(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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121話 温泉郷Ⅰ

 

 

 ふとリィンは空を見上げる。

 アイゼンガルド連峰に続くユミル渓谷道の中腹。

 川辺に座り込み、釣糸を垂らしてリィンはその場所を懐かしむ。

 

 ――修行に焦る俺に老師が無理矢理釣りを教えて来たんだったよな……

 

 あの頃は釣れた試しがなかった。

 しかし、今はこのゆっくりと時間が過ぎて行くひと時を悪くないと感じる。

 空を見上げれば澄み切った蒼い空。

 頬を撫でる風は懐かしい匂いを含んでリィンは郷愁を強くさせる。

 

「…………平和だ……」

 

 《帝国解放戦線》が帝都で宣戦布告してから怒涛になった数ヶ月を振り返ってリィンは小さく呟いた。

 

「そうだな……」

 

 同じくリィンの横に座って釣り糸を垂らすテオがその呟きに同意する。

 屋敷をとある事情で追い出された二人は哀愁を漂わせながらも、穏やかな親子の一時を堪能する。

 

「時にリィンよ。あの子のお墓にはもう行ったのか?」

 

「いや、《凰翼館》に荷物を置いて、父さん達に会いに行ったからまだ行ってないよ。母さんたちがノイやナユタを預かっていてくれたから夕方にでも行くつもりだけど」

 

「そうか……」

 

 特に無理をしている素振りを感じない息子にテオは安堵する。

 

「それにしてもどうして母さんたちは……」

 

「耐えろリィン。これは男親の宿命みたいなものだ」

 

 まるで経験があるかのような父の物言いにリィンは閉口する。

 

「そう言えば先日、ユン老師が訪れたぞ」

 

「ユン老師が?」

 

「ああ、二ヶ月ほど前にな……

 リィンに会いにトリスタへ行くと仰っていたが、その様子だとまだ会っていないようだな」

 

「ええ……」

 

 二ヶ月前と言えば、リベールに訪問した頃くらいだろうか。

 あの時、アネラスやカシウスに彼の所在を聞いても知らないという答えが返って来ただけに遅れてやって来た肩透かし感にリィンは微妙な気持ちになる。

 

「だけど二ヶ月前か……」

 

 特別実習もあってトリスタを留守にしていることも多いが、不在による言付けを受けた記憶はない。

 

「ユン老師の事だから、気ままに帝国を放浪しているのだろう」

 

「そう……ですね。ユン老師らしいです」

 

 真っ直ぐトリスタにやって来ない様は容易に想像できてリィンは苦笑する。

 と、その背後で――

 

「いやっほーー!」

 

 リィン達の背後をシャーリィが声を上げて駆け抜けた。

 

「次のコーナーで追い抜くっ!」

 

「まだまだっ!」

 

 それに遅れてフィーとクリスが走り抜け――

 

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」

 

「ひーー、ひーー、ひーー」

 

「ちっ――」

 

 さらに遅れてラウラとエリオットを始めとしたⅦ組のメンバーが団子状態でリィンやテオに目もくれずに山道を駆け上がって行く。

 

「ふふ、元気なクラスメイト達だな」

 

「…………平和だな……」

 

 テオの苦笑にリィンは改めて空を見上げて、その言葉を呟くのだった。

 

 

 

 

「これがオルディスの地下からリィンが回収して来たクォーツよ」

 

 温泉宿《凰翼館》のダイニングバーの片隅でサラはテーブルの上に小箱を置く。

 

「大変だったらしいわよ。領邦軍が占拠していて、まあこれがあったのは偶然だったみたいだけど」

 

「そうか。ノーザンブリアといい、彼には借りを作ってばかりだな」

 

 小箱を手に取り、中を検めるのは黒い髪の女性、アプリリス。

 ノーザンブリアからユミルの警護として派遣された一人として、滞在していたアプリリスはその中身を確認して頷いた。

 

「間違いない。あの日、研究室からなくなっていたクォーツだ」

 

「勝手で悪いけど、中の結晶回路はこちらで壊させてもらったわ……

 七耀石から魔獣を錬成するなんて機能は流石に危険すぎるっていうのがあたしやラッセル博士たちの意見よ」

 

「ああ、それは構わない……

 ノーザンブリアを守るための“力”だったとはいえ、テロリストに利用されてしまったのはこちらの落ち度とも言えるからな」

 

 拳大のクォーツに刻まれている術式は“魔獣の錬成式”。

 これを利用してかつてはノーザンブリアに佩いて捨てるほどに存在していた“塩”を材料に古代のガーゴイルを錬成して無限の兵団を作り出した。

 

「それにしても意外ね。ユミルの警備に元北の猟兵が来ているのは聞いていたけど、あなたまで来ていたとは思ってなかったのよ」

 

「ノーザンブリアの復興で私ができることは少なかったからな……

 計画の首謀者の中核を担っていたこともあるからほとぼりが冷めるまで外国に追い出されたんだ……

 それにゾラ先生を殺した下手人について調べるという点で私が一番動きやすかったに過ぎない」

 

「下手人……もしかしてと思っていたけど、どうやらノーザンブリアで暗躍していたのは《帝国解放戦線》で間違いなさそうね」

 

 アプリリスの手の中の小箱を一瞥し、サラはそう結論をまとめる。

 七耀教会由来の法剣と猟兵が使う連射の利く導力ライフル。それにゾラの身体に残っていた刺し傷。

 どれも《帝国解放戦線》に符号する武器だっただけに、その可能性もサラは考えていたが今回のオルディスで回収されたクォーツが何よりの証拠だ。

 

「《帝国解放戦線》か……随分と傲慢なテロリストだな……

 いやテロリストなどどんな主張を掲げていたとしても傲慢なものか」

 

「元はオズボーン宰相の被害者の会みたいな印象だったけど、あれは完全に箍が外れているわね」

 

 サラとしては《帝国解放戦線》の気持ちに共感できる部分はある。

 帝国内での遊撃士活動の排斥。

 それはミラ目的で遊撃士をしていたサラにとっては死活問題の政策であり、学院に拾ってもらわなかったら逆恨みを拗らせて彼らの仲間入りをしていた可能性を考えてぞっとする。

 

「ま、ひとまずはこのほとぼりが冷めるまでは奴等も息を潜めるでしょうね」

 

「《帝国解放戦線》は先日壊滅したと報道されたが?」

 

「あれは領邦軍が勝手に発表したのよ……

 そもそも組織の規模やリーダーの正体すら不明なのに、壊滅もあったもんじゃないわよ」

 

「仮面のテロリスト、替え玉なんて簡単に作ることができるからな」

 

「それもあるけど、その場にはあたしの生徒たちもいたし、シャーリィが領邦軍の目を盗んで墜落現場を見て来たから間違いなく奴等は生きているんだけど――」

 

「どうかしたのか?」

 

「何か隠しているのよね」

 

 クレアが主導で行ったⅦ組に対しての事情聴取、そして学院での各班のレポート報告。

 それらの中でサラはクリス達が、アンゼリカも含めて示し合わせて何かを隠しているように感じた。

 

「はあ……パパやあの時の教官たちの偉大さが今になって分かるわぁ」

 

 隠し事をする生徒たちにユーシスとリィンの間で生まれた不和を思い出し、サラは愚痴りながらテーブルに突っ伏す。

 今のⅦ組だけではなく、その前身となったトワ達に関してもクロウが死んだフォローができていないことにサラは項垂れる。

 

「何を言う。道を踏み外した私たちと比べればお前は十分に立派だ」

 

 空になったグラスにアプリリスは酒を注いで言葉を重ねる。

 

「そう……お前は私の自慢の妹だ」

 

「ちょ――やめてよ、そういうの」

 

 いきなり褒め殺しに来たアプリリスにサラはむずがゆそうに身を捩る。

 そんな反応にアプリリスは苦笑する。

 

「ところでリィン君は何処に?

 このクォーツとは別に、ノーザンブリアの復興支援の件で改めて礼を言いたいと思っていたんだが」

 

 てっきりクォーツを回収したリィンも来ると思っていたため、アプリリスは恩人の所在を尋ねる。

 

「リィンならシュバルツァー家を訪ねた時にお父さんと一緒に追い出されて、釣りに行ったわよ」

 

「追い出された……それは穏やかではないな。いったい何があったんだ?」

 

 テオとルシアの人柄はアプリリスも知っているため、首を傾げる。

 

「大したことじゃないわよ。ルシアさんがノイとリン、それからナユタの服を作っていたみたいで、それのお披露目のためにリィンは時間を潰して来いって言われただけよ」

 

 外部参加の女学院のお嬢様たちはそれに乗り気になり、文字通り彼女たちは着せ替え人形と化しているのだろう。

 

「それに……リィンも一人になりたい時間はあるでしょうしね」

 

 この地には“あの子”の遺灰を納めた墓がある。

 リベールの慰霊碑と同様に一人になりたいと思うだろうルシアの配慮でもあるだろうとサラは察していた。

 本人は釣りをして来ると単独行動を早速取っていたが、それも含めて考えると夕方頃まで戻ってこないだろう。

 

「……どうやら複雑な事情があるようだな」

 

「まあ、そういうことよ……まあリィンはそれで良いんだけど……」

 

「何か懸念があるのか?」

 

「Ⅶ組の他の子たちがね……折角の慰安旅行だって言うのに山岳訓練を始めちゃったのよね……」

 

 切っ掛けは道中のクリスの話。

 今年の初めに彼が行ったトールズ入学のための強化合宿について話題に上り、Ⅶ組の武闘派たちが興味を示したことだった。

 

「まさか全員でやるとはね……」

 

 ラウラやフィーは分かる。

 エリオットも近頃の様子から納得するが、他の者達、更にはトワ達先輩陣も参加するのは意外だった。

 

「これもリィン効果なのかしらね」

 

 いつからトールズ士官学院は熱血系になったのだろうかとサラは嘆く。

 

「あんまり無茶して体を壊さないと良いんだけど……」

 

「ふふ……やはりお前は教官に向いているよ」

 

 何だかんだ言いながら、教え子たちを心配するサラにアプリリスは微笑んだ。

 

 

 

 

 《凰翼館》の食堂にアイゼンガルド連峰まで走って戻って来たⅦ組一同は用意された食事に驚く。

 

「これは凄いな」

 

「どれも自然豊かな場所ならではの料理だね……それに海の幸まである」

 

「はい、カイエン公から今回のⅦ組B班の活躍を労うために、たくさん用意させていただきました」

 

 感嘆をもらすガイウスとフィーの呟きにミルディーヌはにこやかな笑顔で応える。

 

「野鴨に川魚の料理……たしか男爵閣下が仕留めたものでしたね?」

 

「ええ、折角来てもらったのだからユミルのものを仕留めて持て成さなければと思ってね」

 

「父さんの一番の趣味でさ。俺も何度も連れていかれたな」

 

 ラウラの疑問にテオが答えリィンが補足して、昔を懐かしむ。

 

「料理に使われている野菜やハーブも瑞々しくて彩り豊かですね。こちらはリィンさんのお母さんが育てられたとか」

 

「ええ、皆さんの御口に合えば良いんですが」

 

「母様は小さいですが菜園をやっていて、郷にいた頃は私も良く手伝っていました」

 

 エマの疑問にルシアが答え、エリゼもまたリィンと同じように口を挟む。

 

「ええと、それじゃあ……」

 

 《凰翼館》でも一番広い宴会場でクリスはアルフィンに目配せをして音頭を取る。

 

「シュバルツァー卿、この度は父の申し出を引き受けていただきありがとうございます」

 

「恐縮です殿下」

 

 まずはこの場を用意してくれたテオに感謝の意を伝える。

 

「Ⅶ組の皆さん、帝都での異変から始まり各地での《帝国解放戦線》の策略の阻止。皇族を代表して改めて御礼を申し上げます」

 

 アルフィンが続いて労いの言葉をかける。

 

「僕達がⅦ組の仲間となって約半年……

 まだまだ学院生活は続くし、《帝国解放戦線》の脅威はまだ完全に払拭されたわけじゃない……

 だけど今は骨休めとしてこの小旅行を楽しんでください」

 

「ふふ、来月にはトールズ士官学院の学院祭があるそうですね……

 わたくしも都合がついたら行きたいのですが」

 

 アルフィンはクレアを伺い見るが、彼女は苦笑を浮かべて答える。

 

「今回の学院祭はオズボーン閣下とオリヴァルト皇子も参加する予定ですので、恐らく問題はないかと思います」

 

「まあ、それは良かったですわ」

 

 クレアの答えに喜ぶアルフィンにクリスは微笑みを浮かべて続ける。

 

「そういうわけだから僕たちは目前に迫った学院祭を成功させることに集中しよう」

 

「出し物の内容は決まったから後は練習あるのみ、なんだが……」

 

「どうしたのリィン?」

 

「エリオット達に関しては学院に戻ったら“ティルフィング”の操縦訓練も始まるからそのつもりでいてくれ」

 

「う……うん」

 

 過密になるだろうスケジュールを想像しエリオットは顔を蒼くしながら頷く。

 

「…………そうだね……」

 

 クリス達の言葉にトワは何かを振り払うように頷く。

 

「みんなのためにも学院祭は楽しいものにしないとね」

 

「トワ会長?」

 

 笑顔を取り繕うトワにリィンは首を傾げ、すぐに事情を察する。

 

「ともかく僕達は今できることを一歩一歩進めて行こう。だから今は――」

 

 徐にクリスはグラスを掲げる。

 それが何を意味するのか、察した一同は同じようにグラスを持つ。

 

「まだまだ先は長いけど、これからもよろしくって言う所で――乾杯っ!」

 

 クリスのその言葉を合図に夕食会が始まった。

 

 

 

 

 夕食が終わり、シュバルツァー家に帰って行くテオ達を見送り一同は男女に分かれて温泉を堪能する。

 風呂上りにはビリアードや枕投げに興じつつ、普段ではしないような話やミルディーヌが語るオルディスでの戦いに一同は耳を傾けていた。

 そして皆が寝静まった頃、リィンは部屋を抜け出していた。

 

「みんなと入る温泉も良かったけど、やっぱり――」

 

 久しぶりの故郷の温泉。

 《箱庭》で再現したものとは何かが違う本物を貸し切りで堪能するためにリィンは動く。

 

「あれ……?」

 

 しかし、その足を途中で止めリィンはロビーでグラスを傾けるアンゼリカを見つけた。

 

「アンゼリカ先輩?」

 

「やあ、君か。こんな時間まで夜更かしかい?」

 

「実は露天風呂にもう一度入ろうかと、そういうアンゼリカ先輩こそ、ロビーで何を?」

 

「なに、ひとっ風呂浴びたら夜景が見たくなってね。せっかくだから君も一緒にどうだい? 飲み物くらいは奢らせてもらうよ」

 

「……それじゃあ御馳走になります」

 

 アンゼリカのいつもと違う雰囲気を感じ取り、リィンはその提案を受け入れる。

 メニューを見ることなく注文をし、飲み物が来たところでリィンは口を開く。

 

「悩んでいるのはクロウ先輩のことですか?」

 

「流石リィン君、お見通しか」

 

 リィンの指摘に苦笑を浮かべ、アンゼリカはグラスを傾ける。

 

「トワから聞いただけではまだ半信半疑だったが、まさか本当に《C》がクロウだったとはね」

 

「サラ教官やクレア大尉には報告していないんですよね?」

 

「ああ、私の我儘でクリス君達に黙ってもらうことにした……

 父上への執り成しといい、クリス君には足を向けられないね」

 

 鉄鉱山解放に介入したことは父、ゲルハルト・ログナーの怒りを買うことだとアンゼリカも理解していた。

 あの父のことだから士官学院を退学にさせられることも覚悟していたのだが、主導がクリスだったことにしたため首の皮一枚という所で許された。

 まだ学院に通えることは喜ばしいものの、鉄鉱山で確かめることになった悪友の正体に動揺している自分にアンゼリカは驚いていた。

 

「やれやれ、この一年半。私も随分とあいつに心を許していたようだ」

 

「アンゼリカ先輩……」

 

「私の導力バイクなのだがね……あれは一年の時にトワ達と一緒に作ったものなのだが……」

 

 自分にとってはそれも含めて楽しい学院生活だった。

 しかし、彼はそれを捨てテロリストとなった。

 

「私は楽しかった……だがクロウにとっては違ったのかもしれないと思うとね」

 

「それはどんな“力”を持っていたとしてもクロウ先輩にしか分からないことです」

 

「そう……だな……」

 

 リィンの言葉を受け止めてアンゼリカは頷く。

 

「状況的にはエステルさんを振り切って飛び出して行ったヨシュアさんと同じですけど」

 

「おいおいリィン君おぞましいことを言わないでくれたまえ」

 

 リィンの軽口にアンゼリカは身を震わせて反論する。

 

「はは、少しは調子が戻ったみたいですね? クロウ先輩を殴りたいというならその手助けはするつもりですから遠慮なく頼ってください」

 

「やれやれ……君は本当に強くなったね……

 二年前のリベールでクレア大尉の胸に飛び込んだ頃が懐かしいよ」

 

「ちょ――」

 

 突然の昔話を引き合いに出してきてリィンは動揺する。

 そんな子供らしい反応にアンゼリカは笑って席を立つ。

 

「君には大きな貸しを作ることになるが頼りにさせてもらおう……差し当っては一つ忠告だ」

 

「――何ですか?」

 

 リィンは警戒心を高めて聞き返す。

 

「今から露天風呂に行くのはやめておきたまえ。私と入れ違いでアリサ君とラウラ君の二人が入って行ったからね……

 いや、リィン君にその気があるというのなら止めはしないがね」

 

「御忠告ありがとうございます」

 

 リィンはアンゼリカの忠告を素直に受け入れるのだった。

 

 

 

 

「ああ……今戦ったら負ける……」

 

 無人の露天風呂を確認して入ったリィンはじんわりと広がる熱に唸る。

 《箱庭》で再現したものとは何かが違う充足感が満たされるのを感じ、リィンは改めて故郷の湯を堪能する。

 帝都での特別実習、《帝国解放戦線》の宣戦布告から激化した“騎神”を用いることになった戦闘の数々に思いを馳せる。

 

「このまま本当に俺は相克まで生き残れるのだろうか?」

 

 まるで“黒の史書”の修正力が襲い掛かって来たような理不尽な戦い。

 預言を回避しようとすれば必ず現れると聞かされていたその大きな流れをリィンは振り返り実感する。

 

「切り抜けられたのは運が良かったからだ」

 

 騎神の修復能力がなければ何度死んでいただろうか。

 激化していく戦いに、彼らなりの理由があったとしても果たして本当にクラスメイトを巻き込んで良いのか悩む。

 悩むリィンを他所に、脱衣所の戸が開く音が聞こえて来る。

 

「こんな時間に……誰が……」

 

 誰も入って来ないだろうと思っていたリィンは気を緩ませたまま振り返る。

 

「お、お邪魔します」

 

 そこには湯着を纏いながらも恥ずかしそうな作り笑いを浮かべる蒼い髪の少女がいた。

 

「あ――」

 

 咄嗟にリィンは前に向き直り彼女から身体ごと視線を外す。

 

「えっと……ダーナさんでしたよね? 露天風呂はこの時間は混浴で――混浴って言うのは――」

 

「だ、大丈夫です。分かっていますから」

 

 捲し立てるリィンにダーナは彼と同じように勢いに任せて喋る。

 

「貴方とは誰にも邪魔されずに話をしたかったんです。リィンさん……いえ“灰のライザー”」

 

「え……?」

 

 

 

 

 






衣装のお披露目
ノイ
「リィン、見て見てルシアが作ってくれたの!」

リン
「……学生ではない私たちが制服を着ても良いのでしょうか?」

リィン
「トールズ士官学院の制服か……二人ともよく似合ってるよ……だけど母さん、良く作れたましたね」

ルシア
「ふふ、頑張っちゃった」

ナユタ
「あう~」

アルフィン
「見てくださいリィンさん! ナユタちゃんには私たちのお古を着せて上げたんですよ」

ミルディーヌ
「ふふ、このリボンは私のお気に入りだったんですよ」

エリゼ
「はあ……母様も殿下もミルディーヌもはしゃぎ過ぎです……」





 情報交換
シャーリィ
「っというわけでクリスの指示で飛行艇の墜落現場に忍び込んでみたけどあれは完全にやらせだね」

クレア
「やはりそうでしたか」

シャーリィ
「その様子だとお姉さんの方も気付いていたみたいだね」

クレア
「崖の上に長距離用の導力ライフルが放置されていましたので……
 それを使ったのが領邦軍だったとしても憲兵だったとしても捨てて行く理由はありませんから」

シャーリィ
「ま、そもそも閃光弾程度でシャーリィの目を誤魔化せるわけないんだけどね」

クレア
「ふふふ、頼もしい限りですね。本来ならミリアムちゃんにやってもらう事だったんですが」

シャーリィ
「ところでお姉さん、情報料のことなんだけど……」

クレア
「な、何ですか? どうしてにじり寄って来るんですか?」






まるで成長していない By学院長

獅子仮面
「ふふふ、今月は学院祭か……エリオットの雄姿をしっかりとこの最新ラインフォルト製オーバルカメラで――」

鉄血仮面
「申し訳ないが、君には明日からオルディスに現れた移動要塞の調査に行ってもらう」

獅子仮面
「なっ……なんだと? いや調査はアルベリヒが行っているはずでは? そもそも私には遺跡のことは良く分からないぞ」

鉄血仮面
「そこは安心するといい、正確にはそのアルベリヒの監視をしてもらいたいのだ……
 どうも彼は近頃勝手に動き過ぎているように感じてね。ここで牽制をしておきたいのだよ……
 少なくても一ヶ月、彼の行動に目を光らせておいてほしい」

獅子仮面
「むぅ……しかし一ヶ月は――」

鉄血仮面
「安心すると良い、君の息子の雄姿は私が代わりに記録しておいて上げよう」

獅子仮面
「なっ!? 宰相の立場でありながら学院祭に行くというのか!?」

鉄血仮面
「ふ……リィン・シュバルツァーには政府の要請で“灰の騎神”とそれにまつわるレポートの展示を要請している……
 つまりその成果を私が直々に視察をするのは圧倒的に合法なのだよ」

獅子仮面
「くっ――おのれっ! 謀ったな!」

鉄血仮面
「恨むならば与えた仕事をさぼって、彼に会いに行っていた己を恨むのだな。くくく……」



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