(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~ 作:アルカンシェル
プロジェクト・ティルフィング。
名前が被ってしまいましたので変更するかは後日改めて考えます。
「あのリィンさん。本当にフィーの事は何もしないつもりなんですか?」
夜。一日の学業を終えたクリスはリィンの部屋を訪ねてそう切り出した。
「ああ、フィーの方から相談して来たら答えるつもりだけど俺の方から何かをするつもりはない」
「そんなどうして!?」
言い切ったことに違和感を覚えクリスは反論する。
ガレリア要塞の事件を経て、Ⅶ組のメンバーはそれぞれに思う所があり塞ぎ込んでいる。
その中でも《紫の騎神》を追い駆けて戻って来たフィーの様子が一際おかしいのはクリスも把握していた。
「リィンさんなら何とかしてくれると思っていたのに」
以前のシャーリィ襲来の時に調子を崩したフィーを立て直したこともあり、今度もそれを期待していたクリスは唸る。
「言いたいことは分かるが、今回ばかりは俺がフィーを慰めるわけにはいかないんだ……
オリヴァルト殿下から《紫の騎神》の起動者については聞いてないのか?」
「……ルトガー・クラウゼル。死んだはずのフィーのお父さんが乗っていると言っていましたが本当なんですか?」
「ああ、おそらく追い付いて話をしたんだろう」
「え……でもフィーは見失ったって言ってましたよ?」
「あのフィーだぞ? 見失ったくらいで素直に諦めるような子じゃないだろ?」
「それは……」
リィンの指摘にクリスは口ごもる。
「何を話したかは知らないが、俺はルトガーさんと近い未来戦うことになる……
それこそ生き返ったフィーのお父さんを俺が殺し直すことになるかもしれない。そんな俺がフィーに言葉を掛けても余計に悩ませるだけだ」
「リィンさん。それは本当なんですか?」
「ああ……そしてこれはクリス。君にも無関係なことじゃない」
良い機会だと考えてリィンはクリスにローゼリアの提案を告げる。
「実はヴァリマールと融合状態にあるテスタ=ロッサを分離しようかと思っているんだ……
そしてその導き手と起動者はエマとクリスの二人で担ってもらおうかと思っている」
「え……?」
突然の提案にクリスは問い詰めていた話題を忘れて呆然とする。
「これはローゼリアさんから言い出したことなんだ」
「ローゼリアさんが……」
その事実に思わず頬が緩む。
ユミルでは素気なく袖にされたが、その評価を覆した事実にクリスは嬉しくなる。
「だけど“緋”の起動者になりたいなら先に幾つか説明しておくことがある……
これはさっき言っていた“猟兵王”についても関係してることだ」
「それはつまりリィンさんが背負っているものでもあるという事ですよね? 聞かせて下さい」
浮かれそうになる気持ちを引き締めてクリスは改めてリィンに向き直る。
そうして聞かされたのは“騎神の本来の役目”と“黒の史書による黄昏に至るための預言”。
「つまり“騎神”に選ばれた起動者は勇者でも英雄でもない。“分かたれた鋼”を元の一つに戻すための生贄、言い方を悪くすれば騎神を動かすための電池でしかない」
「あ…………」
わざと酷い表現をした言葉に期待の表情を隠し切れていなかったクリスは愕然と言葉を失う。
「それじゃあ“七の相克”が終わったら猟兵王は……」
「これまでの“試しの相克”では不完全なノスフェラトゥとなってしまったが、全ての因果が収束した場合、そういった因果に縛られた存在は消滅する。というのが俺とローゼリアさんの見解だ……
例外があるとすれば“相克”に勝ち残った起動者だけだろう」
「それって猟兵王だけじゃなくてリィンさんにも当てはまることじゃないですか!?」
「そうだ」
驚愕の声を上げるクリスにリィンは静かに頷く。
「しかも分類としては、俺も不死者の側に片足を突っ込んでいる状態だ……
“雲の至宝”の力があっても方向性が定まっていない漠然とした力だから“黄昏”が終わった時にどうなるか俺にも分からない」
「っ…………」
「テスタ=ロッサに乗ると言う事はそんな行き止まりの戦いに参加すると言うことだ……
戦って死ぬ覚悟はもちろん、途中まで肩を並べて戦う事ができたとしても俺と殺し合いをする覚悟は君にあるのか、セドリック?」
「僕は……」
本名で呼ばれてクリスは改めて考える。
「すぐに答えを返さなくて良い。どちらにしろ起動者には力を求められるから、これまでと同じように体を鍛えるのは必要なことだ……
ただその気があるのなら、旧校舎の地下ダンジョンを“緋”の試しの場に造り変えるし、こんなものも用意した」
そう言ってリィンが取り出しのは見慣れない“剣”だった。
「それは?」
「今までと同じセピスで作った魔剣だ。だけどこれは今までとは違って“鬼の力”――特に“緋”の力を持たせた……
それこそ“魔剣テスタ=ロッサ”とでも言うべき剣だな」
リィンはその場で軽く抜いて見せて、刀身に浮かぶ禍々しさをクリスに見せつける。
「“鬼の力”をクォーツに落とし込んだ技術を応用したものなんだが……
今のテスタ=ロッサはイオさんから分離した陰の気と“黒”の呪いによって侵されている。だから最低限この剣を使って正気を保てなければ、乗ったところで機体に喰い殺されるだけになるだろうな……
まあ乗る気がなかったとしても、この魔剣を扱えるようになればクリスの力になることは間違いないだろう」
そう最後にフォローをするが、情報量が多過ぎたせいなのかクリスは黙り込んでしまう。
そんなクリスにリィンは苦笑を浮かべる。
「さっきも言ったが答えを急ぐ必要はない……
戦わない道を選ぶことだって立派なことだ。だから――」
「リィンさん」
慰めの言葉を遮ってクリスは浮かんだ疑問を口にする。
「テスタ=ロッサはアルノールの血筋を起動者に選ぶと言っていましたよね?
僕が起動者になることを辞退したら、もしかして代わりはアルフィンや兄上になるんですか?」
「“黒の史書”の揺り戻しを考えればその可能性は高いだろうな……
でも安心して良い。今イオさんを間に仲介することでテスタ=ロッサの起動者の血の縛りを誤魔化す方法も考えている」
あえて生者が不死者にならないようにする研究もしていることを、リィンは伝えることはしなかった。
「幸いと言って良いのか分からないけど、リスクを承知の上で“相克”に巻き込まれても良いと言いそうな人がいるから、セドリック殿下が危ない橋を渡る必要はない」
「でもリィンさんがこの話を僕に持ち出して来たってことは、そうした方が良いと言う利点があるからですよね?」
「……ああ、その通りだ」
しっかりと言わなかったことまで察したクリスにリィンは頷く。
「だけどさっき言った通り、今のクリスでは“相克”に挑むのは力不足だ……
相手は聖女や猟兵王だけじゃない。あの人に圧倒的な存在と言わせている《黒》という存在もいる……
いや、そもそも“七の相克”は《黒》にとっての出来レースのようなものだ。起動者になれば二年後の命に保証はない」
「あ……」
「クリスに“テスタ=ロッサ”を渡すということは俺が負けた時の保険でもある……
だけど今のクリスの実力では《黒》はもちろん“鋼の聖女”にだって勝算はない……
だから何か一つ勝算の片鱗を見せてくれなければ当然“テスタ=ロッサ”に乗せることはできない」
「…………それはリィンさんを倒すことも含めてですか?」
「そうだ……」
「そんなこと急に言われても……僕は……」
「少なくとも“テスタ=ロッサ”を一番うまく使えるのは、アルフィン殿下でもオリヴァルト殿下でもなくクリスだと俺は思っているよ」
「え……」
「テスタ=ロッサの特殊な兵装に“千の武具”というものがある……
霊力で構成した武具を具現化する能力だが、多くの武器を使う才能があるクリスには丁度いい力だと思わないか?」
「それは……」
初めて言われた言葉にクリスは引き締めたはずの顔が緩むのを自覚した。
「本音を言えばやりたいです。でも僕にはリィンさんを倒す覚悟が……」
初めて、それも憧れの人から兄姉よりも頼られていることにクリスは嬉しく感じるが、リィンを倒すこと、そしてリィンの代わりを務めることに尻込みをしてしまう。
「そんな大役……僕に務まるんでしょうか?」
「それを言ったら俺だって同じだ」
俯いてしまったクリスにリィンは苦笑し、そこでドアがノックされた音が響く。
「リィン、ちょっと良いだろうか? こちらにクリスは来ていないだろうか?」
「ガイウスか? ああ、クリスならここにいるから入って来てくれ」
リィンが許可を出すとキャンバスを抱えたガイウスがリィンの部屋に入って来た。
「ガイウス? 僕に用?」
「ああ、実はあれからこんなものを描いてみたのだが……リィンにも見てもらっても良いだろうか?」
険しい顔をして見せたキャンパスには《紫の騎神》が描かれていた。
「これはガレリア要塞を襲った騎神!?」
「《紫の騎神》ゼクトールか……」
リィンは《影の国》で対峙した時のことを思い出しながら呟く。
「…………やはりこれが《紫の騎神》だったか……」
「やはり? あれ、そういえばガイウスは基地内部に侵入した人形兵器をラウラと一緒に掃討していて、騎神は見てなかったはずだよね?」
「ああ……実はそのことでリィンに相談したいことがあるんだ」
最初はクリスに《紫の騎神》の絵を確認してもらうだけのつもりだったが、この場にリィンもいることでガイウスはこれまで半信半疑だった悩みを打ち明ける覚悟を決める。
「ガイウスが相談って珍しいな」
「すまない。だが俺にもどうして良いのか分からないんだ」
憔悴を感じる態度にリィンとクリスは意外なものを感じる。
「えっと、リィンさんに相談なら僕は席を外した方が良いのかな? 僕への用は絵の確認だけみたいだし」
「いやそこまで深刻なものではない。良ければクリスも聞いてもらえるだろうか?」
「ガイウスがそれで良いなら、聞かせてもらおうかな」
クリスは座っていた椅子をガイウスに譲る。
「実は……俺はガレリア要塞の襲撃を知っていたかもしれないんだ」
「知っていた? それってどういう意味?」
「信じてもらえないかもしれないが、夢を見たんだ……
帝国解放戦線にガレリア要塞が襲撃され、そこに《紫の騎神》が現れること。この絵も夢の内容を思い出しながら描いてみたのだが……
俺が夢の意味をちゃんと理解できていたら、クレイグ中将を始めとした軍の人達を俺は助けることができたのかもしれないと思うと……」
「ガイウスが責任を感じることじゃない」
自分を責めるガイウスにリィンははっきりと言い切る。
「しかし――」
「俺もクロスベルではそういう予知夢を理由に帝国解放戦線の爆弾に対処したけど、それは結局周りの人がその話を信じてくれるかどうかが問題なんだ……
俺は今までの実績を利用して無理を通したけど、ガイウスの言葉を信じてくれる人がガレリア要塞にいたとは思えない」
その意味では多くを説明できなかったにも関わらず、疑うことなく信じてくれた彼らに改めてリィンは感謝する。
「しかしこれがただの夢じゃないのは確かなんだ。ガレリア要塞のことだけではない、以前ノルドで監視塔が襲撃された時にも見た……
他にもこれまで何度も既視感を覚える様なことが起きている。これはいったい何なんだ?」
「ガイウス……」
いつも大らかに構えているガイウスの情緒不安定な様子にクリスは軽い驚きを覚える。
「原因はおそらくノルドで死にかけたことか、《大地の器》との干渉が原因でガイウス自身の資質が開花したからだと思うけど、ガイウスはその力をどうしたい?」
「どう……とは?」
「力を封じることならたぶんできる……
“力”があることから目を逸らすのは欺瞞かもしれないけど、未来が見えてもそれが必ずしも良いこととは限らないと俺は思う……
確かに救えるものは多くなるかもしれないけど、相応の覚悟がなければ見えた未来に押し潰されるだけだ……
それこそ今回のように回避できなかった未来に心を痛め続けることになる」
「っ……」
「あまり深刻に考えなくて良い……
“異能”を制限する技術はラッセル博士が既に形にしているから、明日改めて博士たちに相談しよう」
「…………すまない」
ガイウスは溜め込んでいた息を吐き出して頭を下げる。
「こらっ! 君はそんな恰好で出歩くなんて何を考えているっ!?」
と、そこにドアの向こうから怒鳴り声が響く。
「今の声……マキアスだけどどうしたのかな?」
クリスが首を傾げると、数秒も待たずにドアが勢い良く開け放たれた。
「ねえねえリィン! せっかくだから夜のトリスタを案内してよっ!」
「待ってください、シャーリィさん。リィンさんには私が話したいことがあるんです」
「ええ、そんなの早い者勝ちでしょ?」
シャーリィに続いてエマが乱入する。
「ふむ……クリス達との話が終わったのなら私も……」
さらにラウラも廊下から顔を出して主張する。
「はあ……とりあえず下に移動しようか」
リィンの部屋に新しく増えたベビーベッドの中、この騒ぎにも動じずに静かに眠っているナユタを一瞥してリィンはそう提案した。
その日は結局、消灯の時間までリィンは多くの相談を受けることとなった。
*
コンコン――
消灯の時間となり、身支度を整えてベッドに入ろうとしたリィンは静かに窓を叩く音と気配に気付く。
「……普通にドアから入ってくれば良いだろフィー?」
気配の正体を察し、窓を開いてその少女を部屋に招き入れてリィンは猫のように入ってきた少女に苦笑する。
「一応消灯時間だったから」
彼女なりに寮のルールを守っているのか、それとも確実に他の人の耳がないことを望んだのか。
どちらかを追究せずにリィンは掛けておいた制服の上着をフィーに差し出した。
「とりあえずこれでも羽織ってくれ?」
「何で?」
首を傾げてフィーは聞き返す。
「まだ暑いと言ってももう九月だからな、その格好はどうかと思うぞ」
それがフィーの寝間着なのか、ほとんど下着とも言える格好から目を逸らしながらリィンは答える。
「別に……わたしの身体なんて見てもおもしろくないでしょ?」
「良いから、着ないとルトガーさんの話はしないぞ」
交換条件を出されフィーは渋々と言った様子でリィンの上着を受け取って袖を通す。
「それでルトガーさんと何を話したんだ?」
フィーにベッドに座る様に促し、リィンは椅子に座り卓上灯を点けて本題を切り出した。
「…………リィンは知っていたの? 団長が《紫の騎神》に乗っていることを?」
「ああ。とは言っても知っているのはそれくらいだ……
細かい事情は知らないが、それでも何故“猟兵王”が生き返ったのか、原理とその代償も一通り説明できる」
「本当?」
「それを話すにはフィーにも覚悟してもらわなければいけないことがある……だけど猟兵王に何を言われたんだ?」
「っ……何のこと? わたしは追い駆けたけど撒かれたって――」
「そういう言い訳はここでは必要ないだろ?
死んだと思っていた家族が生きていたんだ。撒かれたからって素直に戻って来るフィーじゃないだろ?」
リィンの指摘にフィーは押し黙り、その沈黙が肯定の証拠だった。
俯いてしまったフィーはそのまま微動だにせず、時間を掛けて重い口を開いた。
「騎神から団長の声が聞こえて来た時はまさかと思った。それで撤退した騎神を追い駆けた先にはゼノとレオもいて……」
それを切っ掛けに語り出す。
ルトガー・クラウゼルは奇蹟の再会だというのに気軽に言葉を掛けて来た。
何故生きているのか、どうして教えてくれなかったのか、様々な事を問い詰めたがのらりくらりと飄々に答えははぐらかされてしまった。
そんな態度も懐かしく、死んだはずの父親ともう一度話せたことは何よりも嬉しかった。
だが、フィーにとっての幸せな時間は短かった。
「ガレリア要塞を襲った理由……エリオットのお父さんを殺したのは、猟兵だからとしか答えてくれなかった」
「……そうか」
「騎神の武器になっていた変な女の子がいたけど、お前には関係ないって言われた」
「っ……そうか」
気になる言葉があったがリィンは相槌を打つのに専念する。
「ゼノとレオも見物に、団長の復帰を見届けに来ただけって何も教えてくれなかった」
「とりあえずそれに関してはガルシアさんに報告しておこう」
ろくに説明をしようともしなかっただろう二人にリィンはそう決意する。
「それで……フィーが今日までずっと悩んでいたことは何なんだ?」
言葉を止めてしまったフィーにリィンは促すように尋ねる。
「…………団長は……次に会ったら全力で殺しに来いってわたしに言った」
「それはまたどうして?」
突然飛躍した物騒な言葉にリィンは首を傾げる。
「それは……団長が……わたしの仇だったから……」
「…………ああ、そう言う事か」
絞り出すように呟いたフィーの言葉からリィンは答えを推測して納得する。
フィーは戦災孤児としてルトガーに拾われた。
ならばその戦争を行ったのは誰かと考えれば真っ先に思い浮かべるのは彼の《西風の旅団》になる。
彼らが襲撃したのか、それとも巻き込んだのかどちらなのかは重要ではない。
「フィーにとっても、ルトガーさんは本当の両親や故郷を滅ぼした仇だったのか」
リィンの推測をフィーは小さく頷いて肯定する。
「そんなこと急に言われてもわたし……わたしは……」
手で顔を覆って嗚咽を漏らすフィーにリィンはそっと手を伸ばして彼女の頭を安心させるように撫でる。
「わたしは……わたしを生んでくれた親のことはもう思い出せない……
わたしにとっての親は団長で、家族はゼノやレオ達だった……だけどみんなにとってはそうじゃなかった」
「フィー……」
「ねえリィン……わたしはエリオットみたいに団長たちを恨まないといけないの?
わたしは団長の言う通り、顔も思い出せない人達のために復讐をしないといけないの?
団のみんなは家族だって思っていたのはわたしだけなの!? ねえ教えてよっ!」
リィンの胸倉を掴み、フィーはこれまで溜め込んで来たものを吐き出し答えを求める。
よく見れば目の下にはクマもあり、ろくに眠れていないのかもしれない。
「フィー……」
ルトガーが何を考えてその真実を明かしたのか、当事者ではないリィンには分からない。
「それはフィーがちゃんと考えて決めないといけないことだ」
「やだ……リィンが決めて……わたしはもう何も考えたくない……」
駄々をこねるように首を振り耳を塞ごうとするフィーの腕をリィンは掴んで止めると、フィーはリィンの胸に顔を埋める。
「もう……やだ……」
「フィー……」
体を預けて弱々しい声をもらすフィーにリィンは憤りを感じずにはいられなかった。
《西風の旅団》が何を考えているのかリィンには分からない。
フィーをこのまま表側の世界に留まらせるための荒療治なのかもしれないが、だからと言ってそれまでの絆を一方的に切るようなやり方はとても容認できない。
「…………フィーが望むなら……《西風の旅団》の記憶を消すことはできる」
それはリィンにとってもある意味禁忌としていた方法。
「え……?」
「フィーが彼らの事を覚えていることが苦痛だと言うなら……俺はそれを使ってもいい。良く考えて決めてくれ」
「わたしは…………」
突然のリィンの荒唐無稽な提案にフィーは戸惑い、そして――
結社の動向
第七柱
「――お待たせしました。もう始めているようですね」」
第一柱
「いえ、始めたばかりです。例の件についてはもう宜しいのですか?」
第七柱
「ええ、後は《破戒》殿に全てお任せしてきました……おや? 《深淵》はいないのですね?」
道化師
「ふふ、ストレス性の胃痛で入院したって工房長から連絡があったよ。くく、まさか《蛇の使徒》の一人が胃痛で入院って……」
第六柱
「《深淵》殿には同情しますよ。彼女の《幻焔計画》が根底から覆すイレギュラー……
《白面》殿が名付けた“雲の至宝”。“超帝国人リィン・シュバルツァー”実に興味深い」
第七柱
「……実は博士、急で申し訳ありませんが造っていただきたいものがあります」
第六柱
「おや、《聖女》殿がそんな提案をしてくるなど珍しい。良いですよ、その代わり貴女の“騎神”を見せていただけるのなら」
第七柱
「構いません」
第六柱
「おや?」
第一柱
「ほう……」
道化師
「あはは、どういう風の吹き回しかな?」
第七柱
「お恥ずかしい話ですが、昔の私は馬上戦の方が得意でした……
ですから“黄昏”に向けて“博士”には騎神用の騎馬を造っていただきたいのです」
第一柱
「…………え……?」
第六柱
「…………は……?」
道化師
「…………あはは、そう来たか」
その後の彼、彼女の一幕
アリサ
「――で、どうして朝からフィーが貴方の部屋から出て来たのかしら?」
リィン
「えっと、これには深い事情があってだな。決して不埒なことをしたわけじゃなくてだな」
フィー
「リィンのおかげで昨日はよく眠れた。ありがとう」
アリサ
「ふうーん」
エマ
「リィンさん、流石にフィーちゃんに手を出すのはいけないと思います」
ラウラ
「ふむ……何だこの胸のもやもやは?」
ミリアム
「みんな何を怒ってるの? リィンとフィーが一緒に寝ただけでしょ?」
シャーリィ
「えっとね……アリサ達はリィンとフィーがやっちゃったと思ってるんだよ」
サラ
「リィン…………避妊はしたんでしょうね?」
リィン
「殴りますよサラ教官?」
サラ
「――殴ってから言わないでよ」