(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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114話 紺碧の海都ⅩⅢ

 

 

「燃え尽きな――」

 

「させんわっ!」

 

 焔を放とうとしたマクバーンにゼノは用意していたスイッチを押す。

 予めばら撒いていた導力地雷が起動し、マクバーンの前に飛び上がると内蔵された火薬をばら撒き、焔で引火する。

 連鎖する爆発がマクバーンの周囲を囲み、爆炎の中ゼノはマクバーンをライフルで狙い撃つ。

 しかし隙を突いた弾丸は彼が纏う焔に焼かれて届く前に焼き尽くされる。

 

「はっ――やるじゃねえか《罠使い》」

 

 劫炎を誘爆して防ぐ。

 意外な方法で防ぐ猟兵らしい戦い方にマクバーンは気分を良くする。

 

「ちっ――邪魔や! ワイはシュバルツァーに用があるんや!」

 

「はっ! 最初に俺に奇襲をくれたのはお前の方だろ! それにしても……」

 

 マクバーンは周囲を見渡し口角を釣り上げる。

 ゼノに合わせて自分を取り囲む仮面の戦士たち。

 次に起きるのは一斉砲火。

 マシンガンが、導力砲がライフルが、導力魔法がマクバーンに殺到する。

 

「ククク……」

 

 豪雨のような勢いの攻撃にさらされながらマクバーンは喉を鳴らす。

 弾幕や導力魔法は全て届く前に彼が纏う焔に触れ、等しく蒸発する。

 

「良いじゃねえか……」

 

 意味のない攻撃をしながらも決して戦意を衰えさせない仮面の戦士たちにマクバーンはテンションを上げていく。

 観客たちから“闘争”のエネルギーを供給されている彼らが纏うのは言うなれば、結社で開発した疑似的な《鬼の力》と同じ。

 

「はっ――」

 

「へぶしっ!」

 

 近付けば問答無用で焼かれる焔に臆することなく背後から襲い掛かって来る誰かをマクバーンは見向きもせず無造作に裏拳で叩く。

 

「撃て撃て!」

 

「これでも喰らえオーバルエネルギー最大出力っ!」

 

「あの導力砲を防ぐかっ!? くそ化物めっ!」

 

 怯まないのは彼だけではない。

 自分に群がって来る者たちは実力差も理解してもなお、戦う事をやめようとしない。

 それが“呪い”に侵され、退くという思考を奪われているが故の無謀。

 雑魚には興味のないマクバーンだが、たまにはこういうのも悪くないと笑う。

 

「簡単に焼かれるんじゃねえぞ――」

 

 そう期待の言葉を呟き、マクバーンはここぞとばかりに魔法の試し打ちをする。

 

「ヒートウェイブ」

 

 地面から溢れた火柱が纏めてゼノ達を呑み込んだ。

 

 

 

 

 ロランスはその少年を相手に困惑していた。

 

「くそがっ!」

 

 口汚い悪態を吐きながら金茶頭の少年は鎌を振り回してロランスを追い立てる。

 技は稚拙、基礎の鍛錬も不十分、ただ才能と思い切りの良さに任せた荒々しい攻撃をロランスは余裕で捌いていく。

 その気になれば一瞬で斬り伏せられる程度の相手。

 にも関わらずロランスは全方位から襲い掛かって来る有象無象を“金の剣”の峰打ちで叩きのめしている片手間に少年の相手を続ける。

 

「あわびっ!?」

 

「もうやめておけ、お前では俺にもシュバルツァーにも勝てない。お前には分かっているはずだ」

 

 何故、そんならしくもない忠告を少年に言っているのか、ロランスは平然な顔を装い困惑する。

 

「舐めやがってっ!」

 

 小物のような男を一撃で倒していながら、自分には手加減している。

 それを少年は正しく認識し、侮られている事実に憤り、さらに彼を見ていると込み上げてくる激情を“呪い”にくべて力を上げていく。

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 獣のような雄叫びを上げて少年は人間離れした速度でロランスに斬りかかる。

 左目に走る鈍痛を無視し、怒涛の勢いで繰り出される無数の斬撃。そして繰り出されるのはハルバードを変形させた鎖鎌。

 明らかに少年の限界を超えた攻撃、だがロランスはやはり余裕を崩すことなく投擲された鎖鎌を斬る。

 

「――くそっ!」

 

 刃を失った仕込みハルバードを投げ捨て、少年は両手に爆薬を仕込んだダーツを纏めて掴み投げつける。

 しかし投げつけた先にはもうロランスの姿はなく、声が背後から聞こえる。

 

「寝ていろ」

 

「――がっ!?」

 

 背後からの強打に少年は意識を飛ばす。

 しかし“呪い”が強制的に意識を繋ぎ止める。

 

「この野郎――」

 

 もっとも受けたダメージまですぐに回復できるわけではなく、少年は地べたに這いつくばらされ――

 

「――――あ……」

 

 見上げたその光景が、銀髪の青年が自分を見下ろす姿に失った記憶が刺激される。

 燃え盛る家屋に村。

 血に塗れた彼が自分を見下ろしている光景が脳裏に走る。

 

「お―」

 

 少年の身体に更なる瘴気が集まり、彼の激情に応えるようにそれは力を漲らせる。

 

「オマエカァッ!?」

 

 仮面の奥の瞳を黒と金に染めた獣がハルバードだった棒を拾い、《剣帝》に襲い掛かる。

 

「オマエガコロシタノカッ!?」

 

「っ――」

 

 その一撃を受け止めたロランスは予想外の衝撃に飛ばされる。

 

「お前は……そうか……」

 

 彼の言葉と向けられた憎悪にロランスは驚きながらも自嘲する。

 少年の言葉から結社時代の負債が巡って来たのだと、ロランスは考える。

 

「トウサン、カアサンヲ……ムラヲヤイタ……」

 

「……ああ、その通りだ」

 

 少年の言葉にロランスは静かに頷く。

 ロランスは彼がどの時期での生き残りかは思い出せていない。

 だがそれでも己が背負うと決めた業を素直に認める。

 そして――

 

「オマエガ――カリンネーチャンヲコロシタノカッ!」

 

「っ――!?」

 

 それは予想外の言葉であり、ロランスの――レオンハルトの中に残っていた後悔と言う傷に何よりも突き刺さる言葉だった。

 

「お前は――」

 

 動揺は隙を生み、少年は彼の言葉を聞かずただ激情の赴くままに棒を振り下ろす。

 少年、アッシュ・カーバイドの一撃は《剣帝》を捉えた。

 

 

 

 

「ぷぎゃっ!?」

 

 仮面の兵団の一人の顔を踏みつけてイオは大きく空に跳躍する。

 

「いっけええええっ! 玄煌破砕陣っ!」

 

 空中で展開される魔法と戦技を織り交ぜた必殺技をイオは放つ。

 召喚された巨大な無数の岩が降り注ぎ、イオに群がる敵を蹂躙する。

 

「ひぎゃああああああっ!?」

 

「うおおおおおおおおおおっ!?」

 

 情けない悲鳴とレオニダスの困惑が混じった雄叫びが重なる。

 妹分と同じくらいの容姿から繰り出される絶技にレオニダスは驚愕しながらマシンガントレットを振る。

 迫り来る岩石を杭打ちの一撃で破壊するが、壊した岩の背後に次の岩が降って来る。

 

「ウオオオオオオオオオオッ!!」

 

 大きな岩は杭打ちで、小さな――と言っても自分の身の丈ほどもありそうな岩は左腕で殴って砕く。

 幸いなことに岩の強度はそこまで硬くない。

 両手を駆使し、更には同じ敵を狙う即席の仲間と共闘し、レオニダス達は岩の豪雨を何とかやり過ごす。

 

「おおっ! 結構生き残ったね」

 

 いつの間に立っていた細い石柱の上でイオは無邪気な笑みでレオニダス達を見下ろす。

 

「それじゃあ――おかわり行ってみよう!」

 

 そう言うイオの背後、終わったはずの岩の雨が再び召喚される。

 

「…………女神よ」

 

 その光景にあまり信心深くないレオニダスは思わず女神に祈るのだった。

 

 

 

 

 

「ばらけるなっ! 各個撃破されるぞ! 横隊を組んで迎撃しろっ!」

 

 誰かの号令が響き渡り、各地の領邦軍人たちはそれに応え、素早く陣形を組む。

 目の前の敵を斬り伏せたデュバリィは周囲を見渡して、その集団に気付く。

 彼我の距離はおよそ百アージュ。

 この距離ならばどれだけ速くても銃の方が有利、男は勝利を確信しながら号令を重ねる。

 

「撃――」

 

 整列して構えた導力ライフルの引き金に指が掛けられる。

 女剣士はそれに対して伏せるように体を前に倒す。兵隊たちは伏せる女剣士に照準を修正する。

 

「――てっ!」

 

 その号令に一斉に数十の導力ライフルの引き金が――引き切られるより速く、デュバリィは横隊の壁を盾を前にした突撃で突き破る。

 

「がはっ!」

 

 突撃の勢いのまま、横隊の背後にいた指揮官をすれ違い様に一閃。

 

「化物かっ!?」

 

 あまりの速さに驚愕しながらも彼らの反応は早く、振り返り地面を削る様に止まったデュバリィにもう一度銃口を集中させる。

 

「シュバルツァーッ!」

 

 向けられた数十の銃口に怯まず、デュバリィはその名を叫ぶ。

 

「四の型――《紅葉斬り》」

 

 振り返った彼らの背後、リィンは太刀を鞘から抜き放ち、一閃。

 その太刀は誰にも触れていないにも関わらず、彼らの仮面を断ち斬り、それを切っ掛けに彼らは糸を切られたかのように倒れ伏す。

 しかし、それも束の間。

 倒れた彼らは新たな仮面を纏い直して立ち上がる。

 

「――っ」

 

 その結果に目もくれず、その集団を突破したリィンは前へと駆ける。

 

「六の型《孤影斬・三連》」

 

 群がる仮面の戦士たちを突破してようやく辿り着いた射程圏内。

 リィンは分け身を使って極大の剣閃を三撃、体の半分を魔法陣から顕現させた“ソレ”に放つ。

 

「あ~れ~!」

 

 三つの斬撃がぶつかり合って作り出す竜巻に仮面の戦士たちは高く舞い上がって地面に叩きつけられる。

 

「――やりましたの!?」

 

 凄まじい風を伴う嵐に伏せていたデュバリィは顔を上げて、結果を確認する。

 あれ程の剣戟を受ければ例え大型魔獣でも一溜りもない。

 そう思っていたが、リィンの剣閃は“ソレ”の前に生じた青白い光の壁に防がれていた。

 

「何ですのあの光の壁は?」

 

「……どうやら魔術的な障壁みたいだな」

 

 デュバリィの疑問にリィンは推測を口にする。

 

「貴方のその“太刀”でも斬れませんの?」

 

「できると思いますが、それにはもっと近づかないと――」

 

 振り向き様にリィンは太刀を横薙ぎにして振り切ったはずのウォレスの突きを受け止める。

 

「リィン・シュバルツァーッ!」

 

「っ――」

 

 強烈な突きはそのまま薙ぎへと変化してリィンを弾き飛ばす。

 さらに追撃を仕掛けようと弾き飛ばしたリィンに追い縋り――その目の前にデュバリィが割って入って十字槍を盾で防ぐ。

 

「ふんっ!」

 

 ウォレスはデュバリィに狙いを変え、弾かれた槍をそのまま薙ぎ払ってデュバリィを両断する。

 両断されたデュバリィは霞となって消え、分け身と共に三人となってウォレスを取り囲む。

 

「プリズムキャリバーッ!」

 

「黒き竜巻よっ! 薙ぎ払えっ!」

 

 洸刃を近付けまいと、黒旋風が巻き起こって三方向から襲い掛かって来るデュバリィを等しく吹き飛ばす。

 

「ちっ――厄介ですわね」

 

 速度を人間離れした力でねじ伏せられデュバリィは顔をしかめる。

 盾で受け流した感触からも直撃すればただでは済まないだろう。

 

「ふん、アルゼイドもどきの小娘の分際でそれなりにやるようだな」

 

 品定めするウォレスの言葉にデュバリィは眦を上げる。

 しかし、激昂することなくリィンに冷静な声で話しかける。

 

「シュバルツァー。ここは任せて貴方は先に行きなさい」

 

「デュ、デュバリィさん?」

 

「ドライケルスの取り巻きでしかなかったノルドの槍“如き”があろうことか、マスターがわたくしに教えてくれた剣をよりによって“アルゼイドもどき”ですって……万死に値しますわ!」

 

 背を向けているデュバリィの表情はリィンには分からない。

 しかし、彼女がこの上なく燃えていることだけは察する。

 ウォレス准将はかなりの猛者であり、今は《鬼の力》の補助まで受けている。

 とても一人で相対して良い様な相手ではないのだが、ここで手を貸せばデュバリィはリィンにまでその刃を向けるだろう。

 

「――なら任せますが、先に行けと言われてもな……」

 

 入り乱れる戦場を見渡してリィンは唸る。

 この状況をある程度想定していた自分達のチームは顕現しようとする魔法陣を破壊するために動いているが、他の二人の状況は芳しくない。

 イオは派手な術法で岩を降らせているが、手加減したその技は決定打になっていない。

 ロランスは意外なことに一人の少年に手こずっている。

 そしてチームとは違うが、マクバーンとルトガーはそれぞれ向かって来る《罠使い》と《黄金の羅刹》の相手をしてくれているが積極的にこの儀式の解決に尽力する素振りはない。

 

「っ――」

 

 そうしている内に戦場に響いている笛の音に変化が生じる。

 変化した音色に観客たちの合唱も更なるうねりとなって耳障りな音楽を奏でる。

 それに伴って、召喚の儀式も佳境に入ったのか、光の障壁は一際強く輝く。

 

「――早くしてくれ、みんな……」

 

 その気になれば障壁もその中身も斬れるかもしれない。

 しかし、それをした場合、より深く霊的なリンクが繋がった観客たちへの影響がどれほどになるのか、試す気にはなれない。

 リィンにできることは群がる仮面の戦士たちを相手にしながら、地下に向かったクラスメイト達が笛の演奏を止めるのを待つことだけだった。

 

 




 とある仮面の戦士

「ふはははっ! 見ていて下さいカンパネルラ様、ボクの下剋上をっ!」

「はっ――」

「へぶしっ!」

「簡単に焼かれるんじゃねえぞ――ヒートウェイブ」

 ………………
 …………
 ……

「くっ……流石にいきなりNo.Ⅰは無謀だったか。ここはNo.Ⅱのレオンハルト様、覚悟っ! ――あわびっ!?」

「もうやめておけ、お前では俺にもシュバルツァーにも勝てない。お前には分かっているはずだ」

「舐めやがってっ!」

 ………………
 …………
 ……

「くっ――いきなり大きな手柄を望み過ぎたか……ここはあの小さい子供から確実に――ぷぎゃっ!?」

「いっけええええっ! 玄煌破砕陣っ!」

「ひぎゃああああああっ!?」

「うおおおおおおおおおおっ!?」

 ………………
 …………
 ……

「くそ……くそっ! 僕はエリートなんだぞ!
 むむ、あそこにいるのはリィン・シュバルツァー。ここであったが百年目!
 見よっ! これが僕の新しい姿っ! 真・超結社兵ギルバード・ステインだっ!」

「六の型《孤影斬・三連》」

「あ~れ~! これで出番は終わりかよ~っ!? アイル・ビー・バーック!!」






軌跡シリーズとは関係ない話ですが、今期のアニメなどを見て降ってきたネタがいくつか。
魔法科高校の劣等生から
「魔法科高校の劣等生ふもっふ」

ダンまちから
「剣姫の家出」

鬼滅の刃から
「ラストバトルIF」
無惨に「私を殺したら禰豆子も死ぬぞっ!」と叫ばせる話。

などが浮かびました。いつか書けたらと思いますが、これを書いている内は無理でしょう。




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