重力使いのヒーローアカデミア   作:はじ

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戦闘訓練 その3

オールマイトが感傷に浸っていたり、生徒達が騒いでいた頃。凛はこの戦闘訓練の意味を考えていた。この訓練は実践とはほど遠いお遊びみたいなものだ。ヒーロー側も(ヴィラン)側も相手の無力化には確保テープを掛ければ良いし、核兵器の確保もタッチすれば良く、(ヴィラン)も時間切れまで粘れば良い。そんな子供の遊びみたいな事から何を学ぶんだろうか・・・・・・と実践経験者(元ヴィランハンター)には疑問が浮かぶ。まぁ、それを考えるのは教師の仕事だと思い、これからやることを考える。とりあえずフランを泣かせたオールマイトをぶん殴る、さっきのだけじゃ気が収まらない。それで確保テープを掛けて終わり。これで行こう。さっさと終わらせて帰ろう・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わ、私の負けだ!』

 

戦闘訓練を開始してすぐの事だった。

 

「・・・・・・何だ、・・・・・・今の?」

 

「わ、分からない」

 

生徒達が釘付けになっているモニターに映されていたのは、片膝をついたオールマイトに確保テープが掛かっている姿とそれを見下ろす八神凛の姿だった。

 

生徒達が唖然とするのもの無理はない、No.1ヒーローのオールマイトが『ヒーロー』として戦う姿以前にあまりに呆気ない決着だったのだから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛は核兵器のハリボテを持って上の階に上がらず一階の入り口から見える通路の一番奥に置いた。これでオールマイトは警戒するだろう。確保テープを建物の入り口から見えない入り口裏側の上まで『個性』を使い浮かせた。二人ペアなら確保は任せるが一人でやらなくてはいけないので『個性』解除のタイミングをはからねばと考えていると、無線機から『さぁ、始めようか!』とオールマイトの声が聞こえたので入り口と核兵器のある場所のちょうど中間くらいのところに立つ。これでオールマイトからも姿が見えるだろう。これでオールマイトは警戒するだろうが凛のこの挑発にのらざる得ない。その理由は2つある。一つ目は、これが訓練という授業である為だ。先程凛が全員の前で啖呵を切ったこともあり、調子に乗った生徒の鼻を折る意味も含め正面から来るだろう。二つ目は、相手がオールマイトであるということ。オールマイトは平和の象徴としてこの状況で搦め手を使うことが出来ない。正面からしか来れないし、それが出来るだけの力を持っている。

 

果たして、オールマイトは堂々と正面から来た。

 

「さっさと来いよ『ポンコツ(ヒーロー)』!フランを泣かせたんだタダですむと思うなよ!」

 

「むぅ・・・・・・それを言われるのは辛いところだが、いくぞ!」

 

凛の言葉に少し傷付きながら、そう言うとオールマイトは構え、一歩で凛までの距離を詰め自分の間合いに入った。そのまま構えた右を繰り出そうとしたところ凛の右手でパンチが受け流され体勢を崩しかける。

 

「なっ!」

 

オールマイトは驚きを露にするが、流石No.1ヒーローといったところか?崩しかけた体勢を無理矢理戻す。しかし、その一瞬、そのスキを凛は逃さずオールマイトの顔に『個性』を使った左のパンチを叩き込む。

 

「ぐぅぅぅ・・・・・・」

 

オールマイトは入り口のところまで吹き飛ばされ片膝をつく。そしてその首のところには確保テープがスッと降ってきたのだった。

 

確保テープを唖然とした顔で確認したオールマイトは動揺を隠せないまま自分の負けを理解した。

 

「わ、私の負けだ!」

 

「んじゃ、フランの迎えがあるから帰る」

 

「ま、待ちたまえ凛少年!これから講評があるんだ!それくらいは出てくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉を失う。それが一番このモニタールームに適した表現だなぁ。とオールマイトと共にモニタールームに来た凛が最初に思ったことだった。

 

「HAHAHA!凛少年は凄かったな!負けてしまったよ」

 

少し落ち込んでいたが、モニタールームの様子にオールマイトは空元気で場を盛り上げようとする。やはり私は負けてはならない。そう心に改めて誓うのだった。

 

「さて、講評をしようじゃないか!勝ちも負けも理解してこその経験だ!みんな!私達の演習を見て感想は?」

 

「よく分かりませんでした」

 

「そうだね、私も分からないまま負けてしまったよ。多分、凛少年の作戦勝ちなんだろう。どういった事が演習で起きていたのか凛少年に教えてもらおうか?」

 

その言葉で訓練開始前と同様にまた凛に視線が集中する。さっさと帰りたいと思っていたが梅雨ちゃんがじっとこちらを見ているので彼女の納得がいかなければ帰してもらえないだろう。凛は一つため息を吐くとこの状況を作ったオールマイトに嫌がらせはしておこうと決めた。

 

「相手してたのに分からないなんてやっぱりポンコツなんだな」

 

「うぐっ!」

 

オールマイトが落ち込んだのを横目に凛は説明を始める。

 

「まず、俺が考えた方針は『核兵器』の防衛ではなくヒーローの『確保』だね。その方針にそって、確保テープを『個性』を使い浮かせて、その罠の位置までヒーローを誘導して確保したんだ」

 

それだけだよ。と続け、帰ろうとした。

 

「それじゃ、全然分からないわ。最初から説明して」

 

やっぱり梅雨ちゃん(こいつ)が立ちはだかるか!しょうがない。改めてため息を吐き開きなおる。如何にヒーローが面倒臭いかを教えてやろう。

 

「俺が訓練開始前に言ったことを覚えているかい?」

 

「オールマイトがヒーローやる方が皆見たい」

 

「それもだけど、俺は『負けるつもりはないからどっちでも構わない』ってのも言ったんだ。これでポンコツ(オールマイト)は思ったはずだ、『その鼻っ面折ってやる』ってね」

 

「そそそんなことは考えなかったさ!」

 

『『『考えたんだ!』』』

 

「それを踏まえ、次に打った手は『核兵器』を入口から見えるところに置いたことだよ」

 

「何かあると思わせる?」

 

「あぁ、その上で俺が姿を見せることでポンコツ(オールマイト)は、正面から来なくてはいけなくなったんだ」

 

「何故ですか?」

 

平和の象徴(オールマイト)だからだよ。ここに着いた時も思ったが、皆、そこのポンコツ(オールマイト)に憧れてるんだろう?No.1ヒーローのポンコツ(オールマイト)が負けたから皆暗い雰囲気になっていた。それくらいの影響力を持ってるのはこっちに帰って来てから聞いていたから利用したんだ」

 

「オールマイトだから正面から来るように仕向けた訳?」

 

「そうだよ。それに訓練開始前にポンコツ(オールマイト)が言っていた一般入試の実技試験だけど、俺は遠距離攻撃しか使わなかったから元から脳筋なポンコツ(No.1ヒーロー)は、近接戦闘を仕掛けてきたんだと思う」

 

「凛少年、何故そこまで相手の心理を考えられるんだい?」

 

「お前が脳筋なだけだ。この訓練は選択次第で楽に勝てるそんな遊びだったよ。そもそも実践じゃ(ヴィラン)の『個性』なんて余程のレベルの奴じゃなきゃ分からないんだ。それに対してヒーローはその情報がほぼほぼ割れてる。その上ヒーローが必要になるのは事件が起きた後、常に後手に回ってる訳だ。そんな中解決しなくちゃならないんだから状況やら相手の心理やら引っ掻き回して自分のフィールドに引っ張り込むのは当たり前だろう?そもそもポンコツ(オールマイト)のやり方なんて脳筋丸出しで参考になんてなるわけないしな」

 

度重なる凛の口撃で本格的に落ち込むオールマイトをほったらかしのまま説明を続ける。

 

「戦闘に狡いなんて概念はない。そもそも(ヴィラン)ってのは狡猾な奴が多い。人質をとったりな。今回だと『核兵器』を盾にする奴だっているだろう。効果があるなら姑息な手段を躊躇うことはない。もちろん(ヴィラン)も自分が有利なフィールドを作ってくる。だから考え続けなきゃならない。この訓練だとヒーローをやるにしても(ヴィラン)をやるにしてもな。もう良いか?娘の迎えがあるから帰らせてもらうぞ」

 

そう言うと凛は、手を振りながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『壁になってくれ』そんな親友の頼みをこなすことは出来なかった。予想はしていたが、まさかここまでとは思いもしなかった。凛少年はまるで遊ぶかのように全力なんて出さなかった。最低限の力で勝てるように全て組み立てられていて、講評の際もまるで未熟な者達を導くかのように(ヴィラン)の狡猾さを教えていた。(ヴィラン)との戦闘経験はもしかすると私よりも上かもしれない。あぁ、八神蓮よ。君の息子はすでに私達を越えているぞ!そして願わくは凛少年が(ヴィラン)ではなくヒーロー側でその力を奮ってくれることを祈ろう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトとの戦闘をただの遊びと言いきり、訓練での内容を説明した凛が帰った後、モニタールームでは開始前のテンションは見る影もなくオールマイトも含め皆少し落ち込んだ様子が見てとれた。

 

「なんか八神ってスゲーな!」

 

「オールマイトより先生してたな」

 

そんな言葉にオールマイトは落ち込んだ。しかしそう落ち込んでもいられない。これから生徒達の訓練を始めなくてはいけないからだ。

 

「さて、凛少年は帰ってしまったが最初に言ったようにみんなにはこれからクジを引いてもらう。凛少年も言っていたが自分が出来ることを最大限に活かして訓練をしていこう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームルーム後教室で生徒達により、ワイワイ騒ぎながら今日の戦闘訓練の反省会が行われていた。最後の話題は帰ってしまったが八神凛のことだ。

 

「八神は凄かったな!実践まで考慮した考えなんて思いつきもしなかったぜ。訓練を訓練で終わらせるところだった」

 

「そうですわね。勉強すべきことは多いです」

 

「オールマイトも早退することに何も言わなかったから先生達も八神のことは特別扱いしてるみたいだな」

 

「八神の実力って本当どれくらいなんだろうな?オールマイトをパンチ一発でぶっ飛ばしてたよな」

 

「爆豪や轟も凄かったけど、なんて言うのかな凄味があった」

 

「なぁ、蛙吹!子供の頃しか分からないって言ってたけどそのころから八神って凄かったのか?

 

「ケロ?そうねぇ、昔は優しい子だったわね。その頃は『個性』もほとんど使わなかったし、必要な時以外もの静かだったわ」

 

「ってことは海外に行ってた間に強くなったってことだな」

 

考察をしてみるが八神凛という人間の謎が増えるだけだった。

 

「おい、お前ら下校時刻だ!さっさと帰れ!」

 

見回りに来た相澤に声をかけられたところで反省会は終わりをつげた。

 

「先生!八神のことを教えてくれませんか?」

 

「本人に聞けと言いたいところだが、あいつのことだ、しゃべらんだろう。教師が特別扱いしてることもあるしな。明日のロングホームルームで時間が余ったら教えてやる。だから今日はさっさと帰れ」

 

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