重力使いのヒーローアカデミア   作:はじ

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個性把握テスト 前編

シーツや毛布の他に愛娘の為に新しく可愛らしいパジャマを買った彼は、高めのテンションで食料品売り場にいた。今朝落ち込んでいた娘を喜ばせようと彼女の好物であるシチューの材料を選んでいるところを見ると御老公と呼ばれる爺と血の繋がりを感じられる。そんな今の彼はどこからどうみても親馬鹿だ。

 

そんなルンルン気分な彼に水を差すようにスマホが振動するが、そんな事ではこのテンションは下がらないとばかりに流れるような動作で操作する。

 

『相澤だ』

 

電話の相手は担任だった。相手の確認をしなくて後悔した。

 

『今日休んだ理由は、フランちゃんが言いにくそうにしていたから聞かないが、お前の了解を得ておこうと思ってな』

 

どうやら彼が買い物に出た後、娘は1ーAに行き相澤に相談したらしい。うん、一人悩むより選択肢も増えるし良い事だ。

 

運動する事になったから、雄英ジャージと運動靴を買った。

 

うん、朝着替えた服は運動に向かないし良いんじゃないかな。ってかよくサイズあったね。帰ったらお金払いに行きます。

 

お前、『蛙吹』と幼馴染みだって言ってたよな?フランちゃんの着替えとか『蛙吹』にやらせたぞ。

 

いや、クラスメイトの顔写真と名前見せてもらった時に言ったけど、こっちが覚えてるからって向こうが覚えてるとは限らないんだぞ。これ、向こうが覚えてなかったら恥ずかしいやつだからね。

 

フランが自分の変わりに『個性把握テスト』を受ける事になった。

 

ファ!?

 

そんな事より、とりあえず早く帰ってフランの雄英ジャージ姿を写真に撮らなければ!

 

やはり、親馬鹿である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ!それと蛙吹、金渡すから購買で、この子のサイズのジャージと運動靴を買って一緒に着替えてグラウンドに来てくれ」

 

『とりあえずその子誰?』とクラスメイトの心の声が一致したあと、蛙吹梅雨は担任の相澤に言われた通り少女を連れて地図を見ながら購買に向かった。

 

「ケロッ、そう言えば貴女のお名前は?」

 

「フラン!おねえちゃんはつゆちゃんでしょ」

 

「っ!何で私の名前を知ってるの?」

 

「しょーたくんがしゃしんをみせてくれたときにパパがいってた」

 

しょーたくん?あぁ、先生の事ね。この子のパパ?外国の人の知り合い何ていたかしら?と蛙吹はニコニコしている金髪少女を良く見る。

 

まるで物語の世界から抜け出して来たかのように見える女の子。黒リボンに青いワンピースで白いニーソックス。エプロンを着けていたらアリスみたいだ。

 

「フランちゃんも一緒にグラウンドで何かするのかしら?」 

 

「うん、しょーたくんがパパのかわりにテストがんばるとパパがよろこぶっていってた」

 

パパの変わり・・・・・・とすると、今日休んでるという21人目のクラスメイトの事だろうか?高校一年生でパパとはなんだろうか。それにテスト?入学式はどうなっているのだろう?様々な疑問が浮かぶがフランと手を繋いで歩く。弟や妹がいるからか考え事をしていても子供を見失わないようにしているのは流石である。

 

「きょうはパパのだいじなひなのにフランのせいでダメにしちゃったの。でもパパはわらってきにしないでいいよっていうの。だからパパみたくできないけどがんばるの」

 

大事な日。入学式の事だろう。とするとやはり休んだクラスメイトなのだろう。謎が深まる。

 

「フランちゃんのパパは私の事を知っていたのよね。何か言っていたかしら」

 

「う~ん、つゆちゃんはパパのヒーローなんだっていってた」

 

「ヒーロー?」

 

「うん、むかし、たすけてもらったんだっていってた」

 

昔助けた事がある人?分からない。人助けが出来る程積極的に他人と関わっていないのだ。他の高校に行った親友を思い出すが彼女は女の子。それと昔救えなかった幼馴染み。あの子の事は今でも苦い思い出だ。

 

「フランもいたいことするこわいおじさんたちからパパにたすけてもらったの。だから、そんなパパのヒーローのつゆちゃんはもっとすごいんだよね」

 

フランから尊敬と期待と色々混ざった目を向けられる。ため息を飲み込み色々と腑に落ちない感情のまま、蛙吹は購買での買い物を済ませ指定された更衣室へ楽しそうなフランと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相澤は、1ーAの生徒達とフランがグラウンドに揃ったのを確認してからフランを呼んだ。

 

「フランちゃん、皆に挨拶をしようか」

 

「『やがみ フラン』です。きょうはよろしくおねがいします」

 

お辞儀をしながら挨拶する姿にほっこりしながら、フランが蛙吹の横に戻ったのを確認すると相澤は皆に告げた。

 

「これから個性把握テストを行う」

 

「入学式は?ガイダンスは?」

 

「ヒーローになるなら、そんな行事に出る時間ないよ」

 

騒ぎ出す生徒達に、相澤は淡々と返す。

 

「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り、中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ」

 

言葉を失う生徒達をしり目に爆豪に向かってソフトボールサイズの計測器をぽいっと投げる。

 

「中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

 

「67メートル」

 

「じゃあ個性を使ってやってみろ、円から出なきゃ何してもいい。早よ。思いっ切りな」

 

爆豪は、円に入り軽くストレッチをすると振りかぶる。

 

「んじゃまぁ、死ねえ!」

 

腕を振り切ると同時に爆音と爆風が周りを襲う。

 

「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

 

相澤は、手元のタブレットを生徒達に見せる。そこには705.2メートルと表示されていた。

 

「なんだこれ!すげー面白そう!」

 

「705メートルってマジかよ!」

 

「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」

 

色めき出す生徒達の言葉を相澤は静かに否定した。

 

「面白そうか・・・・・・ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?・・・・・・よし、トータル最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう。それと爆豪、小さな子供がいるんだ。言葉遣いに気をつけろ。あとはまぁ、生徒の如何は先生の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

剣呑な雰囲気をまとい相澤は髪を掻き上げニヤリと笑いながら生徒達を歓迎した。

 

「最下位除籍って・・・・・・入学初日ですよ!いや初日じゃなくても・・・・・・理不尽すぎる!それに今日一人休みって!」

 

「自然災害、大事故、身勝手な(ヴィラン)たち・・・・・・いつどこから来るかわからない厄災。この世界は理不尽にまみれてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎、これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。『Plus Ultra(更に向こうへ)』さ。全力で乗り越えて来い」

 

挑発するように人差し指で招きながら焚き付ける。

 

「それと今日休んだやつの変わりはフランちゃんにやってもらう。本人にちゃんと了承も得ているから気にせずやりなさい。さて、こっからが本番だ」

 

──第一種目 50メートル走 最終組──

 

「フランちゃん、誰かと一緒に走るかい?」

 

出席番号と奇数人数の為、一人で走る事になったフランに相澤は声をかけた。

 

「ひとりでだいじょうぶ。フランはパパのためにがんばるから!しょーたくんはしるのここからでもいい?」

 

フランが構えた場所は、スターティングブロックを外れ、測定ロボから数えて3レーン目だった。

 

「大丈夫だよ、じゃあ始めるから準備してね」

 

フランは背中から炎を出すとそれは一対の翼に形を変化させ構える。

 

『よーい、スタート』

 

羽ばたきの勢いと共に駆け抜ける。

 

『3秒82!』

 

「なっ!」

 

生徒達の中でも好成績なタイムに驚くが、生徒達には良い刺激になると相澤は笑みを浮かべる。

 

──第二種目 握力測定──

 

「うにゃあ!」

 

気が抜けるような掛け声と共にフランは力をいれる。

 

『7.1Kg 』

 

これは普通なんだ!と生徒達に安堵が広がる。しかし、彼等は知る事になる。フランの実力を! 

 

──第三種目 立ち幅跳び──

 

背中から炎の翼を出し、ばっさ、ばっさと飛び上がる。 

 

「フランちゃん、どのくらい飛べるんだい?」

 

「ん~、やったことないからわかんない!」

 

結果、『無限』

 

「無限ってなんだぁ!」

 

「あっ!」

 

無限という記録に色めく生徒達を他所に空を飛んでいたフランは何かを見つけたのか凄い勢いで飛んで行った。

 

「フランちゃん!?」

 

それに気づいた相澤が声をあげる。生徒達もフランが飛んで行った方を見つめる。

 

そこには、グラウンドの端からこちらに歩いて来る人とその人に向かって先ほどの50メートル走なんか比べられないほどのスピードで飛んで行くフランがいた。

 

「あれ、危ないんじゃ?」

 

「ヤバいって!」

 

そんな声の中、こちらに向かって歩いていた人は立ち止まり、フランをその身体で受け止めるのだった。しかし、勢いは凄まじくグラウンドを抉り砂埃を上げながら滑っていく。

 

「なんだ、あいつ来たのか・・・・・・」

 

相澤の呟きを聞いていた蛙吹は、目を見開いて驚きを隠せなかった。その人はようやく止まるとフランを肩車して、何故かグラウンド脇にある水道に行き、水道でハンカチを濡らしフランの顔を拭くと満足したのかこちらに向かって歩いて来る。そんな様子をぼーっと見続けた。だってその人は、数年前に自分の前から突然居なくなった幼馴染みだったのだから・・・・・・

 

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