(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~   作:アルカンシェル

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おそらくカイエン公爵家の血筋でも起源がオルトロス――アルノールなのでテスタ=ロッサの起動者になれる素養はあると思います。
ただ“呪い”によって自分の命を削るのが嫌だからクロワールはセドリックを使おうとしたのではないかと考えています。





56話 緋の帝都Ⅷ

 

 

 7月26日。

 その日は帝都の夏至祭の初日。

 三日間の内、皇族が参加することもあり初日が最も盛り上がるその日に起きたのは帝都史に残る程の大事件だった。

 《帝国解放戦線》と名乗るテロリストによる皇族の襲撃。

 アルフィン皇女殿下を誘拐した彼らが続けて引き起こしたのは一昨年の“リベールの異変”に勝るとも劣らない災厄だった。

 およそ1000年前、ヘクトル大帝に討伐され、250年前の獅子戦役の際、オルトロス偽帝によって復活しドライケルス大帝によって討伐された《暗黒竜》ゾロ=アグルーガ。

 その二度目の復活に華やかなはずの夏至祭は一転して“死都”と化した。

 生気を奪われ倒れる市民。

 “瘴気”によって溢れかえる魔獣に巨人。

 正規軍が奮闘するも、途切れることなく発生する魔獣に押し切られる寸前にまで追い込まれた。さらには“暗黒竜”が撒き散らした“瘴気”に当てられて発狂する者もいた。

 それはまるでかつて北の大地に降り掛かった災厄“塩の杭”に勝るとも劣らない災害。

 もっとも“塩の杭”は天災であり、帝都に降り掛かった厄災はテロリストが起こした“人災”だった。

 しかし、死都と化した帝都を救ったのもまた、伝説の存在だった。

 『焔と共に輝き甲冑をまといし巨大な騎士』

 それは何処からともなく現れ、《暗黒竜》を打ち倒し光を持って帝都に溢れた魔獣を消し去った。

 まさしく帝国の各地に伝わる“巨いなる騎士”。

 役割を終えて動かなくなった“巨いなる騎士”は第四機甲師団基地の一角に運び込まれ、二日目の夏至祭はその雄姿を一目見ようと帝都中から人が集まっていた。

 

 

 

 

「押さないでくださいっ! 押さないでくださいっ!」

 

 本来なら三日、夏至祭の初日で終わるはずだった《特別実習》は夏至祭終了までに延長され、トールズ組は戦後処理に駆り出されていた。

 “灰の騎神”を一目見ようと長蛇の列を作る民衆にアリサは何度も叫ぶ。

 彼らの気持ちは分からないわけではない。

 成す術なく生気を奪われて死を身近に体感してしまった民衆がそれを救ってくれた救世主の存在に焦がれるのは当然の帰結であり、今もドライケルス広場に設置されたモニターにループして放映されている昨日の騎神戦の映像がそれに拍車を掛けていた。

 

「こちらの誘導に従って、ゆっくりと進んで、立ち止まらないでください」

 

 もしかすれば夏至祭の初日、それぞれの行事に参加する皇族達を観ようと集まった時よりも多いかもしれない人数。

 エマが目印の旗を担いで長蛇の列を誘導している。

 ラウラが声を上げて、押し合う人達に呼びかける。

 フィーが人の合間を縫って駆け回る。

 本来なら騎神を人目に付かないようにするのが最善なのだろうが、肝心の起動者であるリィンが意識を失った状態だったことと、騎神を隠して置ける場所が帝都になかったことがこんな状況を作っていた。

 

「フェンス越しだって言うのにすごい人ね……」

 

 人を誘導しながらアリサは“灰の騎神”を横目で見る。

 今回の特別実習の前に旧校舎で見せてもらった暗黒時代に作られた大型機械人形“灰の騎神”ヴァリマール。

 見せてもらった時はただの大きな人型の作業機械程度にしか思っていなかった物が、実際はここまでの存在だとは思ってもみなかった。

 それこそ本の中から飛び出て来たのではないかと思う“英雄”。

 それに乗って“暗黒竜”を倒したのがリィンだと言うのがアリサにはまだ信じられなかった。

 

「…………街に溢れた魔獣だってリィンが全部倒したようなものだし……私、何してるんだろう……」

 

 ヴァリマールを回収することでも一騒動があり、その存在を隠すことはできなかった。

 テロが起きた夕方に戦闘は終わったというのに、回収できたのは今朝の明け方。

 一晩中燃え続けた焔に魔獣への対処が必要なくなり駆け付けた憲兵隊は成す術なく、溶岩と化した大地を遠巻きに見守ることしかできなかった。

 煌々と燃え続けた焔は一晩掛けてようやく静まり、その中央に残されたのはリィンが乗っていた《灰》だけだった。

 その中から、何故かできたエマによる外部操作で騎神から降ろされたリィンの有様は酷いものだった。

 夏服の白いシャツを真っ赤に血で染めて、折れていた腕を縛って固定して、生きているのが不思議なくらいの重症だった。

 今頃は帝都病院でテロで負傷したアンゼリカとクロウの二人と一緒に入院しているだろう。

 

「本当に……私は……」

 

 一昨年のリベールで会った時は同じ家出をした者同士だったはずなのに、自分は何も変えられず、リィンは英雄となってしまった。

 

「別に私は英雄なんかになりたいわけじゃないけど……」

 

 どうしてここまで差ができてしまったのか、何度目になるか分からない自問自答を繰り返す。

 

「あの、すみません。列の最後尾はこちらでしょうか?」

 

「――あ……はい。ここに並んで――」

 

 話しかけられたアリサは慌てて顔を上げ、息を呑んだ。

 その人物はアリサが見間違えるはずもない――

 

「父様……」

 

 8年前に事故で亡くなったはずの父がそこにいた。しかし……

 

「ふむ、どなたかと間違えているんじゃないかな? 私はアルベリヒ・ルーグマン。まあ、確かに妻と娘がいるがね」

 

 驚いて固まるアリサに彼はそう答えた。

 

 

 

 

 一時避難所での支援を行っている女性陣に対して、男子陣は帝都を巡回して残敵が万一にも残っていないか見回っていた。

 

「いったい僕達の戦いは何だったのだろうな?」

 

 ただ黙々と歩いていたマキアスが唐突にそんなことを呟いた。

 

「そうだね……結局リィンが全部解決しちゃったんだよね」

 

 半壊した家屋や、魔獣が横転させたトラムに視線を移しながらエリオットはそれに頷く。

 あの後、アルフィン皇女殿下とエリゼを無事に地上の憲兵隊に引き渡したが、その後程なくして“暗黒竜”ではない“竜”が現れ、“灰の騎神”も現れた。

 Ⅶ組ができたことはリィンへの援軍ではなく、憲兵隊に混じっての防衛線だった。

 だが、それも無限に湧いて来る魔獣に成す術なく押し切られるところで“黒い波動”によって救われた。

 

「それに君も見ただろリィンのあの姿を」

 

「うん……普段と纏っている気配が全然違っていて……まるで結社の“剣鬼”みたいだった」

 

 マキアスの言葉にエリオットは頷いて、あの時の恐ろしい覇気を纏っていたリィンのことを思い出して身震いする。

 

「というか間違いなく“剣鬼”の正体はリィンだろ……僕達は騙されていたんだっ!」

 

「あ、あの……マキアス……」

 

 ヒートアップし始めたマキアスにクリスは恐る恐る声を掛ける。

 が、罰が悪く小声になった声は簡単に無視される。

 

「舐められたものだな……俺達は今までずっと手加減をされていたということか」

 

「いや……ユーシス……」

 

 不愉快そうにユーシスは吐き捨てるが、そもそもゼムリアの太刀を抜かせることが出来ていなかった時点で手加減されていたのは分かっていたはずではとクリスは思う。

 

「でもリィンの正体が結社の“剣鬼”なら《リベールの異変》ももしかしたらリィンが……

 皇族に近付いたのも帝国で“異変”を起こすためだったら、これってまずいよね?」

 

「エリオット……それは……」

 

 確かにそう考えてしまっても仕方がないが、邪推が過ぎるというものだ。

 

「考え過ぎではないのか?

 “剣鬼”の行動を思い出してもユーシスの兄上に雇われていたらしい、鉄道の事件も助けてくれた……

 かく言う俺も“剣鬼”には助けられている」

 

「ガイウス、良かった……」

 

 不信感を大きくする三人に対して落ち着いているガイウスにクリスは安堵する。

 

「だが、それならどうしてリィンはそのことを言わなかったんだ?

 言うタイミングは今までいくらでもあったはずだ……

 それにあの時の“剣鬼”は僕達を本気で殺そうとしていたぞ!」

 

 頑なに疑うマキアスにクリスは顔をしかめて言い返す。

 

「そんなのリィンさんから信用度が足りてないだけの話じゃないか……

 本気で殺そうと仕向けたのはルーファス卿のはずだし、そもそも殺す気の実践訓練なんて当たり前のことだろ? 

 それに僕はあの時点で正体を明かされていたら、余計に足を引っ張っていたよ」

 

 鉄道ジャックの際に遭遇したのが“剣鬼”ではなくリィンだったら。

 おそらく大義名分を得たと嬉々として自分たちはリィンに同行して足を引っ張っていただろう。

 

「それは……そうかもしれないが……嘘をつくような人間は信用できないだろ?」

 

「なら僕もマキアス達に嘘を吐いていることがあるよ」

 

 クリスの返事にマキアスは虚を突かれたように口ごもる。

 

「だけど別にそのことは必要だと思っているし、僕が抱えている事情をまだみんなに説明することはできない……

 ならマキアスは僕を信用できないって言うの?」

 

「そ、そんなことは……ないが……」

 

「リィンさんが“剣鬼”だったことは確かに驚いたけど、だからって僕達が陰口を言うのは筋違いだよ……

 特別実習の時もそうだけど、今回だってリィンさんは帝都を護ったんだ。それとも“剣鬼”だったというだけでリィンさんを君たちは信じられなくなるの?」

 

「…………そうだな。すまなかった……いろいろあり過ぎて混乱していた」

 

 クリスの指摘にマキアスは重いため息を吐いて自分の非を認めた。

 それを切っ掛けに漂っていた重い空気がわずかに晴れる。

 

「それにしてもお前はリィンの“変身”とやらには驚いていなかったようだが、それなら“剣鬼”のことはすぐに気付いたんじゃないのか?」

 

 ユーシスの指摘にクリスはぎくりと肩を揺らした。

 

「い、いや……それはその……髪が白くなるのは知っていたけど……

 長くなるのは知らなかったと言うか。今思えばどうして気付かなかったのか僕も不思議なんだけど」

 

 “剣鬼”という名前を拝命したことは教えられていなかったが、そもそもその名前を送られた原因が自分にあるためクリスはしどろもどろに言い訳を探す。

 

「それにこのことで僕はリィンさんに何も言えないから」

 

「それってどういうことなの?」

 

「い、今はそんなことよりも魔獣の残党探しに集中しよう」

 

 聞き返して来るエリオットにクリスは取り繕って歩き出して――そこに声が掛けられた。

 

「ああ、その制服。丁度良かった」

 

「むっ……確か帝都美術館の館長だな」

 

 慌てた様子で声を掛けてきた男にユーシスは一日目の実習課題で会った男性だと思い出す。

 

「何かありましたか?」

 

「ええ、実は今回の事件で“聖女の槍”が盗まれてしまったんです」

 

「“聖女の槍”が……?」

 

「憲兵隊に連絡はしたんですが、帝都はこんな有様ですぐに動けないと言われて、どうしたらいいか困っていて」

 

「火事場泥棒か……最有力の容疑者は《帝国解放戦線》だろうが……」

 

 一同が思い浮かべたのはとある女剣士。

 

「いや、まさかそんなデュバリィさんがそんなことを……」

 

「クリス、僕達はまだ何も言ってないが……まあ、彼女は“槍の聖女”の熱烈なファンのようだからもしかしたら……」

 

「き、決め付けは良くないよ……まあ、あそこまで熱狂的なファンは珍しいけど」

 

「確かに彼女は聖女グッズのほとんどを購入していったが……まさか……」

 

「元々獅子戦役の時もこんな火事場泥棒が現れて紛失したらしいからな……あり得ない話ではないだろう」

 

 クリスがフォローするもマキアス達はあり得ると納得してしまう。

 

「何か手掛かりになるようなものはないんですか?」

 

「それが“聖女の槍”以外にもいくつか盗難があって……」

 

「とにかく博物館に行ってみましょう」

 

 そうしてクリス達は乞われるがまま盗難事件の犯人探しを行うことになった。

 “聖女”の槍以外にもいくつかの武具が盗難されていた。

 中にはアルゼイド家の《ガランシャール》もそこに含まれていたのだが、それは帝都に来ていたヴィクターが事件の際に持ち出していたためといった顛末があったものの、“聖女の槍”を始めとした盗難品は無事に見つけることが出来た。

 

 

 

 

 

「ええいっ! ドライケルスの亡霊が忌々しいっ!」

 

 バルフレイム宮の一室でクロワール・ド・カイエンは憤慨してテーブルを叩く。

 夏至祭で行われる帝都を中心にした大貴族の社交界に出席する名目でカイエンは夏至祭の初日の夜、“暗黒竜”が程良く暴れた所に駆け付けるはずだった。

 自分の指揮の下で、《蒼》を旗印に新兵器をお披露目して颯爽と“暗黒竜”を討ち滅ぼし、帝都の求心力を得る。

 それがテロリストと決めた計画だった。

 だが蓋を開けてみれば、帝都は目立った破壊の痕もなく、目覚めた《灰》によって“暗黒竜”と巷では言われている《緋》が討伐されただけだった。

 “竜殺し”の武勲は掠め取られ、得られるはずだった名誉を取りこぼしたクロワールは憤慨する。

 

「何が“灰の英雄”だっ! 愚王の器風情がカイエンの覇道を邪魔するか!」

 

 叫ぶことで苛立ちをクロワールは紛らわせる。

 今もなおドライケルス広場では《灰》と《緋》の戦いが上映されているが、その様もカイエン家が持つべき器を晒し物にされているようで苛立ちを募らせる。

 

「心中お察しします閣下」

 

 人払いをしていたはずの室内にクロワール以外の声が唐突に響く。

 

「おおっ! アルベリヒか、してどうだった?」

 

 自分以外の人が現れたおかげなのか、クロワールは荒げていた息を一瞬で整え、威厳に満ちた風格を纏ってその男に尋ねる。

 

「ええ、近くで見てきましたが、思った通り《緋》は《灰》の中に封じられているようです……

 ですが閣下のお考え通り、分離は可能でしょう」

 

「そうか、そうであろう」

 

 望む答えが返って来たことにクロワールは先程までの憤りを忘れて満足そうに頷く。

 

「ですが、やはり儀式には“城”を使って場を整える必要があるでしょう」

 

「そうか……ならばこのまま予定通りか……」

 

 元々今回の策はテロリスト達が上伸してきたもの。

 当たろうが失敗しようが、クロワールにはどちらでも良かった作戦でしかない。

 

「奴等も目を掛けてやったが、この程度だったか……元々は使い捨ての駒に過ぎないのだから構わんがな」

 

 考えようによっては今回の事件も悪くはないかもしれない。

 憂国の士を気取るのは良い。

 だが、限度を弁えない“箍”の外れた思考にクロワールは呆れていた。

 奴等は“鉄血宰相”を殺せるならば帝都を死都にしても構わないと思っているのだろう。

 その思考はこの次の作戦でも容易に読み取れる。

 しかし、クロワールの考えはそこからずれている。

 “鉄血宰相”と“アルノールの血筋”は排除したい。だが、全てが終わった後に自分が統治する帝都を滅ぼされては困る。

 

「彼らについては問題ないでしょう……今回の失態で狂犬に首輪をつけられたと思えば良いでしょう。元々、こちらが失うものなどないのですから」

 

「ふむ……」

 

「それにこれはまだ確定した情報ではありませんが、《緋》から“暗黒竜”の呪いが取り除かれている可能性も出てきました……

 つまり閣下が乗ったとしてもその尊き御命を削ることなく、起動者になれるかもしれません」

 

「おお、そうか」

 

 アルベリヒの推測にクロワールは今度こそ機嫌を直す。

 皇帝家の血筋はクロワールにも流れており、《緋》の起動者になる資格は存在している。

 だが、それをするには《緋》を蝕む“暗黒竜”の呪いが邪魔だった。

 起動者になって莫大な“力”を得ても“命”を削られてしまえば本末転倒。

 故にクロワールは自分が起動者になることは考えず、皇族の子供を利用するつもりでいた。

 が、その“命”を削る懸念がなくなったのならば、回りくどいことをせずに帝国の支配者となれる。

 

「フフフ……どうやら運が向いてきたようだな……」

 

 ほくそ笑むクロワールはアルベリヒの愉悦を含んだ笑みに気付くことはなく、皇族誘拐計画から《灰》誘拐計画を考えるのだった。

 

「ああ、それから閣下。後でこちらを“彼”に渡しておいていただけるでしょうか?」

 

 そう言ってアルベリヒが取り出したのアタッシュケースに納められた三つの宝珠だった。

 

 

 

 

「まさか、このような奇蹟が起きるとはな」

 

 揺蕩うまどろみの闇の中、厳かな声が聞こえて来る。

 

「かつて《黒》により汚され、自らを星杯に封じ込めていたが……

 よもやあのような形でその穢れを払うことが出来ようとはな。これが人の子の可能性というものか」

 

 一方的な語り掛ける言葉には深い尊敬の念が込められていた。

 

「フフ、この体はすでに腐り切ってしまっているが……

 よくぞ、我が存在を解放してくれた。おかげで“力”だけでもこの世に残すことはできそうだ」

 

 その声は力こそ弱々しいが満足そうに言う。

 

「このような物で感謝の気持ちが伝わるか自信はないのだが、小さき者よ……受け取るが良い」

 

 そう言うとその存在から何か温かな“力”が右手の中に集まる。

 

「さらばだ……超帝国人よ」

 

「ちょっと待てっ!」

 

 語り掛けるその存在に声を上げて抗議した瞬間、リィンは目を覚ます。

 そして、そこには目を閉じて近付いて来るオリヴァルト皇子の顔が視界一杯にあった。

 

「破甲拳ッ!!」

 

 右手で持っていた“琥耀石”を握ったままリィンはその横面を殴った。

 

「ぎゃふん!」

 

「貴方という人はっ! 貴方という人はっ! 二年前からほんっとうに何も変わってないなっ!」

 

 殴った勢いのまま体を起こしたリィンは叫ぶ。

 と、オリヴァルトがリィンの目覚めに次の言葉を言うよりも早く、病室の扉が勢いよく開いた。

 

「兄様っ!」

 

 病室に飛び込んだエリゼは目を覚ましたリィンの姿を見るとその場にへたり込む。

 

「ああ……」

 

 泣きはらしたその顔にリィンはバツを悪く頭を掻く。

 

「また心配をかけたみたいだなエリゼ。ごめん」

 

 

 

 







 暗躍

アリサ
「それじゃあ本当に父様じゃないの?」

アルベリヒ
「ああ、別に世界には同じ顔をした人は三人くらいはいるらしいし、珍しいことではないだろ?」

アリサ
「そう……ですね……ごめんなさい」

アルベリヒ
「ところで、君は何か悩みを抱えているのかな?」

アリサ
「ど、どうしてそれを?」

アルベリヒ
「フフ……こうして話をするのも何かの縁だ。私で良ければ君のお父さんに代わって話を聞いてあげるよ」

アリサ
「……実は――」

アルベリヒ
「そうだね。アリサ君は頑張っているよ」

アリサ
「だから――」

アルベリヒ
「ああ、そうだ。君は悪くない」

アリサ
「それで――」

アルベリヒ
「君の頑張りは私が良く分かっている。私は君の味方だ……
 連絡先を渡しておこう、何かあれば連絡すると良い」

アリサ
「アルベリヒ小父様……」

アルベリヒ
「ところでアリサ君、ものは相談なのだけどあの“巨いなる騎士”をもっと近くで見る事はできないかな?」



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