(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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55話 緋の帝都Ⅶ

 

 

「なん……だと……?」

 

 バルフレイム宮の一室、テロリストへの対処のために作られた即席の司令部にいたギリアス・オズボーンは窓の外に現れたその姿に立ち尽くした。

 

「エンド・オブ・ヴァーミリオン…………何故、貴様がそこにいる?」

 

 鉄血と揶揄される傲岸不遜な鉄面皮は剥がれ落ちる。

 もっとも彼の動揺に気付く者はいない。

 室内に詰めた憲兵隊はギリアスと同じように窓の外の“竜”に目を奪われていた。

 

「何だあれはっ!?」

 

「《Ⅶ組》が報告してきた“暗黒竜”という奴なのか!?」

 

「何て巨大な……いったい何アージュあるんだ!?」

 

 混乱する司令部を他所にギリアスは彼らの勘違いを正す余裕はなかった。

 

「どういうことだ、イシュメルガ……こんな預言は史書にはなかったはずだ」

 

 虚空に向かって呟くが返事はない。

 

「預言では暗黒竜が復活する切っ掛けだけだったはず……」

 

 バルフレイム宮の前の運河から飛び出して来たその存在は一見すれば竜にも見える。

 巨大な翼に刺々しい尾。何よりもその身に纏う禍々しい気配が否応なく人智を超えた存在だと見る者を畏怖させる。

 

「このタイミングで帝都を滅ぼすつもりなのか……」

 

 やはりその問いに答える声はない。

 

「くっ……」

 

 あえて手を出さず、クレア達憲兵隊を主体にして“子供”や部下たちの働きを見守っていたギリアスは突然現れた前世の怨敵を睨み付ける。

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 《緋》はその翼を大きく誇示するように広げ、獣のような咆哮を上げて紅い波動を放つ。

 

「むっ――」

 

「何だ!?」

 

「空間が歪む!?」

 

「女神様っ!」

 

 《緋》の波動を受けて司令部が――バルフレイム宮の空間が歪み、その姿を変える。

 

 

 その変貌を外で見ていたヴィータは自分の目を疑った。

 

「煌魔城……それにどうして《エンド・オブ・ヴァーミリオン》まで顕現しているの?」

 

 地下から戻って来て“暗黒竜”を復活させたと笑って宣い、これからそいつを倒すからサポートしろと馬鹿なことを言った起動者をぶん殴って単身、地下墓所へと突入しようとした足は完全に止まってしまった。

 幻覚や夢ならどれほど救いがあるか、本来なら“魔王の凱歌”と《緋》の力によって出現させるはずだった《煌魔城》は《紅き終焉の魔王》の影響で逆流するように出現してしまった。

 

「っ――」

 

 降り注ぐ紅い波動が帝都へと広がる。

 それに触れた者たちは次々に体から霊力を強制的に奪われ、その場に崩れ落ちる。

 

「どうしてこんなことに――いけないっ!」

 

 簡易結界で身を護り、ヴィータは見上げた《緋》の周囲に様々な武具が出現するのを見た。

 

 

 

 

「あ…………」

 

 突然体から力が抜けよろめいたクレアは改めて空に、バルフレイム宮だったものの前に浮かんでいる存在に目を向ける。

 “竜”のような体躯の人型。

 それが何なのかクレアにはその知識はないが、本能的に人の身では諍うことのできない超常の存在だということは分かる。

 その超常存在は周囲に紅い霊力を使って武具を顕現する。

 剣、槍、斧、矢、槌。

 およそ中世の頃に使われていた武具が合わせて十。

 その切先が一斉に地上へと向けられ――

 

「いけない伏せてっ!」

 

 咄嗟に声を上げるが、それにどれ程の意味があるかクレアの明晰な頭脳でも分からなかった。

 何よりも自分も含めてその声に反応できる余力がある者は誰もいない。

 武具を飛び道具に、無慈悲な鉄槌が帝都を爆撃する。

 その瞬間、剣閃が運河を割り“竜”を武具ごと薙ぎ払う。

 そしてそれに遅れて“竜”と同じように運河の中から《灰》が飛び出した。

 

 

 

 

「あれは――《灰の騎神》……リィン君か!?」

 

 その光景を競馬場から見ていたオリヴァルトは安堵の息を漏らす。

 

「くっ……たかが場末のテロリストだと思っていたが、ここまで大それたことをするとはな」

 

 身体から抜ける力に諍う様にミュラーは丹田に力を込めて立ち上がり、オリヴァルトと同じように空を見上げる。

 剣閃を受けた《緋》は空中でよろめき、そこに《灰》が体当たりをして帝都から西へ飛び去る。

 それにより空気に溶け込むように広がっていた紅の波動が薄れ、虚脱した体に力が戻る。

 

「また……見ていることしかできないのか」

 

 空の彼方へと飛び去って行く灰と緋を口惜しそうにオリヴァルトは見送り、ふいに影が差したのに振り返る。

 

「ミュラー」

 

「どうした……むっ」

 

 遅れて振り返り同じものを見たミュラーは顔をしかめ、すぐに周囲に向けて声を上げる。

 

「総員、衝撃に備えろっ!」

 

 飛来してくるのは《灰》の剣閃によって弾かれた巨大な槍。

 空中で構えられた時の紅い波動こそ掻き消されているが、まだ状態を維持したそれらの武具は無秩序に帝都に降り注ぎ、その一つが競馬場の中央に突き立った。

 

「やれやれ……夏至祭の催し物とすればいろんな意味で過去最高だね」

 

「言っている場合か」

 

 軽口を叩く皇子をミュラーは戒めるが、同時に普段と変わらない様子に安堵する。

 

「他は大丈夫かな?」

 

「分からん。とにかく一度バルフレイム宮――ではないがドライケルス広場まで戻るぞ」

 

 錯綜した状況にミュラーは少しでも情報が欲しく、そして一刻も早くオリヴァルト皇子を安全な所へ移動させることを決めて――

 

「待てミュラー」

 

「今度は何だ」

 

 呼び止めたオリヴァルトに振り向くと、オリヴァルトは競馬場の中央に突き立った槍を指差していた。

 

「何かが来る」

 

 アーツ適正が高いだけあって、オリヴァルトはそこに生じた変化にいち早く察知し、彼の言葉の通りそれは起こる。

 顕現した紅い槍から黒い瘴気が流れ落ち、そこから魔獣と魔煌兵が次々と生み出されていく。

 

「くっ……お前は下がれっ!」

 

「いやいや、ここは市民を守るため私も戦わせてもらうよ」

 

「何を言っているお前は丸腰――」

 

「何の、こんなこともあろうかと。導力銃は忍ばせてあるよ……う~ん、このセリフ一度言ってみたかったんだよね」

 

「お前という奴は……」

 

 ミュラーは思わず呆れるが、それ以上は無駄だと悟る。

 

「お前は後ろから援護だ。憲兵隊っ! 奴等を競馬場から出すなっ!」

 

 ミュラーの号令に現実感を置き去りにされて呆然としていた憲兵隊員は我に返り、新たに出現した魔獣、そして魔煌兵と対峙した。

 余談だが、弾き飛ばされた武具の内、人が密集する場所に落ちそうになっていた武具は地上から立ち昇った黒い焔に焼き尽くされていた。

 

 

 

 

 

 帝都近郊。

 目指したオスギリアス盆地まで辿り着くことなく《灰》は力任せに《緋》に振り解かれる。

 

「くっ……できればもう少し人里から離れたかったが」

 

 帝都を囲う城壁がまだ見えるが、ひとまず人が密集する場所から遠ざけられたことにリィンは安堵する。

 

『起動者ヨ……説明ヲ求メル。コレハイッタイドウイウコトダ?』

 

「そんなの俺が聞きたい」

 

 困惑した様子を声音に乗せて尋ねて来るヴァリマールにリィンは肩を竦める。

 バルフレイム宮の地下に封印されているはずの《緋の騎神》テスタ=ロッサ。

 本来ならアルノールの血筋だけを選ぶように設定されているはずのそれはあろうことか“暗黒竜”を起動者にして目覚めた。

 元々はその“暗黒竜”の血によって呪われていたため、理屈は納得できるが理不尽にリィンは文句を言いたかった。

 しかも、ただの《緋》ではなく、獅子戦役の頃、《灰》と《銀》の二騎掛かりでようやく倒したとされる《紅き終焉の魔王》エンド・オブ・ヴァーミリオンと化している。

 

「論議は後だ。それよりも今は目の前の敵に集中してくれ」

 

『…………了解シタ』

 

「怖いのか?」

 

『ソノヨウナ感情ハプログラムニナイ』

 

「そんなことはないだろ? こうして話して受け答えできている……

 俺に対して不満を感じていたのは感情がある証拠だ」

 

『ム……』

 

「すまないな。本来ならお前にはできるだけ戦わせたくはないが、力を貸してくれ」

 

 “暗黒竜”には使うことを躊躇ったが、相手が“騎神”ならばと理論武装をしてリィンは《灰》に持たせていた太刀を構えさせる。

 

「問題はこの太刀でどこまでやれるか、か……」

 

 構えられた太刀はゼムリアストーンの太刀ではない。

 材料こそすでに確保しているが、ラッセル博士たちも七アージュの巨人の武器を造るのは初の試みになる。

 刀身に掛かる負荷などや強度の問題を洗い出すために通常の鉄鋼で造った試験用のブレードが今持っている武器だった。

 

「油断だな……まだ戦いが起きるわけないと決めつけていた」

 

 反省を口にして、リィンは意識を切り替える。

 

「できれば様子見をしたいが、時間はない」

 

 周囲の草木が急速に枯れていく様を目の当たりにしてリィンは短期決戦を決める。

 そもそも太刀に不安があり、“暗黒竜”からの連戦で消耗したリィンにはそれ以外の道は選ぶ余裕はない。

 

「ヴァリマール、あれを使う」

 

『了解シタ』

 

 弧を描く様に《灰》は《緋》に対して横に動く。

 タイミングと間合いを測るようにゆっくりとした足取りで少しづつ位置取りを変える。

 その動きに《灰》の二倍の大きさになっていた《緋》は徐に腕を上げ、振り下ろす。

 それを合図に《緋》の背後に無数の光が煌き、矢となって《灰》に降り注ぐ。

 

「っ――いくぞっ!」

 

 リィンは臆することなく矢の雨に正面から突っ込む。

 逃げ場のない集中攻撃にリィンは太刀を振り被りもせず、背面の推進ユニットを全開にする。

 無数の矢はそのまま《灰》に突き立ち――霞となって消え、その左右に二体の寸分違わない《灰》が現れる。

 

『――――ッ!?』

 

 突然二体に増えた《灰》に《緋》は驚愕してたじろぐ。

 その隙に二体の《灰》は太刀の間合いに《緋》を捉える。

 

「双覇十文字切りっ!」

 

 分け身の騎神と共に繰り出した不意打ちの二つの無想覇斬が《緋》を斬り刻む。

 

「――っ! 浅いっ!」

 

 しかし、騎神越しに感じた手応えの甘さにリィンは声を上げる。

 矢の掃射から及び腰だったから、さらには《灰》に間合いを詰められた瞬間《緋》は脇目も振らずに全力で後ろに逃げたから。

 ともかく《灰》は絶好のチャンスをものにできなかった。

 

『――――――』

 

 《緋》はその手に魔弓バルバトスを顕現させ、《灰》を狙い撃つ。

 放たれた矢は遥か後方まで射貫くと察して《灰》は太刀で斬り払い、再び間合いを詰めようと踏み込む。

 が、《緋》は再び弾幕を張って《灰》の接近を阻害するとあからさまに距離を取る。

 

「お前……それでも由緒正しい“王”の機体なのかっ!?」

 

 逃げ撃ちを決め込む《緋》にリィンは思わず叫ぶ。

 しかし返礼は矢の雨だった。

 “暗黒竜”の経験からか、とにかく《灰》の間合いに入ることを嫌う《緋》は《千の武具》を駆使して距離を取る。

 

「くっ――」

 

 思うように接近できないことにリィンは歯噛みする。

 遠距離攻撃なら《六の型》がリィンにもあるのだが、それを騎神でやると余波の被害が尋常ではないため気軽に使うことはできない。

 追う《灰》に、倍の体躯を持ちながら逃げ回る《緋》。

 騎神戦の初戦にしては何とも無様な追いかけっこになっているのだが、その合間に繰り出される攻撃の数々は凶悪だった。

 

「千日手か……」

 

 距離を取って安全策を取っている《緋》にリィンは何とも言えないものを感じながら呼吸を整える。

 体力を回復させたいリィンにとってそれは好都合なのだが、とにかく逃げて距離を取りたがる《緋》のせいで戦場が広がってしまっていることに危惧を感じる。

 

「ヴァリマール……防御結界を展開する。多少の被弾は無視して間合いを詰めるぞ」

 

 方針を決めリィンは法術による結界の準備を始め、次の瞬間《緋》は横から砲撃を受けた。

 

「何だっ!?」

 

 霊力を溜める体勢を取った《灰》は予想しなかった砲撃に振り返る。

 

「そこまでだっ!」

 

 そこには最新の導力戦車《アハツェン》が横隊を組んでその砲口を《緋》に集中させていた。

 

「クレイグ中将っ! 第四機甲師団っ!?」

 

 その戦車の上に仁王立ちに佇むオーラフ・クレイグにリィンは目を疑う。

 

「その声は……その巨人に乗っているのはリィン君なのか!?」

 

 騎神越しに聞こえて来た覚えのある声にオーラフは驚く。

 

「その巨人はいったい…………

 いや、今はいい。それより退くが良い。ここからは我が第四機甲師団、主力部隊に任せるが良いっ!」

 

 雄々しく言い切ったオーラフは部隊に一斉砲撃を号令する。

 流石の騎神も戦車の集中砲火に防御の姿勢を取る。

 だが、リィンはそれを見逃してはいなかった。

 

「ダメだ。貴方達が敵う相手じゃない! 逃げてくださいっ!」

 

 リィンの叫びも虚しく、“暗黒竜”の名残とも言える尻尾が伸び、戦車部隊を無造作に薙ぎ払う。

 

「ぬおっ!?」

 

「クレイグ中将っ!」

 

 戦車の上で仁王立ちしていたオーラフはその衝撃に吹き飛ばされ、《灰》は慌てて彼を空中で受け止める。

 

「御無事ですか?」

 

「あ……ああ、すまない……」

 

 呆然とリィンの呼びかけにオーラフは頷き、リィンは乱暴な手付きでオーラフを地上に戻す。

 

「とにかく離れていてください。あいつは戦車でどうにかなる相手じゃありません」

 

「しかし、リィン君――っ」

 

 反射的に言い返そうとした言葉をオーラフは呑み込む。

 “暗黒竜”の出現と言う眉唾な報告で出動し、実際にそうと言える存在と対峙したが精鋭と謳われたはずの第四機甲師団はその存在に対してあまりにも無力だった。

 

「すまない……帝都を頼む」

 

 意気揚々に戦場に駆け付けておいて何もできなかった恥に体を震わせながらオーラフは《灰》に向かって頭を下げた。

 

「最善を尽くします」

 

 オーラフの言葉に応え《灰》は《緋》に向き直り、リィンは眉を顰めた。

 

「何をしている?」

 

 《緋》はオーラフを助けていた《灰》を無視して、薙ぎ払った戦車の前に佇んでいた。

 操縦士達が慌てて逃げていく姿に目もくれず、《緋》は徐に手に持った剣を戦車に突き立てた。

 戦車は焔に包まれて塵も残さずに消えた。

 それで満足したのか《緋》は《灰》に向き直り、その魔力を解放する。

 

「なっ――」

 

 《緋》の目の前に霊力で編まれた武具を見た瞬間、リィンは咄嗟に《灰》の身体を捩り――左肩が爆散した。

 

「うぐっ!」

 

 機体の損傷を痛みとして共有したリィンはその激痛に呻く。

 新たに《千の武具》に取り込まれた戦車砲。

 吹き飛んだ《灰》の左腕に《緋》は笑みを気配を滲ませ、さらに同じものを展開する。

 《緋》の目の前に十数の戦車の“砲”が宙を浮いて横隊を組む。

 

「グラールスフィアッ!」

 

 一斉射撃をリィンは防御結界を展開して防ぐが、怯んでいる間に《緋》の手の一振りで砲は消え、次の瞬間《灰》を取り囲むように再び現れる。

 

「っ――」

 

 間髪入れずに砲が火を噴く。

 一撃の威力を弱くし、連射性を上げた砲撃の雨を全方位から受けることになった《灰》は見る間にその身を削られていく。

 太刀は折れ、右腕は手首を失い、足は二つとも粉々に散り、顔が抉られ、胸には風穴も空く。

 一種の工芸品とも通じる《騎神》は見る間にただのガラクタに成り果てた。

 

「なっ……」

 

 それを間近で見る事となったオーラフは絶句する。

 

「リィン君……」

 

 薙ぎ払われた戦車から中将として部下を救うことも忘れてその場に立ち尽くす。

 それは偉そうなことを言ってあっさりと負けたことへの呆れではない。

 《緋》と《灰》の戦いに無智に入り込み、どんな原理か分からないが“砲”を与えてしまった失態にオーラフは自分への怒りに震える。

 

「リィン君っ!」

 

 部下のことを放り出してオーラフは朽ち果てた《灰》に向かって駆け出す。

 

「中将っ! ダメですっ!」

 

 が、そんな彼を部下達が抱き着く様に止める。

 

「ええいっ! 放せっ!」

 

 身体を張って止めようとする部下を振り解こうとするが、《緋》が歩き出した地響きにオーラフ達はもつれるように転ぶ。

 

「――くっ……待て、やめろっ!」

 

 胴体だけで立っている《灰》の前に《緋》は立つとその手に魔剣を顕現させる。

 刀身だけでも騎神に匹敵する長剣を《緋》は振り被り、止めの一撃を――

 

「神鬼合一」

 

 その声は異様なほどにその場に静かに響き渡った。

 振り下ろされた長剣が《灰》が盾にするように差し出した“左腕”を斬り飛ばし、“右腕”によって下から殴り飛ばされ空を舞った。

 

「なっ!?」

 

 目の前で起きた現象にオーラフとその部下たちは目を剥く。

 霊感のないオーラフ達でも分かる目に見える程の霊力の迸り。

 《緋》を殴り飛ばして転がった《灰》からゼムリアストーンの結晶が増殖するように蠢いて人型を作る。

 一瞬、全身をゼムリアストーンの結晶で覆い尽くされた《灰》は次の瞬間、結晶は砕けて無傷の《灰》が復活する。

 

「機体が再生した! どういう存在なんだっ!?」

 

 驚く外野を他所に、リィンは額から流れる血を拭い、折れた腕に応急処置を施す。

 

「まだやれるな、ヴァリマール?」

 

『起動者ヨ。ワレニ何ヲシタ?』

 

 返ってきた困惑の言葉にリィンは簡潔に答える。

 

「《騎神》が本来持っている自己修復機能に《自己相克》で作った霊力を使ってオーバーロードを起こさせて無理矢理直した。ほとんど賭けだったが成功してよかった」

 

 リンがゼムリアストーンの結晶でヴァリマールの修復促進をしていたのを見ていたからこその荒業だが、リィンが負った怪我まではその範疇ではない。

 

『…………何故、汝ハ生キテイル?』

 

「酷い言い草だな……

 はっきり言って体は死ぬほど痛い。《聖痕》の霊脈がなかったらそれこそ死んでいただろうな」

 

『通常、人ヒトリニ対シテ霊脈ハ一ツナノダガ……』

 

 よくよく調べてみれば確かにリィンの中には二つの霊脈があり、一つは瀕死と言って良い程に消えかけている。

 今更ながら今代の起動者の異常さにヴァリマールはようやく気が付く。

 確かにリィンの説明は理論上可能な話だ。

 安置される場所も霊脈の良し悪しで修復に掛かる時間は変化するので、相応の霊力を流し込めば機体は瞬く間に修復することができる。

 だがそれはあくまで理論上の話であり、それを実行した起動者をヴァリマールはリィン以外では知らない。

 そもそも最初の分け身さえも、騎神で行った者はいないほどだ。

 

『リィンヨ……戦域カラノ離脱ヲ提案スル……』

 

「何だと……?」

 

『汝ノバイタルガ急速ニ低下シテイル……コレ以上ノ戦闘ハ危険ト判断スル』

 

「却下だ。俺達の後ろには帝都80万人の人達がいる。ここであいつを倒さなければみんなが犠牲になる」

 

『ココデ《テスタ=ロッサ》ヲ撃破デキル可能性ハ零ダ……

 博士ニゼムリアストーンノ武具ヲ製造シテモライ仕切リ直スノガ最善……

 コノ場合ノ犠牲ハ必要ナ犠牲ダ」

 

「っ……」

 

 ヴァリマールの提案にリィンは唇を噛む。

 彼の言葉は正しい。

 試験用とはいえ武器を失い、機体を修復させる程に霊力を消耗させたリィンは意識がいつ途切れてもおかしくない程に疲弊している。

 対して《緋》は大きなダメージを負っているわけではなく、新たに得た“魔砲”に万全ではないリィンは対処できる自信はない。

 しかし、それでも犠牲になる80万人。その中に自分の大切な者が含まれている以上、リィンに退く選択肢はなかった。

 

「………………勝算があれば良いんだな?」

 

『リィン……?』

 

 リィンはヴァリマールに乗り込む際に一緒に持ち込んだ《魔剣アングバール》に視線を送る。

 その持ち主が指摘した通り、自分の力は誰かを守れる程に強くなかった。

 諦観を胸に抱きながらリィンは姿はないが、見守っているはずのリンの名前を呼ぶ。

 

「リン……っ……」

 

 その先を言うのに思わず躊躇う。

 クローゼの祖先が《至宝》に頼らない英断をしたのに、それを自分が破ってしまうことの抵抗。

 リンもノイも超常存在であることは認めるが、その特別を忘れて普通の人間の様に過ごして欲しかった。

 一度の切っ掛けは二度目の選択をハードルを下げる。

 だからと言って、80万人を見捨てる選択をリィンが選べるはずもなかった。

 

「リィン……」

 

 そんな葛藤をするリィンの傍らにノイが不安そうな顔をして現れる。

 

「ノイ、危ないから《箱庭》に戻っていなさい……

 大丈夫だ。ちゃんとするから」

 

 ノイにとって自分は異界と現世を繋ぐ唯一の窓。

 その繋がりを失うことは永劫の闇の中でまた一人になること。

 それをさせないために、リィンは勝手に死ぬわけにはいかない。

 

「そうじゃなくて……」

 

「話は後で聞く、だから早く《箱庭》に――」

 

 一秒でも彼女を戦場にいさせたくない。

 そんなことを考えながら、リィンはいっそ強制的に《箱庭》へ押し込もうと手を伸ばす。

 

「わたしはっ!」

 

 しかし、そんなリィンをノイは声を上げて拒絶した。

 

「わたしには戦える力なんてないけど、でもわたしだってリィンの力になりたいんだよ」

 

「ノイ……」

 

「わたしもリンも、ルフィナもみんなリィンに感謝している……

 リィンはわたし達に沢山のものをくれた。だからわたしたちにリィンを助けさせて」

 

「あ……」

 

 初めての、こちらの意志を無視する我儘にリィンは唖然とする。

 

「…………そうか……」

 

 それはノイだけでなく、リンの意志でもあるのだろう。

 その事実にリィンは胸に込み上げてくるものを感じずにはいられない。

 ただ乞われるだけの存在だった彼女たちが、自分の意志で与えたいと言うことの意味。

 その成長に喜ばずにはいられない。

 

「そうだな……」

 

 強張った肩の力を抜いてリィンは笑う。

 

「では、何が必要ですか?」

 

 すかさずノイとは逆側にリンが現れて、無表情のまま待っていたとばかりに顔を近付けてくる。

 

「いや、今は必要ない」

 

 しかし、リィンは迫ってくるリンの要求を拒絶した。

 

「え……?」

 

「あの程度の相手、俺だけで十分だ。リンの“力”は《銀》や《黒》、《劫炎》と戦う時までとっておいてくれ」

 

 先程まで必死の形相で戦っていたリィンは嘘のように晴れやかな表情で言い切った。

 

「ですが、勝算は――」

 

「あるよ……リンに頼らないで済む“力”がまだ俺にはある」

 

 《空の至宝》の力を使うことを受け入れたが故に開けた選択肢。

 何とも皮肉なことだとリィンは苦笑して、目の前の端末に手を伸ばす。

 

「第一オーブのデータを破棄」

 

『リィン!?』

 

 突然のリィンの暴挙にヴァリマールは声を上げる。

 ギリギリの戦いをしているのに、オーブによる機体の強化を捨てるリィンの暴挙を理解できずに困惑する。

 

「《匣の聖痕》をベースに《空の至宝》の秘蹟プログラムを限定再現――第一オーブへと転写」

 

 自分の中の《聖痕》を書き換え、同時に端末に指を走らせリィンは即興でプログラムを組む。

 脳裏に思い浮かべるのはリベールで旅をした時に事件の中心に存在していた黒のオーブメント。

 プログラムを組みながらリィンはヴァリマールを操作して、その腕を天高く掲げる。

 

『――――』

 

 復活した《灰》を理解できず遠巻きにしていた《緋》はその動きに身構える。

 

「オーバルアーツ――《ゴスペル》」

 

 ヴァリマールの掌の上に生まれた黒い球体から黒い光の波紋が広がり、それは帝都にまで届いた。

 

 

 

 

「なっ――!?」

 

 突然晒された見覚えのある黒い光にオリヴァルトは驚愕する。

 

「オリビエッ!」

 

 同じくそれを知っているミュラーは最悪のタイミングで起きたその現象に振り返る。しかし――

 使えないと思っていても咄嗟に引いてしまった引き金により、導力の銃弾は何の問題もなく銃口から発射され、魔獣を撃ち抜いた。

 

「あれ……?」

 

「《導力停止現象》ではなかったのか?」

 

「違うようだね……あれ?」

 

 ミュラーの言葉に頷いて、オリヴァルトはもう一度首を傾げる。

 槍の瘴気から生み出され続けていた魔獣や魔煌兵の増援が止まった。

 それどころか、黒い光にさらされた魔獣たちは不自然に体を硬直させ、魔煌兵は膝を着いて元の瘴気へと霧散していく。

 そしてそれは競馬場の真ん中に突き刺さっていた槍も同じ様に霧散して消えた。

 

 

 

 

「これは……何が起きているの?」

 

 大通りに突き立った剣が黒い光にさらされた瞬間、垂れ流していた瘴気が止まり、大通りを埋め尽くしていた魔獣たちも同じ光を受けて次々に倒れていく。

 現れた“暗黒竜”から始まり、導力コンピューター並と呼ばれていた頭脳でも何が起きているのかクレアにはまるで分からない。

 ただ一つ言えることは帝都の魔獣、魔煌兵の問題はこの瞬間、解決したと言うことは確かだった。

 

「私たちはいったい何を見ているの?」

 

 その場に彼女の同僚がいたら、意気揚々にこう答えていただろう。

 『これが超帝国人の真の力だ』、と。

 

 

 

 

「何だと……?」

 

 今日で何度目になるか分からない驚きをギリアスは感じていた。

 建築物を透過し、先の“紅の波動”がバルフレイム宮を“煌魔城”に塗り替えた様に“黒の波動”が“煌魔城”をバルフレイム宮へと塗り替える。

 

「今のはレクターの報告にあった《導力停止現象》の光のはず……」

 

 しかし、そのことに気付いているのはその場ではギリアスだけで導力通信からは帝都中の魔獣が突然消滅したという報告が矢継ぎ早に送られてくる。

 そして一番気になる主戦場からは、第四機甲師団が全滅したと報告が入って来ただけで、その後の報告はない。

 

「これがお前の預言の通りだと言うのかイシュメルガ?」

 

 やはりその呼びかけに答えは返ってこない。

 出来る事なら今すぐにでも宰相の立場を放り出し、《灰》と《緋》の戦いを自分の目で見届けたいギリアス・オズボーンだった。

 

「む……あれは……」

 

 と、郊外の空を眺めるしかなかったギリアスは視線を下ろして、それを見つけた。

 

 

 

 

「これはどういうことなの?」

 

 とある民家の屋根の上でヴィータ・クロチルダは更なる混乱に見舞われた。

 

「あれは《ゴスペル》の光のはず……なのにどうして《導力停止現象》が起きてないの?」

 

「おやおや、使徒ともあろう御方が不勉強だね」

 

 その呟きに答えたのは、気配を感じさせずにそこにいた《怪盗紳士》だった。

 

「ゴスペルが《導力停止現象》を引き起こしたのはあくまで結果に過ぎないのだよ……

 現に我々はオーブメントの性能を向上させる実験を行っているからね……

 いやそもそも《リベル=アーク》があった時には導力の概念すらなかったのだから、当然の話だ」

 

「それなら今の光は何だって言うのよ?」

 

「ふむ……たしか《博士》曰く、《導力停止現象》は至宝が外の脅威を排除するための防衛機能として“導力”を奪うように設定したに過ぎないと考察していたな……

 ならば話は簡単だ。その設定された“導力”の部分を別のものに置き換えれば、それは別の《停止現象》となるということだ」

 

「別の《停止現象》……まさか――」

 

「くくく……ああ、わざわざ帝都に戻って来た甲斐があったというものだ!

 さあ、リィン・シュバルツァー! 君は私にどんな奇蹟を見せてくれるというのだっ!」

 

 帝都の至る所から、黒い光にさらされて受肉できず不安定な姿しか保てなかった魔獣たちは、その体が元の“瘴気”へ還って行く。

 立ち昇った“瘴気”はうねりとなって、一つの方向へと流れていく。

 

「これ以上何が起こるって言うのよ……」

 

「フフフ、そんな顔をしてはせっかくの美しい顔が台無しというものだ……

 ああ、安心すると良い。“暗黒竜”と“超帝国人”との素晴らしい戦いはこの私が六台のオーバルカメラを使ってしっかりと記憶してある……

 なのでせっかくだ。この後魔女殿の仕事場で上映会と洒落込もうではないか」

 

「いやああああっ! 見たくない! 助けておばーちゃんっ!」

 

 ブルブランの提案にヴィータは耳を塞いで悲鳴を上げるのだった。

 

 

 

 

『ムウ……』

 

「どうしたヴァリマール……“巨いなる騎士”の力はその程度か?」

 

 “呪いの瘴気”を設定して駆動した導力魔法《ゴスペル》によって集められた帝都に蔓延していた“瘴気”はヴァリマールの頭上に巨大な球体の塊となって圧し掛かっていた。

 リィンの挑発の言葉にムキになる様にヴァリマールは全身の霊力を振り絞り“瘴気”を支える。

 もっともヴァリマールに掛かっている負荷はリィンも感じている。

 挑発的な言葉はやせ我慢でしかない。

 そして当然“瘴気”を集めて終わりではない。

 

「第二オーブのデータを破棄……

 《腕の聖痕》をベースに《焔の至宝》の秘蹟プログラムを限定再現、オーブへ転写……

 “瘴気”の一部を浄化してヴァリマールの霊力へ変換」

 

 膨張を続ける“瘴気”を無害化してヴァリマールの活力に変える。

 

「第三オーブのデータを破棄……

 《槍の聖痕》をベースに《大地の至宝》の秘蹟プログラムを限定再現、オーブへ転写……

 “瘴気”を物質素子に変換。形状を太刀に固定」

 

 大きく腕を広げて“瘴気”の塊を支えていたヴァリマールは叩き潰すようにその腕を頭上で合わせる。

 両側から潰された黒い“瘴気”は漆黒の刃となり――何故か太刀をイメージしたはずなのに“漆黒のアングバール”がヴァリマールの手に握られる。

 

「これで……文句はないな、ヴァリマール?」

 

 熱を持つ《聖痕》の痛みを歯を食いしばって耐えながらリィンは尋ねる。

 

『ウ、ウム……』

 

「リ、リィン……」

 

「無茶をし過ぎと判断します」

 

「大丈夫だよ」

 

 不安そうな顔をするノイとリンにリィンは笑顔を作って応える。

 正直、彼女たちに向ける優しさの一割でも自分に向けて欲しいとヴァリマールは思った。

 

「さっさとこいつを倒して終わらせるぞ。ヴァリマールッ!」

 

『……応っ』

 

 意気込むリィンにヴァリマールは気持ちを切り替えて強く頷く。

 対する《緋》は恐慌状態に陥っていた。

 原型を留めない程に壊してやったのに何事もなかったように復活してきた《灰》。

 そして帝都に残した霊力確保の端末はどんな原理なのか全て潰され、“黒い波動”によって魔王の姿を維持することも難しくなる。

 さらには一目でやばいと思わせる“暗黒剣”を作り出した。

 

『オオオオオオオオオッ!!』

 

 臆する気持ちを奮い立たせるように《緋》は咆哮を挙げて、その両手に魔剣を顕現させる。

 先程のような逃げ撃ちはもはや通用しないと悟ったのか、顕現させていた“魔砲”を霊力に戻して二つの剣に集中させる。

 

『オオオオオオオオオッ!!』

 

 《緋》に張り合う様に《灰》もまた咆える。

 記憶データに蘇った前回の屈辱。

 《銀》に守られてたまたま生き残ってしまった前任者の無念を晴らすために、何よりこれ程の御膳立てをしてくれた起動者に相応しい騎神であるようにプログラムの感情を昂らせる。

 《灰》と《緋》の霊力が迸って立ち昇る。

 

『ッ――!』

 

「っ――!」

 

 動いたのは同時。

 そしてその巨体から《緋》が先手を取り、二つの魔剣を振り下ろす。

 対する《灰》は振り下ろされる巨大な剣に真っ向から“暗黒剣”を迎え討つ。

 

「七の太刀っ! 暁天」

 

 一瞬九斬の連撃が二本の魔剣を砕き、その刃は《エンド・オブ・ヴァーミリオン》の身体を斬り刻む。

 

『ウオオオオオッ!』

 

 しかし、《緋》は魔王の体を脱ぎ捨てて跳躍し、《テスタ=ロッサ》の姿で最後の魔剣を振り下ろす。

 《灰》は振り抜いた“暗黒剣”の刃を返し――

 

「――――二連っ!」

 

 二度目の“暁天”で《テスタ=ロッサ》を迎撃する。

 一刀が魔剣を叩き折り、二刀が右脚、三刀が左脚、四刀が右腕を斬り、五刀が胴体に寸断――半ばで残った左腕を“暗黒剣”を体に埋めながら止めた。

 そして刃が止まったその瞬間、《テスタ=ロッサ》の背後から“魔王”の名残の剣尾が伸びて、《灰》の胸を貫く。

 

「うぐっ! 肉を斬らせて骨を断つか……トカゲのくせに」

 

 胸に走る痛みを歯を食いしばってリィンは耐えるが、《緋》は最後の力を振り絞る様に自分と《灰》の周囲に八振りの魔剣を顕現させて一斉に《灰》に突き刺した。

 

「っ――この程度で……負けられるか……」

 

 魔剣によって体を地面に固定された《灰》は“暗黒剣”を振り抜くことはできない。

 ならばとリィンは“暗黒剣”に焔を宿して《緋》を焼く。

 それに負けじと左腕以外を失った《緋》もまた突き刺した剣尾や全身を刺し貫いた魔剣に焔を宿して《灰》を焼く。

 点された二つの焔は瞬く間に燃え上がり、互いを呑み込み合ってより大きな“焔”へと化す。

 

「守るんだ……今度こそ……俺が――っ!」

 

 焔は《灰》を熱して、焼いて、溶かす。

 焔は《緋》を熱して、焼いて、溶かす。

 その熱量が際限なく高まり、地表さえも焼き一帯を溶岩の大地へと変貌させる。

 

「退避っ! 総員、退避っ!」

 

 負傷者を抱え、無事な戦車に全員を乗せたオーラフはその焔から一目散に逃げる。

 限界まで膨れ上がった焔は巨大な火柱となって極大の爆発を引き起こした。

 

 そして焦土と化した大地には《灰》だけが残った。

 

 

 






 ドライケルス広場 生中継

エリオット
「こ、これがリィンの本気なの……?」

ガイウス
「騎神というのはこれ程までの存在だったのか……」

マキアス
「というか何であの巨体で分け身が使えるんだっ!?」

エマ
「暗黒竜と……エンド・オブ・ヴァーミリオンを……倒した……?」

アリサ
「帝都中に溢れかえっていた魔獣を消したのはあの“黒い光”よね?」

ユーシス
「“煌魔城”とやらも消し去った」

ラウラ
「これは夢か?」

フィー
「いったいいくつ奇蹟が起きたんだろう……」

クリス
「これが“巨いなる騎士”……かつてドライケルス大帝が駆り帝国を平定した力……」

ギリアス
「いやいやいやいや……」





カメラマン
「これもマスターのため、これもマスターのため、これもマスターのため……覚えてやがれですわ、ブルブランッ!」





どうやって儀式もなしに《相克》を起こすのか?

答え:直火焼き


強化具合
テスタ=ロッサ
暗黒竜20%から100%
千の武具に“魔砲”を獲得、並びに「ロード・ガラクシア」を修得

ヴァリマール
自己修復機能
暗黒剣《アングバール》(仮)

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