(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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明けましておめでとうございます、今年もどうかよろしくお願いします。




120話 謁見再び

 

 

 ――やめろ……

 

 心の中の俯瞰して自分を見ている己が警告を発している。

 

「どうして……」

 

 ――それは言ってはいけない……

 

 言ってしまえば、自分はこれまで特別実習で見て来た堕落した貴族達と同じになってしまう。

 理性では彼には何の責任もなければ落ち度もないことは分かっている。

 

「どうして兄上を助けてくれなかったんだ、リィン!?」

 

 口にしてしまった理不尽な訴え。

 彼の胸倉を掴み、それがどれだけ的外れなのか分かっているのに黒い衝動は止まってくれない。

 

「お前が兄上を止めてくれていれば、こんなことにはならなかった!」

 

 なんと醜い責任転換だろう。

 《金の騎神》の起動者になることを選び、《劫炎》の力を借りて戦う事を決めたのはルーファス自身でありリィンには何の落ち度もない。

 それどころか儀式を止めることを成せなかった自分達の無能を差し置いて彼を責めるなど、貴族としてあってはならないことだ。

 しかし、ユーシスの頭に過るのは直前の父の一方的な言葉。

 

『ルーファス、お前には失望した。次のアルバレアはユーシスに継がせる。貴様はもう好きにしろ』

 

 長く美しかった髪は焔に焼かれたこともあり、短く切り揃えられ、一命を取り留めたが左腕が動かなくなったと言うルーファスの身を案じる素振りもなく告げられた冷たい言葉。

 元はアルバレア家が所有していた《金の騎神》を取り戻したことを褒めることもなく、むしろスクラップにしたことを責め立てた。

 そして左腕が使えなくなったことを理由に、先の言葉を告げた。 

 確かにアルバレア公爵家として下の者に示しを見せるためにも完璧を求められる。

 ルーファスに何かがあった時のための自分だということもちゃんと理解できている。

 しかし、それでも家族の情を一欠けらも見せないヘルムートに普段は委縮するだけのユーシスは反論した。だが……

 

『ルーファス・アルバレアは私の本当の息子ではない』

 

 腹違いの兄が本当は従兄だった。

 ヘルムートの弟と彼の妻の不貞によって生まれた不義の子。

 その真実はユーシスの根幹を大きく揺るがした。

 それ以上は止める気力もなく、去って行く父。

 アルバレア家から実質勘当されたようなものなのに笑っている従兄。

 

 ――貴族とは何だ?

 

 ルーファスが不義の子だとすれば、ヘルムートが平民のメイドに産ませた自分はいったい何なのだろうか。

 その後ルーファスと交わした言葉は覚えておらず、皇帝陛下への謁見が控えているユーシスはルーファスが個人的に雇っている三人の子供達に彼のことを任せて逃げるように病室を去った。

 正直、彼らに自分以上の信頼を向けている従兄の顔を見ていられなかった。

 その表情にユーシスは、彼にとってアルバレア家――自分は厄介者――だったのではないか、そう思ってしまった。

 そんな様々な煩悶を抱えたまま、彼の顔を見て感情の箍が外れた。

 

「お前にならできたはずだっ! 兄上を止めることも守ることも! なのにどうして!?」

 

「ユーシスさん、落ち着いてください! リィンさんは最善を――」

 

「そんな言葉で済むかっ!」

 

 フォローしようとしたエマにユーシスは叫び返し、怯む彼女の顔を見て水を浴びせられたように急激に頭が冷える。

 

「…………リィン……す――」

 

「すまない」

 

 ユーシスが謝るよりも早く、リィンが謝罪する。

 

 ――最低だ……俺は……

 

「くっ――」

 

「お、おいユーシス!?」

 

 何の非もないはずのリィンに謝罪させてしまった罪悪感に耐えかねてユーシスはその場から逃げ出した。

 本来ならⅦ組として皇帝陛下への謁見がこの後にあったのだが、とてもではないがそんな余裕はない。

 

 ――どうせ俺はリィンのオマケで、俺もアルバレア家の不貞の子なのだから……

 

 誰も自分の事など見ていない。

 謁見の主役もリィンとクリスなのだから、自分などいてもいなくても変わらない。だから――

 

「おや? 君は確かアルバレア家の次男だったかな?」

 

 適当に走った末に、これから皇帝陛下に同伴するはずの《鉄血宰相》に出くわした。

 

「なっ――」

 

 貴族にとって不俱戴天の敵にユーシスは思わず身構え――

 

「あーやっと止まった! もうユーシスってばどうしたのさ――って……オジサン久しぶり! オルディスのお土産買って来たよ」

 

 追い駆けてきたミリアムが文句を言った後に、彼を見て歓声を上げる。

 

「はいっ!」

 

 アガートラムが一度消え、もう一度現れた時には大きなイルカのぬいぐるみを持って現れ、ミリアムはそのままそのぬいぐるみをギリアスに渡す。

 

「ふむ……」

 

「――――っ」

 

 されるがままにぬいぐるみを受け取ったギリアスのその似合わない姿にユーシスは思わず吹き出しそうになるのをぐっと堪える。

 

「どうやら気は紛れたようだな」

 

「え……?」

 

 そんなユーシスの様子にギリアスは外交用の笑みを持って気遣う。

 

「そろそろ謁見の時間だが……ふむ……」

 

 ギリアスはユーシスとミリアムを見比べて提案する。

 

「君には申し訳ないが、ミリアムの面倒を少し見ていてもらえるかな? 今見ていた通りの子供でね。正直、陛下に無礼を働くのではないかと心配していたのだ」

 

「ぶーぶー、ボクだってちゃんとできるよ」

 

 ミリアムの文句をギリアスは聞き流して頭を撫でる。

 

「陛下からは私から言っておこう。何悪いようにしない、安心したまえ」

 

 そう告げてギリアスはユーシス達がやってきた通路をぬいぐるみを抱えたまま歩き出した。

 

「…………あれが鉄血宰相……」

 

 彼の宰相としての厳しさは知っていたが、政敵の子供に対して気遣える大人としての器の広さを見せつけられた。

 そしてミリアムに垣間見せた“父性”。

 リィンの実父だったと納得してしまうカリスマ性は下手な貴族よりも貴族らしく、その後姿はアルバレア家に引き取られた時の父に対しての期待を思い出させた。

 

「あ……あのっ!」

 

「ユーシス?」

 

 気付けば去って行くはずのギリアスにユーシスは声を掛けていた。

 

「ふむ……何かね?」

 

 ぬいぐるみを抱えたまま振り返るその姿にはやはり吹き出しそうになるが、ユーシスは呼び止めたものの言葉は続かなかった。

 そんなユーシスの様子にギリアスはふと懐かしむように目を細めた。

 

「やはり兄弟か……」

 

「え……?」

 

「かつて君の兄であるルーファス・アルバレアもそうやって私を呼び止めたことがあるのだよ。それこそ君くらいの歳の頃にね」

 

「兄上が……?」

 

 昔の事とはいえ、アルバレア家の一翼を担うルーファスがギリアスと接点を持っていたことにユーシスは少なからず驚く。

 

「謁見の後にミリアムから個別で報告を聞くことにしている。話があるならそこで語らうとしようじゃないかユーシス・アルバレア君」

 

「あ……」

 

 言葉にしなくても意志を汲み取ってくれたギリアスにユーシスは思わず安堵し、今度こそ彼の背中を見送るのだった。

 

 そして余談だが、当然ギリアスは謁見の間にイルカのぬいぐるみを抱えたまま参上することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 謁見はユーシスとミリアムの二人が不在だったが滞りなく進む。

 ルーレではザクセン鉄鉱山を占領した《帝国解放戦線》から取り戻したこと。

 オルディスでは《帝国解放戦線》の幹部の捕獲と、彼女たちが引き起こした“異変”の鎮圧。

 それだけに留まらず報償が決まっていなかった帝都での活躍。

 ガレリア要塞での尽力、ノーザンブリアでの活躍なども合わせ、ひとまず労を労うという理由でユーゲントは提案した。

 

「ささやかではあるが、我が皇帝家ゆかりの湯治場への小旅行を用意した……

 ここ最近の心胆を寒からしめる事件の疲れを癒すがよかろう」

 

「父上、それはもしかして……」

 

「うむ、無論《ユミル》のことだ」

 

 鷹揚に頷くユーゲントにクリスはあの郷にもう一度赴くことになるのかと苦笑する。

 年の初めから約十ヶ月。

 様々な出来事を体験して、あの時の特訓がもう遠い過去のようにさえ思える。

 

「さて――」

 

 郷愁に耽るクリスを他所にオリヴァルトが声を上げる。

 

「この場を借りる形ではあるが、まずログナー侯。御息女のアンゼリカ殿が我が弟の我儘に付き合ってくれたことに感謝の意を伝えたい」

 

「――いえ、四大名門として当然のことです」

 

 オリヴァルトの感謝にゲルハルト・ログナーは恭しく頭を垂れる。

 本音を言えばノルティア州領邦軍を無視して独断で鉄鉱山に侵入した娘を怒鳴りつけたかった。

 しかし、そこに次期皇帝であるクリスこと、セドリックがいるとなれば話は変わって来る。

 鉄鉱山は皇帝家の直轄地であり、ラインフォルト社とノルティア州で共同管理している。

 そこでテロリストへの対応があまりにも消極的であったため、殿下自らが頼りない領邦軍を差し置いて鉄鉱山を解放したとなればログナー家にとっては外聞が悪い話になる。

 しかしアンゼリカが同行したことで、ログナー家としては面目が立つことになる。

 

「ふふ……」

 

 計算通りとほくそ笑んでいる娘にゲルハルトはただぐぬぬと唸ることしかできなかった。

 セドリックさえいなければこれ幸いと、自由奔放に好き勝手やっている学院生活を終わらせることもできたのにと臍を嚙む。

 そんな親子の無言のやり取りにオリヴァルトは苦笑して続ける。

 

「話を戻すが我が弟の我儘に協力してくれたアンゼリカ殿のその学友、Ⅶ組の担任の分も手配した……

 ログナー侯、バレスタイン教官、よろしいかな?」

 

「ええ、私に異論はございません」

 

「ご配慮、光栄に存じます」

 

 オリヴァルトの配慮にゲルハルトもサラも恭しく承る。

 

「陛下、一つ宜しいですかね?」

 

 そこに――今まで黙っていたクロワールが発言した。

 

「その小旅行ですが、我が姪のミルディーヌを同行させても宜しいでしょうか?」

 

「カイエン公?」

 

 突然の提案にオリヴァルト達は首を傾げる。

 

「いや、この度はⅦ組の諸君に我が領地は救われた。私からも是非その礼をしたいと思っていましてね……

 ささやかではありますが、オルディスの名産品で彼らを持て成させて欲しいと思っております」

 

「ふむ……カイエン公の言い分は分かるが……」

 

「なに食べ盛りの子供達です食べ物はいくらあっても足りないくらいでしょう……

 それに私も個人的にリィン・シュバルツァー君のことは気に入りましてね、彼にはミルディーヌとの婚約を勧めたのだが素気無く断られてしまいましたよ」

 

 ざわりと、謁見の間に奇妙な緊張が走る。

 視線が集中したリィンは針の筵のように感じて閉口する。

 

「…………カイエン公。シュバルツァー家への縁談の申し込みに関しては皇帝家から控えるように通達しているはずだが?」

 

「ええ、存じております。ですがその通達には一つ穴があるのに御気付きでしょうか?」

 

「ほう……それは?」

 

 興味深い意見にオリヴァルトは答えを促す。

 

「リィン・シュバルツァーの方から婚約を申し込めば、問題はないと言う事ですよ殿下」

 

「それはつまりミルディーヌ君はリィン君を口説き落とせると思っているのかな?」

 

「さて、それは当人同士の問題かと、ただ姪はリィン君との婚約の話は満更でもない様子でした……

 ならば交流の場を整えてやることこそ、叔父の務めかと思いましたね」

 

「なるほど……」

 

 クロワールの言い分にオリヴァルトは一理あると認め、振り返る。

 

「父上、私からも一つ提案を宜しいですか?」

 

「うむ、申してみよ」

 

 鷹揚にユーゲントは頷くが、リィンは嫌な予感を感じた。

 

「ユミルと言えば今年の初めにセドリックが受験合宿に行っていたということでアルフィンが羨ましがっていました……

 Ⅶ組にはセドリックもいるのだから、姉弟水入らずで旅行というのも良いのではないかな?」

 

「あら、それは良いですわね」

 

「あ、兄上!?」

 

 オリヴァルトの提案にユーゲントの傍らに控えていたアルフィンは嬉しそうに顔を綻ばせ、クリスは逆に狼狽する。

 

「ふーん……」

 

「あはは、モテモテだねリィンってば」

 

 リィンはすぐ背後から突き刺さって来る視線を無視する。

 

「アルフィン殿下が同行するのならば麓までは《アイゼングラーフ号》を使うと良いでしょう。それに郷での護衛を兼ねてクレア大尉も同行させましょう」

 

 さらに便乗するようにオズボーンが新たな提案を重ねた。

 

「おやおや、御自身が邪魔だと捨てた子が大物になった途端、引き込もうとはそれは人としていかがなものでしょうかね?」

 

 ここぞとばかりにカイエン公は嫌味を言う。

 

「クレア大尉を同行させることに邪推があるようですが、それとは別にオリヴァルト殿下もカイエン公も肝心なことを知らないようですね」

 

「ほう……?」

 

「それはいったい……?」

 

「リィン・シュバルツァーは年上が好みだということです」

 

 真顔でギリアス・オズボーンは言い切った。

 

「年上が好みなの?」

 

 背後から尋ねて来たフィーの小さな声は謁見の間に異様に大きく響き渡った。

 

「ノーコメント」

 

 囁く声でリィンは無回答に徹する。

 

「ふ……情報がいささか古いようだねオズボーン宰相」

 

 奇妙な沈黙を破り、オリヴァルトが言い返す。

 

「今リィン君が気になって意識しているのは、ちょっと年下の小悪魔な女の子なのだよ!」

 

 オリヴァルトは力強く言い切った。

 

「ふむ……年下が好みなのか?」

 

「ノーコメント」

 

 今度はラウラの質問にリィンは無回答に徹する。

 

「むむむ……」

 

「ほほう……」

 

「ふっ……」

 

 睨み合う三人にリィンは心を鋼にして耐える。

 もしもここが謁見の間ではなく、そして皇帝陛下の御前でなければ、相手がどんな身分だったとしてもしばき倒していただろう。

 そんな彼らを見兼ねてユーゲントはため息を吐く。

 

「三人共、そこまでにしたまえ」

 

 皇帝の言葉に三人はすぐに佇まいを直す。

 

「此度は小旅行はあくまでⅦ組の労を労うもの。そなた達の見合いに利用するものではない。自重したまえ」

 

 ――流石、皇帝陛下……

 

 暴走する三人を諫めるユーゲントにリィンの尊敬の念はより一層強まった。

 

「二人の参加については無理強いせずにⅦ組全員の了承を得たのなら許可しよう。それはそうとセドリックよ」

 

「はい」

 

 三人の話を打ち切り、ユーゲントはクリスに話しかける。

 

「近い内にそなたとアルフィンの誕生パーティーを行おうと思っている」

 

「パーティーですか? ですが僕は今……」

 

「対外的にはセドリック皇子は病気で療養していることになっているが、それでも一年で一度も公の場に顔を出さないのは市民を不安にさせるだろう……

 テロリスト達が壊滅した今がまたとない機会だろう。もちろん学業に障らぬように配慮しよう」

 

「そういうことでしたら、分かりました」

 

 ユーゲントの提案にクリスはセドリックとして了承する。

 

「それからⅦ組諸君、その席には君達も招待させてもらおう」

 

 そう言ってユーゲントは締めくくった。

 

 

 

 

 

 10月1日金曜日。

 特別実習の後処理も終わり、リィン達は早朝から帝都ヘイムダルの駅にいた。

 

「ついにこの日が来てしまったか……」

 

 特別実習が終わって週末。

 様々な事後処理に追われたリィンはこの日が来たことを複雑な気持ちで受け止める。

 オルディスからヴァリマールの他に《緋》と《金》、そして《紫》の残骸を旧校舎に持ち込んだ時の彼らの荒ぶり。

 試作の加速・増幅器を壊したことにお咎めはなかったのは幸いだったがレンに正座させられて説教されたのはなかなかに堪えた。

 

「あはは、今週はいろいろ凄かったですからね」

 

 疲れた様子のリィンにクリスは苦笑いを浮かべる。

 劇的な変化は昨日。

 病院から意外と早く退院したルーファスのこと。

 事情は詳しく教えてもらえなかったが、《金の騎神》をスクラップにしたことでヘルムートの怒りを買い、次期アルバレア家の当主はユーシスに確定したということ。

 もっとも、家名まで取り上げられたわけではなく変わらずトールズ士官学院の理事を務めているのだが。

 

「まさかルーファスさんが教官になるとは……」

 

 一部の仕事がなくなって暇ができたルーファスはあろうことか士官学院で教壇に立つことを選んだ。

 事件の後遺症として動かなくなった左腕を補うための助手として、ナーディアとスウィンの雇用を継続し、来週からは主に社会学を担当することになる。

 他にも学院祭で展示するように要請されていた騎神が大破したこと、誕生パーティーに向けてシュバルツァー家としてのプレゼント兼献上品の選定など、細かいことを上げれば切りはない。

 

「とにかく今週は疲れた……早く《ユミル》の温泉に入りたい」

 

 リィンは現実逃避するようにぼやく。

 その気になれば《箱庭》の温泉もあるのだが、やはり故郷の本物の温泉には《箱庭》にはない何かがあるとリィンは思うのである。

 

「本当にお疲れ様です。ところでアルフィン達はまだですかね?」

 

 これ以上はあれなので、クリスは話題を変える。

 

「ああ、それなら今駅前に来ているぞ」

 

「むむ……」

 

 当たり前のように言うリィンにクリスは対抗するように気配察知を試みる。

 

「…………あれ?」

 

 ふと気配の人数が多いことにリィンは首を傾げる。

 別段、護衛として周辺の警戒をする人員と考えればおかしくはないのだが違和感がある。

 しかし、その違和感の正体はすぐに現れる。

 

「皆さん、本日は兄の提案を受けていただきありがとうございます」

 

 やって来た聖アストライア女学院の制服を纏ったアルフィンは代表するように礼を述べる。

 追加で小旅行に参加するのはアルフィンとミルディーヌ、そして彼女たちの案内役としてエリゼ。さらに護衛官としてクレア。

 その四人の他にもう一人、聖アストライア女学院の制服を纏った見慣れない少女がいた。

 

「ご紹介させていただきます」

 

 Ⅶ組の一同が少女の存在に首を傾げているとミルディーヌが紹介する。

 

「こちら、わたくしの親戚のお姉様になります。先日の“異変”でリィン様に助けていただいて是非、御礼がしたいとお願いされてしまって」

 

「ダ、ダーナ・イーグレットと申します――で、ですわ」

 

 明らかに言い慣れないと分かる口調と仕草で蒼い少女は一礼した。

 

 

 

 





誕生会に向けて

マキアス
「まさか僕達が皇族の誕生会に招待されるとは……トールズに入学した時には思ってもみなかったな」

エリオット
「お願いだから、招待客の人達に誰彼かまわず噛みつかないでよマキアス」

ガイウス
「確かにトールズに入学したばかりのマキアスだったなら大変なことになっていただろうな」

マキアス
「君たちは……まあ言われても仕方がないが」

エマ
「今回のパーティーはそこまで大規模なものではないようですけど、来年のお披露目の前に高位貴族の子女たちへの顔通しが目的のようですね」

シャーリィ
「っていうか、シャーリィたちも本当に参加して良いの? ドレスコードとかあるんでしょそう言うの?」

アリサ
「安心して良いわよ。帝都には貸衣装屋っていうのがあるからそこでドレスは見繕いましょう」

トワ
「あとはプレゼント? でも貴族様と並んでプレゼントなんて……」

アンゼリカ
「ふ……なんならトワがリボンを巻きつけてプレゼントはわ・た・しと言ってくれれば私は――よしクリス君、ちょっと表に出ようか?」

クリス
「ええ!?」

ジョルジュ
「アン、それは流石に理不尽」

ラウラ
「そこら辺は気にしなくても良いだろう……
 もっとも私たち貴族は他の参加者の手前、用意しておかなければならないが」

リィン
「献上品か……剣でも良いのか?」

アンゼリカ
「ああ、こういう献上品についての暗黙の了解がいくつかあってね……
 剣を贈るのはアルゼイド家とヴァンダール家の二家のみというのが慣わしになっているのだよ」

リィン
「剣はダメですか……」

ラウラ
「むしろ毎月武具を増やしていくクリスを見ると今更のような気が……いや、リィンに魔剣を贈られたらアルゼイドの立つ瀬が……むう」

アンゼリカ
「ただそれ以外でもリィン君は気を付けた方が良いかもしれないね……
 中にはわざと品物を被らせて精神的優位に立とうとする貴族もいるからね、武勇で勝てないならとそういう方法でシュバルツァー家を貶めようとする輩もいるだろう」

リィン
「御忠告ありがとうございます。今回の旅行で父と相談させてもらいます……
 そうだな……剣がダメなら、ゼムリアストーンの塊をそのままか……いやそれを誕生日プレゼントにするのはどうだろうな……
 アルフィン殿下にはブルブランが完成したから取りに行けと言っていた“あれ”で……
 セドリック殿下には《テスタ=ロッサ》を返上する形で贈れば誰とも被らないだろう……よしっ! これだ」

ラウラ、アンゼリカ
「「待てっ!」」

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