遜な態度は許せなかったようだ。

しかし、納得できない遊は食って掛かる。

「な、何するニャー!」

「先生に対して失礼でしょ。少しは殊勝にしなさい」

「うるせーニャース。おいらは自由人、そんな下らないしきたりには縛られないのニャ!」

「自由になりたいなら、やるべきことはしっかりやりなさい。やらないから、押さえつけようとするのよ」

「それを本末転倒と言うのニャ、アホ上院。バーカ、バーカ、お前の兄ちゃんブリザードプリンス(笑)!」

「何ですって!?」

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

 

いつも通り喧嘩になりそうだった二人を先生が間に入って嗜める。

真面目な明日香は「すいません先生」と反省し、遊は「ふん」興味なさげに鼻を鳴らした。

 

「今日来てもらったのは他でもない。二人を『デュエルアカデミア』に推薦することが、昨日の会議で決定したんだ」

「本当ですか!?」

「ニャハハ、まあ当然のことニャ」

 

デュエルアカデミアとは、その名の通りデュエルモンスターズを専門として学ぶ学校のことだ。かの有名な伝説のデュエリスト海馬瀬戸がオーナーをしていることでも有名である。

毎年のようにプロデュエリストを輩出している、名実ともに日本一のデュエル専門学校だ。

しかし、誰でも入れるわけではなく、入学試験に合格する必要がある。それも入学試験を受けることができるのは、各小学校のデュエルの成績上位2位まで。狭き関門なのだ。

その推薦枠の二人に明日香と遊は選ばれたのだ。

遊はぶっちぎりの1位のため余裕そうに笑っていたが、明日香は3位を引き離していたが、少し心配していたようで素直に喜んでいた。

対照的な二人の反応に、担任は日常の光景を懐かしむように目を細める。

 

「二人とも頑張ってくれ。天上院は精一杯自分の力を出しきってこい! 猫又は……試験に遅刻するなよ」

「はい!」

「何でおいらだけ激励じゃないニャ!」

 

普段の行いである。

 

二人が職員室から去った後、担任は一人空を見上げていた。

6年間散々苦労させられた、くそガキのことを思い浮かべながら、ポツリと呟いた。

 

「よかったな猫又。いい遊び相手が見つかって」

 

 

 

 

翌日、明日香と遊は受験会場であるビルの前に来ていた。

ここは、KC(海馬コーポレーション)が所有するビルで、デュエルフィールドも完備されている。

普段は一般に解放されているが、今日は試験のために貸し切りにしてあるらしい。なので逆接的にこのビルに向かう人は、みな合格枠を争うライバルということである。

道で人と日が合う度に、親の仇を見るような目をされる体験は中々ないだろう。ここは、会場の外だがすでにピリついた空気が漂っていた。

そんな中遊は。

 

「ふぁ~あ、朝から天上院に叩き起こされたせいで眠いニャー」

 

のんきにあくびをしていた。

空気を読まないのも、ここまでくれば短所でなくて長所である。

隣にいた明日香も呆れを隠しきれず。

 

「もう緊張感ないわね……。今日はとっても大切な試験なのよ? もっとシャキッとできないの?」

「無理ニャ。猫は夜行性、朝は弱いのニャ」

「あなた猫じゃなくて人間でしょ! しかも、今はもう11時じゃない! まったく朝じゃないわよ!」

「細かいこと一々うるせーニャ。というか何でおみゃーが、おいらと一緒にいるのニャ。いつもみたいに取り巻き二人組と一緒にいればいいじゃニャか」

遊が言う取り巻き二人組とは、明日香の友人の枕田ジュンコと浜口ももえのことである。地区が違うので小学校は違うが、休日などによく集まっては3人で仲良くしている。

明日香および二人も上下関係などないが、二人が明日香のことを敬称をつけて呼んでいることから、遊はしきりに取り巻きと揶揄っているのだ。

そんな二人も無事受験条件を満たしたので、この会場に来ていることは、遊も明日香を経由して聞いていた。

取り巻きとバカにされたことに、明日香は眉をひそめる。

「取り巻きって言わないでよ。私たちは対等な友達なんだから」

「へーへー、ごめんニャさいっと」

「謝るなら、少しぐらい悪びれなさい。まったく……二人は緊張していたようだから、会わないようにしてるわ。下手に話しかけて重圧かけてもよくないし」

「はっ、こんな試験で緊張するニャんてだらしないやつらニャ」

「そう言わないの! 誰もがあなたみたいに無神経でいるわけじゃないのよ?」

「そう言ったら、おみゃーも緊張してないじゃニャか。ニャハハ、墓穴掘ったニャ」

「私はこういう場は何度も経験してるから慣れてるだけよ! この会場だって、ジュニア大会の会場だったんだから」

「ジュニア大会……? ああ、おみゃーが負けて、おいらに泣きながら八つ当たりしてきたやつニャ」

「そ、それはもう忘れなさい!」

 

過去の黒歴史を恥じるように、明日香は赤面する。

全国の小学生が集うジュニア大会。明日香は小学生の集大成として挑んだ。しかし、本選の準決勝で手札事故を起こしてあえなく敗退したのだ。

全国何万人の中のベスト4は十分好成績なのだが、明日香はそれで良しとせず、特に手札事故という力を出し切れずに負けたことに悔いを残した。そのため大会後数日は、荒れに荒れた。デュエル飛び抜けて強い明日香を受け止められたのが遊だけだったこともあって、遊は明日香の鬱憤晴らしにデュエルを強制されたのだ。

今では立派な明日香の黒歴史である。

「ほ、ほら見なさい。あそこにいるのは全国ベスト8の藤原雪乃、その向こうには大会上位常連のツァン・デレ、その他にも宮田ゆまと有名どころがズラリ。さすがはデュエルアカデミアね。全国から実力者が終結してるわ」

「ニャハハ、話をそらしたニャ」

 

苦し紛れなことは理解していたが、この話は本当にしたくなかったので無理矢理流れを切った。

遊もそれは分かっていたので、それ以上はつっこまなかった。

 

「とは言っても、天上院よりは弱いニャろ? ならおいらが負けるわけないニャ」

「油断して足下掬われないようにね」

「ニャハハ油断なんてしないニャ。おいらはいつも通り遊ぶだけニャース」

 

からからと笑う遊。

明日香はため息をつく。不思議とこの憎たらしい笑みを見ていると、微かに燻っていた不安も吹き飛んでしまう。

それがわざわざ試験前、家に迎えに行ってまで遊の近くにいた理由だった。

「それにしても、中学まで同じとはニャー。腐れ縁も中々根深いもんだニャ」

 

自分の合格を信じて疑わない純粋な言葉に、明日香は照れ臭くなりそっぽを向いた。

 

 

 

 

 

ーーー『受験番号4番。デュエルフィールドに来てください』

 

女性の声のアナウンスが流れる。

どうやら出番が来たらしい。ベンチに腰かけながら、瞑想状態で集中力を高めていた遊は、ぱちりと目を開く。

「ようやくおいらの出番かニャ」

 

番号は学術試験の順位で割り当てられると聞いている。要するに遊は全体で四番目の成績を修めたということだ。普段授業をサボりまくっている遊だが、優秀なのだ。ちなみに明日香の順位は10位。何で自分の方が順位低いのかと怒っていた。

ちらりとデュエルフィールドの方を見ると、たくさんのデュエリストたちが試験官に自分の力をぶつけていた。

その中の一人に明日香の姿を発見した。

明日香は、切り込み隊長2体で相手の攻撃を封じ、ギルフォード・ザ・ライトニングとクイーンズ・ナイトがフィールドを埋めて、王宮のお触れで罠を封じて、ついでに連合軍で攻撃力を上げていた。

 

「やり過ぎニャろ。あいつ……」

 

……容赦のない展開に、遊は若干引いた。

まあ、あの調子なら明日香は勝つだろう。なら普段、散々偉ぶってる自分が負けたら立つ瀬がない。遊は帯を結び直した。

デュエルフィールドに到着すると、サングラスをかけた試験官が腕を組んだ状態で仁王立ちしていた。

「君が受験番号4番か」

「番号で呼んでほしくないニャ。おいらには猫又遊って名前があるんだからニャ」

「それは失礼した、猫又君。私は鹿本(しかもと)だ。よろしく頼むよ」

「ニャハハ、よろしくニャース」

 

和やかな雰囲気で自己紹介を済ませる。

 

「それでは早速始めよう。ちなみにこのデュエルの勝敗が直接試験の合否を決めるわけではない。戦術や判断力などデュエリストに必要なものを総合的に見ていくから、気楽にやりなさい」

「せっかく気を使ってくれたのに申し訳ニャいけど、勝たせてもらうニャース」

「ふふ、それは楽しみだ。では始めよう……」

 

「「デュエル!」」

 

遊LP4000 VS 鹿本LP4000

 

 

「先行は受験生からだ」

「それじゃあ遠慮なく。おいらのターン、ドローニャ! おいらは『終末の騎士』召喚するニャ!」

 

終末の騎士ATK1400

全身鎧姿で赤い布で顔を隠した騎士がフィールドに現れる……思っていたよりも小さい。

 

「終末の騎士の効果を発動。このカードを召喚したときデッキから闇属性のモンスターを1枚墓地に送るニャ!」

 

デッキと思わしきカード群が空中に現れる。操られるようにカードが広がる。そして終末の騎士が剣を突き立てると、そのカードは消えて墓地に送られた。

その様子を試験官は興味深そうに眺めていた。

 

「なるほど墓地肥やしを行うのか。若いのに、なかなか渋い手を使う」

「ニャハハ、さすがは試験官ニャ。大体デュエルでこいつを使うと嘲笑うか、怒るのかどちらかなんだがニャ」

「ふふ、伊達にデュエルの仕事に携わってはいないさ」

「だろうニャ。おいらはさらに『おろかな埋葬』を発動! デッキから『エクリプス・ワイバーン』を墓地に送るニャ。さらにエクリプス・ワイバーンの効果を発動! このカードが墓地に送られた場合、デッキから光属性、また闇属性のレベル7以上のドラゴン族をゲームから除外するニャ。 おいらは『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を除外するニャース」

「ほう、見事だ」

「感心するのはまだ早いニャ! おいらは墓地のエクリプス・ワイバーンを除外して『暗黒竜コラプサーペント』を特殊召喚するニャ! さらに除外されたエクリプス・ワイバーンの効果発動。このカードの効果で除外したレッドアイズを手札に加えるニャ。そしてフィールド上のコラプサーペントを除外して、手札からレッドアイズを特殊召喚するニャ!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ATK2800

 

「さらにレッドアイズの効果発動、墓地手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚することができるニャ。おいらは墓地から『ダーク・ホルス・ドラゴン』を特殊召喚するニャ!」

 

ダーク・ホルス・ドラゴン ATK3000

 

レッドアイズの咆哮が天に突き刺さると、空がモーゼの海割りのようにぱっくりと割れる。するとそこから闇色に染まったホルスが降りてきて、フィールドに降臨した。

 

「なるほど、終末の騎士の効果で落としたのはそのカードか」

「その通りニャ。おいらはカードを1枚伏せてターンを終了するニャ」

 

遊LP4000 手札2枚

 

のっけから上級モンスターを2体フィールドに出現させたことで、遊試験場の周りではちょっとした騒ぎになっていた。なぜなら遊は今まで公式戦に出場したことがない。そんな人物がいきなり上級モンスターを容易くフィールドに召喚するようなタクティクスを見せれば警戒して当然だ。

そんな野次馬のざわめきは、デュエルフィールドの二人には聞こえていなかった。

 

「私のターン、ドロー。……猫又君、1つ謝罪をさせてくれ」

「いきなりなんニャ?」

 

試験官の唐突な言葉に遊は首を捻る。別に試験官に失礼なことをされた覚えもないし、謝られる理由が見つからなかった。

 

「私はデュエルが始まる前、正直言って君のことを少し侮っていた。私はその世代で強いと噂される生徒は、大体チェックしている。しかし、君の名前は聞いた覚えがなかったからね、おそらく勉強だけで実践はからっきしなのだろうと思っていた」

 

無理もない。大きな大会で聞き覚えのない名前が全国常連組を押さえてここにいるのだ。そう思うのも納得がいく。

 

「しかし、今の1ターンを見て考えが変わった。プロでも扱いが難しいと言われるドラゴン族をこうも見事に操って見せた。これ以上見なくても分かる、君は相当な実力者だ」

「それはどうもニャ。褒められるのは悪い気はしないニャース」

「ああ、こんな実力者がなぜ今まで無名だったのか不思議でならないよ。だが、だからこそおしい!」

「ニャあ?」

「悪いが私のデッキと君のデュエルは相性が最悪だ。おそらく君は負けるだろう」

 

勝利宣言。デュエルもんスターズは、どんな強いデッキだろうと手札や流れで数%は負ける可能性を常に孕んでいる。そんなゲームで勝利宣言するのは、よほどの自信がなければできない。

ナメられてるのかと、遊は気を乱したが、すぐにその考えは消す。相手は試験官。そんな気の緩みは見せないだろう。

考えられる選択肢は、ドラゴン族にメタ性のあるデッキ、それかまた別のデッキか……。

「おもしれぇニャ。試験官がどんなデッキを使ってくるのかは知らニャいが、負けると言われる俄然倒したくなるニャ!」

「ふふ、いい心意気だ。どんな相手だろうと自分のデッキを信じて前を見る。デュエリストには必須の能力だ。君が倒しに来ると言うのなら、私も全力で答えよう! 私はモンスターをセット。そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

鹿本LP4000 手札3

 

警戒していた分、淡白なターン展開に少し拍子抜けしてしまった。しかし、ああも大口を叩いたのだ。何かしら仕掛けがあるはずと、遊は警戒を解かなかった。

 

「おいらのターン、ドローニャ! おいらはリバースカード『トラップスタン』を発動、このターンこのカード以外のトラップカードの効果は無効になるニャ!」

「ふむ、これでは私は防御ができないな」

「余裕そうに言われると嫌みっぽいニャース。おいらはレッドアイズでセットモンスターを攻撃ニャ。『ダーク・メガフレア』!」

 

巨大な黒炎がセットモンスターを飲み込んだ。

しかし、姿を露にしたセットモンスターは、壺の中からニヤニヤとした顔を覗かせていた。

 

「私が伏せていたのは『カオスポッド』だ」

「ニャンですと!?」

「その様子だとこのカードの効果は知っているようだね。カオスポッドのリバース効果を発動。フィールド上のモンスターをデッキに戻して、その枚数分のレベル4以下のモンスターを裏側表示で召喚する。やれ、『カオスシャッフル』」

「ニャアアアア! レッドアイズ、ダーク・ホルス!?」

 

呼ばれなかった終末の騎士は、表情には出さなかったが、ショックを受けた様子だった。

「むぐぐ……。カオスポッドの効果でデッキの上からカードをめくるニャ。1枚目『聖なるバリアミラーフォース』、2枚目『カードガンナー』、3枚目『グレイプ・スクワーマー』、4枚目『天使の施し』、5枚目『ダーク・グレファー』。よって、カードガンナー、グレイプ・スクワーマー、ダーク・グレファーをセットするニャ」

仕事放棄でお馴染みの聖なるバリアミラーフォースはいいとして、ドローソースと墓地肥やしを兼ねている天使の施しが落ちてしまったのはとても痛手だ。

遊は渋い表情を作ったが、切り替えるしかないと諦めた。

 

「おいらはカードを1枚伏せてターンエンドニャ」

 

遊LP4000 2枚

 

「速攻魔法『サイクロン』を発動! 伏せカードは破壊してもらおう」

「んニャ!?」

 

エンドサイクは戦術の基本である。

破壊されたカードは『和睦の使者』。フリーチェーンでとても優秀なカードだが、伏せたターンには何もできない。地味だが嫌なデュエルだ。

 

「今のはマイナスだぞ。除去を警戒してブラフを伏せるべきだったな」

「……アドバイスどうもニャ」

「どういたしまして。どんどん攻めよう! 私のターン、ドロー! 私は魔法カード『闇の護封剣』を発動! これで君の裏側表示のモンスターは表示形式を変更できなくなった。さらに魔法カード『強欲な壺』を発動して2枚ドロー! 私は『人造人間七号』を召喚する!」

 

人造人間七号 ATK500

 

「さらに魔法カード『機械複製術』を発動! 人造人間七号をデッキからもう2体特殊召喚する!」

「なるほど相性が最悪という意味が分かってきたニャ」

「ああ。君の使っているドラゴン族を中心にしたデッキは、火力を重視したとても強力なテーマだ。しかし、その反面上級モンスターやそのサポートを充実させなければならない分、除去札を減らさなければならない。結果、搦め手に弱い傾向にあるのだよ! 行くぞ人造人間七号の攻撃! このカードは相手に直接攻撃することができる! 『電脳銃』1発目!」

 

遊LP4000➡3500

 

「2発め!」

 

遊LP3500➡3000

 

「3発目!」

 

遊3000➡2500

 

3発目まで攻撃を完璧に決めた人造人間たちは、一仕事を終えたチームのようにハイタッチしていた。

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

鹿本LP4000 手札2枚

 

「おいらのターン、ドローニャ」

 

状況はとても悪い。相手は伏せカード1枚に直接攻撃ができるモンスターが3体と磐石なのに対して、遊は表示形式を変更できないセットモンスター3体に手札が3枚。

今のところ、相手にいいようにやられている。

しかし、ただでやられるほど遊も大人しい性格はしていない。

「おいらは手札から『強欲な壺』を発動して2枚ドロー。さらに『埋葬呪文の宝札』を発動! 墓地の魔法カード3枚を除外して2枚ドロー!」

 

驚異的なドローを重ねて、遊は手札を一気に初期枚数まで回復させた。

 

「おいらは魔法カード『ブラックホール』を発動! フィールド上のモンスターをすべて破壊ニャ!」

 

フィールド上に現れた重力の悪魔は、敵味方区別なくすべて吸い上げてしまった。

 

「ふふ、乱暴な手を使う。しかし、悪くない判断だ」

「どうもニャ。破壊されたガードガンナーの効果で1枚ドロー。おいらはもう一度終末の騎士を召喚するニャ」

 

先程のことを根に持っているのか、召喚された終末の騎士は、心なしか不機嫌そうだった。

 

「終末の騎士の効果で闇属性モンスターを1枚墓地に送るニャ。さらに手札を1枚捨てて『The・トリッキー』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

The・トリッキー ATK2000

 

「トリッキーで捨てた2枚目のエクリプス・ワイバーンの効果でレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを除外するニャ。さらに墓地のエクリプス・ワイバーンとグレイプ・スクワーマーを除外して『カオス・ソーサラー』を特殊召喚するニャース」

 

カオス・ソーサラー ATK2300

 

「除外されたエクリプス・ワイバーンの効果でレッドアイズを手札に加えるニャ」

「ほう。まさか1ターンでここまで盛り返すとは思わなかった。それにドラゴン族デッキかと思えば、機械族や戦士族、魔法使い族まで出てくる」

「ニャハハ、統一性がないってかニャ。そういうことは言われ慣れてるニャ」

「いいや。一見バラバラに見えるかもしれないが、デッキとして形になっている。それは類いまれなる運命力とタクティクスがなければ扱えないものだ。十分評価に値するよ」

 

何もかっちり教科書通りのデッキを作るだけがデュエルではない。どんなデッキを作ろうとも、操ることができなければ二流、操れれば一流。そういう世界である。

 

「褒められて悪い気はしニャいが、試験官が言うとどこか胡散臭いニャー」

「ははは、それは仕方ない。値踏みされている相手に褒められるのは、何かしら裏を感じてしまうものさ」

「そういうもんかニャー。まあいいニャ。おいらはカオス・ソーサラーで試験官を直接攻撃するニャ!」

 

ボール状のエネルギー体を、いくつも円上に出現させる。準備体操のようにエネルギー体を遠心させていると、緑色の網がカオス・ソーサラーを襲った。

いきなり網にかけられて、何とか抜け出そうとじたばたしてみるが、網はびくともしなかった。

 

「私は永続罠『グラビィティー・バインド 超重力の網』を発動していた。これによりレベル4以上のモンスターは攻撃することができない!」

「ニャアア!? やっぱり入ってたニャ!?」

 

試験官のデッキは、相手の動きを制限してその間に直接攻撃するモンスターで殴り殺すものだ。なので、定番とも言えるグラビィティー・バインドは入っていると踏んでいたが、すでに伏せてあるとは予想外だった。

またも攻めきれず、遊は顔をしかめる。

 

「おいらはこれでターンエンドニャ」

 

遊LP2500 手札2枚

 

「私のターン、ドロー。ふむ、手札が良くないな。私は『天よりの宝札』を発動! お互いは手札が6枚になるようにドローする。私は4枚ドローだ」

「おいらも4枚ドローだニャ」

 

バトルシティでも使われた最強のドローカード。かなりのレアカードで、遊もまだ持っていない。さすがはアカデミアだと感心した。

そして手札を確認すると、次のターンが回ってくれば逆転も可能な手札だった。

 

「ふふ。いいカードは引けたかな?」

「そちらこそ。顔がにやけてるニャ」

「笑顔はいつも通りさ。私は『お注射天使リリー』を攻撃表示で召喚!」

 

お注射天使リリー ATK400

木刀と同じくらいの大きさの注射器を担いだ天使が現れた。天使のような笑顔なのにどこか恐怖を覚える。

 

「さらに魔法カード『二重召喚』を発動! 私は『逆巻く炎の精霊』を召喚だ!」

 

逆巻く炎の精霊 ATK100

 

「私は『進化する人類』を逆巻く炎の精霊に装備する」

 

逆巻く炎の精霊ATK100➡1000

 

「バトル! リリーで終末の騎士を攻撃! その時リリーの効果発動、ライフを2000払うことで攻撃力を3000アップだ!」

 

鹿本LP4000➡2000

お注射天使リリー ATK400➡3400

 

ただでさえ大きかった注射器をさらに巨大にし、完全に凶器とかした注射器を終末の騎士の尻にぶっ刺した。

終末の騎士は踏んだり蹴ったりである。

このままなら遊は2000の大ダメージを負うのだが、それは許さぬと言わんばかりにクリクリ~という可愛い声がフィールドに響いた。

 

「ダメージ計算時に手札の『クリボー』を捨てて、ダメージをゼロにするニャ!」

「防がれたか。しかし、私の攻撃はまだ終わっていない。進化する人類は自分のライフが相手のライフを下回った時装備モンスターの攻撃力を2400にする」

 

逆巻く炎の精霊 ATK1000➡2400

 

「さらに逆巻く炎の精霊は相手に直接攻撃することができる。行け!」

「にゃんパス!?」

 

遊LP2500➡100

 

「攻めきれなかったか……。私のライフが相手より上になったので、逆巻く炎の精霊の攻撃力は1000になる。さらに相手に直接攻撃でダメージを与えたとき逆巻く炎の精霊の攻撃力は1000ポイントアップする! 私はメインフェイズ2に『レベル制限B地区』を発動! レベル4以上のモンスターは強制的に守備表示になる」

 

遊のフィールド上の2体は、不思議な力に抗おうとするが、抵抗むなしく身を屈めた。

「私はこれでターンエンドだ。さあ猫又君、このまま破れるのか、それとも逆転するのか。見せてくれ君の底力を!」

 

鹿本LP2000 手札1枚

 

わざとらしく挑発したような言い方をする試験官に、遊はつくづく自分が審査されているのだと実感した。

明らかに力の差があるという屈辱感と同時に、自分はまだまだ強くなれる。遊はそう確信した。

 

「言われニャくても、見せてやるニャース! おいらのターン、ドローニャ! おいらはフィールド上のカオス・ソーサラーの効果発動! 逆巻く炎の精霊を除外するニャ!」

 

カオス・ソーサラーが身を屈めながら呪文を唱えると、次元の裂け目が出現して逆巻く炎の精霊を飲み込んだ。

 

「『サイレント・マジシャンLV4』を召喚するニャ」

 

サイレント・マジシャンLV4 ATK1000

 

「魔法カード『レベル・アップ!』を発動! サイレント・マジシャンをレベルアップさせるニャ! 現れろ『サイレント・マジシャンLV8』!」

 

サイレント・マジシャンLV8 ATK3500

「サイレント・マジシャン……あの決闘王武藤遊戯が使ったと言われるカードか」

「サイレント・マジシャンは魔法カードの効果を受けない。だからB地区の効果は聞かないニャ!」

「なるほど。ではグラビィティー・バインドはどうする?」

「こうするニャ! 死者蘇生を発動! 墓地の『人造人間サイコショッカー』を特殊召喚ニャ!」

 

人造人間サイコショッカー DFF1200

 

「まさかサイコショッカーまで入っているとは。君のデッキはまるで宝箱のようだね」

「まあ、カードだけは立派だからニャ。サイコショッカーの効果でグラビィティー・バインドは効果を無効になったニャ!」

「いい手だ。しかし、甘い! 私は手札の『エフェクトヴェーラー』を効果を発動! このカードを墓地に捨てることで、このターン効果モンスターの効果を無効にする! サイコショッカーの効果は無効だ!」

 

サイコショッカーの目のハイライトが消されて、壊れたロボットのようになってしまった。

頼みの綱であったサイコショッカーが無効化された。

しかし、遊は笑っていた。

 

「その手は読んでたニャース! おいらはサイコショッカーを生け贄に捧げて『人造人間サイコロード』を特殊召喚するニャ!」

「サイコロードだと!?」

 

人造人間サイコロード DFF1600

 

今日始めて試験官の驚いた声を聞けた。それだけに遊は満足そうに笑った。

「サイコロードの効果発動! 1ターンに1度フィールド上の表側表示で存在する罠カードをすべて破壊するニャ! そして破壊したカード×300ポイントダメージを与えるニャ!」

 

鹿本LP2000➡1700

サイコロードの目からビームが、試験官のグラビィティー・バインドを貫いた。

 

「これで障害はなくなったニャ! サイレント・マジシャンでリリーに攻撃ニャ! 『サイレント・バーニング』!」

「ぐうああああ!」

 

鹿本LP1700➡0

 

高らかになったブザー音が、デュエルの終わりを告げた。

 

 

 

 

「うむ。合格だな」

 

デュエルが終わり、試験官と握手をしようと近づいた遊に、鹿本は呟くように言った。

「合格って、そういうのって後から結果が届くんじゃニャか?」

「この順位で、私を打ち倒してしまうほどのタクティクス。おそらくトップクラスの点数が付けられた。不祥事でも起こさない限り、合格は確実だ」

「おい、話聞けニャ」

 

遊のつっこみも、華麗にスルーされた。

どうにか話を自分のペースに持ち込もうとする姿に、遊は既視感を覚えた。それも試験前のことだ。明日香が誤魔化そうとする姿にそっくりだったのだ。

 

「もしかして、あんた負けて悔しいのかニャ?」

 

遊がそう言った途端、試験官の挙動が止まった。

 

「……そうだと言ったら?」

「ニャー。あんた明らかに手加減してたじゃニャか。本気じゃなくても悔しいもんかニャ?」

「当たり前だ。負けたら悔しい。どんなにいいデュエルをしようとも、手加減しようとも悔しいものは悔しいのさ」

 

ギリリと力強く握られている力拳に、その感情の高ぶりがありありと現れていた。

遊は顔をひきつらせて。

 

「ニャハハ……。めんどくさい人ニャ」

「デュエリストとはそう生き物さ」

「まあでも、分かる気がするニャース」

 

遊も手加減されていたが、勝ったから嬉しい。そして負けたら死ぬほど悔しがっていただろう。

それほどまでにデュエルに魂を捧げているのが、デュエリストなのだ。

サングラス越しから、鹿本の鋭い瞳が遊を捉える。

 

「次デュエルするときは本気で行かせてもらうよ。猫又君」

「ニャッハー。おいらだってもっと成長してやるからニャ。次は本気のあんたをぶっ倒すニャース!」

 

二人は好戦的な笑みを浮かべながら、ガッチリと握手した。

 

 

 

 

 

 

 

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