(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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113話 紺碧の海都Ⅻ

 蒼と黒の気がぶつかり合って、蒼が押し負ける。

 それを契機に闘技場に巨大な魔法陣が展開され、導力で造られた石柱群がその魔力を浴びて崩壊していく。

 

「おおっ!?」

 

「ちっ――」

 

 その頂上で戦っていたマクバーンとイオは驚きながらもそこから跳び上がり、巻き込まれるのを回避する。

 

「っ――」

 

「すーちゃんっ!」

 

「ぼさっとするな! さっさと逃げろ」

 

 頭上から降って来たブロックが目の前で一刀両断されて呆然とするスウィンとナーディアにロランスの喝が飛ぶ。

 石柱群を押し退け、地面の魔法陣からまず現れたのは巨大な腕。

 霞のような輪郭の腕は魔法陣の外に出ると、鋼の腕へと置換される。

 

「――ああ、そう言えばこれがあったか……しかし無粋な」

 

 前もってそういうこともあると聞かされていたルーファスだったが、良い所で水を差されて不快そうに顔を歪める。

 

「何かよく分からないけど、試合どころじゃないよね?」

 

「ああ、“儀式”を始めたようだな」

 

 それを落下しながら見ていたイオとマクバーンが言葉を交わす。

 

「お前達は下がっていろ」

 

 ロランスはスウィンとナーディアを逃がし、錆びた大剣から黄金の剣に武器を持ち帰る。

 

「邪魔をするな」

 

 静かに呟きルーファスは現れ出でようとする“ソレ”に剣群の切先を向け――唐突に彼の胸が爆ぜた。

 

「ルーファスさん!?」

 

 仰け反って倒れていくルーファスにリィンは慌てて駆け寄って抱き留める。

 苦し気に呻くルーファスに、リィンは爆発が起きた胸元を調べる。

 そこには爆ぜた《ARCUS》があった。

 

「マクバーンの力に耐え切れなくなったのか」

 

「――っ……まさかこんな初歩的なミスをしてしまうとはな」

 

 決して長くないだろうと言われていた制限時間が過ぎてしまったことによる《ARCUS》の暴発。

 ルーファスはため息を吐き、横槍が入ったことをむしろ幸いだったかと悩む。

 展開した焔の剣は《ARCUS》の暴発により霧散して消える。

 もしもこれがリィンとの相対で起きていれば、どんな無様な負け方をしていたか簡単に想像できる。

 

「とりあえずここから避難します」

 

 降って来る瓦礫を避けるため、リィンはルーファスを横抱きにしてその場から跳躍する。

 そして――

 

「邪魔してんじゃねえよ!」

 

「竜気解放――」

 

「第一拘束解放――」

 

 マクバーン、イオ、そしてロランスの三人がルーファスがしようとしたように魔法陣から現れる“ソレ”に向けてそれぞれの攻撃を仕掛けるために、“力”を解放する。

 しかし、彼らの眼前に導力機雷が展開された。

 

「ジェノサイドレインッ!」

 

 撃ち込まれた弾丸が機雷を起爆し、連鎖爆発がマクバーンを呑み込む。

 

「ディザスターアームッ!」

 

 マシンガントレットによる杭打ちがイオを横撃して吹き飛ばす。

 そして何処からともなく飛んできた鎖鎌がロランスを捉え、地面へと叩きつけた。

 

「なっ――」

 

 場外からの不意打ちを喰らう三人にリィンは息を呑み――その背後を黒い仮面をつけたウォレスが現れる。

 

「しま――」

 

「リィン・シュバルツァーを殺せ」

 

 ウォレスはうわごとの様にそう呟くと十字槍を引き絞る様に溜める。

 

「っ――」

 

 腕にはルーファスを抱えており、リィンは反応に遅れる。

 ウォレスは全身に黒い闘気を纏い、Ⅶ組が戦った時以上の力を込め、必殺の突きを放つ。

 いくらリィンでも無防備な背中に喰らえば致死に至る一撃は躊躇なく放たれ――《神速》の剣がその一突きを弾いた。

 

「デュバリィさん!?」

 

「何をしていますのシュバルツァーッ! この程度の相手に後ろを取られるなんてっ! 修行が足りませんわよ!」

 

 ウォレスを足蹴にして突き飛ばし、デュバリィは背中越しにリィンを罵倒する。

 

「そんなことを言われても……」

 

 理不尽な罵倒にリィンは肩を竦め、抱えていたルーファスを降ろす。

 

「ブルブラン」

 

「ふむ、どうやら試合どころではないようだね」

 

 審判は周囲を見渡して、唸る。

 異常は西風やウォレス達だけではない。

 無秩序な歓声を上げていた観客たちは今、空ろな表情で虚空を見上げ、何処からか聞こえてくる笛の音に合わせて唸るような合唱を響かせる。

 その誰もが黒い“呪い”を纏い、更にはウォレス達に遅れ、これまでの敗退者たちが黒い仮面を纏い、武器を持って観客席から次々と降りてくる。

 

「一応聞きますがこれは“結社”の実験じゃないんですよね?」

 

「ええ、少なくてもわたくしはこの様なことは何も聞いていませんわ」

 

 リィンの質問にデュバリィは堂々と答える。

 

「ならどうしてデュバリィさんはこの精神汚染の中で無事なんですか?」

 

 小さな衝動を刺激して突き動かすのが“闘争の呪い”。

 その強制力には例え高潔な心を持っていても諍う事はできない、つまりデュバリィもまたリィンを襲う側になる可能性があるということなのだが、彼女に“呪い”の兆候はない。

 

「ふっ……」

 

 リィンの疑問にデュバリィは不敵な笑みを浮かべて懐に手を入れる。

 

「わたくしにはマスターの加護がありますから」

 

 リィンに見せつけるように取り出し掲げたのは徽章。

 

「わたくしにはこのマスターから頂いた徽章の加護がありますから、こんな精神汚染など通用しませんわ」

 

「……そ、そうですか」

 

 二度繰り返し、自信満々に、誇らしげに、そして羨ましいだろう、と自慢するデュバリィ。

 リィンは腰に差した“八耀”を一瞥してそれ以上は何も言わなかった。

 

「リィンさんっ!」

 

「兄上っ!」

 

 そしてこの異常事態に闘技場内にいたエマと控室にいたユーシス達がリィンの下に集う。

 

「なんか大変なことになっちゃったみたいだね」

 

「これがリィンが言っていた“異変”なのか……まさかウォレス将軍まで」

 

 観客にまで及ぶ異常にミリアムが感心し、ガイウスは仮面を付けて槍を身構えるウォレスに戸惑う。

 

「そなたは……むぅ……」

 

 ラウラはリィンを守ったデュバリィに何かを言いかけて口を噤む。

 

「兄上! 大丈夫ですか兄上っ!」

 

 そしてユーシスは普段の冷静な振る舞いから考えられない程に狼狽えてルーファスに縋りつく。

 

「ユーシス、私は大丈夫――ぐっ」

 

 立ち上がろうとしたルーファスは体に走る激痛に顔を歪め、膝を着く。

 

「自業自得です。むしろその程度で済んで良かったと思ってください」

 

 《鬼の力》を使った後の虚脱感や激痛。

 今でこそ慣れたものだが、身体の耐久力を無視した強化の代償だとリィンはルーファスの現状をその一言で済ませる。

 

「リィン――」

 

 そんな侮蔑さえ感じる突き放した言葉にユーシスは眦を上げ――

 

「エマ、儀式の場所は見つけられたか?」

 

「は、はい」

 

 リィンに話を振られ、エマはユーシスの眼差しに首を竦めながら頷く。

 エマが試合中に行っていたのは“闘争の想念”の行き着く先を探っていた。

 

「リィンさん達の想念はこの闘技場の地下に送られていました、遠見の術で内部構造も把握できています……

 それからこの笛の音は“降魔の笛”。今回の儀式で集まった想念の一部を利用して彼らを操っているのだと思います」

 

 エマは周囲を取り囲むように集まって来る猛者たちを見回す。

 西風の二人に、オーレリアのチーム。それに敗退したウォレスや昨日の不良チーム、ついでにギルバート。

 それだけではなく、リィン達が知らない予選敗退者達まで観客席から降りて黒い仮面越しにⅦ組を――否、リィン個人に殺意を向けている。

 

「笛を演奏しているのは帝国解放戦線の《S》でした」

 

「あっあのオバサンなんだ」

 

 エマの言葉にガレリア要塞で彼女と遭遇した経験があるミリアムが声を上げる。

 

「“降魔の笛”は人まで操れるのか……」

 

 リィンは落ち着いた感想を漏らす。

 元々の持ち主であった《G》よりも教会騎士の関係者であるだろう《S》の方が適正があると考えれば、それができても不思議ではない。

 

「ユーシス、みんな。ルーファスさんを連れて避難してくれ」

 

「リィン?」

 

 リィンの提案にラウラは顔をしかめる。

 

「エマは悪いけど付き合ってくれ。俺達はこの“異変”を止めるために地下に行く……

 その前にあれもどうにかしないといけないけどな」

 

 現出しようとしている存在。

 それを守る様に立ち塞がる仮面の猛者たち。

 それだけで激戦は予想できる。

 

「ラウラ達は大丈夫なのか?」

 

「おそらく《ARCUS》のおかげでしょう。私達には《灰》の加護により“降魔の笛”を介した“呪い”に抵抗できているんだと思います」

 

 ふと頭に過ったリィンの疑問にエマが答える。

 

「そうか……それは一安心だな」

 

 Ⅶ組のみんなが敵に回らないことに安堵してリィンは太刀を抜く。

 

「退路は俺が作る。準備は良いな?」

 

「待ってくれリィン。私も戦える」

 

「そうだ。二人を残して逃げるなどできない」

 

 勝手に方針を決めるリィンにラウラとガイウスは異を唱える。

 

「二人だけじゃない。デュバリィさんは何処まで一緒に戦ってくれるつもりですか?」

 

「ま、乗りかかった舟ですから付き合ってあげますわ。せいぜい感謝しなさい」

 

「っ――」

 

「それにここにいる人達はみんな観客からの“闘争の力”を供給されている……

 簡単に言ってしまえばあの人達は《鬼の力》を使っているようなものだ。ラウラ達には荷が重い」

 

 恩着せがましいデュバリィに続くリィンの言葉にラウラ達は悔しそうに歯を食いしばる。

 ただでさえ格上の猛者たちばかりが立ち並ぶ無秩序な戦場。

 数の利もあり、自分達が彼らの足を引っ張るだけだということは言われなくても理解できてしまう。

 

「それでも――くっ……」

 

「俺達には本当にできることはないのか?」

 

 この大会で新たな一歩を進めたと思っていたラウラとガイウスは改めてリィンの背中が遠いことを思い知らされる。

 

「できることならさっき言った通り、ルーファスさんを避難させてくれ」

 

 当然の様に言って来るリィンの提案に、ラウラは反発しようとしてその言葉を呑み込んだ。

 

「分かった。リィンがそう言うなら――」

 

「いや、それには及ばないよ」

 

「兄上っ!?」

 

 ラウラの言葉を遮ったのはルーファスだった。

 ユーシスからの治癒術を受けてある程度回復したルーファスは自分の足で立ち上がってリィンに向き直る。

 

「リィン君、君はこれから周りに立ち並ぶ猛者たちを突破し、あの魔法陣を破壊、そして地下で儀式を行っている《S》を取り押さえに行くということで間違ってないかな?」

 

「ええ、概ねそうなります」

 

 改めてやることを並べてリィンはため息を吐きたくなる。

 

「一人で達成するには無謀な計画だ。どうだね、ここはユーシス達に地下の《帝国解放戦線》の制圧を任せては?」

 

「ルーファスさん?」

 

「どうかね君達? ここでただ何もできず避難するだけで納得できるかな?」

 

「やります! やらせてくださいっ!」

 

 ルーファスの提案にラウラは真っ先に乗る。

 

「それでリィンの負担が減るのなら是非もない」

 

「そうだね。ボクもこのまま逃げるだけって言うのはちょっと納得いかないかな」

 

「ガイウス、ミリアムまで……」

 

「しかし兄上を置いて行くなど」

 

「私のことなら心配はいらない。頼もしい護衛が来てくれたからね」

 

「護衛ってもしかしてなーちゃん達のこと?」

 

「ま、依頼人だから護るのは良いけどな」

 

 いつの間にかそこにいたナーディアとスウィンをルーファスは振り返る。

 

「ユーシス、多くを語る暇はない。だからこれだけ言わせてもらおう“貴族”としての義務を果たせ」

 

「っ――分かりました。兄上のこと、頼んだぞ」

 

 苦渋に満ちた顔をしながらもユーシスはルーファスのプランを受け入れる。

 すっかりやる気になってしまった仲間たちにリィンは嘆息する。

 

「ですがルーファスさん。これは――」

 

「《帝国解放戦線》の目的はオズボーン宰相の実子であるリィン君の抹殺。だからユーシス達を巻き込みたくない、そう言いたいのかい?」

 

 機先を制するように言われたルーファスの言葉にリィンは黙り込む。 

 

「だが君がどれだけ力を持っていても、この局面を一人で解決することは不可能だ……

 そして《帝国解放戦線》との因縁は既に君だけの問題ではなくなっている。ユーシス達にも戦う理由はあるはずだ」

 

「ああ、奴等にはガレリア要塞で良いようにやられた借りがある」

 

「あの時のリベンジだよね!」

 

「これ以上エリオットの様に身内を亡くすことがないように、俺達で奴等を捕まえる必要があるだろう」

 

「聞けばケルディックの事件にも彼らが裏で糸を引いていた……もはやⅦ組にとっても奴等は因縁の相手なのだ」

 

 ルーファスに促されてユーシス達はそれぞれ戦う根拠を示す。

 

「リィンさん、どうします?」

 

 伺うエマにリィンは息を吐き、切り替える。

 

「エマはユーシス達と一緒に地下に、俺はここで“アレ”の召喚を止める」

 

 ルーファスの案に妥協しながらも、リィンは一つ肩の荷を下ろす。

 召喚の阻止、仮面の軍勢、それに帝国解放戦線。

 全てを一人で対処するには手が足りず、かと言ってデュバリィや彼らにこの場を任せてしまえばどれだけの死者が発生するか分からない。

 リィンが取れる対処は最初から多くはなかった。

 

「決まったようですわね。では――」

 

 律儀に待ってくれていたデュバリィだったが、“彼女”が人の壁を飛び越えて吠える。

 

「王技――《剣爛舞踏》!」

 

 無数の剣が地面から隆起してリィン達に押し寄せる。

 

「っ――」

 

 ただでさえ凄まじい剣気を帯びた攻撃。それが《闘争の呪い》で更に高められた必殺にリィンは太刀を抜いて前に出る。

 

「六の型《飛燕――」

 

「その必要はねえ」

 

 リィンが技を繰り出す直前、空から降って来た一撃が剣の波をまとめて強引に押し潰す。

 

「ルトガー・クラウゼル……」

 

「よう、シュバルツァー。手が必要か?」

 

 飄々とした調子でルトガーは振り返る。

 

「どういうつもりですか?」

 

「何、うちの馬鹿二人も呪いに囚われちまってな」

 

 ルトガーは不敵に笑い、サングラスの上に仮面が重なっている珍妙な姿になっているガキ達を振り返る。

 

「それにお前さん達にはフィーのフォローを任せっきりにしちまってるからな……ま、その報酬だと思っておけ」

 

 彼の背後に紫の戦術殻に乗って来たシオンが降り立つ。

 

「あ……ねーねー、キミ。ちょっと思ったんだけど。ひょっとしてボクの“妹”だったりする?」

 

「いきなり何を?」

 

 そんなシオンにミリアムが場違いな馴れ馴れしさで話しかける。

 

「妹……似ているようには見えないが――」

 

「いつまでも喋ってないで行きますわよっ! “猟兵王”わざわざ来たからには足を引っ張るんじゃありませんわよ!」

 

 グダグダになりそうな空気をデュバリィが一喝する。

 

「おうおう気の強い嬢ちゃんだ――なっ!」

 

 デュバリィの言葉に応えるようにルトガーは大剣を一閃、舞い上がった土煙を破って突撃して来た仮面をつけたオーレリアの一撃に一撃で応戦する。

 

「ハハハッ! あの名高い“猟兵王”とこうして剣を交えることができるとはなっ!」

 

 剣をぶつけ合い、オーレリアは狂ったような笑い声と共に叫ぶ。

 

「貴様も、《剣帝》もリィン・シュバルツァーも、全て私が斬るっ!」

 

「こっちはこっちで物騒な姉ちゃんだな。本当に貴族か?」

 

 獰猛な肉食獣のような雄叫びにルトガーは呆れ、その背後でリィンが号令を上げる。

 

「トールズ士官学院、Ⅶ組B班――

 これよりオルディスの“異変”に介入する。各自、健闘を祈るっ!」

 

 オルディス武術大会はこうして《帝国解放戦線》の企みによって中断される。

 代わりに行われることになったのは、もはや試合とは言えない大乱闘。

 ただ、その光景は“魔女”が規制する前の“選定の儀”と変わらない“闘争”がそこにはあった。

 

 

 

 

「……始まったわね」

 

 “呪歌”にあっさりと打ち負けたヴィータは特に気にした素振りもなく息を吐き、魔力行使によって体に走った鈍い痛みに顔をしかめる。

 

「っ――厄介なことをしてくれたわね」

 

 未だに体内から消えていない呪毒。

 魔力行使をしようとする度に体に激痛が走り、先程の“蒼の歌”も見た目に反して力は籠っていない。

 

「でも問題ないわ」

 

 “蒼の歌”で高まった“想念”に横槍が入ると焦ってくれたのか、それともロランス達の戦いで想定以上の“想念”が溢れたのか。

 ヴィータにとってはどちらでも構わない。

 わざわざ体を痛めてまで“歌”を紡いで儀式に水を差したのは、少しでも混乱を煽るため。

 ヴィータの目的はただ一つ。

 儀式場にいるだろうアルベリヒ。それとその近くにいるだろう“彼女”を殺すこと。

 

「エマや婆様に知られる前に私が――」

 

 魔術行使ができない代わりに用意した導力銃を確かめながらヴィータは決意を胸に闘技場の地下へと足を向け――

 

「あら……?」

 

 不意に感じた気配にヴィータは振り返る。

 しかし、そこには何もない。あるのはオルディスを示すような紺碧の海だけ。

 

「気のせいかしら?」

 

 呪毒の影響で霊感も狂っていることに自覚があるヴィータはそれを気のせいと判断し、今度こそ地下へと踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 海の底に存在する“ソレ”が“闘争”と“起動者”の気配によって動き出したことに気付いているのは“一人”だけ。

 

 

 

 





 その頃のルーレ

クリス
「あのイリーナ会長。これリィンさんから頼まれた《プロジェクト》の計画書なんですけど」

イリーナ
「あら? 近い内に送るとは聞いていたけど、貴方が持って来てくれたのね?
 でもならどうして初日に出さなかったのかしら?」

クリス
「リィンさんによると、今回のはあくまで概要書なので忙しそうなら渡さなくても良いっと言われてましたから……
 カレイジャスのこともあってお忙しそうでしたし、それに……」

イリーナ
「……どうやら気を使わせてしまったようね。ありがとう。帰ったら読ませてもらうと伝えておいて」

アリサ
「ふーん……娘の作品は無視してリィンの企画書はすぐに読むんだ」

イリーナ
「私を間違っていると言うのは良いけど、貴女は最低限のマナーをまず学ぶべきね……
 作品の持ち込みは一部の天才にのみ許された特権……
 私の娘だからと言って特別扱いをするつもりはないわ」

アリサ
「っ――まあ良いわ。それよりも母様。今度こそ話をきいてもらうわよ」

イリーナ
「……手短に頼むわ」

アリサ
「《ダインスレイブ》のことは今は良いわ……
 それより私が話したいのは八年前のこと。母様、父様は事故死なんかじゃない、誰かに殺されたのよ!」

イリーナ
「そう……話はそれだけ?」

アリサ
「それだけって……母様……?」

イリーナ
「復讐なんて非生産的なことを考えているならやめておきなさい……
 そんなことをしたところであの人は帰って来ないし、貴女が無駄に傷付くだけよ」

アリサ
「それが……それが父様を愛した人の言葉なのっ!?」

シャロン
「…………」








補足説明
《降魔の笛》
魔獣を操るアーティファクトですが、ちゃんと霊能力を持つ者が使えば創のように人さえを操ることができると強化しました。
今回はオルディスで起きている“プチ黄昏”の影響を利用し、大会参加者に《鬼の力(弱)》を付与して操っています。
その影響は《黒い仮面》として具現化されています。
ヴィクターが操られたようにこれに対してはどれだけ精神力があっても防げず、一部の例外を除いて騎神の加護を間接的にでも持っていない限り、洗脳されます。
紫の庇護下にあると思われる西風の二人が洗脳されたのは《ARCUS》という加護を明確にするシステムがなかったからです。

また《降魔の笛》が儀式の切っ掛けになったのは、上位三属性を活性化させる副次作用を利用しています。




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