(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


閃の軌跡の疑問。
Ⅶ組にとってオズボーン宰相へのヘイトってクロウの件だけな件。
しかも別にクロウが死んだことに関与しているわけではないので、敵対の道を選ぶのがプレイヤーの事情によるところが強く感じました。
見方によっては閃Ⅲ以降、解放戦線の意志を継いだように見えて微妙な気持ちになる。





50話 緋の帝都Ⅱ

 

 

 

「これまですまなかった」

 

 特別実習が終わったその夜、マキアスはリィンとユーシス、ラウラ、そしてアンゼリカに対して頭を下げた。

 

「何だレーグニッツ? 悪いものでも食べたのか?」

 

 そんなマキアスを気持ち悪そうに顔をしかめてユーシスは気味が悪いと言わんばかりに顔をしかめる。

 いつもならここで激昂して言い返すのだが、マキアスはそれをせずに頭を下げたまま微動だにしなかった。

 

「マキアス、それじゃあ何があったか分からないから、ちゃんと顔を上げて説明した方がいいと思うぞ」

 

「あ、ああ。そうだった」

 

 リィンの指摘に顔を上げたマキアスの顔はどこかやつれた様に見えた。

 

「今日、僕達の班が行った実習課題の内容なんだが……

 帝都で置引きやスリの被害が多発していた。その犯人は僕の日曜学校の後輩で、僕が歪めてしまった子供だった」

 

 そうしてマキアスが語り出したのはレーグニッツ家が抱える事情。

 姐と慕っていた従姉の姉が貴族から嫌がらせを受け、果てには婚約者から手酷い裏切りを受けて自殺した事。

 その時からマキアスは姉の死に“敵”を求めた。

 それがマキアスの貴族を憎む理由だった。

 

「何とも因果な話だね……その婚約者の男をフォローするつもりじゃないが、貴族の間で“愛妾”というのは別に珍しいことじゃないんだよ」

 

「そうなんですか、アンゼリカ先輩?」

 

「ああ、貴族はまず“血”を残すことが義務付けられている……

 かく言う私もいつか不本意だが、子を産まなければならない時が来るだろう……

 だが、だからと言って私がその男を愛するかは別の話だ。はっきり言えば私はその男が愛妾を作っていたとしても全く問題ないと思っている……

 いや……もしもその愛妾が私好みの女の子ならむしろ……いや待てよ……

 例えば私の婚約者がリィン君だったとする。そして私がリィン君にハーレムを作ることを認めれば、それはすなわち私のハーレムでもある?」

 

「アンゼリカ先輩、今は真面目な話をしているんです。自重してください」

 

 馬鹿なことを言い出したアンゼリカにリィンは冷めた目で脅しをかける。

 

「おっとそうだったね……

 まあ、何が言いたいかと言うと、平民にとっては時代錯誤とも取れる文化かもしれないが、私たちにとっては先祖が繋いできた大事な“伝統”でもあるんだよ」

 

「貴族と平民の価値観、そこに差があることは分かっていたはずなんですけど」

 

 アンゼリカの言葉を聞いてマキアスはようやく少しだけ相手の男を許す気持ちが芽生えた。

 

「それで、今回の実習課題と貴様の貴族嫌いがどう繋がる?」

 

「ああ……」

 

 ユーシスに促され、マキアスは話を続ける。

 今回の発端になった強盗事件。

 その犯人はマキアスの日曜学校の後輩であり、トールズに入学する前のマキアスはその子に何度も貴族がいかに汚い存在かを語り続けていた。

 その偏見に満ちた教えがその子を犯罪に走らせた。

 が、その話はそこで終わりではなかった。

 マキアスが植え付けた貴族憎しの思想に目を付けたのが街の不良ともいえる者達だった。

 彼らは貴族を憎むその子を持ち上げて置引きやスリの技術を教え、さらにはその貴族への悪感情を煽りその子を犯罪に走らせた。

 

「そういえば、その《黒猫》という子はどんな子だったんだい?」

 

「歳は先日来たミルディーヌさんと同じくらいの女の子ですね」

 

「良し、そいつらを殺そう」

 

「あ、アンちゃん!?」

 

「落ち着いてくださいアンゼリカ先輩、それでその黒幕たちはちゃんと捕まえたのだろう?」

 

 トワとラウラがいきり立つアンゼリカを抑えながらマキアスに確認する。

 

「ああ、もちろん……ただその時に言っていた奴等の言葉が……」

 

『ここは帝都だ。例えいくら貴族が騒いでもオズボーン宰相やレーグニッツ知事が俺達、平民を護ってくれるんだよ』

 

 その言葉を思い出すだけでも吐き気がする。

 

「まさかと思うが、そいつらの罪を革新派は有耶無耶にするつもりじゃないだろうな?」

 

「そんなはずはありません! 父さんもオズボーン宰相が貴族と対立しているからといって手心を加える様な半端な真似はしません」

 

 そこの信頼は揺るいではいない。

 むしろマキアスがショックだったのはそんな風に革新派の権力を勝手に笠にしている存在が平民にいたことだった。

 

「結局、平民だろうが悪人は悪人だし、貴族の中にも尊敬できる人はいる……

 そんな当たり前のことに僕はずっと目を逸らして、今まで君たちに“八つ当たり”をしていた。本当にすまなかった」

 

 マキアスはもう一度、頭を下げる。

 そこにユーシスは鼻を鳴らしてどうでも良いと言わんばかりに肩を竦める。

 

「何を言うかと思えば下らん」

 

「なっ下らんだと!? 僕は真面目に自分の非を――」

 

「例え平民にも愚か者がいたとしても貴族にその手の人間が多いことも事実だ。貴様に謝られる筋合いはない」

 

「いや、しかし……」

 

「私もユーシスと同じ意見だ。それに私もこれまで多くの間違いを犯した身、マキアスを責める資格はない」

 

「ラウラ……」

 

「まあ、私は君達とは学年が違うから被害を被ったことはないから良いのだが……

 それよりも《黒猫》ちゃんはいったいどうしたのかな? 利用されたとはいえ被害者の貴族は相当怒っていたと聞くが?」

 

「それは……まあ……」

 

 マキアスはバツを悪くして頭を掻く。

 《黒猫》は盗んだ財布や荷物からミラだけを取りばら撒いていた。

 そして荷物の方、社交界用の衣装や装飾品は《黒猫》自身がその価値を良く分からずに不良たちに渡していた。

 当然ばら撒いたミラも、不良たちが換金してしまった装飾品も取り戻すことはできず、犯人を捕まえたところで被害者の貴族達の怒りを治めることはできなかった。

 そして追及は黒幕の不良たちだけに留まらず、実行犯の《黒猫》にも及んだ。

 

「一言で説明するならリィンに助けられました」

 

 マキアスの答えに一同の視線がリィンに集中する。

 

「ふむ、何をしたんだいリィン君?」

 

「大したことじゃありません。買い戻せる物は買い戻して、足りないミラは倍にして返しただけです」

 

「いや……そんな簡単に言われても、そんな金額のミラをリィン君は持っていたのかい?」

 

「IBCの口座を持っているんです。それに献上するつもりだった《聖女の槍》を買い取るってオズボーン宰相に押し切られてしまって戻って来たミラがあったから使えた手ですよ。ミラで解決してしまったのは不本意ですが」

 

「まあ確かに誑かされていたとは言っても自分の意志で犯罪に手を染めた以上、安易に救いの手を差し伸べるのは良くないだろう」

 

「そこら辺は将来ちゃんと働いて返す様に言い聞かせました……僕にも責任の半分があるということで半分は肩代わりするつもりです」

 

「マキアス。俺は別に――」

 

「いいや、これだけは譲れない……

 どんな理由があってもあの子がしたことは犯罪であり、そんな風に歪めてしまったのは僕の責任でもある」

 

 リィンとしてはレンの様な例もあるからその年頃の犯罪を責めるつもりはないのだが、それをマキアスはそれを聞き入れようとはしなかった。

 

「ということはラウラに続いて、お前もリィンに借金をすることになったのか……ククク……」

 

「くっ……事実だが君に笑われると腹が立つ」

 

「むぅ……」

 

 ユーシスの言葉にマキアスとラウラはそれぞれ顔をしかめる。

 

「それにしても地方都市とは違って随分と平民の気が大きいみたいですね」

 

 これ以上は面倒なことになると察したエマは話題を切り上げて、今日の実習の感想を口にする。

 

「ジョルジュ先輩の班の《黒猫》の事件……

 私たちが請け負った“辻斬り”の犯人も正規軍の人でしたから」

 

「正規軍の人にしては随分と血の気の多い人だったけどね」

 

 二刀流の剣士にしてリィンの拳で空を飛んだ“辻斬り”を思い出してアリサは唸る。

 

「あの人も憲兵隊に引き取ってもらったわけですが、騒動を起こすこと事態は初めてじゃなかったみたいですし」

 

「まあ、あの人は平民の中でも特に粗暴なタイプだろうな……

 今回の“辻斬り”の件も人死を出していなかった上に、交流試合の出場者を闇討ちしたわけじゃなく正面から倒したみたいだから被害者も被害届を出していないらしい……

 たぶんそこまで計算してやっていたと思う」

 

「“辻斬り”の人は例外ですけど、そもそも帝都を統治しているのは貴族ではなく帝国中央政府、つまりオズボーン宰相ですからね」

 

 クリスはリィンの意見に頷きながら、帝都の事情を考える。

 

「何だか情けないですね……ずっと帝都に住んでいたはずなのにこんなことになっていたなんて今日まで知りませんでした」

 

「そういえばクリスは帝都出身だったんだっけ?

 帝都に住んでいる貴族って珍しいけど、どこに住んでいるの? もしかしたらすれ違っていたことがあるかもしれないよね?」

 

「え……あ……それは……」

 

 エリオットの何気ない質問にクリスはどもる。

 

「クリスが住んでいるのは富裕層が住んでいる地区だからエリオット達とすれ違うことはまずないだろ」

 

 油断していて咄嗟に設定を答えられなかったクリスに代わってリィンが答える。

 

「まあ、そうなるよね」

 

「僕としては話が通じる貴族が帝都に住んでいたことが意外だったな」

 

「え、ええ……僕も近くに住んでいる人にあそこまで貴族を憎んでいる人がいるとは思っていませんでした」

 

「うぐ……」

 

「ええっと、そういえばクリスはどうしてトールズに一年早く入学したの?」

 

 呻くマキアスを見兼ねてエリオットが話題を進める。

 

「え……?」

 

「言われてみればリィンが進学を決めたのは年が明けてからだから、クリスが進学を決めていたのはそれよりも前のはずだよね?」

 

「いや、僕もリィンさんと同じ時期にトールズに行くことを決めました」

 

「そうなると試験勉強の期間は一ヶ月しかなかったのか、それなのに中間テストも上位ってすごいな」

 

「何か不公平……」

 

 クリスと同い年であり、同じ受験勉強を一年かけて行ったフィーは思わず愚痴を漏らす。

 

「それじゃあやっぱりリィンが進学の決め手だったんだ」

 

「ええ、まあ……でも今はリィンさんは関係なく進学を早めてよかったと思っているよ」

 

 予定通り来年にトールズに進学していたら、そうでなくても本名を名乗っていたらきっとこんな楽しい学生生活は送れなかっただろう。

 クリスの言葉の裏に隠れた意図を知らないエリオット達はただ首を傾げる。

 

「兄上や、オズボーン宰相、リィンさんにただ憧れるだけだった僕がこんな風に自分に自信を持てるようになれたのはみんなのおかげだから……

 だから、ありがとう……」

 

「い、いきなりどうしたのさ?」

 

 突然礼を言い出したクリスにエリオット達は戸惑う。

 

「大した意味はないよ。ただこんな僕と仲良くなってくれたことにお礼を言いたくなっただけさ」

 

 臆面もなく恥ずかしい台詞を言うクリスのせいかそこには微妙な気恥ずかしさに戸惑う空気が漂う。

 が、そんな青春の空気を読まずにクロウは悪態を吐いた。

 

「はっ……馬鹿馬鹿しい」

 

「クロウ?」

 

 普段と雰囲気が変わったクロウにジョルジュは不信を感じるが、そんな声は届かずクロウは誰に言うでもなく毒を吐く。

 

「まさか貴族の坊ちゃまがよりによって《鉄血宰相》に憧れているなんて世も末だな」

 

「それはどういう意味ですかクロウ先輩?」

 

 侮蔑の言葉にクリスはクロウを睨む。

 

「知らねえのかよ。あの男について回る黒い噂を?」

 

「貴族派が吹聴しているデタラメな噂ならもちろん知っています……

 まさかそんな誹謗中傷を信じているんですか? 意外ですね。クロウ先輩が貴族派の肩を持つなんて」

 

 二人は睨み合い、空気が軋む。

 

「先輩に向かって随分と生意気な口を利くじゃねえか後輩」

 

「急に先輩風を吹かせないでくれませんか。それとも図星だったんですか?」

 

「んだと……」

 

 挑発じみたクリスの言葉にクロウは眦を上げクリスの胸倉を掴もうと手を伸ばし、咄嗟にクリスも同じように動く。

 

「二人とも落ち着いてくれ」

 

 が、その手が互いの胸倉を掴むよりも先にリィンが横から掴んで二人の腕を止めた。

 

「ちっ……」

 

 クロウは舌打ちをして掴まれた腕を強引に振り払い、まるで親の仇を見る様な目でリィンを――その向こうのクリスを睨む。

 が、その視線はすぐに弛緩した。

 

「わりい、ちょっと言い過ぎた」

 

 視線と共に強張った肩から力を抜くと、いつものクロウに戻る。

 

「ちょっと頭を冷やして来る」

 

 そういうと徐に席を立つ。

 

「クロウ君!」

 

「大丈夫だって、すぐに戻る」

 

 どこか物憂げな雰囲気を滲ませる背中を見せつけながらクロウは安心させるように言う。

 

「そんなこと言って、本当は夜遊びするつもりなんじゃない?」

 

 が、そんなクロウにトワはジト目を送る。

 

「………………はは、まさか……」

 

 言いながら振り返ることなくクロウは足早に外へ出て行った。

 

「こらぁ! 待ちなさいっ!」

 

「やれやれ」

 

 声を上げて追い駆けるトワに肩を竦めて慣れた様子でジョルジュがそれに続く。

 

「えっと……」

 

「ああ、気にしないでくれ。いつものことさ」

 

 残ったアンゼリカは慣れた様子で戸惑うエマに笑いかける。

 

「何て言うか、クロウ先輩が急に怒り出してびっくりしました」

 

「さあ、どこまで本気だったんだろうね? あまり本心を語りたがらない男だから何とも言えないな」

 

「それにしてもオズボーン宰相という人はそれ程までに評判が悪い人物なのか?

 これまで何度か帝国時報で彼の記事を読んだことはあるが、立派な政治家と感じていたのだが」

 

 クロウが言った黒い噂を知らないガイウスは首を傾げて尋ねる。

 

「そうだよ! 黒い噂なんてデタラメだ……

 昨年の《帝国交通法》の導入だって反対勢力を押し切って強引に踏み切ったのは確かだけど、それ以来導力車の事故は激減しているんだ……

 他の政策だってどれも素晴らしい結果を導いているんだから、黒い噂なんて的外れも良い所だ」

 

「そうよね。後は鉄血宰相と言えば帝国全土に鉄道網を巡らせてくれたおかげで私たちはこうしていろんな場所に《特別実習》に行けているのよね」

 

「そうだな。鉄道のおかげで俺も留学することができたという意味ではオズボーン宰相の恩恵を受けているだろう」

 

「しかし、僕達は気にしないがやはり貴族からしたらオズボーン宰相のやり方は受け入れられないものなのか?」

 

「そうだね……

 その鉄道網を敷くことにだって、既存の野畑をいくつも潰さなければいけない問題が当時にはあったくらいだ……

 そういう意味では彼がいろいろな所から恨みを買っているのは変えられない事実だろう……

 だが、その反面今ではその鉄道は様々な恩恵を与えてくれた、帝国にとってなくてはならない存在になりつつある」

 

 マキアスの質問にアンゼリカは淀みなく答える。

 

「彼に全てを任せて従ってしまえば、それまで先祖から代々受け継いできた“伝統”の全てを打ち壊して新しいものに刷新され自分達の居場所を奪われるのではないか……

 そんな怖さを貴族達は感じているんだよ」

 

 アンゼリカの言葉にユーシスは特に付け足すことはないと黙って瞑目する。

 

「レグラムもユミル程ではないが田舎だから、改革の影響は少なく何とも言えないな……

 そもそも父上は仕方なく領主をやっている節があって、遊撃士の方が性に合っているとさえ言っているくらいだ」

 

 アンゼリカ、ユーシス、ラウラの三人は貴族としてオズボーン宰相に少なからず考えるところがあるようだが、それ以外の平民、アリサ達は一般市民と同様に好意的だった。

 リィンも二年前、リベールに家出をした時にはその鉄道を利用して便利だと感じたことしかなかったのだが、今はアンゼリカ達とは違う危惧を感じていた。

 

 ――《結社》との繋がりがあるか……

 

 政治が綺麗ごとで済むものではないということは教わっているが、《結社》との関りはおおよそ一国の宰相にとって相応しい振る舞いとは思えないというのはオリヴァルト皇子の弁だ。

 リィンとしても、《リベル=アーク》出現に合わせた蒸気機関の戦車での侵攻を見ているだけに、アリサ達の様にオズボーン宰相を安易に支持する気にはなれない。

 

「リィン、どうかしたの?」

 

 黙り込んでしまったリィンにフィーが言葉を掛ける。

 

「いや、何でもない」

 

「そう……ところで気になっていたことが一つあるんだけど」

 

 フィーは徐に手を挙げてそれを話題に出す。

 

「ラウラが会った女剣士だけど、えっと……」

 

「デュバリィさんだな。それがどうした?」

 

 名前を言い淀むフィーに補足を入れてリィンは続きを促す。

 

「うん……《結社》が帝都に来ているってことはもしかしたら《剣鬼》もいるのかな?」

 

「………………え?」

 

 フィーの言葉にリィンは間の抜けた言葉を漏らしたが、一同はそれに気付かずそのことを失念していたと焦り始める。

 

「しまった。その可能性を失念していた」

 

「確かに《結社》の剣士がいたならそいつもいる可能性は高いわね」

 

「リベールで《異変》を起こした犯罪組織、帝国で暗躍していてもおかしくはないか」

 

「俺としては命を助けられた恩があるが、何か大それたことを計画しているのなら止めなくてはならないな」

 

「そういえば帝都の地下が上位三属性の影響が出る程に場が歪んでいましたから、あり得ない話ではないと思います」

 

「それは本当かいエマ君? なら憲兵隊に報告しておいた方が良いだろうな」

 

「《剣鬼》と戦うなら僕達の手に余るからやっぱり憲兵隊に任せるべきじゃないかな?」

 

「何を弱気なことを言っているんだエリオット。あれから僕達も腕を上げているし、今はリィンさんもいるから十分に戦えるはずだ」

 

「ふむ……前三回の特別実習に出て来た《結社》のエージェントという男か……

 《結社》には同門の兄弟子がいると師匠から聞いているから一度は会ってみたいものだ」

 

 呆けるリィンを他所にⅦ組とアンゼリカは《結社》――《剣鬼》対策を本格的に考え始めるのだった。

 こうして帝都での特別実習一日目は終わった。

 

 

 そして、特別実習二日目。

 最初の依頼課題の内容を聞いたリィンは大いに困ることになった。

 場所はトワの実家であるハーシェル雑貨店。

 昨夜、泥棒に入られその犯人を捕まえる、ないしは盗まれた商品を取り戻して欲しいとの依頼だった。

 それだけならリィンもそこまで困りはしないのだが、問題は手掛かりとして残った一枚のカード。

 

『怪盗B参上っ!』

 

 

 





黒き鴉の狂気

“辻斬り”鴉
「よう、待っていたぜ」

リィン
「待っていた?」

“辻斬り”鴉
「ああ、お前が帝都に来るって聞いていたからな、こうすりゃ会えると思ってなァ」

アリサ
「そんな滅茶苦茶な」

クリス
「リィンさんと決闘するために“辻斬り”をやっていた?」

クロウ
「ひゅう、モテモテだな後輩」

“辻斬り”鴉
「クカカ、こうして待ち伏せていたのは他でもねェ……
 御前試合で見せてもらったが、なかなかの腕みてえだなァ?」

リィン
「買いかぶりだ」

“辻斬り”鴉
「遠慮する必要はねえぜ。立ち振る舞いを見ても力量は判る。是非、一手ご教授願いたい……
 まあ、聞くまでもなく相手してもらうつもりだがッ!」

リィン
「くっ……破甲拳っ!」

“辻斬り”鴉
「ガッ!?」


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