T S 転 生 物   作:ブラバ界のレジェンド

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さんわ

「マーナー!」

「……おいっす」

 

 どうも。裏切者のグスマン改め、目が死んでると近所で噂のガキ大将、マナです。

 

 子供相手に大人げなく、肉体強化魔法で無双した俺はめでたく4人の子分を手に入れました。コイツらの言い分によると、子分は俺のいう事に絶対服従らしいのです。

 

 つまり。

 

「……ココロ。……こっちきて」

「あいあいさー。ボスはだっこ好きですねぇ」

 

 同い年の幼女を好きなだけ愛でる事が出来るのだ。俺の手の中には目がクリッと丸い、活発な幼女ココロがいる。

 

 子供は良いよなぁ。あったかくて、可愛くて。穢れた大人の傷ついた心を癒すにはもってこいだ。

 

「おお、ココロを抱いてマナの目に少し生気が灯っている」

「あの娘達、仲いいわねぇ。ブラガ君、マナを仲間に入れてくれてありがとうねぇ」

 

 母さんが百合百合している俺とココロを見て何やら呟いているが、今はココロを愛でるので忙しい。ああー、子供は何か特有の優しい匂いするよなぁ。ええなぁ、癒されるわぁ。

 

 ガキ大将になって、約1年。今日もリース自警団は平和です。

 

 

 

 

 

 ブラガ達の仲良しグループに入った後、家が隣だったブラガはちょくちょく妹を連れてウチに遊びに来るようになった。初日に勝負を挑んできた四天王の幼女「ココロ」は、なんとブラガの妹だったのだ。

 

 ココロちゃんの将来の夢は、ブラガのお嫁さんになる事らしい。うらやま死刑。

 

 さて、そんな実妹からモテモテのブラガから、何とかしてココロちゃんを寝取るべく肉体コミュニケーションしていると、いかつい顔の男の子で頼れる兄貴分「ゲン」がウチのパン屋に駆けこんできた。

 

 何やら、事件が起こった様だ。

 

「マナ姉貴ぃ! 大変じゃ、ワシ等のシマが奪われた!」

 

 ……ヤクザのカチコミかな?

 

 まぁ、ゲンさんの言っている「シマ」とは恐らく、いつも遊んでいる広場で俺達が使っている右奥のスペースのKDF(決戦のデュエルフィールド)が描かれた場所なのだろうけど。子供同士にも縄張りの様なものがあり、俺達もそれに則っていつも同じスペースで遊ぶようにしている。

 

 だが、その暗黙の掟を破った連中がいるらしい。

 

「…………どこの連中?」

「農家のガキ達じゃ、奴らが遊んどったワシやピョートル達を追い出しよったんじゃ! ワシも抵抗したが奴らはもう10歳、体格の差で力負けしてしもうた……」

「農家の連中!? あいつら、自分の遊び場があるじゃねぇか! 何で俺達の所に!?」

「昨日雨が降ったからの、水たまりが少ないワシ等のシマに移動してきおったんじゃ……。情けないがマナ姉貴、ご足労願えませんかのぅ」

 

 俺達の縄張りを荒らしたのは、農家のせがれグループらしい。アイツらは俺達より一回り年齢が上のグループだ、年下のガキと思って俺達を舐めたのだろう。

 

「……よし。ブラガ、ココロ。……出かける準備して」

「はいです!」

「おう、そりゃ黙ってられねぇ」

 

 子供の世界というのは、ヤクザな世界なのだ。一度舐められると、ずっと馬鹿にし続けられ、要求もヒートアップしてくる。

 

 大人と違い、子供には遠慮も配慮もない。ここで引く訳にはいかない。

 

「……リース自警団、出撃!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケッケッケ。またガキが俺達に喧嘩売りに来たんか?」

「ガッハッハ。身の程知らずとはお前らの事やで」

「ヒョッヒョッヒョ。何度来ても返り討ちやでボウズ。お、女の子おるやん、パンツ見せてんか?」

 

 ゲンさんの情報通り、いつもの遊び場に行くとガラの悪いガキ共が俺達の神聖なKDF(決戦のバトルフィールド)を踏み消し、ボール遊びに興じていた。

 

 随分と舐めてくれたものだ。

 

「……激おこ」

「おい、聞け!! ワシ等の頭、マナ姉貴は聞いての通り大変ご立腹じゃぞ!」

「……ぷんぷん丸」

「なんて事じゃ! ケツの穴から手を突っ込んでいガタガタ言わす、と仰っとる。マナ姉貴も怒り心頭のようじゃ!」

「……あいーん」

「ほぅら聞いたか!! お前らここで皆殺しやぞ! 往生せぇや!」

 

 そんな事言ってないんだよなぁ。

 

「ケッケッケ。口だけは達者やのお。……ところで、そのちっこいのが頭なんか?」

「ガッハッハ。皆殺したぁ大きゅう出たなぁ? ……いや、頭は後ろの小僧やろ」

「ヒョッヒョッヒョ。あんな目が腐ってダンゴムシに踏みつぶされそうな幼女が頭なわけないやろ」

 

 皆、俺が頭とは思わず後ろのブラガがリーダーだと思っているようだ。まぁ、確かに今世の俺は弱そうだからなぁ。

 

 ……というか、何故いつも戦闘力をダンゴムシと比べられるのだろう。

 

「……成敗」

「ワシ等の姉貴を馬鹿にしよったな? 竜の逆鱗に触れたぞ、マナ姉貴はお前ら纏めて相手にするとおっしゃっとる!」

 

 だから言ってないし。

 

「えー、俺の出番はなし?」

「……ううん、一緒に戦ってブラガ。……2対3で。どう? 怖い?」

「下手にでとりゃ馬鹿にしくさって、イテもうたろかオラァ!」

「茶巾絞りにしたるぞコラァ!」

「パンツ見せろゴラァ!」

 

 こうして俺の華麗な挑発に乗ったバカ3人を、ブラガとのタッグで迎撃することになった。客観的に見ると、ブラガは6歳、俺は4歳。どう考えても俺達に勝ち目はないだろう。

 

 だからこそ、逆にこの農家グループの中心人物っぽい3人をボコれば、今後舐められることは無くなる。

 

「……」

「なんやコイツ、動きがメチャクチャ速ぇ!?」

「……取った。……背落とし」

「ぎゃああ!」

 

 そして、肉体強化呪文を正しく習得している俺にとって、10歳前後のガキなど相手にならない。その辺の大人でも、普通に力押し出来るくらいだ。

 

 速度も、筋力も、文字通りレベルが違う。

 

「ブラガ・ナックル!!」

「グワアアアアアア!!」

「ギョヒェエエエエ!?」

「兄さん、流石ですね!」

 

 そしてブラガは、天然で肉体強化を行える天才だ。体術は、戦士ごっこと称して俺が1年間ミッチリ扱き上げた。

 

 奴にとっては丁度良い実戦経験になるだろう。俺一人で相手せずブラガを巻き込んだのは、戦力が欲しかったというよりブラガに経験を積ませたかっただけである。実際、彼は2人の年上の男を瞬く間にノしてしまった。

 

 付いて来たココロも、兄の活躍にご満悦である。

 

「馬鹿な、有り得ねぇ。こんな子供が!?」

「ち、敵討ちだ! やっちまえ!」

 

 おっと、一瞬で3人を倒されて動揺するかと思ったが。なにやらあちらさんは、かなり仲間意識が強い御様子だ。

 

 即座に残り全員で俺達を囲んできた。4、5人といったところか、なんとかなるかな。

 

「マナ姉貴! ブラガ!」

「こ、この卑怯モノー!」

 

 慌ててココロにゲンさんも割って入ってくる。が、俺たちと肩を並べるココロちゃんは内心怯えている様子。

 

 ココロちゃんはただの幼女だから怖がるのも無理もない。むしろ、恐怖に勝ってよく割って入ってきてくれたよ。ここで全面戦争になると、そんな勇敢な彼女は怪我をしそう。うーん、困った。

 

 仕方がない、ビビらせて戦わず勝とう。

 

「……切り札、使うぞ?」

「切り札、だと?」

「聞いたか! マナ姉貴は今から世界すら滅ぼす禁断の大技をお使いになられるぞ!」

「なぁにぃ!? このガキ、何者なんだ!?」

 

 そんな技持ってません。

 

 俺はただ、初級魔法か何か見せて威圧しようと思っただけなんだが。子供が魔法使うってだけで大騒ぎされるからな……。

 

「マナ姉貴、やってくだせぇ!」

「マナはそんなすごい技持ってるのか。それ、教えてくれるのか?」

 

 ブラガ、ゲンさんの適当なホラを信じないで。ワクワクと期待した目でこっちを見ないで。

 

「じー……」

「じー……」

 

 

 

「……し、至上に至るは万来の雷!」

 

 ……周囲からの謎の圧力を伴った期待の目に負けて、俺は上級呪文の詠唱をはじめた。こういう押しに弱いんだよなぁ、俺。

 

「……寒冷不敗、熱烈常勝。……見よわが究極技法、嵐の明けぬ夜(テンペストミッドナイト)

 

 俺の詠唱とともに空が黒く、ゴロゴロと稲妻を纏う。そして、俺のポースとともにドカンと雷が広場の一角に落ちた。

 

 当然誰にも当たらない位置を狙って、ではあるが。魔法の才能は今世の方が高いのか、スムーズに魔法を行使できたな。女に生まれたせいで前世より筋力は落ちそうだけど、戦闘力は魔法でカバー出来るかも。

 

「……覚えてろ!」

「いや、覚えなくていい!! 今日のことは忘れてろ!」

「ゴメン、もうちょっかいかけないからユルシテ!!」

 

 農家の連中は、俺の最大呪文を見て顔を真っ青にして逃げ出した。

 

 無理もない、このレベルの魔法は首都の魔法学園でないと学べない、つまり地方の村に住んでる限りは大人でもお目にかかれないからな。

 

 戦わず、武威を見せつけ解決する。これぞ、最高の勝利法だろう。

 

 さて、これで俺たちの遊び場は守られた。

 

「さすが姉貴じゃ! 世界も滅ぼせるのう!」

「……うそぉ。な、何それ?」

「マナ姉さんはやっぱり頭おかしいですね!」

 

 ココロちゃん。やっぱりって何?

 

 

 

 

「……マナ? 今の、何?」

 

 ビクっと、その聴き慣れた声に反応して振り向くと。

 

 パン屋の女将、俺の今世のママンであるリゼが冷や汗を垂らしながらこっちを見ていた。

 

 ……やべー。


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