(完結)閃の軌跡Ⅰ ~鋼の意志 空の翼~ 作:アルカンシェル
まだクリアしていない人が多いと思うので、それについての言及は程々にお願いします。
9月18日土曜日。
「うーん、あっと言う間に週末ね」
未だに重い空気が漂うⅦ組の教室にサラの気の抜けた言葉が響く。
「暑くもなく、寒くもなく、絶好の行楽日和でもあるし。明日の自由行動日は有意義に過ごすと良いわ……
ま、来週の水曜日には実技テストが控えているんだけどね」
「サラ教官……」
「そして来週の週末には“特別実習”ですが、“学院祭”と言い。この状況で本当にやるんですか?」
飄々とした軽いサラの言葉にアリサが呆れるように肩を竦め、マキアスが尋ねる。
「あら? 理事会では満場一致で両方ともやることが決まったけど、貴方達は反対なのかしら?」
「いやテロリストの問題もありますし、それにエリオットやクロウ先輩のこともありますから」
マキアスは言葉を濁して自粛するべきではないのかと提案する。
「確かにクロウのことは残念だったけど、だからこそ学院祭はやった方が良いって私から進言させてもらったわ」
「何だと?」
無神経とも取れるサラの言葉にユーシスは顔をしかめる。
「あんたたちもそうだけど、一年生全体で以前とはだいぶ空気が変わっているのは判ってると思うけど……
それは初めての戦場の空気に呑まれて日常にちゃんと戻って来れてないのが原因よ」
学院全体の空気の悪さをサラはそう結論付ける。
「修羅場を生き残って自信が付いたかもしれない。人の死に触れたことで畏れを抱いたかもしれない。非道なテロリストに憤りを感じたかもしれない……
あの時こうしておけば良かったって後悔だってしてるでしょうけど切り替えなさい」
はっきりと切り捨てるようにサラは言い切る。
「何の因果か貴方達はテロリスト達と何度も相対することになっちゃったけど、本来なら貴方達はまだ子供で学ぶ学生なのよ……
心を戦場から帰すためにも、学院祭はちゃんとやること……
一年生は義務みたいなものだから出し物が決められないなら特別実習のレポート展示でも良いわよ」
「むむ、それは流石に躊躇われるな……」
顔をしかめるラウラにサラは苦笑を浮かべて締めくくる。
「それじゃあHR終了。委員長、号令して」
「は、はい。起立――礼」
………………
…………
……
夕陽が差し込む教室の中、改めて教壇の前にリィン達は集まって、学院祭に向けて意見を交わす。
「さ、さすがに実習レポートの展示というのは冗談だろう」
「マキアスからすると黒歴史の展示にもなるもんね」
「うぐ……」
クリスの指摘にマキアスは図星を突かれて唸る。
「と、とにかく来週明けにはどんな出し物をするか決めてしまおう」
「そうですね……水曜には実技テストがあって週末は特別実習がありますし」
誤魔化すように話題を進めるマキアスにエマが頷く。
「そうすると、明日中には当たりを付ける必要があるな」
「他のクラスや有志の出し物も一通り調べた方が良いわね……内容がかぶったらお互いつまらないでしょうし」
ガイウスの言葉を補足するようにアリサが提案する。
「はいはいっ! 出張《ノイエ・ブラン》っていうのはどう?
帝国の大都市にいくつか支店がある高級バーでさ、リィンとかユーシスとかホストにすれば大繁盛は間違いないと思うけど……
お酒の仕入れはシャーリィの伝手でなんとかできると思うよ」
「却下だ」
そんな提案をしたシャーリィの意見をリィンは一言で切って捨てる。
「じゃあ男女逆転劇は? 二年前、レクターと一緒に行ったリベールの学園祭でそういうのやってて凄く面白かったけど」
「……あれか……」
「流石にそれは……」
「僕達の人数で劇の様な大掛かりなことはできないから無理だね」
先月のリベール旅行で学園祭を見学した組は唸り、クリスが固い意志の下でミリアムの提案を却下する。
「とりあえずアリサが言った通り、まず他のクラスが何をするのか手分けして情報を集めよう」
「二年生は進路もあるから有志限定でクラブ活動から参加して何かを出すって形で参加してくるって話だったな?」
「そこら辺はもう既に決まっている所もあるだろう。ちなみにチェス部は“チェス教室”を企画しているが」
ユーシスの疑問にマキアスが頷いて答えてから視線はリィンに向き、一同の目はそれに釣られて集中する。
「そういえばリィンの同好会は何をするつもりなんだ?」
「ああ、それこそ展示だな……
うちの同好会は元々人数が少ないし、帝国政府と学院側からも騎神の展示を頼まれていたからそれに因んで獅子戦役のレポートを何処かの教室を使って展示すると思う……
後はローゼリアさんが何か本を一筆書いてくれるとか言っていたけど……」
「お婆ちゃんが? いったい何を?」
「『実録、知られざる暗闘。ドライケルスを巡る十人の乙女たちの鞘当て!』 なんて言う題名の本らしいけど」
リィンの口から出て来た題名に一同は押し黙る。
「たしかエマのお婆ちゃんは“獅子戦役”を実際に経験した魔女だったんだよね?」
「そう考えると歴史書に語られなかった実話なのだろうが……」
「その……大丈夫なのか? あまり大帝のイメージを損なう本を出すようなら帝国政府に発禁にされるかもしれないが」
「そうなったらそうなったで構わないみたいだな。その判断は実際の本が来てから政府に任せれば良いさ……
ローゼリアさんも面白半分でやると言っているだけだから」
「ともかく特別実習のレポートの展示をするとリィンさんの同好会の展示に被ることになるからやっぱり何か出し物を考えた方が良いだろうね……
エリオットもそれで良いかな?」
「え…………うん……」
会話の輪の中にいても終始上の空なエリオットはクリスに話を振られても曖昧に頷く。
納得いかない。
一秒でも自身を鍛えることに時間を使いたい。
学院祭などそれこそサラが提案した通りレポートの展示だけで良いじゃないかと、表情で不満を訴えているエリオットに一同は閉口する。
しかし――
「ちょっと辛気臭い雰囲気にならないでよ」
そんな空気を読まずシャーリィが文句を言う。
「おい、そんな言い方――」
マキアスが注意しようとするが、その言葉を遮ってシャーリィは続ける。
「パパが死んだからってシャーリィ達がその子に遠慮する必要なんてないでしょ?
そもそも軍人なんて殺して殺されるのが仕事みたいなものなんだから、それくらいの覚悟はしていたんじゃないの?」
「そうだよね。ボクもそこら辺不思議だったんだよね」
これまであえて黙っていたミリアムはシャーリィの言葉に同意する。
「人間なんてみんな死んじゃうのは決まってるんだし、何でエリオットはいつまでもそんなに拘ってるの?」
「なっ!?」
猟兵のシャーリィの口からならばともかく、無邪気なミリアムからのドライとも言える死生観に一同は絶句する。
――そういえば、あの子も似たようなことを言っていたな……
命の重さや尊さを知らない無智さと死生観にリィンはミリアムと“あの子”が改めて姉妹なのだと懐かしむように認識する。
「あはは。意外だな学生の中で話が分かる人がリィン以外にいるとは思わなかったなぁ」
「リィン……」
咎める様な視線を送って来るアリサにリィンは肩を竦めた。
「二人とも、それくらいにしておくんだ。だけどある意味では俺も二人と同じ意見だ」
「リィンさん!?」
驚くクリスを手で制してリィンは続ける。
「エリオットの復讐の手助けをするのはやぶさかじゃない……
だけど、俺が気遣うのはそこまでだ。だから学生生活を優先させてもらうし、エリオットも自分の復讐にみんなを巻き込むつもりはないんだろ?」
「それはもちろん」
「なら気が乗らないとしても俺達の学院祭の手助けをしてくれるよな?」
「う…………ん……」
渋々と言った様子でエリオットは小さく頷いた。
*
「あ、あの~、リィン君」
寮に帰ろうとしたリィンは呼ぶ声に振り返る。
「トワ会長……それにアンゼリカ先輩とジョルジュ先輩……」
「やあリィン君。少し時間をもらえるかな?」
「実は君に聞きたいことがあって待ち伏せさせてもらったよ」
「聞きたい事ですか?」
「ああ、ここでは何だから移動しても良いかな?」
そう言ってアンゼリカは下校している生徒達を横目に示して提案する。
「ええ、構いませんが。内密の話でしたらⅦ組の教室に行きますか?」
「いや、技術棟の人払いをしておいたからそこで話そう」
「分かりました」
深刻な話なのか、真剣さを感じられる申し出にリィンは頷いた。
技術棟の大きな作業用のテーブルに着くと最初に口を開いたのはトワだった。
トワは改まったように姿勢を正してリィンに頭を下げた。
「リィン君、改めてになっちゃうけどオルキスタワーではありがとう」
「トワから話は聞いたけど、僕達からも御礼を言わせて欲しい」
「まったく……超高層ビルから投げ飛ばされたと言われた時は流石に肝が冷えたよ……
もしもリィン君がいなければここにトワはいなかったと思うと……」
「いえ、当然のことをしたまでです……と言いたいんですが」
「おや? それはどういう意味だい?」
歯切れの悪い返答にアンゼリカは首を傾げる。
「実はその時のことはあまり良く覚えてないんです……
俺の記憶ではフェンリル――最新の共和国製の導力爆弾をヴァリマールで成層圏の外に捨てて、逃げきれずに爆発に巻き込まれたところで途切れているんです」
「それは……」
「列車砲に対抗して共和国が開発していた戦略級導力爆弾のことだね……
公開された破壊力を見たけど、本当によく無事だったね」
改めてリィンの口から聞かされるその時の出来事にアンゼリカとジョルジュはリィンの無事な姿に喜ぶ。
「護衛官としての務めを果たしただけですから、あまり気にしないでください……
それでわざわざ人払いをしてまで聞きたい事とはいったい何ですか?」
「あ……」
本題に切り込むリィンにトワが口を開き――言葉を呑み込んで俯いてしまう。
「トワ会長?」
「トワが話せないなら私から聞こうか?」
言い淀むトワを案じてアンゼリカが提案する。
「ううん、大丈夫……
リィン君に聞きたいことはオルキスタワーを襲った《蒼の騎神》のことなの」
「オルディーネの? でも俺が知っていることはトワ会長たちが知っていることと大差ないですよ」
リィンがそれを知ったのはそれこそ目を覚ましてから、それ以上はヴァリマールからの報告くらいだろう。
「ああ、私達もそれは聞いている」
オルキスタワーを襲撃した《蒼の騎神》は腰から下の下半身を残して撃破された。
公式の扱いでは起動者は死亡したことと扱われ、《蒼》の下半身は現在旧校舎に収容されている。
だがリィンの感覚では《蒼》は生き延びていることは分かっている。
が、それをトワ達に説明する理由はない。
「騎神のパイロット……起動者って言うんだよね?
リィン君は《蒼の騎神》の起動者が誰だか知ってるの?」
「クリス達から帝国解放戦線のリーダーである《C》が起動者だったとは聞いていますが」
「そっか……」
期待していた答えではなかったことにトワは肩を落とす。
「いったいどういう事なんですか?」
「うん……僕達もまだ信じられないんだけど《蒼の起動者》がクロウだったんじゃないかってトワに相談されたんだ」
「クロウ先輩が? でもクロウ先輩はガレリア要塞で」
「うん、それは判ってる……
《蒼の起動者》の姿も直接見たわけじゃないし、声だって機械で変わっていたから本当にクロウ君だったのか自信がないんだけど」
「クロウの死体は損傷が激しく、身元は死体が持っていた装備と生徒手帳で判別された……
つまり僕達はクロウの葬儀には立ち会ったけど、ちゃんと亡骸を確認したわけじゃないから」
ジョルジュもまた言い辛そうにトワの言葉に補足説明を入れる。
親友が本当に死んだのか、それとも生きているのか。
それを確かめたくてリィンに一縷の望みを掛けて話しかけて来たのだとリィンは察し、それに答える。
「《蒼の起動者》についてはオルディーネが見限っていない限り、まだ生きているでしょう」
「本当っ!?」
「ええ、《騎神》は二年後の“黄昏”のために起動者を選定しなければいけません。例え死んだとしても必要ならば不死者として蘇らせるでしょう」
「な、何だか途方もない話が出て来たけど……」
「ですが《蒼の起動者》がクロウ先輩だったとして、その意味を先輩達は分かっているんですか?」
「それは……」
「《蒼の起動者》は帝国解放戦線のリーダーである《C》だった。つまり《C》の正体はクロウ・アームブラスト先輩だったことになります」
「はっきり言ってくれるね」
歯に衣着せないリィンの指摘にアンゼリカは苦笑を浮かべる。
「実はクロウの正体がテロリストだったとトワに打ち明けられた時、納得している自分がいたよ」
「アンちゃん!?」
「…………そうだね。言われてみれば一年の頃のクロウは何処か余裕がなくて何かしでかしそうな雰囲気があったね」
「ジョルジュ君も……」
「トワもあり得ると思ったから《C》とクロウが同一人物でないかと悩んでいたのだろう?」
「それは……」
アンゼリカの指摘にトワは口ごもる。
「すまないがリィン君。この件に関しては帝国政府には報告しないでくれるかな?」
「それは構いませんが、どうするつもりなんですか?」
「なにテロリストの仮面の下が本当にあのバカなのか確かめに行くだけさ……
もしもクロウならば帝都の地下で背中から私を撃ったのはあいつになるのだから、トワを危険な目に晒したことも含めて落とし前は付けてもらわないといけないだろ」
「そういうリィン君はもしまた《蒼の騎神》と対峙することになったらどうするのかな?」
「もちろん斬ります」
ジョルジュの質問にリィンは即答する。
「俺はクロウ先輩と先輩達ほどに親しいわけじゃないというのもありますが、彼らはやり過ぎた……
先輩達には悪いですが、例えクロウ先輩だったとしても俺は刃を鈍らせるつもりはありません」
本気を感じさせる凄みにトワ達は思わず唾を呑む。
そこにいるのは人の良い後輩ではなく、命のやり取りを知る剣士なのだと思い知らされる。
「だけどまあ……誰かが彼を悔い改めさせて更生させるというのならその限りではありません」
「おや? てっきりエリゼ君を傷付けたテロリストなのだから問答無用で滅するのかと思っていたのだけど」
「はは、何を言うんですかアンゼリカ先輩。もちろんそれはそれでちゃんと報復させてもらいますよ」
笑顔のリィンに先程以上の凄みをトワ達は感じる。
「話はこれでおしまいですか?」
「うん、ごめんね忙しいのに」
「いえ、これくらいは構いません……
大切な人が生きているかもしれない。それを確かめたい気持ちは良く分かりますから」
そう言ってリィンは席を立とうとしたところで《ARCUS》が着信音を鳴らした。
一言断って出るとサラが不機嫌そうな声で告げた。
『リィン、あんたにお客様よ』
そうして急かされて戻った第三学生寮には――
「遅いですわよっ! リィン・シュバルツァーッ!」
《神速》のデュバリィが待っていた。
*
「っ……」
夕陽に染まった空。
旧校舎から飛び立ったヴァリマールを見上げてエリオットは悔しそうに歯ぎしりした。
「僕は……どうしてこんなに弱いんだ」
九月に入ってから始めた本格的な訓練。
クリスが個人的にリィンから受けていた訓練に混ざってはみたものの、思い知らされるのは彼らとの違いだった。
「くそっ!」
旧校舎に近い森の中、エリオットは形見としてもらった父の大剣を振り回す。
「っ――この――」
二度三度、力任せに振り回すが一振りするごとにエリオットの身体は流れ、むしろ武器に振り回されていた。
「――あっ!」
その結果大剣は手からすっぽ抜け、エリオットは盛大に顔から地面に倒れ込む。
「何で……クリスはあんな簡単にブリランテを振り回していたのに……」
数ヶ月前、新しい魔剣をリィンに貰ってはしゃいでいたクリスのことを思い出してエリオットは悔しがる。
彼は剣から始まり大剣に槍、果てには魔導杖さえも簡単に使いこなしてみせた。
聞けばクリスが本格的に鍛え始めたのは今年に入ってから、たった九ヶ月の下地の差にエリオットは途方もない差を感じてしまう。
「どうして僕はもっと早く鍛えてなかったんだろう…………そうすれば父さんは死なずに済んだのに……
どうして僕は音楽なんかに拘って――」
「ふっ……笑止っ!」
「え……?」
自分を振り返る悔恨の言葉は誰もいないはずの森の中で自分以外の声に遮られ、エリオットは起き上がって振り返る。
しかし声が聞こえてきた背後には誰もいない。
「どこを見ている私はこっちだっ!」
声を頼りに顔を上げれば木の上に腕を組んで一人の男が立っていた。
「はぁっ!」
男は木の上から飛び降りてエリオットの前に着地する。
「わわっ!」
突然の闖入者にエリオットは後退り、足をもつれさせて尻もちを着く。
「ふ……」
「な、何がおかしい!?」
笑われたことにエリオットは苛立って言い返し、気付く。
まだ晩夏で暑い時期だと言うのに長袖のトレンチコートを着込み、顔には頭まで覆い隠す紅毛の鬣をつけた獅子のマスク。
一言で表現するならまごうことなき変質者なのだが、エリオットは怯みながら改めて睨む。
「その程度であの“猟兵王”を倒そうなどとは片腹痛い」
「くっ……いきなり出てきて何を!」
エリオットは眦を上げ、立ち上がり改めて珍妙な格好をしている不審者に言い返す。
「だいたいお前は何なんだ!? ここは旧校舎の近くとはいえ士官学院の敷地内。部外者は立ち入り禁止のはずだ!」
「ふっ……私か……なに通りすがりのサラリーマンさ。単身赴任のな」
「ええ……」
返ってきた答えにエリオットは何とも言えない気持ちになる。
他の格好は良いが、顔を隠す紅毛の獅子のマスクが全てを台無しにしている。
エリオットは後ずさりして《ARCUS》を取り出し――
「待ちたまえ、私は君の父上であるオーラフ・クレイグに少々縁がある者だ……
あまり表向きに君と会うことはできないため、このような姿になってしまったことは詫びておこう」
「父さんの?」
通報しようとした手を止めてエリオットは改めて男を見る。
「同じ理由で本名は明かすことはできないが、私のことは“紅獅子”。もしくはレオマスクと呼ぶが良い」
「は……はぁ」
父オーラフは正規軍の中将だったのだから、身元を明かせない知り合いがいてもおかしくないかもしれないとエリオットは一応納得する。
「…………それで父さんの知り合いが何の用ですか? 貴方も僕に復讐をやめろと言うんですか?」
「そのつもりだったが、どうやら無駄のようだな」
紅獅子はそう言って踵を返すとエリオットが放り投げてしまった斬馬刀を拾う。
「この武器を使いこなすには君では体格が足りないだろう。悪いことは言わん。身の丈にあった武器を使うべきだ」
「そんなこと言われなくても分かっている。だけど僕は父さんの武器で仇を討ちたいんだ」
一度だけリィン達にも相談したが魔導杖を極めた方が良いと言われてしまい、こうして彼らの目から隠れるように斬馬刀の練習をしている。
「っ……そうか……」
紅獅子はおもむろに天を仰ぎ、何かを堪えるような素振りを見せてからエリオットに告げる。
「ならば君が良ければ私が斬馬刀の手解きをしようじゃないか」
「え……?」
その日からエリオットは人目を忍んで紅獅子と会うこととなった。
取り引き
アリアンロード
「よく来てくれましたリィン。デュバリィもありがとうございます」
リィン
「いえ、本来なら俺から提案したことですからこちらから出向くべきだったんでしょう」
アリアンロード
「それは致し方ないでしょう。私は“身喰らう蛇”に身を置いているのですから……
それはそうと久しぶりですね。ヴァリマール。壮健そうで何よりです」
ヴァリマール
「アルグレオン……その声……まさか本当にリアンヌ・サンドロットなのか? 貴殿はあの時死んだはず」
アリアンロード
「ええ、故合って生き恥をさらすことになりました……
それにしても少し見ない間に随分と様変わりしたものですね。今の貴方ならアルグレオンにも引けを取らないでしょう」
ヴァリマール
「むぅ……」
アルグレオン
「…………」
アリアンロード
「さて、本題に入りましょう。リィン、貴方を呼び出したのは他でもない例の件についてです」
リィン
「はい。持ってきています……
本来なら欠片を中に仕込むだけだったナマクラだったんですが、“雲”の力でそれぞれの欠片を精錬することができたので剣として打ち直させてもらいました……
“焔の剣”と“大地の剣”。“鋼の剣”を錬成するための剣です。好きな方を選んでください」
アリアンロード
「見事な剣です……そうですねアルグレオンは“大地の聖獣”にあやかって造られた騎神なので“大地の剣”を選ばせていただきましょう」
リィン
「取引はここまでですね」
アリアンロード
「ええ、次に会う時は互いに全力で戦うことになるでしょう……ああ、そういえば一つ貴方に教えておくことがありました」
リィン
「何でしょうか?」
アリアンロード
「私は“黄昏”にデュバリィ達を巻き込む覚悟を決めました……
二年後には騎神用の騎馬を用意し、本当の私の全力をお見せできるでしょう」
リィン
「………………え……?」
アリアンロード
「今の貴方は“至宝”となったことで誰よりも強い“器”を手に入れたかもしれません。ですが技術と言う面での位階を上げたわけではありません……
それを努々忘れずに精進すると良いでしょう……では」
………………
…………
……
リィン
「ローゼリアさん。馬に乗ったリアンヌ・サンドロットはどれくらい強かったんですか?」
ローゼリア
「そうじゃの…………
普段のリアンヌが3ドライケルスだったとして、馬に乗った時のリアンヌは10ドライケルスくらいだったのだが……」
リィン
「だが……?」
ローゼリア
「同じく馬に乗ったドライケルスとアルゼイド、ロランにノルドの長を含めた四人をあやつは一人で薙ぎ払いおった」
リィン
「…………ええ……」
*
○○○○
「――以上が私たちの家族の身に起こった出来事の全てであり、これから先に帝国で起きる事だ……
さあどうする?
このまま身を委ね奥方がいる女神の下へ旅立つか、それとも私と共に《黒》の駒となって煉獄へと落ちるか。好きな方を選びたまえ」
*注意 以降原作への批判、ツッコミとなります。
創の軌跡発売されましたね。
相変わらずクロスベル組は上から目線と言うか、被害者意識が高いと言うか。
ディーターがやらかしたクロスベルのやらかしをまとめると。
1自作自演の襲撃を帝国の仕業と擦り付けた。
2資産凍結による経済攻撃、資産を人質にして独立を迫る脅迫。
後の共和国の経済恐慌の切っ掛けをつくる。
3本来中立であり政治に不介入のはずの遊撃士の立場をアリオスが利用したこと。
4以上のことを踏まえて『国防軍』を設立し独立を宣言したことで事実上二国に宣戦布告したとも取れる。
5帝国、共和国の通達を無視した、つまりは話し合いの放棄。
6結社の支援を受けて二国の侵攻を迎撃。
空の時のリベールの結社による被害、零の至宝を使ったことで法国にもある意味で喧嘩を売っているのかも?
ここまでやっていた全部ディーターが悪かったで済ましているクロスベルの人達は面の皮が厚過ぎじゃないんですかね?
列車砲が撃たれたと言っても、先に経済攻撃で殴ったのはクロスベルの方ですし。
帝国側から見たらロイドはディーターからキーアを受け取り、アリオスとマリアベルを伴いクロスベルに潜伏し、ディーターの後継者として再起の時を計っていると見られておかしくないのでは?