(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

137 / 156
今後描写するか分かりませんが、『リアクティブアーマー』の設定は表現が面倒なのでガンダムSeedの『フェイズシフト装甲』に近いものとして表現させてもらいます。

導力が尽きない限りほぼ破壊不可能な装甲ということですね。


―修正―
イソラの戦術殻の名前を間違えていたので修正しました。


137話 暗き想い

「はあはあ……やったか?」

 

 膝を着く機甲兵に手応えを感じラウラが呟く。

 

「やはりジョルジュ先輩が言っていた通り、関節部が狙い目だったようだな」

 

 自分達の力が通じたことにガイウスは安堵の息を吐く。

 

「だが、気を抜くのは早いぞ。次はあのデカブツだ」

 

 余裕を見せつけて単騎で挑んで来た機甲兵を倒した緩みをユーシスは激励して引き締める。

 

「っ……改めて見ると何て大きさだ」

 

「“ティルフィング”の倍くらいある……《第五開発部》なんてものを造ったのよ」

 

 見上げる巨躯にマキアスとアリサは慄く。

 

『くくく、リィン・オズボーンがいないくせに頑張るじゃねえか』

 

 両肩に巨大な導力砲を二つ担ぎ、肉厚で巨大な機甲兵から嘲笑の声が聞こえて来る。

 

「その三下っぽい声……」

 

「《帝国解放戦線》の《V》か……やはり生きていたんだ」

 

 その声の主に心当たりがあるフィーとエリオットは思わず顔をしかめる。

 

『ハッ! あの生意気な皇子様はいないみたいだがお前達にはリィン・オズボーンの人質になってもらうことになっている……

 ま、殺すつもりはねえが死んじまったらリィン・オズボーンを恨むんだな』

 

「うわぁ……すごい自分勝手」

 

「フン、与えられたオモチャで遊ぶのはそんなに楽しいか、これだからテロリスト風情は」

 

 《V》の言い分にミリアムは呆れ、ユーシスは辛辣な言葉を返す。

 

『ククク、弱い犬程良く吠えるな。じゃあこの《黒のゴライアス》の力、思い知らせてやるぜっ!』

 

 両肩の導力砲と、両腕の導力機関銃が一斉に火を噴く。

 

「散れっ!」

 

 言葉を発する前に戦術リンクで思考は共有され、一同は散開する。

 放たれた暴虐の雨は街道の石畳を砕き、導力灯を薙ぎ払う。

 

「っ――こんなの当たったら一溜りもないぞ」

 

 その威力にマキアスは慄く。

 前に戦った《ドラッケン》もそうだが、機甲兵の身体に合わせた規格外の大口径の導力銃は戦車の砲に匹敵する。

 特に《黒のゴライアス》の武装は《ドラッケン》よりもさらに一回り大きい。

 もしもあれが直撃すれば、粉々にされることは容易に想像できる。

 

「怯むなっ! 《機甲兵》の運動性能は“ティルフィング”よりも低い!

 戦術リンクで互いに注意し合えば躱せない動きではない!」

 

 ラウラの指示に戦術リンクが組み代わる。

 ラウラはアリサと。フィーはエリオット、ガイウスはマキアス、ユーシスはミリアム。

 前衛の四人が射線と射撃のタイミングを読み、戦術リンクでそれをパートナーに共有して《黒のゴライアス》の初動を抑え込む。

 

『ちっ――ちょこまかと!』

 

 取り付こうとしてくれるラウラとフィーを《黒のゴライアス》は腕を振り回して牽制する。

 

「ミリアムッ!」

 

「らじゃー!」

 

 フィーの声にミリアムは応え、渡されていたフラッシュグレネードをアガートラムで《黒のゴライアス》の顔に向けて投擲する。

 

『っ――』

 

「今だっ! 総員全力で畳み掛けろっ!』

 

 閃光で外部モニターを白く焼かれた《黒のゴライアス》に向け、ユーシスの号令が上がる。

 

「セブンラプソディ!」

 

「マキシマムショット!」

 

「カラミティホーク!」

 

「シャドウブリゲイド!」

 

「クリスタルセイバー!」

 

「ギガントブレイク!」

 

「奥義・洸刃乱舞っ!」

 

「エレトリックアローッ!」

 

 それぞれの必殺が畳み掛けるように左右から隙なく《黒のゴライアス》に殺到する。

 

「やったわ!」

 

 ダインスレイブの一撃の手応えにアリサは拳を握る。

 

「残心を怠るなアリサ」

 

「何言ってるの? 私たち全員の必殺技よ。いくら《機甲兵》が凄いからってこれだけの攻撃を受けて無事じゃ――」

 

 地面を揺らす大きな足音にアリサは言葉を呑み込む。

 

「まさか……」

 

「そんな……」

 

「この手応え……こちらの攻撃が全て跳ね返された?」

 

『リアクティブアーマー。操縦者の意志で展開できる防御結界みたいなもんだ……

 ま、戦車に使われるものとは根本から違うから《フェイズシフト装甲》なんて別名もあるが、導力が尽きるまであらゆる攻撃を弾き返す優れモノだ』

 

 勝ち誇る《V》の言葉に一同は唖然とする。

 

「何だそのふざけた性能は!?」

 

「さ、さすがに反則だよ~」

 

 理不尽な機能にユーシスとミリアムが愚痴を漏らす。

 

『はっ! 勝てば良いんだよ勝てばっ! 死にたくなかったらとっとと武器を――』

 

 《V》の降伏勧告は何処からともなく飛来した砲弾によって途切れた。

 

『みんな、待たせたね』

 

 クリスの声と共に空から降りて来たのはエマを手に乗せた《緋》。

 “暗黒竜”の呪いが浄化され、竜の翼と尾を宿した《緋の騎神》テスタ=ロッサ。

 仲間たちを守る様に《緋》は《黒のゴライアス》とⅦ組の間に降り立つ。

 

『私もいるよ』

 

 街道の森から“ティルフィングB”が跳び出し、《緋》の隣に並び立つ。

 

「アンゼリカさんも……」

 

「形勢逆転のようだな」

 

 絶体絶命の窮地から、目的の時間稼ぎが達成されⅦ組の空気が弛緩する。

 

『ちっ――《騎神》を使えるのはリィン・オズボーンだけじゃなかったのかよ?』

 

 よろけた態勢を直しながら《V》は情報が違うと愚痴をこぼす。

 

『これ以上の戦いは無意味だ! 西口を攻めている連中とまとめて撤退してもらうぞっ!』

 

 《緋》は剣を《黒のゴライアス》に剣を突き付けて宣言する。

 しかし、それに応じる声は空から来る。

 

『オイオイ、勝ち誇るにはまだ早いんじゃねえか?』

 

 次の瞬間、蒼い風が吹く。

 彼らの頭上を通過した“蒼い飛空艇”は大きく旋回する。

 その間に“飛行艇”は変形する。

 まるで凝縮していた固めていた状態を解くように飛行形態から人型へと変形し現れたその姿は――

 

『蒼の騎神。オルディーネ』

 

 かつてクロスベルの通商会議を襲い、下半身を残して消え去った《七の騎神》の一つ。

 自己修復が間に合わなかったのか、旧校舎で分解された下半身や腕は機甲兵によく似たパーツで補われている。

 

『クロウか……』

 

『ようゼリカ。まさかお前がそんなガラクタに乗って俺の前に立ち塞がるとは思わなかったぜ』

 

 唸るアンゼリカにクロウは嘲笑が含む言葉を浴びせる。

 

『ガラクタとは言ってくれるな……

 それよりもクロウ、どうしてこんなことを!? 何故宰相を撃った!?』

 

『答える必要はないな。ザクセン鉄鉱山で言った通りだ』

 

『っ――クロウッ! 君は今、自分達が何をしたのか分かっているのか!?』

 

『…………ククク』

 

 激昂するアンゼリカに返って来たのは隠しきれない笑い声だった。

 

『何がおかしい!?』

 

『そうだそれで良い! 俺を憎めっ! そして俺の憎しみを思い知れっ! 帝国人っ!』

 

『クロウ……』

 

 聞いたことのない怨嗟の言葉にアンゼリカは思わず後退る。

 

『どうしてそこまで、君はいったい何を抱えているんだ?』

 

『さあな……これから殺し合いをする相手にこれ以上の問答は必要ないだろ』

 

 先程の憎悪を潜め、クロウはアンゼリカの問いに拒絶で応える。

 

『……そうか……答えるつもりがないと言うのなら、その騎神から引き吊り出してトワの前で土下座してもらうとしよう……

 クリス君、手伝ってもらえるかな?』

 

『はい、すぐに倒して教官たちの援護に行きましょう』

 

『はっ、見縊ってくれるじゃねえか……

 お前はそいつに乗ったばかり。だが、俺は三年前からコイツを乗りこなしている。どうせ体が重くてうまく動かせていないんだろ? 強がってんじゃねえよ』

 

『っ――』

 

 クリスの状態を経験で見透かして来るクロウに思わず息を呑む。

 

『だが、お前達に粘られると後々面倒でな。だから“奥の手”を出させてもらうぜ』

 

 クロウの言葉にクリスは身構える。

 《蒼》の“奥の手”。

 一時的な過剰エネルギー状態を超して性能を激増させるシステム。

 それを警戒して身構える《テスタ=ロッサ》と《ティルフィングB》に対して、クロウは叫ぶ。

 

『行くぞっ! 《V》、《S》!』

 

『おおっ!』

 

『分かったわっ!』

 

 新たな声がそこに響き、空にゴライアスに劣らない大きさの《紅のケストレル》が舞う。

 それに《蒼》が続き、《黒のゴライアス》もその鈍重そうな体に反して空高く飛び上がる。

 

『いったい何を!?』

 

 空に縦に並んだ騎神と機甲兵にクリスは困惑する。

 その答えは目の前で示される。

 

『戦術リンク、フルコンタクトッ! 導力フィールド、オンッ!』

 

 《S》の叫びに応じて三機が一つの力場に包まれる。

 

『フェンリルエンジン、フルドライブ!』

 

 《V》の叫びに応じて、《黒のゴライアス》と《紅のケストレル》に内蔵された《焔》と《大地》のオーブが共鳴するように唸りを上げる。

 

『行くぜっ! オーバーライズッ!!』

 

 そして《C》の合図によって三機はそれぞれ新たな動きを見せる。

 二つの機甲兵の色が消え、灰色に変わる。

 《蒼》は飛行形態になるように腕を背中に折り畳み、腰を折る。

 《ゴライアス》は両肩のキャノンをパージし、手を腕の中に格納し変形して胸を開き、その中に《蒼》を包み込むように接続する。

 次いで大型飛行ユニットから分離した《ケストレル》がその細い手足を折り畳み腰となって《ゴライアス》の下に接続される。

 分離された飛翔ユニットもまた変形して脚に、導力砲は腕になって砲門から手が現れる。

 最後に剥き出しの《蒼》の顔を覆い隠すヘルムが装着される。

 そして《焔》と《大地》のオーブが“相克”して生み出す導力が灰色の装甲に通って蒼色に染まる。

 

『これが究極のゴルディアス最終機体――《蒼の神騎》オルカイザーだっ!』

 

『なっ――!?』

 

『合体した……だと!?』

 

 ゴライアスの時点で騎神の倍はあった体躯がさらに大きくなり《蒼の神機》は《緋》と《ティルフィングB》を見下ろす。

 呆然と自分を見上げる間抜け面を晒すⅦ組にクロウは嗤って絶望にはまだ早いと告げる。

 

『ククク、驚くのはまだ早いぜっ!』

 

『何……?』

 

『来いっ! 《G》! イソラッ!』

 

『ああっ!』

 

『…………アロンダイト』

 

 クロウの声に応じて現れたのは《蒼の竜機》。

 複雑な変形はしないものの、竜機はオルカイザーの背中に接続して翼となり、さらにオルカイザーの手に“剣”が現れる。

 

『みんなの“力”……俺に貸してくれっ!』

 

『ふっ、言われるまでもない』

 

『ああ、俺達の底力、鉄血の狗共に教えてやれっ!』

 

『《C》いえ、クロウ。貴方にならできるわ!』

 

 オルカイザーが掲げる“剣”が黒い波動を発し、波紋を広げる。

 

『この光は……リィンさんが帝都で使った《ゴスペル》?』

 

『いったい何が起きているって言うんだ!?』

 

 目まぐるしく変わる状況にクリスとアンゼリカは呆然と立ち尽くす。

 

『みんなの“想い”がオルカイザーに集まって来るっ!』

 

 黒い波動が広がるのとは逆に、大地や空から“黒い想念”が“剣”に集まり黒い霊力の刃が天を衝くように顕現される。

 それはクロウと仲間たちの“想念”が結集した“力”。

 

『この霊力――まずいわ、逃げなさいっ!』

 

 見入ってしまったクリスとアンゼリカにセリーヌが檄を飛ばす。

 

『いや、ダメだっ! 防げ《テスタ=ロッサ》!』

 

 クリスはセリーヌの指示に反して、前に進み出る。

 《緋》の霊力が背後の仲間とトリスタを守る様に壁を作る。

 

『喰らえっ!』

 

 生け捕りとは程遠い《蒼》の一撃と《緋》の障壁がぶつかり合ってトリスタを激震させた。

 

 

 

 

 

『四の型――音断ち』

 

 その瞬間、《白の神機》に憑依していたキーアの知覚は音も光も消え失せた。

 

「何……何なの?」

 

 さっきまで優勢に戦えていた。

 三対一の状況。

 うまく連携させ、ようやく決定打を繰り出せると思った矢先、まるでその気の逸りを見透かしたように八葉の技が振るわれ、キーアと《神機》の繋がりが切れた。

 

「そんなことができるなんて……」

 

 キーアは原因を“識り”、敵の脅威度を引き上げ、《神機》とのリンクを三体同時に結び直す。

 原因の究明から再接続まで約十秒。

 それぞれの機体にはまだ霊力が十分に満ちており、多少の反撃を受けても十秒ならば耐えられるとキーアは判断した。

 しかし、彼に――武芸者に無防備な十秒を晒すことの意味を理解できていなかった。

 

「………………え?」

 

 しかし、再接続した《白》の目で見た光景にキーアは言葉を失った。

 《青の神機》は四肢を失い崩れ落ち、空を飛んでいた《紫の神機》は翼をもがれ墜落し、そして目の前にはゼムリアストーンの太刀を峰を返して振り上げる《灰》。

 

『お仕置きだ、キーア』 

 

「っ――」

 

 咄嗟に機体に力を漲らせ、装甲の表面に防御結界を展開、《灰》の頭部への一撃を受け止める。

 

「――っ!?」

 

 太刀の一撃は確かに結界が受け止めた。

 しかし、頭部で受け止めた太刀から触れたままもう一度衝撃が走る。

 

「そん……な……」

 

 防御結界は機能している、破壊されたわけでもないのに中身だけが破壊される。

 それが東方の拳法の《徹し》と呼ばれる技術の応用だと理解することなく、キーアの意識は暗転した。

 

 ――負けちゃった――

 

 何をどうされたのか分からず、キーアは自分の敗北を悟る。

 

 ――未来がなくなる――

 

 決してリィンが嫌いなわけではない。

 ただエレボニアの《至宝》を倒さなければクロスベルは地獄となる未来を《識て》しまったからこそ、キーアは持てる力を使って《灰》に挑んだ。

 

 ――どうして……どうしてなの――

 

 欲しかったのは決して大それた未来じゃなかった。

 ただ大切な人に生きていて欲しかった。

 彼らが彼ららしくクロスベルで生きる、そこに自分の居場所はなくても構わない。

 それ程の覚悟でキーアは《灰》と戦った。

 卑怯だと分かっていても、確実に勝つために三体掛かりで戦い、不意打ちまでした。

 

 ――誰か教えて――

 

 《至宝》が奇蹟を求め、願う矛盾。

 

 ――ロイドやみんなを守れるなら、キーアは何でもするから、だから――

 

『――ソノ言葉ヲ待ッテイタゾ、零ノ御子――』

 

 暗い闇に同化するような黒き存在がその願いに応えた。

 少女は自分から望み、自分からその存在を受け入れる。

 少女の意識は黒に呑まれ、新たな《器》が生まれる。

 その新たな《器》こそが少女が未来で見た“悪魔”だと最後まで気付くことはなかった。

 

 

 

 




蒼の神機オルカイザー

オルディーネ改
 通商会議の時に失った脚部と砕け散った腕を導力技術で修復。
 その際に変形機構と《神機》との接続端子を追加。

 “大地の宝珠”を組み込んだ《黒のゴライアス》と“焔の宝珠”を組み込んだ《紅のケストレル》。
 どちらも《神機》に近づけているため十アージュ級のサイズ。

 二つの宝珠を連結させることで疑似的に“鋼”と至り、更に反発しそうになる力を《Gのドラギオン》の“空の宝珠”の力で安定させています。

 例えるならスーパーロボットのSRXにダブルオーのオーライザーを付けた機体になります。

 なお戦術リンクの強度、つまり操縦者同士の絆レベルで性能が変動します。


 別名:はがねのよろい

 蒼の強化はこんなものになりましたが、納得していただけたでしょうか?




ティータ
「うわああああ! うわああああっ! うわああああっ!!」

エリカ
「騎神が……合体したですって?」

ラッセル
「くっ――その手があったか!」

ヨルグ
「ちっ……ノバルティスめ……」

トワ
「あ、あの博士たちここは危ないから避難を……」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。